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「出てけ、もう二度と来るな。顔も見たくないし、声も聞きたくない」
そんなようなことを言われた。
私は、暴れる彼女に強引に追い出される形で家をあとにして、何が起きてるのかわからず しばらく立ち尽くした。
*****
「それから、また連絡が来るかもしれないと思っていたんだけど、全く来なかった」
あまり昔の恋愛について話そうとしない いっちゃんに、しつこく「いっちゃんの初恋の話が聞きたい」と言ったら、教えてくれた。
「" 他の人と付き合ったら、このモヤモヤした気持ちも薄れてくれるかもしれない "とか、" 他の人とセックスしたら 彼女の気持ちも少しは理解できるかもしれない "とか、そんなことを思いながら、高校生活を過ごしたよ」
人通りの少ない夕暮れの海辺で、彼女は寂しげに言う。
「だから、好きでもない人たちとたくさん付き合って、たくさん振った」
「最低でしょ」と自虐する。
唇の左端だけ微かに上げて、薄目を開ける。
「あの人よりも、好きになれる人を探してたんだ」
いっちゃんの、口元まである長い前髪が 潮風に揺れる。
「お姉さんみたいな人を、探してたんだ」
襟足は刈り上げられていて、外気にさらされている首は 寒々としている。
「そのせいか、いろんな人の" 悩み "に気づきやすくてね。それで 少し優しくしたら、みんなすぐに私を好きになったよ」
「モテるってよく言われるけど、そんな風にモテたって 嬉しくないんだよ」
よく聞いてないと、波の音でかき消されてしまうくらいの声量で、彼女は呟いた。
「みんな、都合よく優しくしてくれる私を好きになって、私も、都合よく好きになってくれるみんなを利用した」
「私も、そのうちのひとり?」
私は、恐る恐る聞いた。
聞くのは怖かったけど、ここで聞かないとダメだと思った。
もしいっちゃんが" 私の、いっちゃんに対する好き "を誤解していたらと思うと、そっちの方が嫌だったから。
「どうかな?実結に特別優しくした記憶もないし、自分でも なんで実結と付き合おうと思ったのか わからないんだ」
「でも」
彼女は、眉間にシワを寄せて 何度かまばたきをした。
「たくさんの人と付き合って、わかったこともあったんだ」
ひんやりする砂を掴んでは落とし、掴んで落とし を繰り返す。
「私はね、私自身に興味を持ってくれる人が好きなんだってわかったんだ」
いっちゃんが過去の話をし始めてから、一度も目が合っていない。
ゆっくりと顔をこちらに向けて、彼女は何かを探るように 私を見た。
「" 私の傷を癒して "、" 私の悩みを聞いて "、"私 私 私"って 一方的じゃなくて、お互いがお互いの話をちゃんと聞き合えるような関係をつくりたい」
いっちゃんは、体育座りの体勢を変えないまま、体ごと私に向き合う。
じっと見つめ合う。
「話さないと……聞かないと、相手にどんな事情があって、どんな思いや考えがあって、どうして" そういう "行動をしたのかなんて、わからないでしょう?察するなんて、無理だよ」
いっちゃんが、一歩 私に近寄る。
体育座りしたお互いの足が交差し、グッと顔が近づく。
「だから、こうして実結が私の話を聞いてくれてる今を、私はずっと求めてたんだと思う」
冷えた手を握られる。
両手で包まれた。
いっちゃんの手のひらに残った砂の、シャリシャリした感触が不思議な心地にさせる。
「初恋の話を、するのが嫌なわけじゃない。むしろ誰かに話したかった。けど、恥ずかしさとか……なんか、そういう いろんな感情が邪魔をして、人に話すのが躊躇われた。経験上、人が人に何か質問をしたとき、もし相手が答えることを躊躇ったら、それ以上深掘りしようとはしない。けど、実結はしつこいくらい聞いてきた」
「ごめん」
すごく非常識なことをした気がしてきて、恥ずかしくなる。
「今のは謝るところじゃないよ。言い方が悪かったね、ごめん。私は、すごいことだって 誉めたいんだ」
いっちゃんの両手に力が入る。
「実結は、私が誰かに聞いてほしいと思ってた、けど 誰にも言えなかったことを、聞き出してくれたんだ」
そんなようなことを言われた。
私は、暴れる彼女に強引に追い出される形で家をあとにして、何が起きてるのかわからず しばらく立ち尽くした。
*****
「それから、また連絡が来るかもしれないと思っていたんだけど、全く来なかった」
あまり昔の恋愛について話そうとしない いっちゃんに、しつこく「いっちゃんの初恋の話が聞きたい」と言ったら、教えてくれた。
「" 他の人と付き合ったら、このモヤモヤした気持ちも薄れてくれるかもしれない "とか、" 他の人とセックスしたら 彼女の気持ちも少しは理解できるかもしれない "とか、そんなことを思いながら、高校生活を過ごしたよ」
人通りの少ない夕暮れの海辺で、彼女は寂しげに言う。
「だから、好きでもない人たちとたくさん付き合って、たくさん振った」
「最低でしょ」と自虐する。
唇の左端だけ微かに上げて、薄目を開ける。
「あの人よりも、好きになれる人を探してたんだ」
いっちゃんの、口元まである長い前髪が 潮風に揺れる。
「お姉さんみたいな人を、探してたんだ」
襟足は刈り上げられていて、外気にさらされている首は 寒々としている。
「そのせいか、いろんな人の" 悩み "に気づきやすくてね。それで 少し優しくしたら、みんなすぐに私を好きになったよ」
「モテるってよく言われるけど、そんな風にモテたって 嬉しくないんだよ」
よく聞いてないと、波の音でかき消されてしまうくらいの声量で、彼女は呟いた。
「みんな、都合よく優しくしてくれる私を好きになって、私も、都合よく好きになってくれるみんなを利用した」
「私も、そのうちのひとり?」
私は、恐る恐る聞いた。
聞くのは怖かったけど、ここで聞かないとダメだと思った。
もしいっちゃんが" 私の、いっちゃんに対する好き "を誤解していたらと思うと、そっちの方が嫌だったから。
「どうかな?実結に特別優しくした記憶もないし、自分でも なんで実結と付き合おうと思ったのか わからないんだ」
「でも」
彼女は、眉間にシワを寄せて 何度かまばたきをした。
「たくさんの人と付き合って、わかったこともあったんだ」
ひんやりする砂を掴んでは落とし、掴んで落とし を繰り返す。
「私はね、私自身に興味を持ってくれる人が好きなんだってわかったんだ」
いっちゃんが過去の話をし始めてから、一度も目が合っていない。
ゆっくりと顔をこちらに向けて、彼女は何かを探るように 私を見た。
「" 私の傷を癒して "、" 私の悩みを聞いて "、"私 私 私"って 一方的じゃなくて、お互いがお互いの話をちゃんと聞き合えるような関係をつくりたい」
いっちゃんは、体育座りの体勢を変えないまま、体ごと私に向き合う。
じっと見つめ合う。
「話さないと……聞かないと、相手にどんな事情があって、どんな思いや考えがあって、どうして" そういう "行動をしたのかなんて、わからないでしょう?察するなんて、無理だよ」
いっちゃんが、一歩 私に近寄る。
体育座りしたお互いの足が交差し、グッと顔が近づく。
「だから、こうして実結が私の話を聞いてくれてる今を、私はずっと求めてたんだと思う」
冷えた手を握られる。
両手で包まれた。
いっちゃんの手のひらに残った砂の、シャリシャリした感触が不思議な心地にさせる。
「初恋の話を、するのが嫌なわけじゃない。むしろ誰かに話したかった。けど、恥ずかしさとか……なんか、そういう いろんな感情が邪魔をして、人に話すのが躊躇われた。経験上、人が人に何か質問をしたとき、もし相手が答えることを躊躇ったら、それ以上深掘りしようとはしない。けど、実結はしつこいくらい聞いてきた」
「ごめん」
すごく非常識なことをした気がしてきて、恥ずかしくなる。
「今のは謝るところじゃないよ。言い方が悪かったね、ごめん。私は、すごいことだって 誉めたいんだ」
いっちゃんの両手に力が入る。
「実結は、私が誰かに聞いてほしいと思ってた、けど 誰にも言えなかったことを、聞き出してくれたんだ」
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