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「一、おはよう」
彼女の顔が目の前にあって、目覚めて早々 心臓が高鳴る。
長い黒髪が私に垂れ下がり、太陽の光が髪の隙間から射し込む光景は、美しい絵を見ているみたいだった。
「おはよ」
動揺しながらも返すと、彼女は ふふっと笑った。
「泣きすぎて目が腫れちゃったよ~」
お姉さんは髪を払いながら起き上がり「朝ごはん食べる?」と微笑んだ。
「とは言っても、もうお昼なんだけどね」
冷蔵庫の中を漁りながら、彼女は 何を作ろうか考える。
玉ねぎのみじん切りを手伝って、目から涙をこぼす私を、ケラケラと笑う。
夜に泣き喚いた彼女なんて、まるで幻だったかのようにも思える笑顔だった。
「ありがとね」
ケチャップでオムライスにいたずら書きされて、仕返しにおっぱいを描いてやろうと奮闘してると、彼女は優しい笑みを浮かべてそう言った。
チラリと私の手元を見て、目を伏せながら笑う彼女は、綺麗だった。
「普通、レイプされた話をした相手のオムライスにおっぱい描く?」
彼女はオムライスを取り上げて、ガツガツとスプーンで崩していく。
「あ、ごめん」
我ながら小学生男子みたいなことをしてしまった、まったく気遣えてなかった、恥ずかしい……と反省した瞬間、彼女はお腹を抱えて笑った。
「大人っぽく見えても、やっぱり一は子供だね」
わざと見下すように言って、わしゃわしゃと頭を撫でられた。
「人のオムライスに" うんち "って書いた人に言われたくないよ」
睨むと、彼女はまた楽しそうに笑った。
私のそばに来て、そっと頭を抱えられる。
「ありがとう」
彼女のあたたかくてやわらかい胸に埋められた顔は、予想以上に熱くなった。
2週間後、私はまた彼女の家に泊まった。
「消えたい」とメールが来たからだった。
重い空気が部屋を包み込み、目から光が消え失せるほど 彼女は憔悴しきっていた。
抱きしめても、彼女はなんの反応も示さない。
遠くからサイレンの音が聞こえてきて、それが厭に耳に残る。
「……って」
ボソリと彼女が呟く。
聞き取れなくて、耳を口元に近づけた。
「なに?」
「おそって」
理解できなくて、聞き直す。
「襲って……!!」
血走った目で、彼女は叫んだ。
「え……?襲うって、どういうこと?」
ギリギリと音が鳴るほど歯ぎしりして、彼女は私の両肩を掴んだ。
「襲ってよ、私を……私をめちゃくちゃにしてよ」
「なに言って……」
「こんな、こんな汚い体!気持ち悪いの、気持ち悪いの!!」
気持ち悪い、気持ち悪い と、彼女は自分の体を引っ掻き始める。
どうすればいいかわからなくて、でも とにかくやめてほしくて、傷つけてほしくなくて、彼女の両手を掴んだ。
希望とは何か違う彼女の目の輝きに、一瞬 うっ……と引いてしまう。
頬をヒクつかせながら、彼女は笑う。
「襲って……」
絞り出すように放った言葉に、私は思わず涙をこぼした。
「一しかいないの」
彼女は私の口に、唇を重ねた。
私の涙が混じって、少ししょっぱい。
経験は、ほぼないに等しかった。
中学の時に、好きでもなかった男子に告白されて 友達との話題作りのためになんとなく付き合って、キスをした。
そのとき 胸を揉まれた程度で、その先の経験はなかった。
彼女には 過去に何人かと付き合ったことがあると言っていたから、もしかしたら 私にはセックスの経験があると思っていたのかもしれない。
それにしても、男子としか付き合ったことがなかったんだから、いきなり襲う側は無理があっただろう。
私はゴクリと唾を飲んで、彼女の肩を掴んで 離した。
「私が、塗り替えてあげるから」
その" 気持ち悪い "体を。
あなたが嫌いな、あなたの体を。
「大丈夫だから」
私が、綺麗にしてあげるから。
「泣かないで」
そんなに苦しそうな泣き顔は、今にも消えてしまいそうな泣き顔は、美しいけれども、見たくないよ。
彼女の顔が目の前にあって、目覚めて早々 心臓が高鳴る。
長い黒髪が私に垂れ下がり、太陽の光が髪の隙間から射し込む光景は、美しい絵を見ているみたいだった。
「おはよ」
動揺しながらも返すと、彼女は ふふっと笑った。
「泣きすぎて目が腫れちゃったよ~」
お姉さんは髪を払いながら起き上がり「朝ごはん食べる?」と微笑んだ。
「とは言っても、もうお昼なんだけどね」
冷蔵庫の中を漁りながら、彼女は 何を作ろうか考える。
玉ねぎのみじん切りを手伝って、目から涙をこぼす私を、ケラケラと笑う。
夜に泣き喚いた彼女なんて、まるで幻だったかのようにも思える笑顔だった。
「ありがとね」
ケチャップでオムライスにいたずら書きされて、仕返しにおっぱいを描いてやろうと奮闘してると、彼女は優しい笑みを浮かべてそう言った。
チラリと私の手元を見て、目を伏せながら笑う彼女は、綺麗だった。
「普通、レイプされた話をした相手のオムライスにおっぱい描く?」
彼女はオムライスを取り上げて、ガツガツとスプーンで崩していく。
「あ、ごめん」
我ながら小学生男子みたいなことをしてしまった、まったく気遣えてなかった、恥ずかしい……と反省した瞬間、彼女はお腹を抱えて笑った。
「大人っぽく見えても、やっぱり一は子供だね」
わざと見下すように言って、わしゃわしゃと頭を撫でられた。
「人のオムライスに" うんち "って書いた人に言われたくないよ」
睨むと、彼女はまた楽しそうに笑った。
私のそばに来て、そっと頭を抱えられる。
「ありがとう」
彼女のあたたかくてやわらかい胸に埋められた顔は、予想以上に熱くなった。
2週間後、私はまた彼女の家に泊まった。
「消えたい」とメールが来たからだった。
重い空気が部屋を包み込み、目から光が消え失せるほど 彼女は憔悴しきっていた。
抱きしめても、彼女はなんの反応も示さない。
遠くからサイレンの音が聞こえてきて、それが厭に耳に残る。
「……って」
ボソリと彼女が呟く。
聞き取れなくて、耳を口元に近づけた。
「なに?」
「おそって」
理解できなくて、聞き直す。
「襲って……!!」
血走った目で、彼女は叫んだ。
「え……?襲うって、どういうこと?」
ギリギリと音が鳴るほど歯ぎしりして、彼女は私の両肩を掴んだ。
「襲ってよ、私を……私をめちゃくちゃにしてよ」
「なに言って……」
「こんな、こんな汚い体!気持ち悪いの、気持ち悪いの!!」
気持ち悪い、気持ち悪い と、彼女は自分の体を引っ掻き始める。
どうすればいいかわからなくて、でも とにかくやめてほしくて、傷つけてほしくなくて、彼女の両手を掴んだ。
希望とは何か違う彼女の目の輝きに、一瞬 うっ……と引いてしまう。
頬をヒクつかせながら、彼女は笑う。
「襲って……」
絞り出すように放った言葉に、私は思わず涙をこぼした。
「一しかいないの」
彼女は私の口に、唇を重ねた。
私の涙が混じって、少ししょっぱい。
経験は、ほぼないに等しかった。
中学の時に、好きでもなかった男子に告白されて 友達との話題作りのためになんとなく付き合って、キスをした。
そのとき 胸を揉まれた程度で、その先の経験はなかった。
彼女には 過去に何人かと付き合ったことがあると言っていたから、もしかしたら 私にはセックスの経験があると思っていたのかもしれない。
それにしても、男子としか付き合ったことがなかったんだから、いきなり襲う側は無理があっただろう。
私はゴクリと唾を飲んで、彼女の肩を掴んで 離した。
「私が、塗り替えてあげるから」
その" 気持ち悪い "体を。
あなたが嫌いな、あなたの体を。
「大丈夫だから」
私が、綺麗にしてあげるから。
「泣かないで」
そんなに苦しそうな泣き顔は、今にも消えてしまいそうな泣き顔は、美しいけれども、見たくないよ。
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