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2. No penny, No pardon.
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しおりを挟む転校の話は着々と進んでいたが、同級生たちには伝えていなかった。伝える必要はないし、伝えたい相手もいなかったから。
週明けの放課後。私はグラウンドに錆びたハードルを並べていた。上級生たちが来る前に、下級生たちは必要な道具を準備しなければいけないという暗黙のルールがあった。馬鹿らしいルールだと思っていたが、もう関係なくなると思えば清々しい。時折沈む夕日を眺めはこれから住むであろう新たな土地のことを考え、憂いた。
ハードルを全て並べ終えグラウンドを見渡す。まだ全ての器具は用意されていなかった。ため息をつき渋々用具室へ向かう。すると途中で手ぶらの同級生が私の元へやってきた。
「ねぇ、なんで土曜日休んだの?」
「なんでって……体調が悪かったから」
「ふーん。そんなことよりさ、副部長が部室まで来いって。今すぐ」
「え、どうして……」
「知らないよ。部活休んだからじゃないの?」
副部長……。なぜか女子人気が高くて、気に入られた女子部員は彼のことを優しいだの好きだのと言う。私からすれば、相手を見下したり、ナルシストな言動だったりでかなり苦手意識があったから、なるべく関わらないでいた。だけど、二つ上の先輩から呼び出されれば怖くて無視できない。
同級生は「ちゃんと伝えたからね」とだけ言って手伝いもせず去っていった。
部室は校舎の影に隠れており、部活終了時刻まで人影が無くなる。さらに、三年生のたまり場となっている時があるため益々行きたくなくなかった。足を引きずりどうにか辿り着く。「陸上部」の三文字を確認し、ステンレス製の扉をノックするが返事がない。
「あの……先輩。来ました……」
丸いドアノブを回して中を覗く。彼は埃と汗と制汗剤の臭いが充満する部屋の隅にいた。壁にもたれかかって動画を見ているようだった。声に気づいないのか、無視をしているのか。念のため「あの……先輩」ともう一度言う。そしたら「おー」とまるでやる気のない声が返ってきた。
蛍光灯がチカチカ光る薄暗い部屋は、靴を脱いで上がらないといけなかった。それが嫌だったから入り口に立ったまま訊いた。
「あの、用って……」
「あぁ。ちょっとこっち来て」
「ここじゃいけませんか?」
「いいから来い!」
先輩の言うことが聞けないのか。彼の目から苛立ちが伝わってきた。
靴を脱いで軋む床をゆっくり歩く。そして、先輩の体の真横に着くと、彼は私の手首を掴み勢いよく引っ張った。
「痛!」
両膝を床にぶつけた。彼はお構いないに、今度は強引に唇を奪ってきた。鍛えられた筋力に締め付けられる。後頭部や背中を手で押さえられ、身動きが取れなかった。それだけではない。
怖い――。
意志は恐怖に支配されていた。
先輩のゴツゴツした手が私の服を剥がしていって、彼の欲望を満たすためだけにこの体は使われているのだと瞬時に理解した。
されるがまま、抵抗できなかった。押し倒され、畳の表面を間近な距離で見る。そこには幾つものシミがあった。
きっと、私だけじゃないんだ。
なんで、先輩は私を選んだのだろう。簡単に犯せると思ったから? 処女だと知ったから? 単純に誰でもよかった?
骨が折れそうなくらいの力で手首を掴まれ、体を揺らされている間、そんな事を考えていた。
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