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1.恋愛初心者
19.彼女
永那ちゃんがスタート地点に並んでいる。
前に走っている人たちの様子を見て笑っている。
体育祭の準備は大変だったけど、案外私は特等席にいるのかもしれない。…実況ブースにいるのだから、当然と言えば当然なのだけれど。
スタートの合図と共に走り出す。彼女は楽しそうに笑いながら走っている。
マットは、私も試しに走ってみたけど、バランスを取るのがけっこう難しい。永那ちゃんは器用に走り抜けていった。
5本のハードルを、砂埃を立てながらくぐっていく。汚れるからと、女子は障害物競争にあまり参加したがらない。でも彼女は気にしていないみたいだ。
立ち上がった彼女の体操着が汚れている。
ボールのドリブルは片手でも両手でもいい。永那ちゃんは片手でドリブルして、1回だけボールを転がしてしまったけれど、その後は順調に最終地点に到着した。
テーブルに置かれた封筒を取って、中のカードを確認する。
そこまで見て、私は次の玉入れに参加するために、腰につけていたトランシーバーを外した。
彼女の走りを見終えたら、急いで向かわなければ…と少し焦る。
念のため、靴紐も解けていないか確認する。
顔を上げると、永那ちゃんと目が合った。
彼女のキラキラした笑顔に一瞬で心を掴まれる。
彼女はそのまま私に向かって走ってくる。
どういうことかわからず固まっていると、永那ちゃんが手を差し伸べてきた。
「穂、来て!」
隣で実況していた生徒会長が白熱した声で「副生徒会長が攫われた!一体どんなカードだったのか!?」と言っている。
私達は手を繋ぎながら、ゴールに向かって走っていく。
みんなに注目されているのがとてつもなく恥ずかしくて、でも繋がれている手のぬくもりが嬉しくて、なんとも言えない気持ちになる。
永那ちゃんが、ゴールに立っている日住君にカードをわたす。
日住君はカードの内容を見て、チラリと私に目を遣った。
もう一度カードに視線を落として、永那ちゃんに笑顔を向ける。
「はい、OKです」
そう言われて、一緒にゴールテープを切った。
この回では私達が1番だったようで、「やったー!」と永那ちゃんに抱きしめられた。
「え、永那ちゃん…なんのカードだったの?」
「ん?…うーん」
彼女の口元が耳に近づく。
「好きな人」
そう言って、すぐに離れた。
永那ちゃんはニコニコ笑っている。
急激に全身から汗が吹き出す。
へへへと彼女が笑うから、私はベシベシと彼女の服を叩いて汚れを落として、綻びそうになる自分を誤魔化す。
髪もボサボサになっていたから、指で梳いてあげる。
よく見たら鼻にも汚れがついている。拭ってあげると、嬉しそうに目を瞑った。
そこで「玉入れに参加する生徒のみなさんは、スタート地点に集合してください」とアナウンスがかかった。
「あ、行かなきゃ」
「行ってらっしゃい、がんばって」
永那ちゃんがひらひら手を振る。
私は頷いて、走ってスタート地点に向かった。
生徒会長の実況が続く。
「今回の借り物は、好きな人、バスケットボール、眼鏡をかけた先生、ライン引き、人体模型…でした!」
私は何もないところで転びそうになる。
順位順にカードの内容が発表され、“好きな人”のところで、盛り上がっている生徒達に「ヒューヒュー」と言われたからだ。
まさかこんなことをされるなんて予想もしていなくて、羞恥心に押しつぶされそうになる。
玉入れが始まってからも、なんだか視線を感じて(競技をしている最中なのだから当たり前だけれど)、集中できなかった。
玉入れが終わり、生徒会メンバーが片付けるのを手伝う。
金井さんがそばに来て「空井先輩、攫われてましたね」とからかってくる。
「あれはlikeですか?それともloveですか?」
でも彼女の顔が全く笑っていないから、冗談なのかなんなのかわからなくなる。
「さあ…?」
私が苦笑すると「loveなら私、応援しますよ」と真面目な顔で言われた。
「あの人、たしか…両角先輩…ですよね?」
「え…え、なんで知ってるの?」
素直に驚く。
「クラスの女子がかっこいいと騒いでいたので」
ああ、そうだった。金井さんは日住君と同じクラスで、日住君も前に同じことを言っていた。
随分その子は永那ちゃんのことを後輩達に広めているんだなあ…と、また苦笑する。
「現在、10点差で白組が勝っています。赤組のみなさん、みんなで力を合わせて、後半戦で追い抜きましょう。白組のみなさん、一致団結して勝ち抜きましょう。…それでは、これより50分間の昼休憩とします。みなさん、熱中症予防のため、水分補給をお願いします。こちらの実況ブースと救護ブースでは塩飴を配布しています。是非お越しください」
生徒会長のアナウンスが響く。
生徒達がバラバラと校内に戻っていく。購買に寄る人もいれば、教室に戻ってお弁当を食べる人もいる。
私はその波に揉まれながら、なんとか生徒会用のテントに戻るのだった。
前に走っている人たちの様子を見て笑っている。
体育祭の準備は大変だったけど、案外私は特等席にいるのかもしれない。…実況ブースにいるのだから、当然と言えば当然なのだけれど。
スタートの合図と共に走り出す。彼女は楽しそうに笑いながら走っている。
マットは、私も試しに走ってみたけど、バランスを取るのがけっこう難しい。永那ちゃんは器用に走り抜けていった。
5本のハードルを、砂埃を立てながらくぐっていく。汚れるからと、女子は障害物競争にあまり参加したがらない。でも彼女は気にしていないみたいだ。
立ち上がった彼女の体操着が汚れている。
ボールのドリブルは片手でも両手でもいい。永那ちゃんは片手でドリブルして、1回だけボールを転がしてしまったけれど、その後は順調に最終地点に到着した。
テーブルに置かれた封筒を取って、中のカードを確認する。
そこまで見て、私は次の玉入れに参加するために、腰につけていたトランシーバーを外した。
彼女の走りを見終えたら、急いで向かわなければ…と少し焦る。
念のため、靴紐も解けていないか確認する。
顔を上げると、永那ちゃんと目が合った。
彼女のキラキラした笑顔に一瞬で心を掴まれる。
彼女はそのまま私に向かって走ってくる。
どういうことかわからず固まっていると、永那ちゃんが手を差し伸べてきた。
「穂、来て!」
隣で実況していた生徒会長が白熱した声で「副生徒会長が攫われた!一体どんなカードだったのか!?」と言っている。
私達は手を繋ぎながら、ゴールに向かって走っていく。
みんなに注目されているのがとてつもなく恥ずかしくて、でも繋がれている手のぬくもりが嬉しくて、なんとも言えない気持ちになる。
永那ちゃんが、ゴールに立っている日住君にカードをわたす。
日住君はカードの内容を見て、チラリと私に目を遣った。
もう一度カードに視線を落として、永那ちゃんに笑顔を向ける。
「はい、OKです」
そう言われて、一緒にゴールテープを切った。
この回では私達が1番だったようで、「やったー!」と永那ちゃんに抱きしめられた。
「え、永那ちゃん…なんのカードだったの?」
「ん?…うーん」
彼女の口元が耳に近づく。
「好きな人」
そう言って、すぐに離れた。
永那ちゃんはニコニコ笑っている。
急激に全身から汗が吹き出す。
へへへと彼女が笑うから、私はベシベシと彼女の服を叩いて汚れを落として、綻びそうになる自分を誤魔化す。
髪もボサボサになっていたから、指で梳いてあげる。
よく見たら鼻にも汚れがついている。拭ってあげると、嬉しそうに目を瞑った。
そこで「玉入れに参加する生徒のみなさんは、スタート地点に集合してください」とアナウンスがかかった。
「あ、行かなきゃ」
「行ってらっしゃい、がんばって」
永那ちゃんがひらひら手を振る。
私は頷いて、走ってスタート地点に向かった。
生徒会長の実況が続く。
「今回の借り物は、好きな人、バスケットボール、眼鏡をかけた先生、ライン引き、人体模型…でした!」
私は何もないところで転びそうになる。
順位順にカードの内容が発表され、“好きな人”のところで、盛り上がっている生徒達に「ヒューヒュー」と言われたからだ。
まさかこんなことをされるなんて予想もしていなくて、羞恥心に押しつぶされそうになる。
玉入れが始まってからも、なんだか視線を感じて(競技をしている最中なのだから当たり前だけれど)、集中できなかった。
玉入れが終わり、生徒会メンバーが片付けるのを手伝う。
金井さんがそばに来て「空井先輩、攫われてましたね」とからかってくる。
「あれはlikeですか?それともloveですか?」
でも彼女の顔が全く笑っていないから、冗談なのかなんなのかわからなくなる。
「さあ…?」
私が苦笑すると「loveなら私、応援しますよ」と真面目な顔で言われた。
「あの人、たしか…両角先輩…ですよね?」
「え…え、なんで知ってるの?」
素直に驚く。
「クラスの女子がかっこいいと騒いでいたので」
ああ、そうだった。金井さんは日住君と同じクラスで、日住君も前に同じことを言っていた。
随分その子は永那ちゃんのことを後輩達に広めているんだなあ…と、また苦笑する。
「現在、10点差で白組が勝っています。赤組のみなさん、みんなで力を合わせて、後半戦で追い抜きましょう。白組のみなさん、一致団結して勝ち抜きましょう。…それでは、これより50分間の昼休憩とします。みなさん、熱中症予防のため、水分補給をお願いします。こちらの実況ブースと救護ブースでは塩飴を配布しています。是非お越しください」
生徒会長のアナウンスが響く。
生徒達がバラバラと校内に戻っていく。購買に寄る人もいれば、教室に戻ってお弁当を食べる人もいる。
私はその波に揉まれながら、なんとか生徒会用のテントに戻るのだった。
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