【番外編更新予定】酔いどれおじさんは、若き騎士に求愛される

泉あけの

文字の大きさ
44 / 48
第3章 再び、辺境領へ

41

しおりを挟む
 その後ロランたちは以前2人で住んでいたユーティスの家に向かった。
 
 レオナルドの好意に甘えさせてもらった結果である。
 
 ユーティスが連絡を入れたところ、リエト辺境伯家の使者をモリスたちが詰めている最中だそうで、来ても意味がないことを伝えられた。

「この家に来るのも久しぶりだな」
「そうですね。あれから約3年ですか」
「長かったような、短かったような不思議な気分だ」
「俺にとってはすごく長い期間でしたけどね。その点は兄上に感謝です」

 ライオネルとユーティスは兄弟である。以前ユーティスから、貴族の出ではあるが家族とは縁を切っていると聞いていた。
 
 だが、まさかブルーナ伯爵家出身だとは思っていなかった。
 
 兄弟仲は良かったので貴族の籍を抜けてからも連絡を取り合っていたのだという。

「もしかして、ユーティスは最後に会った日、俺が王都のブルーナ伯爵家に行くって知ってたのか」
「いや、知りませんでした。兄上も人が悪いですよね。知ったのは随分後です。一年前、俺がリエト辺境伯と共に王都へ向かうと報告をした時に教えてきたんです」

 ユーティスはロランとのことをライオネルには話していたらしい。
 
 表向きはリエト辺境伯の推薦で魔法騎士となったユーティスは、ブルーナ侯爵家と関係があると知られてはならなかった。
 
 政治において対となる立場の両家と関わりがあるとなれば、不都合だからだ。

「まあ、仕方がないか。ユーティスはご令嬢からめちゃくちゃ気に入られていたからな」
「ただ見た目が彼女の好みだっただけですよ」
「でも、あの子のことを優先していたじゃないか。俺のことを知らんぷりしたし」

 本当に不満なわけではない。ユーティスとブルーナ侯爵家の関係がばれてしまい、リエト辺境伯家に潜入調査をするために潜り込んだと勘づかれれば全てが台無しだ。

 そんなことわかっているが、気にはしてしまう。
 
「そんなにぷりぷり怒らないでくださいよ、キスしたくなります」

 ぷくっと膨れたロランの頬をユーティスがつついた。
 
「俺は本気だ」
「えー、拗ねてるもの可愛いですよ」
「ユーティスは会わないうちに意地悪になってる」

 リビングにある上質なソファに座りながらロランが言うと、ユーティスは悲しそうに眉を下げた。

「ごめんなさい。ロランを悲しませるのが一番嫌だったんですが。やっぱり俺はあなたに相応しくないのかもしれません」
「そ、そこまでは言ってない。ただ、ちょっと気にしてただけだ」
「そうなんですか? でも傷つけたことに変わりはありませんね」
「あー、もう! そんなに気にしてる素振りをするなら、態度で示してみろよ」

 ロランはばっと両腕を広げた。

「なんですか、それは」
「ハグだよ、ハグ! してくれたら許してやる」

 恥ずかしいことをしている自覚はある。いい歳をしたおっさんがやることではない。
 
「それで許してくれるんですか?」
「おう」
「じゃあ、ハグしないとですね」

 ユーティスは隣に座っていたロランを抱きしめた。

「嬉しいな、こうしてロランが求めてきてくれるなんて」
「我慢してしないほうが後悔するって気がついたんだよ」
「もしかして、今まで後悔したことがあった?」
「そうだよ」

 ユーティスが自分以外の人のそばにいて、その人を優先している場面を見た時、心底後悔した。

 ああすれば、良かったと過去を悔やむのは終わりにするのだ。

 それを聞いたユーティスはすりっと頬を寄せた。

「あー嬉しい。最高のご褒美です」
「本当に?」
「本当です。本当に、夢みたいだ」

 蕩けるような声で噛み締めながらユーティスが言う。
 
 その気持ちはロランも同じだった。

「俺もそう思う」
「お揃いですね」
「だな」

 目があって笑い合う。
 
 誰がこんな未来を想像していただろうか。

 そっと目を閉じてキスをする。今まで何人もの恋人としてきたが、訳が違かった。
 まるで初めてするかのように敏感になってわずかな快感も拾ってしまう。
 舌を絡ませあって夢中になった。だんだんと息が早くなって、吐息が混ざり合っていく。

「俺酒臭くない?」
「初めての時よりは全然です」
「ふうん」
「というか、言いたかったんですけど。俺、お酒は控えてくださいってロランに言いましたよね」
「確かに言った。でも、ユーティスも悪いんだ」
「俺が?」
「ユーティスが俺以外の人を大事にしてるって思って。それが嫌で、嫉妬して、気持ちを誤魔化すために酒を飲んでた」
「ほ、本当ですか」
「こんな恥ずかしいこと、嘘ついてまで言う訳ないだろ」

 本音がポロポロと出てくるのは酔いが回ってきているのも原因のうちの1つだったようだ。
 
 ユーティスは嬉しそうに頬を緩ませている。

「嬉しいような寂しいような不思議な気分です」
「俺は本気だ」
「わかりました。でも今後はやめてくださいね」
「うん。言い訳がましいけど、途中まではちゃんと守れていたんだ」
「でも悲しくなってお酒飲んじゃったの?」

 まるで子どもを宥めるかのような口調で話す。だが、悪い気はしなかった。

 こくりと頷いて肯定すると両手で顔を包まれて口付けをされた。

「たまんないな。俺はあなたのことが好きすぎる」

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

嫌われ将軍(おっさん)ですがなぜか年下の美形騎士が離してくれない

天岸 あおい
BL
第12回BL大賞・奨励賞を受賞しました(旧タイトル『嫌われ将軍、実は傾国の愛されおっさんでした』)。そして12月に新タイトルで書籍が発売されます。 「ガイ・デオタード将軍、そなたに邪竜討伐の任を与える。我が命を果たすまで、この国に戻ることは許さぬ」 ――新王から事実上の追放を受けたガイ。 副官を始め、部下たちも冷ややかな態度。 ずっと感じていたが、自分は嫌われていたのだと悟りながらガイは王命を受け、邪竜討伐の旅に出る。 その際、一人の若き青年エリクがガイのお供を申し出る。 兵を辞めてまで英雄を手伝いたいというエリクに野心があるように感じつつ、ガイはエリクを連れて旅立つ。 エリクの野心も、新王の冷遇も、部下たちの冷ややかさも、すべてはガイへの愛だと知らずに―― 筋肉おっさん受け好きに捧げる、実は愛されおっさん冒険譚。 ※12/1ごろから書籍化記念の番外編を連載予定。二人と一匹のハイテンションラブな後日談です。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

転生して王子になったボクは、王様になるまでノラリクラリと生きるはずだった

angel
BL
つまらないことで死んでしまったボクを不憫に思った神様が1つのゲームを持ちかけてきた。 『転生先で王様になれたら元の体に戻してあげる』と。 生まれ変わったボクは美貌の第一王子で兄弟もなく、将来王様になることが約束されていた。 「イージーゲームすぎね?」とは思ったが、この好条件をありがたく受け止め 現世に戻れるまでノラリクラリと王子様生活を楽しむはずだった…。 完結しました。

魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの二人は、スキルを得た事で魔王討伐に旅立つ勇者と彼の帰還を待つだけのただの親友となる。 勇者と親友の無自覚両片想いのじれったい恋愛の物語。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

断罪回避のために親友と仮婚約したはずが、想像以上に執着されていた。

鷲井戸リミカ
BL
ある日アーサーは、自分がネット小説の世界に転生していることに気が付いた。前世の記憶によれば親友のフェルディナンドは、悪役令息という役割らしい。最終的に婚約者から婚約破棄され、断罪後は国外追放されてしまうのだとか。 大事な親友が不幸になるのを見過ごすわけにはいかない。とにかく物語の主人公たちから距離をとらせようと、アーサーはフェルディナンドを自分の婚約者にしてしまった。 とりあえず仮婚約という形にしておいて、学園を卒業したら婚約を解消してしまえばいい。そう考えていたはずがアーサーのとある発言をきっかけに、フェルディナンドの執着が明らかになり……。 ハッピーエンドです。

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

処理中です...