【番外編更新予定】酔いどれおじさんは、若き騎士に求愛される

泉あけの

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第3章 再び、辺境領へ

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 辺境領へは数十日かけて移動をした。
 
 道中は犯行が行われるであろう場所の炙り出しや、それぞれの役割を確認した。

 ロランも僅かではあるが役目がある。とはいえ、大したことはできないのでただの同行者という立ち位置だ。

「そろそろ辺境領に入る。準備をしろ」

 モリスは旨の手綱を握りながら、馬車の後ろに乗っている面々に声をかけた。

「わかりました。そろそろぎょするのを交代しましょうか」
「いや、いい。それにあんたの見た目は、貴族っぽすぎる。辺境領に入る時の検問で引っかったら意味ねえだろ」
「そうですね。それではもうしばらくお願いします」
 
 王都から辺境領への移動は馬車で行い、その間はレオナルドとモリスが交代で馬車を進めた。
 
 商人であるモリスが御することができるのは納得だが、レオナルドができるという事実はロランたちを驚かせた。つくづくハイスペックな人物である。
 
 その後、モリスの助言も相まって馬車は難なく、検問を突破した。

「それではここで二手に分かれます。私は協力者の方と待ち合わせをして後で合流します。他の皆さんは先に目的地へ向かっておいてください」
「わかりました」
「いいけどよ、あんたもずいぶん余裕だな。俺たちは一応罪人だぞ。そんな連中と雇っている使用人を組ませるなんて、肝が据わっている」
「そこは信頼ですよ。危害を加えないと、ブルーナ侯爵が判断したまでです。もし、ロランさんに危害が加えられた場合の対策ならすでにほどこしてありますから。ご安心を」
「はっさすが抜け目がない」

 モリスはレオナルドに対して挑発的な態度を取ることがある。その様子をロランはひやひやしながら見てるが、幸いトラブルには至っていない。
 
 冬の辺境領は冷える。システリア王国の西側に位置しているとはいえ、王都より標高が高いからだ。
 
 そのため、空気は冷たく、地面には雪が降り積もっていた。吐く息が白く染まる。

「それではまた後で」

 新雪に足跡を残しながら、ロランたちは歩みを進めた。
 
 ロランにとっては約2年ぶりの辺境領だ。懐かしさを感じるかと思ったがそうでもなかった。
 
 おそらく、彼にとって怒涛の日々だったからだろう。

「おい、そこ気をつけろよ凍っている」
「わかった。ありがとう」
「......」
「......」

 気まずい空気が流れる。ロランはいまだにモリスとの距離感を測りかねていた。
 
 拉致される形で出会い、王宮の面会室で再会をした。

(俺、一応なぐられたわけだし......でも面会の時ははったりを使ってしまったし......)

 ともかく居心地が悪い。加えて共に辺境領にやってきたモリスの仲間たちはリーダーであるモリスを立てているのか、必要最低限のことしか話さない。

「なあ」
「なんだ」
「もう傷は痛くねえのか」
「は」

 悶々としていると思いがけない言葉を聞いた。
 
 モリスが気遣いを見せたのだ。

「俺が心配しちゃいけねえのかよ」
「いや、そういうことではないが、できるんだなとは思った」
「失礼なやつだ。貴族の懐に入っちまえば人様の心配もまともに受け止められなくなるのか?」
「そういうわけじゃない」

 少し先を歩くモリスの耳が赤く染まっていた。それは寒いからだけではないだろう。
 
 きっと彼は恐ろしく不器用なのだ。
 
「傷はもう治っているから、大丈夫だ」
「そうか」

 ぶっきらぼうに言って、モリスは足を早めた。

......

 同刻。
 
 システリア王国王都、舞踏会にて。

「ブルーナ侯爵がいらっしゃったわ。今日も麗しいわね」
「そうね。王都にいる貴族たちを牽引している方ですもの」
「本日はレオナルドさまはいらっしゃらないのかしら。金獅子のようなあの金髪を今日こそ拝見したいのよ」
「わたくしはまだ見ていないわ。遅れて到着されるのかしら」

 職人が技術の限りを尽くしたドレスを身に纏ったご令嬢たちは、会話に花を咲かせていた。楽しそうなその様子はまるで美しくさえずる小鳥のようである。
 
 一方でライオネルは、挨拶にやってくる貴族たちと言葉を交わしながら静かにその時を待っていた。

「リエト辺境伯とご令嬢のお越しです!」

 紋章官もんしょうかんが名前を呼ぶと、貴族たちの視線が一気に集められる。
 
 その視線を一身に浴びながらリエト辺境伯は入場した。その横には不満げな表情をした令嬢がいる。

「やあやあ、皆さんこんばんは。今夜の舞踏会も素晴らしいですね」

 まるで今夜の主役かのような辺境伯の振る舞いにライオネルは頬を引きつらせそうになった。
 
 本日の舞踏会の主役は国王である。建国祭が無事に終わり、今後の国の発展を願うためのものだ。

 にも関わらず、なぜそのように振る舞うのか理解できなかった。そうしているうちに辺境伯がライオネルの元にやってきた。

「おや、ブルーナ侯爵ではないか。いつもの付き人はいないのかね」
「ご機嫌麗しく、閣下。あいにく彼は出払っております」

 ライオネルが形式的な礼をすると、辺境伯はわざとらしく眉を下げた。
 
「残念だ。先日うちの娘が世話になったようでね。一言、礼を言いたかったのだ」
「お気遣いに感謝します。そのお言葉を聞けば、彼は大変喜ぶでしょう」
「ははっそうか、君は口がうまい。今夜はお互い楽しむとしようか」

 リエト辺境伯はライオネルの肩を軽く叩いて、上機嫌にその場を後にした。
 その隣にはリエト辺境伯令嬢がいる。
 
「ねえ、お父様。本当にユーティスはここに来ないの?」
「彼は今日、騎士団の仕事があるからくることができないと言っていただろう?」
「えーでも、わたくし彼がいないと不安だわ」

 辺境伯と腕を組みながら令嬢は心のうちを話した。
 
「この父がついているから安心しなさい。それに彼は平民だろう? 執着心を見せればそこにつけ込まれてしまう。気をつけなさい」
「それは大丈夫よ。彼はわたくしの装飾品アクセサリーだもの」

 悪びれることなく、彼女は言った。
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