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第2章 王都
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『塞げ』
詠唱魔法が飛んできた。ロラン達が乗せられていた馬車の前に土の壁が出来上がる。
これは以前も見たユーティスの魔法だ。
それを皮切りに次々と魔法騎士たちが現れた。今までどこに潜んでいたのだろうか。
「捕えろ!」
指揮官の声が響き渡る。瞬く間に黒服の男達は捕縛されていった。
その隙間からリエト辺境伯令嬢に真っ先に向かっていくユーティスの姿が見えた。
「お嬢さま、ご無事ですか!」
「ご無事じゃないわよ」
「助けに来るのが遅くなってしまい申し訳ありません」
「本当よ! 本当に怖かったんだからあ......!」
助かったとわかり感極まった彼女はそのまま泣き始めた。その様子を見たユーティスは何の躊躇いもなく、抱きしめる。
まるで物語の中のお姫さまと王子さまのようだった。普段は高飛車なお姫さまが王子さまだけには素顔を見せる。
人々が好む話の完成だ。その完成にロランも一役かってでることができただろうか。
(できてると思いたいな)
地面に転がったまま一部始終を見ていたロランは動こうと試みたが、あちこち痛むためかなわなかった。
ルーカスに、君は本当に巻き込まれ体質なんだね、と言われたことを思い出した。
確かにそうだ。
「どうしよう」
「......失礼します。お怪我はありませんか」
どう見てもお怪我しかない。状況を見てわからないのかとむくれながら、目だけを動かした。
ロランの横に立っている彼は尋ねた。
「あなたがブルーナ侯爵家の方ですか?」
「はい」
「私は王宮に所属している騎士でございます。ブルーナ侯爵より通報を受け馳せ参じた次第です」
「ああよかった。トニーは無事なんですね」
「はい」
怪我の手当てをするので、辛いでしょうが歩いてください。両脇を持ち上げられるような形で上に引っ張り上げられる。
幸い、歩けないほどの怪我は負っていなかったので歩き出すことができた。
「平民を助けるためにわざわざ王宮に連絡を入れるとは......。上流貴族の考えは理解し難いな」
わざとロランに聞こえるか聞こえないかの声で騎士が言った。
心がひんやりすると共に、これが正常な反応であることを思い出す。
ロランは何も聞いていないふりをして、そのまま歩みを進めた。
黒服の男達に拉致された経緯や荷台でのやり取りなどを根掘り葉掘り聞かれた後、王宮の騎士達にブルーナ侯爵家まで送ってもらった。門の付近ではトニーとレオナルドが待っていてくれた。
「ロランさん、無事でよかった! もう、ロランさんに何かあったら悔やんでも悔やみきれないっすよ」
「ごめんな、トニー。君が助けを呼んでくれたおかげで、救助されることげできたよ。ありがとう」
「うう、ロランさんはこんな時も大人なんですねえ」
泣きながらロランに抱きつきそうになっているトニーを隣で見ていたレオナルドが静止した。
「お待ちなさい。ロランさんの怪我の具合が見てわからないんですか。こんな傷だらけの体に抱きついたら、悪化してしまうかもしれないでしょう。きちんと考えなさい」
「すびばせん」
コントのようなやり取りを見てロランは不覚にも笑った。助骨のあたりがぎりっと痛んだが、気にしなかった。
「ロランさんも行きましょう。医師を呼んであります。......本当に酷い怪我だ」
レオナルドはロランを背負うために背中を指差した。立っていることがやっとだったため、好意に甘えさせてもらう。
トニーはレオナルドの補助をしながら、医師の元まで向かった。
その後診察の結果、医師は呆れた。
「酷い怪我だ。むしろ今あなたとこうして話せていることが奇跡ですよ。意識を失っていてもおかしくないです」
「はは......」
頬を冷やしながらロランは医師の話を聞いた。
乾いた声しか出てきていな理由は身体中の傷が傷み始めているからだ。荷台から落とされた際に生じた出血や打撲痕。肋骨に入ったひびが影響して息をするたびに痛んだ。
保護されてからブルーナ侯爵家に帰ってくるまでは、ロランが興奮状態にあったため、脳が痛みを認識しなかったのだろうというのが医師の見解だ。
「数日は安静にしておいてください。傷やヒビの入った骨は固定するようにしてください。どうか無理はなさらないように」
「わかりました」
運が良いことに今後生活の妨げになりそうな怪我はなかったものの、安静は必須で休みをもらいゆっくりしていなさいと指示された。
「前、馬車に轢かれて死にかけたのがよかったのかな」
「よくないです」
「でも、その経験があったから今回そこまで酷くならずに済んだのではないかと思って。経験は人を強くすると言いますから」
「そんなことはないので、思い違いをしないでください。傷を得るごとに強くなっていくのは、王宮の騎士団長クラスの人間だけですよ」
診察が終わった後、ぽつりとつぶやくとレオナルドからしっかりと否定された。
「視力を回復させるために医療実験に参加したことをお忘れで?」
「覚えていますよ」
普段は穏やかなレオナルドだが、さすが貴族だ。圧の出し方が平民のそれとは全く違う。
これ以上変なことを言ってしまわないようにロランは口をつぐんだ。
「ロランさん、これ痛み止めです。温かいお湯と一緒に飲んでくださいね」
「ありがとうトニー」
厨房から戻ってきたトニーから差し出されたカップを受け取り、薬と共に飲み込んだ。喉から体内にじんわりと温かさが広がっていく。
ロランの長い1日がようやく終わったのだった。
詠唱魔法が飛んできた。ロラン達が乗せられていた馬車の前に土の壁が出来上がる。
これは以前も見たユーティスの魔法だ。
それを皮切りに次々と魔法騎士たちが現れた。今までどこに潜んでいたのだろうか。
「捕えろ!」
指揮官の声が響き渡る。瞬く間に黒服の男達は捕縛されていった。
その隙間からリエト辺境伯令嬢に真っ先に向かっていくユーティスの姿が見えた。
「お嬢さま、ご無事ですか!」
「ご無事じゃないわよ」
「助けに来るのが遅くなってしまい申し訳ありません」
「本当よ! 本当に怖かったんだからあ......!」
助かったとわかり感極まった彼女はそのまま泣き始めた。その様子を見たユーティスは何の躊躇いもなく、抱きしめる。
まるで物語の中のお姫さまと王子さまのようだった。普段は高飛車なお姫さまが王子さまだけには素顔を見せる。
人々が好む話の完成だ。その完成にロランも一役かってでることができただろうか。
(できてると思いたいな)
地面に転がったまま一部始終を見ていたロランは動こうと試みたが、あちこち痛むためかなわなかった。
ルーカスに、君は本当に巻き込まれ体質なんだね、と言われたことを思い出した。
確かにそうだ。
「どうしよう」
「......失礼します。お怪我はありませんか」
どう見てもお怪我しかない。状況を見てわからないのかとむくれながら、目だけを動かした。
ロランの横に立っている彼は尋ねた。
「あなたがブルーナ侯爵家の方ですか?」
「はい」
「私は王宮に所属している騎士でございます。ブルーナ侯爵より通報を受け馳せ参じた次第です」
「ああよかった。トニーは無事なんですね」
「はい」
怪我の手当てをするので、辛いでしょうが歩いてください。両脇を持ち上げられるような形で上に引っ張り上げられる。
幸い、歩けないほどの怪我は負っていなかったので歩き出すことができた。
「平民を助けるためにわざわざ王宮に連絡を入れるとは......。上流貴族の考えは理解し難いな」
わざとロランに聞こえるか聞こえないかの声で騎士が言った。
心がひんやりすると共に、これが正常な反応であることを思い出す。
ロランは何も聞いていないふりをして、そのまま歩みを進めた。
黒服の男達に拉致された経緯や荷台でのやり取りなどを根掘り葉掘り聞かれた後、王宮の騎士達にブルーナ侯爵家まで送ってもらった。門の付近ではトニーとレオナルドが待っていてくれた。
「ロランさん、無事でよかった! もう、ロランさんに何かあったら悔やんでも悔やみきれないっすよ」
「ごめんな、トニー。君が助けを呼んでくれたおかげで、救助されることげできたよ。ありがとう」
「うう、ロランさんはこんな時も大人なんですねえ」
泣きながらロランに抱きつきそうになっているトニーを隣で見ていたレオナルドが静止した。
「お待ちなさい。ロランさんの怪我の具合が見てわからないんですか。こんな傷だらけの体に抱きついたら、悪化してしまうかもしれないでしょう。きちんと考えなさい」
「すびばせん」
コントのようなやり取りを見てロランは不覚にも笑った。助骨のあたりがぎりっと痛んだが、気にしなかった。
「ロランさんも行きましょう。医師を呼んであります。......本当に酷い怪我だ」
レオナルドはロランを背負うために背中を指差した。立っていることがやっとだったため、好意に甘えさせてもらう。
トニーはレオナルドの補助をしながら、医師の元まで向かった。
その後診察の結果、医師は呆れた。
「酷い怪我だ。むしろ今あなたとこうして話せていることが奇跡ですよ。意識を失っていてもおかしくないです」
「はは......」
頬を冷やしながらロランは医師の話を聞いた。
乾いた声しか出てきていな理由は身体中の傷が傷み始めているからだ。荷台から落とされた際に生じた出血や打撲痕。肋骨に入ったひびが影響して息をするたびに痛んだ。
保護されてからブルーナ侯爵家に帰ってくるまでは、ロランが興奮状態にあったため、脳が痛みを認識しなかったのだろうというのが医師の見解だ。
「数日は安静にしておいてください。傷やヒビの入った骨は固定するようにしてください。どうか無理はなさらないように」
「わかりました」
運が良いことに今後生活の妨げになりそうな怪我はなかったものの、安静は必須で休みをもらいゆっくりしていなさいと指示された。
「前、馬車に轢かれて死にかけたのがよかったのかな」
「よくないです」
「でも、その経験があったから今回そこまで酷くならずに済んだのではないかと思って。経験は人を強くすると言いますから」
「そんなことはないので、思い違いをしないでください。傷を得るごとに強くなっていくのは、王宮の騎士団長クラスの人間だけですよ」
診察が終わった後、ぽつりとつぶやくとレオナルドからしっかりと否定された。
「視力を回復させるために医療実験に参加したことをお忘れで?」
「覚えていますよ」
普段は穏やかなレオナルドだが、さすが貴族だ。圧の出し方が平民のそれとは全く違う。
これ以上変なことを言ってしまわないようにロランは口をつぐんだ。
「ロランさん、これ痛み止めです。温かいお湯と一緒に飲んでくださいね」
「ありがとうトニー」
厨房から戻ってきたトニーから差し出されたカップを受け取り、薬と共に飲み込んだ。喉から体内にじんわりと温かさが広がっていく。
ロランの長い1日がようやく終わったのだった。
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