同級生がCEO―クールな彼は夢見るように愛に溺れたい(らしい)【番外編非公開中】

光月海愛(こうつきみあ)

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裏切りと恋

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「お客さん来てるから。何か急用?」

 ドアの向こうの訪問者に私はつっけんどんな口調で声をかけた。 

「用っていうか、要救護!」

「なによ、救護って」

「しばらく泊めてくれない?」

「はぁ?」

「……誰?」

 深い溜め息をつく私の隣で、すっかり身支度を終えた神城社長が尋ねる。

「姉です」

「お姉さんいたんだ」

「………いましたねぇ」

「何、なんかワケアリ?」

「………というわけでは……」

 ブラジャーを付けてシャツを着る。
 うわ。
 やっぱり湿ってベタついてる。気分が上がってた時はさほど気にならなかったのに。冷めてしまうとひたすら気持ち悪い。

「じゃあ、俺、出るから」

 メガネをはめた神城社長は、もうすっかり仕事モードだ。
 ……あぁ。外したところ、もう少し見ていたかった。

「早く開けてよー、こっちは子供も一緒なんだからねぇ!」

「わかったからっっ!」

 内鍵を回した途端、ドアが勢いよく開く。

「おっひさ~~! あ、れ、……男連れ込んでたの?」

 金髪に近いロン毛。
 日焼けした、今どきあまり見かけないギャル風の三十五歳。
 そこには、私の嫌いな姉がノーテンキな顔をして立っていた。

 ″男連れ込んで″とかそういう言い方するからイヤなのよ。五歳も上のくせに昔っからデリカシーなくて、この姉にはムカつく事が多かった。

「こんにちは。僕はもう失礼するので」

 ペコリ、と会釈する神城社長を舐め回すように見ている冬美は、突然、「あ、ねえ!」と彼の腕を取った。

「あなた、私とどこかで会ったことない?」

「え」

「あるわけないでしょ?」

 と、私が答える。いくら私と神城社長が同級生だとしても、学校が被っていない姉が知り合いなワケない。

「では社長、家までお送り頂きありがとうございました。このあとの打ち合わせまであと一時間です。お車の運転充分にお気をつけてください」

「あ、あぁ……」

 秘書とボスの関係に戻って、神城社長をアパートの外まで見送る。お辞儀をする私を振り返って、社長は苦笑いをしていた。

 結局私達は、酔ったはずみでヤッてしまった時と何ら進展はしなかった。
 所詮これが私の現実。
 あの神城社長と甘々な関係なんて築けない運命なのかもしれない。

 それにしても。
 ……あの無神経な姉。
 直ぐに追い出さなきゃ。

 熱(いき)り立って部屋に戻ったものの、

「あ、これ。私の息子のハヤトね。ほら、おばちゃんに挨拶しな」

 知らぬ間に子供をこさえてた姉が、愛らしい顔をした甥っこを差し出すものだから、文句が言えなかった。
 無神経な姉とは違い、人見知りしてモジモジしてる。なんか可愛い。

「こんにちは。ハヤトくん、何歳?」

 しゃがんで顔を覗き込むと、「ご、さい」と指を五本広げて見せた。 
 はにかんだ笑顔から溢れる白い歯が小さくて、なのにちゃんと並びが良くて眩しい。
 とりあえず部屋に上げて二人に麦茶を出す。

「で、いつ結婚したの? そして何で私の所に来たの? 救護って何?」

 十年間なんの音沙汰もなかったくせに。
 甥にテレビアニメを見せながら、大きなバッグの中身を出す姉を問い詰めた。

「結婚はしてないわよ。この子の父親と長いこと暮らしてたけどさぁ」

「ちょっと」

 子供が居ると言うのに、タバコを取り出す冬美を睨みつける。
 未入籍での出産。
 そんなことだろうと思ったけど、でも、まんま過ぎるじゃない。

「何よ。タバコの煙がガンになる証拠なんてないんだからね」

「良くはないでしょう。じゃあ、高校卒業してから同棲してた人が、ハヤトくんの父親なのね?」

「そいつとは一年持たなかった。まぁ、仕事も住居も男も転々として、この子の父親とはわりと続いたわけ。いつか結婚するだろうと思ってたら、他の女孕ませて。で、お払い箱よ」

 お払い箱って。

「冬美みたいな無神経な気の強い女が何でアッサリ引き下がってくんの?」

 当然の疑問を投げかけると、パコン! と頭を叩かれる。

「……いった、なによ?」

「あんたって、昔っから私のこと呼び捨てするよね。五歳も下のくせに、姉を敬うこと知らないんだから」

「尊敬できる所ひとっつもないんだもの」

「ハァ。かわいくない。……まぁ確かに私はあんたと違って勉強出来なかったからねー」

 一旦取り出したタバコをポケットにクシャリと仕舞って、姉はゴロンと床に横になった。
 傷んだ金髪の髪がクッションの上で広がる。

 この人は奔放で金遣い荒くて、ヤンキーとまでいかなくても悪目立ちするタイプだった。
 それでも両親は突き放すことなく、いつか普通に結婚して孫の顔を見せてくれるだろうと、自由にさせていた。私と違ってユーモアのある姉のことはやっぱり可愛かったんだろう。
 顔もどっちかつーと美人だし。

 テレビの前のハヤトを母親の視線で見つめる姉の顔を眺めていると、不意に私の方を向き直って言った。

「それより、あんた、会社の社長と付き合ってんの? それともさっきのはコスプレの延長?」

「は?」


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