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2. No penny, No pardon.
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「もしかしたらまだ生きているかもしれない」と佐環が言うも、カメラの映像を見る限りもう手遅れだ。
「嗣乃も行くんだよ。私たちが目撃者なんだから、自分は関係ないとかなしだからね」
彼女の瞳が揺らいだ。私の記憶力が優れていることを知っている反面、この先のことを考え五人の立場は対等であるべきだと思ったのだろう。促され仕方なく現場へ向かう。だけど、この行動をひどく後悔した。カメラに映っていた黒っぽい普通車と同じ形の車を見ると、血の海に横たわる被害者の姿が形状記憶のように蘇ってくる。
人生で最も最悪の日。強いストレスのせいか、勝手に涙が流れてきた。
すると突如、颯の焦る声が響く。
「俺、知ってる。……まだ通報はしないで! 詳しいことは後で話すから!」
そこへ案の定、佐環が通報するべきだと止めに入った。正しい意見だ。その正しさで、何ができる? 一人で勝手な行動をする素振りを見せたら、彼女の意見に寄り添い、冷静になるよう説得しただろう。彼女を止められるのは、私しかいない。
そして颯から、この事故について「見て見ぬフリをするべきだ」とする理由が語られた。意外だったのは、勝矢も同様の意見を持っていたということだ。SNSでは彼のことを「犯罪者の息子」と揶揄する投稿があり、それがあの態度に繋がっていたのかもしれない。
どうでもいい、と言ってしまいたかった。被害者が元少年であったという事実も。万が一何かあっても十分な資金さえあればいい。手っ取り早く解決に導いてくれる。今はとにかく、早く帰ってシャワーを浴びて、たくさん寝て明日から大学にいく。一刻も早くいつも通りの生活を送れればそれでよかった。
だから私から「全員の秘密を共有し合う」ことを提案して、話が進むようにした。佐環は意見を言い返してこない。高校の時からそう。私たちは互いに依存しながら過ごしてきた。
ネズミはどの段階で裏切ることを決断していたのだろうか。仮に私が提案しなかったら、ネズミが言うつもりだったのか。少なくとも、この時点で裏切ることを考えていたに違いない。「P市死亡ひき逃げ事件の真相」という告発アカウントに、消したはずの事故発生直後の映像をアップロードしているからだ。
これだけは誓って言える。車の中で仮眠を取っていた時、アクションカメラは颯たちの車にあった。
「嗣乃も行くんだよ。私たちが目撃者なんだから、自分は関係ないとかなしだからね」
彼女の瞳が揺らいだ。私の記憶力が優れていることを知っている反面、この先のことを考え五人の立場は対等であるべきだと思ったのだろう。促され仕方なく現場へ向かう。だけど、この行動をひどく後悔した。カメラに映っていた黒っぽい普通車と同じ形の車を見ると、血の海に横たわる被害者の姿が形状記憶のように蘇ってくる。
人生で最も最悪の日。強いストレスのせいか、勝手に涙が流れてきた。
すると突如、颯の焦る声が響く。
「俺、知ってる。……まだ通報はしないで! 詳しいことは後で話すから!」
そこへ案の定、佐環が通報するべきだと止めに入った。正しい意見だ。その正しさで、何ができる? 一人で勝手な行動をする素振りを見せたら、彼女の意見に寄り添い、冷静になるよう説得しただろう。彼女を止められるのは、私しかいない。
そして颯から、この事故について「見て見ぬフリをするべきだ」とする理由が語られた。意外だったのは、勝矢も同様の意見を持っていたということだ。SNSでは彼のことを「犯罪者の息子」と揶揄する投稿があり、それがあの態度に繋がっていたのかもしれない。
どうでもいい、と言ってしまいたかった。被害者が元少年であったという事実も。万が一何かあっても十分な資金さえあればいい。手っ取り早く解決に導いてくれる。今はとにかく、早く帰ってシャワーを浴びて、たくさん寝て明日から大学にいく。一刻も早くいつも通りの生活を送れればそれでよかった。
だから私から「全員の秘密を共有し合う」ことを提案して、話が進むようにした。佐環は意見を言い返してこない。高校の時からそう。私たちは互いに依存しながら過ごしてきた。
ネズミはどの段階で裏切ることを決断していたのだろうか。仮に私が提案しなかったら、ネズミが言うつもりだったのか。少なくとも、この時点で裏切ることを考えていたに違いない。「P市死亡ひき逃げ事件の真相」という告発アカウントに、消したはずの事故発生直後の映像をアップロードしているからだ。
これだけは誓って言える。車の中で仮眠を取っていた時、アクションカメラは颯たちの車にあった。
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