同級生がCEO―クールな彼は夢見るように愛に溺れたい(らしい)【番外編非公開中】

光月海愛(こうつきみあ)

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決意 

また誤解

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 背筋が寒くなった。
 お酒も飲んでいないのに、震えから足がよろめく。
 それでも必死にその場所から遠ざかった。
 第三者が現れるリスクは想像してなかっただけに、今更ながら無茶したことを後悔していた。

 街中に出ても、ずっと誰かに付けられているような気がして怖かった。

 このまま家に帰るの危険じゃない?
 一旦、会社の方に戻る? 
 そこならまだ誰かいる。

 踵を返すと、サッと身を翻した男がいた。
 人ごみで服は見えなかったが、顔は間違いなくバーにいた男だった。相変わらずスマホを片手に話している。

 声は聞こえるが、言語は不明。

 でも。
 確かに私の後をつけている。
 いったいなんのために?
 私がまだ何か証拠を持っていると思ってる?
 余計な詮索はするな、と脅かすつもりなの?
 そこに暴力はある?

 最悪な予想が私の歩速をますます早める。
 決めていた、″やってはいけないこと″は、赤ちゃんに負荷を加えること。
 すなわち、お酒にセックス、無理な体勢、そして走ること、だ。
 それなのに、今の私は街中をほぼ走っているに近い。

 ―――お願い。
 
 ついてこないで。

 走っては後ろを振り返り、あの男がいないか確認していると、

「危ない!」

 思い切り人にぶつかり、よろめいた。

「鈴木さん、どうした?」

 ふらつく私を支えてくれた人の顔を見て安堵した。


「ながの………さん………」

 私にボイスレコーダを貸してくれた長野さんだ。一気に気が緩んで、足の力が抜けていく。

「大丈夫? 額にすごい汗かいてるけど」

 短い息しか出ないし、頭もボォっとしている。
 貧血?
 ツワリのせいで栄養バランス皆無の食事を続けてるからかもしれない。

「すみません………しばらくすれば治ると思いますので」

「俺は構わないけど、身体震えてない?」

 人目も憚らず、そのまま長野さんに身体を任せて回復を待つ。はたから見れば抱き合ってるように見えるかもしれない。オフィス街だし、ここだと会社の人間に会う確率も高い。

 早く治って。おさまれ、震え――――

 その時、ふと、私達の前で誰かが立ち止まった。


「あ、啓くん」

 長野さんの声にドキッとする。
 よりによって神城くん?
 外は暗く、彼の表情は見えない。

「おつかれさまです………」

 挨拶するも、顔を上げればクラクラする。
 よりによって、って言うのも変よね。
 私達は、恋人同士じゃない。
 そう思ったら、泣きそうになって私は下を向いた。

「こんな所でいちゃつくのは控えたら?」

「えっ!!」

 長野さんが ″違っ……″、と全部言う前に、神城くんは駐車場のほうへ行ってしまった。見られたことより、どうでもよさげな言い方に傷付いた。


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