上 下
75 / 88
第2章 冒険記

Chapter53 エレンディースの過去【後編】

しおりを挟む
――エレンディースは事件の真相を知っていた。
グオーリアの噂も何もかも独自に調べて。

《これは同じ年》

「嘘だ!」
エレンディースは言い報告書を机に叩きつける。

「では父は…私は何のため…これでは皇子の事も全てが違う!」
エレンディースは怒りに震える。

「全てが真実。そして現在が虚像しかない」
灰色の髪の大男が言う。

「ドメル将軍…」
エレンディースは彼の方を見る。

「アレシアに復讐したいのか?」
ドメルは冷静に言う。

「当然だ!誰も罰さないのであれば私が!」
「やめろ」
ドメルはエレンディースのしようとする事を止める。

「⁈ 何故?奴がグオーリアを乗っ取るのを指をくわえて見てろとでも?」
エレンディースは言い目を見開く。

「違う」
ドメルは言う。

「では…どうしろと!」
エレンディースはドメルの言葉に混乱する。

「奴は…と通じている。それを利用しろ。やるのであれば、お主が黒水晶ディラクトの主となればいい」
ドメルは言う。

「!…しかし私では…」
エレンディースは困惑する。

「陛下に進言しんげんしてやる。戦まで待てば」

ドメルが言っている所で場面が変わる。

寝室に上半身裸で書類を読んでいるジークリフトとそこで脱いで裸になるエレンディースがいる。

「陛下!お願いがございます!どうか私めにディラクトを任せて頂けませんか?」
エレンディースは言い色っぽい座り方をする。

「任せる?」
ジークリフトは静かに言う。

「何卒!」
エレンディースは言う。

「それで?また何かやって暴れながら抱かれて忠誠を誓う真似をするのか?下らん!」
ジークリフトは真顔で言う。

「いえ。任せて頂けるのであれば何でもします!もう無駄な抵抗もしません。だからどうか…」
エレンディースは真剣に言う。

《命令でも、強制でも無く自ら主となったのか》
アークトゥルスが呟く。

「それをどう証明する?」
「それは」
エレンディースはジークリフトのズボンのチャックに手をかける。

《うわっ駄目ぇ―!》
ルディースは言い焦る。
(前世は親子なんだから―!)

《ディラクトは闇の力。ラフリィだから闇に身を染めて信頼を得る必要があった…と》
ヴェルニクスは言う。

ジークリフトはエレンディースを叩いて吹っ飛ばす。

ルディースは胸を撫で下ろす。

「ディラクトのあるじは今私だが、それ程言うなら」
ジークリフトは言い手から黒水晶を出す。

「今なるか?」
ジークリフトは言いエレンディースの目の前に黒水晶を見せる。

(ディラクト!)
ルディースは行こうとするがアークトゥルスに止められる。

「ひっ!」
エレンディースは怖気づく。

「どうした?任せて欲しいのだろう?」
ジークリフトは言う。

「ほら…あるじの契約は切ったぞ」
ジークリフトは言いニヤリと笑う。

「あ…あ」
エレンディースは震える。

「…け……血の契約…をっ」
エレンディースは震えながらも言う。

『承知した』
ディラクトはそう言いエレンディースの胸の中にスゥと入る。

「うわっ!やっ!ぐああああ!」
エレンディースは苦しみ悶える。

(私の馬鹿。これは望んだなのに…邪魔しては駄目だろう)
ルディースは苦悩する。

「ドメル抑えていろ」
「はっ!」
ドメルは苦しむエレンディースを押える。

《本来…契約は本人の強い意志で成される。あの場合性格エクセプトが異なる為、常人では耐えられぬ》
アギール大魔導士は説明をする。

《余程の意志がなければ発狂か廃人…》
ヴェルニクスが言う。

《そして2年後…》
アギール大魔導士は言い場面が変わる。

大気の矢イヒュル・アロー!』
エレンディースは山奥で巨大芋虫キャリオン・クロウラー普通ルード特有の自然魔法を唱える。

《もう二度とラフリィには戻れない。それどころか過剰なラフリィカオスの行為は自分では行えない》
アギール大魔導士は言う。

《それをおこなえば…》
アギール大魔導士は言うと同時にエレンディースはラフリィの自然魔法を唱えようとする。

「あぅ!」
エレンディースは激痛で倒れキャリオン・クロウラーの触手に身体が巻かれる。

「そりゃなのにを使えば痛いだろうに。習慣は怖いねぇ」
争い、不和のエギラドラゴンのキーツガルドは笑いながら言う。

「キーツガルド様」
エレンディースは藻掻きながら言う。

「そのままでは喰われるぞ。助けて欲しいか?」
キーツガルドは言いエレンディースの近くまでくる。

「結構です!」
エレンディースは断る。

「そうか…ではな」
キーツガルドはエレンディースを助けもせず行ってしまう。

《これだから邪悪カオスは…》
セオドアは言う。

焦げ茶の髪で紫色の目をした男がやって来て大剣でキャリオン・クロウラーの触手を斬る。

「エステリス…」
エレンディースは言い触手から逃れる。

「大丈夫ですか?エレンディース様」
エステリスはエレンディースを心配する。

「私はいい!早くカシムを」
エレンディースは倒れてるカシムという男の所に走る。

「そのキャリオン・クロウラーは倒さない方がいい」
長い金髪の髪の綺麗な男が来る。

(シルフィー!前世ではエレンの世話係だった…確か今はシルフィードと呼ばれてて私が10歳の頃2年間勉強と体術を教えてくれた先生!)
ルディースは目を輝かす。

「見せられるのはここまでだよ」
アギール大魔導士の声で皆一斉に目が覚める。

「大丈夫か?皆」
ヴェルニクスは皆を気遣う。

「大丈夫です!ありがとうございます」
セナンディアスは微笑みながら言う。

皆は立て直して跪きアギール大魔導士とニーナ大司祭を見る。

「もう一つ質問して宜しいでしょうか?ニーナ大司祭」
アークトゥルスは言う。

「何なりとどうぞ」
ニーナ大司祭は微笑みながら言う。

「セーラ・カイラムはどういう方で今は何処に住んでおられるのでしょう」
アークトゥルスは聞く。

「セーラはとても聡明な子ですよ。今なら北の大木にいるでしょう」
ニーナ大司祭は言いにっこり笑う。

「グオーリアとニジェルでは良く頑張りました。援助は送ったので安心しなさい」
続けてニーナ大司祭は言う。

「ありがとうございます!」
皆は礼を言い手を組む。

「それでは失礼します」
皆は謁見の間を後にする。

「やぁルディース先生」「久し振りだな」
外でギルディとメルキセデクが居た。

「ギルディ先生にメルキセデク長老!」
ルディースは駆け寄って行く。

「メルキセデク長老!お久し振りです!」
アリムレスは言いエクトゥルスを握り挨拶をする。

「同士アリムレス!久し振りだな。活躍ぶりは聞いているぞ」
メルキセデクは微笑んで言う。

「ありがとうございます!」
アリムレスは言いメルキセデクを見る。

「ルディース先生を借りるけどいいかな?」
ギルディは皆に聞く。

「ルディースがいいと言うなら…」
アークトゥルスは少し警戒しながら言う。

「君かな?アークトゥルスとは」
メルキセデクは聞く。

「そうですが。何か?」
アークトゥルスは言う。

「うむ…君も来てもらおうか。ルディースだけでは帰りに迷子になるかもしれないからな」
メルキセデクは言う。

「は、はい」
アークトゥルスは少しホッとした顔をする。

「皆は先にカフェに行って待ってて」
ルディースは笑いながら言う。

「分かった。先に食事してるぞ」
ヴェルニクスは言う。

「うん、分かった」
ルディースは微笑んで言う。

アークトゥルスとルディースを残し皆はカフェに向かった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

全てを諦めた公爵令息の開き直り

key
BL / 連載中 24h.ポイント:326pt お気に入り:1,519

コーヒー挽きのテディ 第1巻

児童書・童話 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

真冬のカランコエ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:33

RISING 〜夜明けの唄〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:235pt お気に入り:16

まおうさまは勇者が怖くて仕方がない

BL / 連載中 24h.ポイント:78pt お気に入り:271

『僕の家』(ホラー)

ホラー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

聖女の姉ですが、宰相閣下は無能な妹より私がお好きなようですよ?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:31,426pt お気に入り:11,546

処理中です...