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夜間歩行

帰国

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 「おはよう」「あけおめっ」

 新学期。
 何となくドキドキしながら教室に入った。

  もし、颯斗くんが、いなかったらどうしようって思ったからだ。

  颯斗くんくんの席は。

 ………あれ………鞄がない。

「里さーん♪、あけおめっ!」

  ズン……と不安になっているところを、野沢さんに陽気に声をかけられる。

「あ、あけましておめでとう、今年も宜しくお願いします」

「もう、相変わらず真面目ねぇ、ところでどう? 琢磨さんとお姉ちゃんの結婚、お母さんは認めてくれた?」

 そうだ。
 そうだった。

 琢磨は琢磨で大変な問題を抱えてるんだった。

「それが、その事はお母さん、何も話さなくて」

 今度は、琢磨の ″ 結婚 ″ という現実から、お母さんは目を背けているようだ。

 「まぁ、男親の母方となると無理もないよねぇ。うちは、姉ちゃんに中絶させたくないから、結婚は認めてるけど」

 身体的に一番 大変なのは、妊婦さんなのに。

「……うちのお母さん、本当に兄を溺愛していたから」

 受け入れて祝福するまでは時間がかかると思う。

「そっか、子離れするのも一苦労するわね」

 野沢さんが軽く溜め息をつく。

「あ、颯斗だ」

 そこへ、

「久しぶりー!!」

「お前、冬休み、一回も連絡してこなかったなぁ!」

「アメリカの土産はぁ?!」

  待ちに待った颯斗くんが登校してきて、私が寄る前に、ワッと、皆に囲まれてしまっていた。

 あ。
 男子も女子も、颯斗くんにベタベタ!

「何か、颯斗ってば、また顔が変わったよな?」

「うん、教室入って来た時、どこのイケメン教師かと思ったもん」

「大人ー!」

  近寄れずに遠巻きに見る私の目でも、それはハッキリと見てとれた。
  アメリカへ渡るまでは、ちょっとお兄さんぽい感じだったのに。

  今は二十代前半に見える。

「俺、ちょいアメリカでダイエットしたからな。腰回りに贅肉ついてたから」

 颯斗くんがそう言うと、女子は、「イヤミー!颯斗くんがダイエットする必要ないじゃん!」
 と笑っていた。

「……」

 皆、気が付かないんだ。

 まだ、……若いから。

 それでも、そう遠くない日にわかるはず。

  彼の身体が、私達より早く歳を重ねていることに。


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