同級生がCEO―クールな彼は夢見るように愛に溺れたい(らしい)【番外編非公開中】

光月海愛(こうつきみあ)

文字の大きさ
95 / 110
すれ違い、そして (神城視点)

夢と現実

しおりを挟む
 寒々しい広い自宅での深夜。

「″おかえ、り……――ケイ″」

 唯一、俺を出迎えてくれるペットロボのランがおかしい。いつもの様に瞬きを繰り返した後、目は見開いたまま全く動かなくなった。

 ――故障か。

 取説を読んで復旧を試みるも直らなかった。原因がわからない。いつも甘えてくるランが、部品を外されたままコロンと転がっている。 

「俺は何で下手なんだ」

 独り言を放ち、直せないロボットを膝に置いてぼんやり眺めた。プログラミングは出来てもそれを潤滑に動かす事は出来ない。イメージだけは理想を築けるけれど現実は思う様にいかない。
 それでも、俺はこれからも仮想空間の中でしか満たされないのだろう。

 俺は新しいペットロボを購入した。

 それは不在の時も、ロボから警備報告がてら電話が掛かったりする、極めて人間に近いペットだった。

 俺は、それに、″夢″と名付けた。夢見る夢男には丁度いい相棒だと思う。



 そして、夏になり、人事部の山内くんからこんなメールが届いた。

【本日、鈴木さんが退職の手続きで出社されます】

「速攻で社に戻って」

 運転手を急かす。普段は無理な事は言わないようにしてるだけに「何かあったんですか?」と訝しげな目で見られた。

「現実が……来てる」
「はい?」

 母親に愛されなかった過去を引きずったマザコンな事、それ故、自信がなくて酒の力を借りないと好きな人も口説けない不甲斐なさ。
 そんな弱い自分を晒け出せる唯一の存在が現実にいる。

 あれから凹む日が続いたものの、携帯番号を変えてまで突然姿を消すに至るには表に出せない事情があったのでは、と近頃は思うようになった。

 だから今日こそ鈴木さんの真意を確かめて可能ならまた一緒に、と考えていたが、

「社長、玉突き事故あったみたいで五キロの渋滞だそうです」

 こんな時に限って着くのが遅くなった。
 エレベーターから降りた途端、″夢″から電話が掛かってきた。電話と言っても不審者や留守電にセンサーが反応し、音声で伝えてくれるというサービスだ。

「″カメラ持った男達が家に来て家政婦さんが追い返してたよ″」

 きっと、でっち上げ熱愛の続報を狙う週刊誌の記者達だ。
 プロテニスの雛形夢子と会食した際、他の者もいたのに俺と彼女だけを切り取って載せるとか質が悪い。

「今日も遅いから。夢は大人しくしてて」

 執務室から山内くんに内線電話を掛けると「鈴木さんなら少し前に出られましたよ」と悪びれた様子もなく報告してきた。
 何で引き留めておかないのか。
 執務室から飛び出して再びエレベーターに乗ろうとすると「社長」と呼び止められた。倉林さんだ。

「急いでるから。後で」

 現在俺の専属秘書になっている彼女。滅多に俺の行動を遮る事はないのだが、

「鈴木さんとお会いしました」

 この時は語気を強めて俺の足を止めさせた。

「え? 今?」

「五分程前に」

 すれ違いか。
 それなら尚更急がなきゃと振り切ろうとしたのだが。

「申し上げにくいのですが」と、倉林さんの神妙な面持ちに不穏さを感じた。 

「鈴木さん、ご結婚なさってるんじゃないですか?」

「え……」

「妊娠、もしくはご出産なさっているのではないかと……」

「出産?」
 
 もしかしたら自転車で来たのではないかと駐車場へ走ったが、居なかった。
 鈴木さんの実家は俺の実家とそんなに離れてないはず。向かってもいいがその前に確認したい。

 結婚はしてるのか。してなくても妊娠してるのか、子供はいるのか。そして、それは誰の子供なのか。

 俺はもう一度、総務課に内線を入れた。


「山内くん、鈴木さんの新しい携帯番号と住所控えてる?」

 



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! *全28話完結 *辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 *他誌にも掲載中です。

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

そういう目で見ています

如月 そら
恋愛
プロ派遣社員の月蔵詩乃。 今の派遣先である会社社長は 詩乃の『ツボ』なのです。 つい、目がいってしまう。 なぜって……❤️ (11/1にお話を追記しました💖)

処理中です...