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第2章 王都
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それならば全ての辻褄が合う。リエト辺境伯令嬢とブルーナ侯爵家に縁があるロランを拉致すれば、両貴族は対応をせざるをえなくなる。そうすれば、他の貴族達の目も彼らに集まるはずだ。
「よく答えに辿りついたな。レオナルドが褒める理由がわかったよ」
「ライオネルさま、それは言わない約束では?」
「別にいいだろう。悪い意味じゃない」
反応を見るにライオネルとレオナルドは男達の真意に辿り着いていたらしい。
だがわざと知らないふりをしてロランに答えさせたのだ。
そこで我に返った。
「ロランさんすごいっすね。俺、感動しました」
「いや、そんなんじゃないよ。昔読んだ本にこういうシーンがあったなって思っただけで」
嘘だ。そんな本は読んだこともない。そもそも今世でまともに読書をした記憶さえないのだ。
芹沢伊吹だった時の記憶と勘が答えを導いた。
「そうだったとしても君はこの件で役に立つだろうね。協力してくれるかい?」
「......はい、もちろんです」
「トニーも」
「えっ俺も? あ、謹んでお受けさせていただきます」
ロランがジロリと睨むとトニーは慌てて訂正をした。
権力ある者に頼まれて拒否できる人間はそういない。ジェラリアほどの強靭な精神の持ち主なら可能かもしれないが、この場にそんな人間はいなかった。
「それではレオナルド、用意していた書類を持ってきてくれ」
「了解しました」
「お、俺も手伝います」
「ではよろしくお願いします」
レオナルドとトニーが離席をし、2人だけの空間になる。いたたまれない。それに自意識過剰かもしれないが、じっと見られているような気さえする。
ロランはどうしても気になっていたことを尋ねた。
「侯爵さま、ひとつだけ質問をしてもよろしいでしょうか」
「私が言える範囲のことならなんでも答えよう」
「ありがとうございます。疑問だったのですが、リエト辺境伯令嬢はなぜ拉致されてしまったのでしょうか。以前建国祭でご令嬢のことをお見かけしたのですが、優秀そうな騎士の方が何人もついておられました」
「ああ、それは」
ライオネルは何だそんなことかというように肩の力を抜いた。
「彼女はね、すごくわがままなんだよ」
「わがまま、ですか」
「そう。あれが嫌だこれが嫌だと駄々を捏ねたと思ったら、すっとどこかへ行って屋敷から逃げ出しているなんてことが日常茶飯事のようだ。今回もそれが原因だろう。全く、彼女の周りの人間は苦労するね。彼女も自分が絶好のカモにされたことを理解しているのかどうか」
「そうなんですね」
もっと深い理由があるのかと考えていたが、違かったようだ。ライオネルは話はもう終わったと用意されていた紅茶をすすっている。
もう少し彼女の話を聞きたかったロランはつまらなく思った。
なんてったて彼女はユーティスの恋人である。どんな人物なのか、気になって仕方がないのだ。
「ロランはそんなに彼女のことが気になったの?」
「い、いえ。ですが、荷台に乗せられている時に少しお話をさせていただいて、興味が湧いただけなのです」
「そうか。本気で気になっているのなら、私は君を止めただろうね」
「なぜですか」
「リエト辺境伯にはいい噂を聞かないからだ。君たちには今回の件で力を貸してもらうだろう? その過程で接触した時におかしなことに巻き込まれては困るからね」
「肝に銘じておきます」
「そうしてくれ」
知る限り常に彼女のそばにいるユーティスは大丈夫だろうか。彼の力があれば逃げ出すことは可能だろうが、それでも問題や事件に巻き込まれてしまっては心配だ。
「お待たせしました。こちらが用意した資料になります」
「ありがとう。全員で見れるようにテーブルに並べてくれ」
「はい」
戻ってきたレオナルドとトニーは両手で抱えるかたちで資料を持ってきた。
「随分と分厚いですね......」
「こんなものだよ。さ、話し合いを始めようか」
その後ロランとトニーは何時間も拘束され、事件の経緯について洗いざらい話すことになったのである。
『動きがあったら、また招集をかける』
太陽が沈んでから数時間後、ようやく解放された時にライオネルからそう言われた。
(あの人、優しそうに見えるのは外側だけだ)
げんなりとしながら、何度思ったかわからない。
あの若さで国内で名を馳せるブルーナ侯爵家を率いているのだ。貴族らしく大胆に道を切り開いていく姿は想像に容易い。
だが、あれは詐欺だ。相手を油断させて自分の望む方へと誘導していく。
今更ながら大変なことに巻き込まれている気がしてきた。
この世の中は騙されたほうが馬鹿を見るので、仕方がないことだと割り切る。
(何とかなる。いや、するしかない)
鼓舞しながら自分を励ます。この件にはトニーも関わっている。それがロランの心を保つ支えになっていた。
その数日後、再びライオネルから召集がかかった。そしてトニーと共に驚くべき計画を知らされて、腰を抜かしたのである。
「よく答えに辿りついたな。レオナルドが褒める理由がわかったよ」
「ライオネルさま、それは言わない約束では?」
「別にいいだろう。悪い意味じゃない」
反応を見るにライオネルとレオナルドは男達の真意に辿り着いていたらしい。
だがわざと知らないふりをしてロランに答えさせたのだ。
そこで我に返った。
「ロランさんすごいっすね。俺、感動しました」
「いや、そんなんじゃないよ。昔読んだ本にこういうシーンがあったなって思っただけで」
嘘だ。そんな本は読んだこともない。そもそも今世でまともに読書をした記憶さえないのだ。
芹沢伊吹だった時の記憶と勘が答えを導いた。
「そうだったとしても君はこの件で役に立つだろうね。協力してくれるかい?」
「......はい、もちろんです」
「トニーも」
「えっ俺も? あ、謹んでお受けさせていただきます」
ロランがジロリと睨むとトニーは慌てて訂正をした。
権力ある者に頼まれて拒否できる人間はそういない。ジェラリアほどの強靭な精神の持ち主なら可能かもしれないが、この場にそんな人間はいなかった。
「それではレオナルド、用意していた書類を持ってきてくれ」
「了解しました」
「お、俺も手伝います」
「ではよろしくお願いします」
レオナルドとトニーが離席をし、2人だけの空間になる。いたたまれない。それに自意識過剰かもしれないが、じっと見られているような気さえする。
ロランはどうしても気になっていたことを尋ねた。
「侯爵さま、ひとつだけ質問をしてもよろしいでしょうか」
「私が言える範囲のことならなんでも答えよう」
「ありがとうございます。疑問だったのですが、リエト辺境伯令嬢はなぜ拉致されてしまったのでしょうか。以前建国祭でご令嬢のことをお見かけしたのですが、優秀そうな騎士の方が何人もついておられました」
「ああ、それは」
ライオネルは何だそんなことかというように肩の力を抜いた。
「彼女はね、すごくわがままなんだよ」
「わがまま、ですか」
「そう。あれが嫌だこれが嫌だと駄々を捏ねたと思ったら、すっとどこかへ行って屋敷から逃げ出しているなんてことが日常茶飯事のようだ。今回もそれが原因だろう。全く、彼女の周りの人間は苦労するね。彼女も自分が絶好のカモにされたことを理解しているのかどうか」
「そうなんですね」
もっと深い理由があるのかと考えていたが、違かったようだ。ライオネルは話はもう終わったと用意されていた紅茶をすすっている。
もう少し彼女の話を聞きたかったロランはつまらなく思った。
なんてったて彼女はユーティスの恋人である。どんな人物なのか、気になって仕方がないのだ。
「ロランはそんなに彼女のことが気になったの?」
「い、いえ。ですが、荷台に乗せられている時に少しお話をさせていただいて、興味が湧いただけなのです」
「そうか。本気で気になっているのなら、私は君を止めただろうね」
「なぜですか」
「リエト辺境伯にはいい噂を聞かないからだ。君たちには今回の件で力を貸してもらうだろう? その過程で接触した時におかしなことに巻き込まれては困るからね」
「肝に銘じておきます」
「そうしてくれ」
知る限り常に彼女のそばにいるユーティスは大丈夫だろうか。彼の力があれば逃げ出すことは可能だろうが、それでも問題や事件に巻き込まれてしまっては心配だ。
「お待たせしました。こちらが用意した資料になります」
「ありがとう。全員で見れるようにテーブルに並べてくれ」
「はい」
戻ってきたレオナルドとトニーは両手で抱えるかたちで資料を持ってきた。
「随分と分厚いですね......」
「こんなものだよ。さ、話し合いを始めようか」
その後ロランとトニーは何時間も拘束され、事件の経緯について洗いざらい話すことになったのである。
『動きがあったら、また招集をかける』
太陽が沈んでから数時間後、ようやく解放された時にライオネルからそう言われた。
(あの人、優しそうに見えるのは外側だけだ)
げんなりとしながら、何度思ったかわからない。
あの若さで国内で名を馳せるブルーナ侯爵家を率いているのだ。貴族らしく大胆に道を切り開いていく姿は想像に容易い。
だが、あれは詐欺だ。相手を油断させて自分の望む方へと誘導していく。
今更ながら大変なことに巻き込まれている気がしてきた。
この世の中は騙されたほうが馬鹿を見るので、仕方がないことだと割り切る。
(何とかなる。いや、するしかない)
鼓舞しながら自分を励ます。この件にはトニーも関わっている。それがロランの心を保つ支えになっていた。
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