【番外編更新予定】酔いどれおじさんは、若き騎士に求愛される

泉あけの

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第2章 王都

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「デューラ卿、やはり私には不釣り合いですよ」
「いいえ、よくお似合いです」

 顔を青くしながら採寸されているロラン。一方でそれを眺めているレオナルド。事の経緯はライオネルに再び執務室に呼ばれたことから始まる。

 ライオネルの執務室に呼ばれてから数日後、再び召集がかけられた。
 
『君たち二人にやってもらいたいことができた。頼めるかい?』

 それは命令と同意である。はいと、トニーと共に返事をした。

『よかった。では二人にはで頑張ってもらうよ』

 そしてロランはレオナルドとトニーはライオネルと共に行動することになった。
 
 てっきり二人揃って今回の事件について動くことになると思っていたので驚いた。

 ロランが任されたのは、レオナルドとともに王宮の地下牢に収容されている男達に会いに行くことである。

 つまりは王宮に行かなくてはいけない。相応しい服など当然持っていないロランはこうして人形になっているのだ。
 
「はい、下を向かないでください。サイズがずれてしまいます」
「す、すみません」
「ロランさん頑張って」

 ロランは生まれて初めて採寸をし、オーダーメイドの服を作ってもらっている最中である。侯爵家御用達の仕立て屋による服など平民には縁がない代物だ。緊張する。

(あのシルクとかいくらするんだろう。考えただけでおかしくなりそうだ)
 
 お金の計算をしようとして、止めた。
 
 また、じっとしていることが苦手なロランにとってこの作業は苦行だった。今ばかりは、何もせずただ見ているだけのレオナルドが恨めしい。

「王宮に行くんですから、きちんとした服を仕立てないといけませんよ」
「が、頑張ってます」

 目が合うたびにこうして励まされるが、正直いらない。

「トニーくんもライオネルさまと頑張っているでしょうから、ロランさんも我慢してくださいね」
「痛いところをついてくるじゃないですか」

 二年以上の付き合いがあるからかレオナルドはロランの特性を理解しつつある。
 
 年下の人間が頑張っていたり、苦労していたりすると何かしてあげたいと思うのがロランのさがだ。
 
 だから、年下の人間の話を持ち出せばだいたい協力してくれる。

「これにて採寸は終了です。最優先で仕立てを行い、数日の間には納品させていただきます」
「よろしくお願いします」

 仕立て屋はテキパキと帰り支度を行い、侯爵家を後にした。
 
「はあはあ疲れた」
「お疲れ様です」

 数時間に及んだ採寸がようやく終わった。最近は怪我を治すことに注力していたロランの体力はすっかり落ちてしまったらしく、疲れが蓄積されていた。

「せっかく、治りかけている胸部の骨が悲鳴をあげています」
「それは大変だ。今日はゆっくり休んでください」
「それ、本当に思っていますか」
「思っています。疑心暗鬼にならないでください」

 疲れがピークに達しているロランに心の余裕はない。レオナルドの丁寧な対応でさえ疑ってしまうほどに。
 
 すると何やらもじもじした様子で二人のメイドがやってきた。ロランの同僚であり、採寸の際に手伝ってくれた二人である。

「あの、デューラ卿お時間よろしいですか?」
「はい。ロランさんがくたびれてしまって動けないというので、大丈夫ですよ。......睨まないでください」

 ロランのレオナルドのやり取りを見た二人は、ぽっと顔をあからめた。
 
「まっ、やっぱりかしら」
「そうね、きっと本当だわ」

 きゃっきゃと離している様子は実に楽しそうである。あなたが言って、いやあなたが言ってよと押し問答を繰り広げた結果、負けた側のメイドが意を決した表情で尋ねた。

「デューラ卿とロランさんは、あの、その、仲睦まじい関係なのですか?」

 仲睦まじい関係。仲睦まじい関係。そう聞こえた。レオナルドが珍しく顔を固まらせているのを見ると聞き間違いではないようだ。
 
 思い返してみれば、以前トニーからそんな噂が立っていると聞いていた。2人が並々ならぬ関係なんじゃないかと思っている層は一定数いたらしい。
 
 内心ありえないだろうと悪態をつきつつ、反論する元気はロランの中に残っていなかった。

「んー、そうですね。どうしてそんな風にお考えになったんです?」
「それは、デューラ卿がよくロランさんに話しかけているのを見かけたり、仲よさそうに話している場面に遭遇したりしているからですね」

 よく話しかけられているのは、医療実験による体への悪影響が出ていないかや、馬車に跳ねられた時の後遺症が悪化していないかなど何かと確認してくれているからだ。
 
 仲よさそうに話していると言っていたが、世間話くらいは誰でもするだろう。むしろ誰が見ているかもわからない屋敷の中で、剣幕な表情で話している方がおかしいというものだ。

「ああ、なるほど」

 いや、否定してくれ。ロランは心の声が飛び出ていきそうになるのを必死で抑えた。

「皆さんは私に肯定してほしいのだと思いますが、違いますね」
「本当ですか? まだ、その関係になっていないとかですか」
「いいえ違います」
「特別な感情は持ち合わせていないと?」
「はい。全くありません。それに私には長年の想い人がいますから」
「え! どんな方なんですか。私たちも知っているご令嬢ですか?」
「秘密です。今日はこれくらいにしてください。ロランさんが倒れてしまいそうです」

 レオナルドは困ったと眉尻を下げた。
 
 瀕死状態のロランを見たメイド二人は、我に返ったようで失礼いたしましたと、部屋の片付けをして撤退していった。

「大丈夫ですか、ロランさん」
「......デューラ卿、ああいうことを聞かれたら真っ先に否定してください。私の心臓が持ちません」
「これは失礼しました。面白い話題なものでつい、乗ってしまいました」
「今後はやめていただけるとありがたいです」
「覚えておきますね」

 もはやロランは何も言うことができなかった。
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