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1.恋愛初心者
12.好きってなに?
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「先輩、大丈夫ですか?」
カフェまでの道中、日住君は何度も気にかけてくれた。
さっきは先輩として恥ずかしいところを見せてしまったから、雷が鳴っても気丈に振る舞うようにした。とは言え、毎回肩がピクッと上がるのはどうにもならないから、なんだかチグハグだ。
「両角先輩って結構怖いんですね、意外でした」
日住君はポリポリと頬を掻きながら苦笑する。
「まあ、寝起きはいつもあんな感じだよ」
「そうなんですか」
“寝起き”と言うには、彼女はもう既に目覚めていたようにも思うけど、その疑問は今はそっと横に置いておく。
「それにしても、日住君も良い勝負してたよ。私はそっちのほうがビックリしちゃった」
「あぁ…すみません、驚かせて。俺、結構短気ですよ?」
「え!?そうなの?信じられない」
「ハハハ」と日住君は苦笑する。
カフェについて、席を確保する。
雨だからか、結構な人で賑わっていた。
今日は私に付き合ってもらってるからと、彼に奢ることにした。
家族と1度だけ来たことのある、お洒落なカフェ。カウンターで注文して、自分で席に持っていく。
「ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ。こんな雨の日にごめんね」
「いえ、楽しみにしてたんで。しかも奢ってもらっちゃって…嬉しいです」
へへへと照れるように笑う姿は、いつもの日住君だ。
お互い一口飲んで、フゥッと息をつく。
「えっと…それで、教えてほしいことって?」
「あぁ…うん。んーっと…」
私はカップを手で包むように持った。
「日住君って好きな人いる?」
「え?」
日住君の声が裏返る。
ただでさえパッチリと大きな目が見開かれて、もっと大きくなる。
「あの、変な意味じゃなくて…。私って今まで恋愛に全く興味がなかったというか、全然自分に関係ないものだと思ってきたんだよね。でも最近、恋愛ってなんなんだろう?って考えるようになって、それで…身近にこういうこと聞ける人、日住君くらいしかいなかったから…あの、それで…」
「ああ、なるほど。珍しいですね、本当」
フッと日住君が笑う。
なんだか急に恥ずかしくなって、項垂れるように俯く。
「いますよ」
「え?」
思わず、顔を上げる。
「好きな人、いますよ」
あっさりと、まっすぐ私を見て、彼は告げた。
ああ、そうだ。彼には好きな人がいる想定で話を聞いたんだった。自分が驚いてることに驚く。
家族以外では一番長い付き合いと言っても過言ではなく、今までこういう話をしてこなかったからか、すごく驚いてる自分がいる。
そうか、彼も普通に恋愛をしてるんだ…と、なんだか現実を突きつけられたように思えた。
地元の中学から、うちの高校に入学する生徒は多い。だから、単純な付き合いの長さで言えば、同級生に複数人いる同じ中学出身の、ほとんど話さない子達も付き合いが長いと言えるのだろう。
でも用事がない限り話さない間柄を“付き合いがある”とは言えないだろう。
だとすれば、やっぱり私にとって彼が、一番付き合いの長い人になる。
だからこそ、みんなと同じように恋愛をしていて“私とは違う”ことを突きつけられたのが、ショックだったのかもしれない。
でも、そのショックを引きずる場合じゃない。
それに、彼がちゃんと恋愛をしているなら、私の質問にも答えてくれる可能性が高まるのだから。
「そ、そっか。じゃあさ、好きってなんだと思う?どうしたらその人を好きになるの?友情と恋愛の好きの違いってなに?」
「おぉ…難しいな」
彼は苦笑して、宙を見る。
「うーん」と考えて、顎に手を当てる。
「ごめんね、こんな質問」
そう言っても、彼は考え続けてくれた。
「まず、俺がその人を好きだってわかったのは、ずっと見ていたいって思った時でしたね」
「…ずっと」
「はい。正直、友達のことをずっと見ていたいとは思わないじゃないですか?」
う…、友達がいないからわからない。
でも、まあ…確かに生徒会のメンバー、日住君も含めて、ずっと見ていたいとは思わない。
日住君のことは好きだけど、永那ちゃんに対するものとは全然違うかもしれない。
「どうしたらその人を好きになるかは人それぞれだと思いますけど…俺は…」
彼はまた宙を見て、慎重に言葉を選んでいるようだった。
「すごく恥ずかしいこと言います」
「え?」
意を決したように、見据える。
「俺のことを簡単に好きにならない人を好きになります」
彼の耳が真っ赤に染まっている。
「アハハハッ」私はお腹を抱えて笑ってしまった。
「そんな笑わなくてもいいじゃないですか」
彼は口を尖らせる。
「日住君ってやっぱりモテるんだ」
まだ笑いが止まらない私に「ちょっと」と恥ずかしそうにツッコんでくる。
「まあ、そこそこモテてきました。…でも俺も、なんで相手が俺を好きなのかわからなくて」
「そりゃ、日住君はかっこいいし優しいし、女子ならみんな好きになっちゃうんじゃない?」
彼の目が大きく見開く。
「そんなこと…」
少し目を伏せて「じゃあ」と言った後、上目遣いに私を見た。
「先輩は、俺のこと好きですか?」
「うぇ!?っえ…いや、そりゃ好きだよ」
「…後輩として、ですよね?」
「う、うーん。まあ…でも、そもそも私は今まで誰にも恋したことがなかったし、普通の女子にはカウントされないよ」
カフェまでの道中、日住君は何度も気にかけてくれた。
さっきは先輩として恥ずかしいところを見せてしまったから、雷が鳴っても気丈に振る舞うようにした。とは言え、毎回肩がピクッと上がるのはどうにもならないから、なんだかチグハグだ。
「両角先輩って結構怖いんですね、意外でした」
日住君はポリポリと頬を掻きながら苦笑する。
「まあ、寝起きはいつもあんな感じだよ」
「そうなんですか」
“寝起き”と言うには、彼女はもう既に目覚めていたようにも思うけど、その疑問は今はそっと横に置いておく。
「それにしても、日住君も良い勝負してたよ。私はそっちのほうがビックリしちゃった」
「あぁ…すみません、驚かせて。俺、結構短気ですよ?」
「え!?そうなの?信じられない」
「ハハハ」と日住君は苦笑する。
カフェについて、席を確保する。
雨だからか、結構な人で賑わっていた。
今日は私に付き合ってもらってるからと、彼に奢ることにした。
家族と1度だけ来たことのある、お洒落なカフェ。カウンターで注文して、自分で席に持っていく。
「ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ。こんな雨の日にごめんね」
「いえ、楽しみにしてたんで。しかも奢ってもらっちゃって…嬉しいです」
へへへと照れるように笑う姿は、いつもの日住君だ。
お互い一口飲んで、フゥッと息をつく。
「えっと…それで、教えてほしいことって?」
「あぁ…うん。んーっと…」
私はカップを手で包むように持った。
「日住君って好きな人いる?」
「え?」
日住君の声が裏返る。
ただでさえパッチリと大きな目が見開かれて、もっと大きくなる。
「あの、変な意味じゃなくて…。私って今まで恋愛に全く興味がなかったというか、全然自分に関係ないものだと思ってきたんだよね。でも最近、恋愛ってなんなんだろう?って考えるようになって、それで…身近にこういうこと聞ける人、日住君くらいしかいなかったから…あの、それで…」
「ああ、なるほど。珍しいですね、本当」
フッと日住君が笑う。
なんだか急に恥ずかしくなって、項垂れるように俯く。
「いますよ」
「え?」
思わず、顔を上げる。
「好きな人、いますよ」
あっさりと、まっすぐ私を見て、彼は告げた。
ああ、そうだ。彼には好きな人がいる想定で話を聞いたんだった。自分が驚いてることに驚く。
家族以外では一番長い付き合いと言っても過言ではなく、今までこういう話をしてこなかったからか、すごく驚いてる自分がいる。
そうか、彼も普通に恋愛をしてるんだ…と、なんだか現実を突きつけられたように思えた。
地元の中学から、うちの高校に入学する生徒は多い。だから、単純な付き合いの長さで言えば、同級生に複数人いる同じ中学出身の、ほとんど話さない子達も付き合いが長いと言えるのだろう。
でも用事がない限り話さない間柄を“付き合いがある”とは言えないだろう。
だとすれば、やっぱり私にとって彼が、一番付き合いの長い人になる。
だからこそ、みんなと同じように恋愛をしていて“私とは違う”ことを突きつけられたのが、ショックだったのかもしれない。
でも、そのショックを引きずる場合じゃない。
それに、彼がちゃんと恋愛をしているなら、私の質問にも答えてくれる可能性が高まるのだから。
「そ、そっか。じゃあさ、好きってなんだと思う?どうしたらその人を好きになるの?友情と恋愛の好きの違いってなに?」
「おぉ…難しいな」
彼は苦笑して、宙を見る。
「うーん」と考えて、顎に手を当てる。
「ごめんね、こんな質問」
そう言っても、彼は考え続けてくれた。
「まず、俺がその人を好きだってわかったのは、ずっと見ていたいって思った時でしたね」
「…ずっと」
「はい。正直、友達のことをずっと見ていたいとは思わないじゃないですか?」
う…、友達がいないからわからない。
でも、まあ…確かに生徒会のメンバー、日住君も含めて、ずっと見ていたいとは思わない。
日住君のことは好きだけど、永那ちゃんに対するものとは全然違うかもしれない。
「どうしたらその人を好きになるかは人それぞれだと思いますけど…俺は…」
彼はまた宙を見て、慎重に言葉を選んでいるようだった。
「すごく恥ずかしいこと言います」
「え?」
意を決したように、見据える。
「俺のことを簡単に好きにならない人を好きになります」
彼の耳が真っ赤に染まっている。
「アハハハッ」私はお腹を抱えて笑ってしまった。
「そんな笑わなくてもいいじゃないですか」
彼は口を尖らせる。
「日住君ってやっぱりモテるんだ」
まだ笑いが止まらない私に「ちょっと」と恥ずかしそうにツッコんでくる。
「まあ、そこそこモテてきました。…でも俺も、なんで相手が俺を好きなのかわからなくて」
「そりゃ、日住君はかっこいいし優しいし、女子ならみんな好きになっちゃうんじゃない?」
彼の目が大きく見開く。
「そんなこと…」
少し目を伏せて「じゃあ」と言った後、上目遣いに私を見た。
「先輩は、俺のこと好きですか?」
「うぇ!?っえ…いや、そりゃ好きだよ」
「…後輩として、ですよね?」
「う、うーん。まあ…でも、そもそも私は今まで誰にも恋したことがなかったし、普通の女子にはカウントされないよ」
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