君の行く末

常森 楽

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同じ学部に、写真サークルに入ってる子がいた。
話したこともある子だったから、試しに聞いてみると、歓迎してくれた。

広い教室の真ん中に、数人がかたまって座っている。
私は、聞き覚えのある声に、鼓動が速くなるのを感じた。

「おつかれー!」
「さくら、おつかれ!」
いっちゃんは、友達に挨拶したあと、すぐに私を見た。

目が合った瞬間、心臓が飛び出るんじゃないかと思った。
いっちゃんとの思わぬ再会。

「あれ?」
「ああ、紹介するね。実結ちゃん!サークルに入りたいんだって!」

いっちゃんは、なにかを必死に思い出そうとしているみたいだった。

東雲しののめ 実結です。よろしくお願いします」

みんなが歓迎してくれるなか「ああ!!」とひときわ大きな声が教室に響く。

「東雲さん!」

いっちゃんは、花を咲かせたみたいな笑顔になった。

「高校の同級生だよ。気づかなかった~、同じ大学だったなんて知らなかった~」
「なに?」とまわりの人が聞くのに対して、大発見をしたかのように答える。

それから、週に1回みんなで集まっていること、良いロケーションがあれば 随時誘いあって写真を撮りに行ってることを説明してくれた。

「歓迎会しようか」
いっちゃんは楽しそうに提案した。

1年生が多く 6人、上の学年は3年生が1人、2年生が2人のサークルだった。

とても健全で、1年生(未成年)がお酒を飲む様子は少しもなくて、安心した。
もし お酒を楽しむようなサークルだったら、私はついていけないと思っていたから。

「" 東雲さん "って堅いから、実結って呼んでもいい?」
「うん。私は、なんて呼べばいいかな?」
「なんでもいいよ!なにが呼びやすい?」
「んー……いっちゃん……は、どう?」
「それ、すっごく嬉しい!」

いっちゃんは私の手をとり、ぶんぶん振った。

「嬉しいの?」
「うん。" いっちゃん "って、誰かに呼ばれたことありそうな感じがするじゃん?でも実際は、人生で一度も呼ばれたことなくて……1回呼ばれてみたかったんだよね」

いっちゃんは、変なポイントで喜んでくれる。

私が街中でかわいい看板を見つけたとき、目的地に行こうとするいっちゃんを 強引に引き止めて、振り回したことがあった。

今まで付き合ってきた友達なら、興味なさそうな顔をして 早く先へ行こうとするのに、いっちゃんは すごく楽しそうに私の話を聞いてくれた。

ただ話を聞いてくれるだけじゃなくて、文字の凹凸感やどんな材質なのかまで考えてくれる。

ふたりで 自分の考えたこと、思ったことを話すのが楽しかった。

「ごめんね、こういうの 迷惑じゃない?」
不安になって、聞いたことがある。

「全然迷惑なんかじゃないよ!むしろ、今まで自分がスルーしてきたことを ひとつひとつ拾い上げて教えてくれるのが、すごく嬉しいよ」

そんな見方をしてくれる人がいるなんて思いもしなかった。

今までいろんな人に、何をしても「遅い」と言われてきた。
言葉にされなくとも、空気感で なんとなくそう言われてる気がしてた。
すぐに気が散って、いろんなことに興味をもってしまう。
集中しなきゃいけないのに、集中できない自分が嫌だった。

「これからも、良いもの見つけたら教えてね」

私は、いっちゃんが大好きになった。


「実結、私のこと好きでしょ?」
カメラのファインダーを覗くいっちゃんがニヤリと笑った。

「え……」
なんて答えればいいかわからずにいると
真顔で「好きじゃない?」と聞いてくる。

ファインダーから目を離すと、薄茶色の瞳が太陽の光に照らされて 透き通る。
綺麗だと思った。

「好きだよ」
急に心臓が主張し始める。

「やっぱりね」
いっちゃんはイタズラする子供みたいに、無邪気に笑った。
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