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千尋が、ショーツのなかに手をいれる。
いきなりのことに驚いて「やめて」と言いそうになった。
でも「やめて」と言ったら 千尋がすごく落ち込む気がして、飲み込んだ。
一緒に過ごすなかで気づいたのは、彼女がとても繊細だということ。
街中で、通りすがりの人と肩がぶつかったとき。
舌打ちをされたことに酷く傷ついて、彼女は目を潤ませていた。
レストランでメニューを選べないことや、頻繁に私が「好き」と言わないと 泣きそうになることもある。
外見とは裏腹に、彼女はとても 女の子らしかった。
男の人でも、似たような性格の人はいるのかもしれない。
でも、私のイメージでは かっこいい女性は 凛々しくあってほしいという願望があった。
千尋には" 女の子らしい "というよりも" 可愛らしい "という言葉が似合ってるのかもしれない。
「守らなきゃ」と思うような、可愛らしさ。
千尋の指は、私の中に 容赦なく入ってきた。
「……ッ!」
痛みが全身を駆け巡る。
痛みを我慢した吐息の音は、千尋には" あえぎ声 "と判断された。
指を抜き差しする。
そのたびに痛みを感じる。
(世の中の女の人たちは、これを気持ちいいって思うの?)
早く終われと願う私には、もはや拷問のようにしか思えなくなっていた。
(胸は気持ちよかったのに……)
涙が流れていく。
私にとっては、すごく長い時間に感じた。
我慢できなくなって、彼女の手に触れる。
「イけない……かも……」
どうしたら彼女を傷つけずにすむのか。
どう言ったら彼女が納得できるのか。
私にはわからなかった。
「ごめん、気持ちよくない?」
眉を八の字にして、怯えたような表情をする。
「いや、そういうわけじゃないんだけど……」
彼女は何かを祈るように、続きを待った。
「私、あんまりイけない体質なんだよね」
嘘を言ってるつもりはなかった。
実際、指を入れられたのは初めてで わからなかったから。
「そうなんだ……」
彼女は少し考えてから、私の目をじっと見た。
「慣れたら、イけるようになるかも」
名案と言いたげに、顔を輝かせる。
「そう、かな?」
苦笑いするしか、できなかった。
千尋は何度も、激しく指を入れた。
多少やわらいだけど、ジンジンする痛みは続いた。
しばらくして、手が疲れたのか イきそうにない私を諦めたのか「今日はこのくらいにしとこうか」と言った。
私は、彼女の寝息が静かに聞こえてきて 初めてホッと息をついた。
千尋の家に行くことは、多くなかった。
ある日の夜、彼女は子供のように泣いた。
テレビのお笑い番組を一緒に見ていたはずだったのに、私だけが笑ってることに気づいた時だった。
「実結は俺と一緒にいても楽しくないよね」
「え?そんなことないよ?」
「俺は自分に自信もないしさ、実結のこと幸せにできてないと思う」
「私、幸せだよ。この間、動物園で写真撮りあいっこしたのだって、すごく楽しかったもん。千尋は楽しくなかった?」
「俺は、楽しかったよ」
彼女は目の下を何度もこすり、流れ落ちそうになる涙を拭った。
「私も楽しかったよ。私にカメラ教えてくれたの、千尋じゃん」
拭いきれなくなって、彼女の頬を雫が伝う。
「ずっと趣味がなかったから、最近毎日楽しいよ」
「でも、俺は話下手だし 実結を笑わせてあげられてない気がする」
「笑ってるよ、幸せだよ」
それから彼女は、ことあるごとに泣くようになった。
家に呼ばれる回数も増えて、だんだんと 私に触れる手が 乱暴になった。
なにかに必死にすがるように。
その年の秋。
紅葉が街を彩る季節に、私は耐えられなくなって 別れを告げた。
*
「写真サークルに入ったら?」
疲れきっていた私に、友人が言った。
千尋のことを嫌いになったわけじゃなかった。
だから、写真を撮るのだって" 嫌な思い出 "にはなってない。
ただ、ひとりで どこかに写真を撮りに行くのも気が引けて、また無趣味状態に戻っていた。
鬱々とした気持ちを抱えながら(いまさら入ってもなあ……)と思いつつ、なんだかんだ 迷っている私がいた。
いきなりのことに驚いて「やめて」と言いそうになった。
でも「やめて」と言ったら 千尋がすごく落ち込む気がして、飲み込んだ。
一緒に過ごすなかで気づいたのは、彼女がとても繊細だということ。
街中で、通りすがりの人と肩がぶつかったとき。
舌打ちをされたことに酷く傷ついて、彼女は目を潤ませていた。
レストランでメニューを選べないことや、頻繁に私が「好き」と言わないと 泣きそうになることもある。
外見とは裏腹に、彼女はとても 女の子らしかった。
男の人でも、似たような性格の人はいるのかもしれない。
でも、私のイメージでは かっこいい女性は 凛々しくあってほしいという願望があった。
千尋には" 女の子らしい "というよりも" 可愛らしい "という言葉が似合ってるのかもしれない。
「守らなきゃ」と思うような、可愛らしさ。
千尋の指は、私の中に 容赦なく入ってきた。
「……ッ!」
痛みが全身を駆け巡る。
痛みを我慢した吐息の音は、千尋には" あえぎ声 "と判断された。
指を抜き差しする。
そのたびに痛みを感じる。
(世の中の女の人たちは、これを気持ちいいって思うの?)
早く終われと願う私には、もはや拷問のようにしか思えなくなっていた。
(胸は気持ちよかったのに……)
涙が流れていく。
私にとっては、すごく長い時間に感じた。
我慢できなくなって、彼女の手に触れる。
「イけない……かも……」
どうしたら彼女を傷つけずにすむのか。
どう言ったら彼女が納得できるのか。
私にはわからなかった。
「ごめん、気持ちよくない?」
眉を八の字にして、怯えたような表情をする。
「いや、そういうわけじゃないんだけど……」
彼女は何かを祈るように、続きを待った。
「私、あんまりイけない体質なんだよね」
嘘を言ってるつもりはなかった。
実際、指を入れられたのは初めてで わからなかったから。
「そうなんだ……」
彼女は少し考えてから、私の目をじっと見た。
「慣れたら、イけるようになるかも」
名案と言いたげに、顔を輝かせる。
「そう、かな?」
苦笑いするしか、できなかった。
千尋は何度も、激しく指を入れた。
多少やわらいだけど、ジンジンする痛みは続いた。
しばらくして、手が疲れたのか イきそうにない私を諦めたのか「今日はこのくらいにしとこうか」と言った。
私は、彼女の寝息が静かに聞こえてきて 初めてホッと息をついた。
千尋の家に行くことは、多くなかった。
ある日の夜、彼女は子供のように泣いた。
テレビのお笑い番組を一緒に見ていたはずだったのに、私だけが笑ってることに気づいた時だった。
「実結は俺と一緒にいても楽しくないよね」
「え?そんなことないよ?」
「俺は自分に自信もないしさ、実結のこと幸せにできてないと思う」
「私、幸せだよ。この間、動物園で写真撮りあいっこしたのだって、すごく楽しかったもん。千尋は楽しくなかった?」
「俺は、楽しかったよ」
彼女は目の下を何度もこすり、流れ落ちそうになる涙を拭った。
「私も楽しかったよ。私にカメラ教えてくれたの、千尋じゃん」
拭いきれなくなって、彼女の頬を雫が伝う。
「ずっと趣味がなかったから、最近毎日楽しいよ」
「でも、俺は話下手だし 実結を笑わせてあげられてない気がする」
「笑ってるよ、幸せだよ」
それから彼女は、ことあるごとに泣くようになった。
家に呼ばれる回数も増えて、だんだんと 私に触れる手が 乱暴になった。
なにかに必死にすがるように。
その年の秋。
紅葉が街を彩る季節に、私は耐えられなくなって 別れを告げた。
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「写真サークルに入ったら?」
疲れきっていた私に、友人が言った。
千尋のことを嫌いになったわけじゃなかった。
だから、写真を撮るのだって" 嫌な思い出 "にはなってない。
ただ、ひとりで どこかに写真を撮りに行くのも気が引けて、また無趣味状態に戻っていた。
鬱々とした気持ちを抱えながら(いまさら入ってもなあ……)と思いつつ、なんだかんだ 迷っている私がいた。
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