【番外編更新予定】酔いどれおじさんは、若き騎士に求愛される

泉あけの

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第3章 再び、辺境領へ

42* 微R18

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「俺は本気で言ってる」
「わかってますよ。だから嬉しいんです」

 だんだんと口付けが深くなっていく、頬に触れるユーティスの手のひらが熱い。
 
 熱いのに気持ちよくて蕩けてしまいそうになる。
 
 ロランはユーティスの肩に腕を回して夢中になった。

「......今日はここまでにしましょうか」
「どうして?」
「だって、ロランは移動で疲れているでしょう? それにお酒も飲んでいますし」
「平気だ。体力はまだ残っているから」
「でも、心配です」

 本当にロランの身を案じてくれているのが表情だけでも伝わってくる。

(気持ちは嬉しいけど、もう、我慢できない)

 どれだけこの時を待ち望んでいただろうか。
 
 恋心を捨てなければいけないと頭ではわかっていた。だができなかった。
 
 恋焦がれているこの気持ちをどうして無視することができるだろう。

「いい。俺はユーティスをもっと側に感じたい」
「じゃあ、無理な時はちゃんと言うって約束してくれますか?」
「約束する」

 腰の下に腕を入れてそのまま抱き抱えられる。ロランはユーティスの首に腕を回した。

「前もこんなことがありましたね」
「2人で庭を見た時のことか?」
「はい。あの時は体が信じられないくらい軽くて心配になりましたけど。そっかよかった」
「重くなって悪かったな」
「愛する人の体積が増えて嬉しいです」

 悪びれなく言うユーティスの反応を見たロランはほんの少しむっとした。
 
 でも本当に彼が嬉しそうにしているから、許してしまうのだ。

 ユーティスの部屋に到着をしてそっとベッドに置かれる。また唇を重ねた。

「嫌じゃないですか」
「大丈夫だ。それより早く」
「待ってください、焦らないで」

 焦ったい。これから愛しい人に抱かれるとわかっている体は火照ほてっていた。
 
 それなのにユーティスはキスをするだけで服すら脱がそうとしない。
 
 どうしようもなくなったロランは自ら服を脱ぎ始めた。

「ロラン?」
「俺は堪え性がないんだ」
「だからって早急ですよ」
「そんなわけあるものか」

 早く抱かれたいと思って何が悪いのだ。

(いや、待てよ。もしかして俺の体が、嫌とか?)

 事故の時にできた傷跡や歳を重ねて衰えてきている体は決して綺麗とは言えない。
 
 ユーティスは気遣いのできる男だから、口にしていないだけかもしれない。

「もしかして、俺の体嫌?」

 こう言う時に口火を切るのは年上の役目だ。そのくらいの常識はロランにだってある。

「もし嫌だったら、布で隠してもいいから」

 そうしてまで抱かれたい。精一杯の告白だ。

「ち、違いますよ! そんなこと思うはずがない。あなたの体は世界中の誰よりも美しいです」
「それは、多分言い過ぎだと思う」
「そんなことありません。ただ、この部屋はロランにとっていい思い出がない場所でしょうから、少しでも優しくしようと思ったんです。好きな人を泣かせたい人間なんていないでしょう?」
「あ......」

 ロランが泣いたのはこの穏やかな暮らしがもう二度と戻らないことを惜しんだ夜のこと。


 ユーティスはずっとそのことを気にしていたのだ。
 
 この家を出ていくとロランが言うとユーティスは最後に抱かれてほしいと頼んだ。
 
『......止めましょう』
『どうして? 俺は全然平気だ』
『俺が平気じゃないんです』

 彼はロランが泣いた理由を知らない。この反応からだとおそらく、ユーティスを怖がって泣いているのだと思っていたのだろう。
 
『俺は好きな相手が泣いている時にまぐわうような人間ではありません』

 そして寂しげに一言を言い残して、ユーティスは部屋を出て行った。
 
 それを思い出したロランは慌てて訂正した。

「違うんだユーティス。あの時俺が泣いたのは、寂しかったからで」
「寂しかった?」
「うん。この生活がもう終わってしまうんだなと思ったら何だか寂しくなったんだ」
「......マジですか」

 自分勝手なことを言っている自覚は大いにある。ユーティスの気持ちを振り回している自覚もだ。

「だから、傷つけないようにとか考えなくていい。俺はユーティスと抱き合えればそれでいいんだ」
「そんなふうに思っていたんですね、知らなかった。でも、優しくはさせてほしいです」

 ユーティスは頭の後ろに手を置いて逃さないと言うように深く口付けをした。
 
 先ほどまでの遠慮のようなものは感じられない。ただ、相手の熱を欲している。

 舌を絡ませあって歯列をなぞる。唾液がどちらものかわからなくなるくらいに混ざり合った。

「気持ちいい」
「お気に召していただいたようで何よりです」

 勢いに任せていたため忘れていたが、他人と口付けを交わすのは久しぶりだ。入り込んでくるものが新鮮で、欲に溺れそうになる。

「ユーティス」

 目を開けると綺麗な瞳に愛おしげに見つめられている。
 
 ああ、今までも彼はこんな目でロランを見てくれていたのだろうか。
 
 後遺症で視力が落ちていた時にはわからなかった。あの時の分まで堪能したい。
 
 幸せな気分でユーティスに微笑んだ。
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