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1. No pain, No gain.
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「……巴海沙は七年前に起きたある事件の加害者なんだ。みんな、少年がP駅構内でナイフを振り回し、無差別に人々を襲撃した事件を覚えてるか?」
「うん。確か加害者はP市内の中学校に通う学生って報道されていたような……って、まさか」
「そう。当時は本名を伏せられ報道されていたが、間違いない。そいつの名前は巴海沙。俺の、かつての同級生だ」
五人の間を吹き抜ける強い潮風が沈黙をもたらした。全員が閉口する。
P駅無差別殺傷事件――よく覚えている。後味の悪い事件だったから。加害者は自分と年の変わらない中学生の少年だった。確かP駅のホームで無差別に刃物を人を襲い、結果的に一人が亡くなってしまった。原因は犯人を捕まえようとして失敗、不運にも電車に轢かれてしまったことによるものだったはず。
その加害者が颯の知り合いだったとは。それにしても車に撥ねられた被害者は男性の風貌をしていた。男性にミサという響きの名前は少し妙な感じがする。気になることはまだある。颯は、中学校に上がると同時に他県から俺たちのいる学校へ引越してきて、その時初めて彼と知り合った。「かつての同級生」ってことは、颯が小学生の時に知り合った可能性が高い。小中校と同じ学校だった勝矢も、その名前にピンと来ていないようだった。だとしたら、顔も体格も変化しているであろう古い級友を、一目見ただけで本人だとなぜ分かったのだろうか。しかも頭部が原型を留めていない状態で。
「知りたいことはたくさんあると思う。けど今決めるべきは、このまま見て見ぬフリをするかどうか」
勝矢の言葉に全員の空気がピリついた。
「待って。何で見て見ぬフリをしないといけないの。通報した方がいいに決まってるじゃない!」
佐環は少し語気を強める。彼女の言っていることは真っ当な意見だ。だけど、勝矢の肩を持ちたくなってしまった。この情報社会の中、ひき逃げ犯を目撃したと証言すれば犯人たちから報復を受ける恐れがある。ようやく決まった就職先を手放したくないし、無関係でいられるのならそれに越したことはない。何より、颯の言っていることが事実なら、正直被害者に起こったことは因果応報と呼ぶべきだろう。
「つまり、今いる五人全員、運命共同体になるってことだな」
颯が言う。佐環だけは「それ本気?」という顔をして、黙って成り行きを見守る嗣乃へ問いかけた。
「嗣乃も何とか言ってよ。あなただって同じ気持ちでしょう?」
「まだ、その……。何とも言えないよ……」
その返事を聞いくと佐環は説得を諦めたかのように下を向いた。
今の技術でどこまで解析できるのだろうか。タイヤ痕の他に車の塗料の種類が分かれば車種を特定できるかもしれない。仮に俺たちが証言したところで暗い色の車であることは分かったが、全体的に不鮮明だしメーカーのマークは映っておらず手がかりはほんの一部分。はっきりしていることは、Uターンして逃げて行ったということぐらいだ。
「この事故のことは、金輪際忘れよう。そしてこの事は、俺たち五人だけの秘密だ。ガキがする指切り約束みたいに薄っぺらいものじゃない。墓場まで持っていく覚悟でいなきゃ」
颯は演説をするかのように大きく身振りをして訴えかける。
「うん。確か加害者はP市内の中学校に通う学生って報道されていたような……って、まさか」
「そう。当時は本名を伏せられ報道されていたが、間違いない。そいつの名前は巴海沙。俺の、かつての同級生だ」
五人の間を吹き抜ける強い潮風が沈黙をもたらした。全員が閉口する。
P駅無差別殺傷事件――よく覚えている。後味の悪い事件だったから。加害者は自分と年の変わらない中学生の少年だった。確かP駅のホームで無差別に刃物を人を襲い、結果的に一人が亡くなってしまった。原因は犯人を捕まえようとして失敗、不運にも電車に轢かれてしまったことによるものだったはず。
その加害者が颯の知り合いだったとは。それにしても車に撥ねられた被害者は男性の風貌をしていた。男性にミサという響きの名前は少し妙な感じがする。気になることはまだある。颯は、中学校に上がると同時に他県から俺たちのいる学校へ引越してきて、その時初めて彼と知り合った。「かつての同級生」ってことは、颯が小学生の時に知り合った可能性が高い。小中校と同じ学校だった勝矢も、その名前にピンと来ていないようだった。だとしたら、顔も体格も変化しているであろう古い級友を、一目見ただけで本人だとなぜ分かったのだろうか。しかも頭部が原型を留めていない状態で。
「知りたいことはたくさんあると思う。けど今決めるべきは、このまま見て見ぬフリをするかどうか」
勝矢の言葉に全員の空気がピリついた。
「待って。何で見て見ぬフリをしないといけないの。通報した方がいいに決まってるじゃない!」
佐環は少し語気を強める。彼女の言っていることは真っ当な意見だ。だけど、勝矢の肩を持ちたくなってしまった。この情報社会の中、ひき逃げ犯を目撃したと証言すれば犯人たちから報復を受ける恐れがある。ようやく決まった就職先を手放したくないし、無関係でいられるのならそれに越したことはない。何より、颯の言っていることが事実なら、正直被害者に起こったことは因果応報と呼ぶべきだろう。
「つまり、今いる五人全員、運命共同体になるってことだな」
颯が言う。佐環だけは「それ本気?」という顔をして、黙って成り行きを見守る嗣乃へ問いかけた。
「嗣乃も何とか言ってよ。あなただって同じ気持ちでしょう?」
「まだ、その……。何とも言えないよ……」
その返事を聞いくと佐環は説得を諦めたかのように下を向いた。
今の技術でどこまで解析できるのだろうか。タイヤ痕の他に車の塗料の種類が分かれば車種を特定できるかもしれない。仮に俺たちが証言したところで暗い色の車であることは分かったが、全体的に不鮮明だしメーカーのマークは映っておらず手がかりはほんの一部分。はっきりしていることは、Uターンして逃げて行ったということぐらいだ。
「この事故のことは、金輪際忘れよう。そしてこの事は、俺たち五人だけの秘密だ。ガキがする指切り約束みたいに薄っぺらいものじゃない。墓場まで持っていく覚悟でいなきゃ」
颯は演説をするかのように大きく身振りをして訴えかける。
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