17 / 35
1. No pain, No gain.
16
しおりを挟む
膨らむ妄想を破ったのは、カメラのシャッター音だった。二、三回連続して聞こえた。「おい、よせ!」と誰かの声。気になって辺りを見渡すも、すぐにスマートフォンに目を落とした。そこに映っているのが自分だとは思いもせず、ただ呑気にパンを食べていた。
状況が一変したのはその日の夜だった。ワンルームの賃貸マンションへ帰ってまずやることは、あの事の調査だ。調査と言っても、ネットでエゴサをすることしか出来ることがない。しかし、犯人はどうなったのかを真っ先に知りたい。電車や会社の中でやると誰かに画面を覗かれるかもしれないから、朝起きた時と帰宅した時必ずチェックしている。
十年続けているが、めぼしい情報は得られていない。今日も空振りのまま終わる。そう思ってスマートフォンを開くと、同期五人が入っているグループのSNSに、佐環や颯から大量のメッセージが送られてきていた。
――ねぇ、ヤバいよ! なんで私たちの情報がネット上にバラまかれてるの?!
――俺たちしか知らない情報もある。ってことは、この五人の誰かが裏切った。そういうことだろ。
――何で今更?!
――金のためのためだろ。マッチポンプの要領で収入を得るためだよ。だとしたら、嗣乃か伊吹のどっちかだな。
俺たちの情報? 裏切り者? 何が起こっているんだ。
最初からやり取りを読み返す。すると、俺たち五人の顔写真が本名と共にSNSに投稿されているスクリーンショットが送られていた。いや、それだけではない。SNSアカウント、電話番号に勤め先や住所。消したはずのあの事故映像までも……。
体中の毛穴から汗が吹き出す。コンクリートの壁が迫ってくるような錯覚を覚えながら、暴露元となっているSNSアカウントのプロフィール画面に飛んだ。
アカウント名は「P市死亡ひき逃げ事件の真相」。最初の投稿は今日の正午過ぎだった。
――十年前に起きたP市死亡ひき逃げ事件。未解決事件として風化されつつあるこの事件。あの時起きた出来事を、私たちは知っています。ひき逃げ犯の車や容疑者の声も聞いています。それなのに、当時の私たちは通報しないで見て見ぬフリをすることに決めました。その私たちとは、耳塚伊吹、大鼻勝矢、久目颯、手柳佐環、古味山嗣乃の五人です。
頭が真っ白になった。この文章を、俺たち以外の誰が書けるというのだ。
スクロールし全ての投稿文に目を通す。どの文章にも改行を入れておらず、句読点のみで淡々と綴られていた。
それと同時に、最も恐れていた事態に陥っていることにようやく気付く。投稿に対して、五人に対する誹謗中傷のコメントがすごい勢いで増えていた。
――被害者が亡くなっているのに、加害者たちはのうのうと生きていることに憤りを感じる。犯人もそうだけど、時効まで黙っていた目撃者たちにも制裁が必要。
――私、耳塚って人にセクハラされた。よく覚えてる。この顔、一生忘れない。
――どこかで聞いたことあると思ったら、古味山嗣乃と同級生だった。当時から羽振りよかったから、パパ活していても驚かない。気持ち悪い……汚らわしい女。
状況が一変したのはその日の夜だった。ワンルームの賃貸マンションへ帰ってまずやることは、あの事の調査だ。調査と言っても、ネットでエゴサをすることしか出来ることがない。しかし、犯人はどうなったのかを真っ先に知りたい。電車や会社の中でやると誰かに画面を覗かれるかもしれないから、朝起きた時と帰宅した時必ずチェックしている。
十年続けているが、めぼしい情報は得られていない。今日も空振りのまま終わる。そう思ってスマートフォンを開くと、同期五人が入っているグループのSNSに、佐環や颯から大量のメッセージが送られてきていた。
――ねぇ、ヤバいよ! なんで私たちの情報がネット上にバラまかれてるの?!
――俺たちしか知らない情報もある。ってことは、この五人の誰かが裏切った。そういうことだろ。
――何で今更?!
――金のためのためだろ。マッチポンプの要領で収入を得るためだよ。だとしたら、嗣乃か伊吹のどっちかだな。
俺たちの情報? 裏切り者? 何が起こっているんだ。
最初からやり取りを読み返す。すると、俺たち五人の顔写真が本名と共にSNSに投稿されているスクリーンショットが送られていた。いや、それだけではない。SNSアカウント、電話番号に勤め先や住所。消したはずのあの事故映像までも……。
体中の毛穴から汗が吹き出す。コンクリートの壁が迫ってくるような錯覚を覚えながら、暴露元となっているSNSアカウントのプロフィール画面に飛んだ。
アカウント名は「P市死亡ひき逃げ事件の真相」。最初の投稿は今日の正午過ぎだった。
――十年前に起きたP市死亡ひき逃げ事件。未解決事件として風化されつつあるこの事件。あの時起きた出来事を、私たちは知っています。ひき逃げ犯の車や容疑者の声も聞いています。それなのに、当時の私たちは通報しないで見て見ぬフリをすることに決めました。その私たちとは、耳塚伊吹、大鼻勝矢、久目颯、手柳佐環、古味山嗣乃の五人です。
頭が真っ白になった。この文章を、俺たち以外の誰が書けるというのだ。
スクロールし全ての投稿文に目を通す。どの文章にも改行を入れておらず、句読点のみで淡々と綴られていた。
それと同時に、最も恐れていた事態に陥っていることにようやく気付く。投稿に対して、五人に対する誹謗中傷のコメントがすごい勢いで増えていた。
――被害者が亡くなっているのに、加害者たちはのうのうと生きていることに憤りを感じる。犯人もそうだけど、時効まで黙っていた目撃者たちにも制裁が必要。
――私、耳塚って人にセクハラされた。よく覚えてる。この顔、一生忘れない。
――どこかで聞いたことあると思ったら、古味山嗣乃と同級生だった。当時から羽振りよかったから、パパ活していても驚かない。気持ち悪い……汚らわしい女。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる