いたずらはため息と共に

常森 楽

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1.恋愛初心者

29.彼女

私達の学校の制服は、学年ごとに色がある。
今は、1年生が緑、2年生が赤、3年生が青だ。3年生が卒業すると、1年生が青、2年生が緑、3年生が赤となる。
だから、あの男が1年生であることはわかっていた。
昨日の“用事”というのは、2人でカフェに行くことだったらしい。
立派なデートじゃないか!…腹立たしい。
あの後、雷が鳴るたびに、穂が男に抱きついたのを思い出して、今もそうしているのではないかと考え、苛立った。
あの男の目が、完全に彼女を好いている色をしていた。
彼女に抱きつかれて、鼻の下を伸ばしていたし。
だから、一体どういう関係なのか、私は知らなければならない。
あの後何をしたのか、知らなければならない。
彼女の目が彷徨って、私の質問にすぐに答えない。
やましいことでもあるのか?
ジクジクと胸が痛みをおびてきて、つい彼女に顔を近づける。
この唇を奪ってしまえば、あの男よりも…なんて考えた。
彼女の両腕を自販機に押し付けて、絶対に逃してやらないと強く握る。

なのに「私も永那ちゃんが好きだよ」と耳元で言われ、一瞬で力が抜けた。
彼女の唇の感触が耳にふわふわと残る。
彼女が子供をあやすように話してくるから、ドキドキして、なんだか恥ずかしくてなって、でも嬉しくて、彼女に抱きついた。
晴れて、私達はれっきとした恋人同士になった。
今日は一緒に帰りたかったのに、生徒会のある日だった。
やっぱり教室…校内から逃げてきて正解だったと思う。
ちょうど1週間後に体育祭が控えていて、穂は忙しいらしい。
そしてその1週間、穂と全然話せなかった。
でも穂が頻繁に私に視線を向けてくれるようになって、あまりに可愛くて、頬が緩む。
そしたら彼女も微笑んでくれるから、くすぐったいような気持ちになる。
毎日メッセージは送り合っていた。
物足りなかったけど、ほとんど話したこともなかった状態から考えれば、恋人らしいと思える。
でもこの間にも穂があの後輩の男と一緒に過ごしていると考えると、それだけは不満だった。…どうしようもないことなんだけど。
それなら私も生徒会に…それは無理でもせめて体育祭委員になればよかったと一瞬思って、首を横に振った。
毎日そんな遅くまで学校に残るなんて、私にはできない。
…そういえば穂が好きと言ってくれて曖昧になったけど、結局後輩にどんな恋の相談をしたんだろう?

体育祭当日、生徒会用テントの最前列に穂は座っていた。
こちらは地面に直に座っているけど、生徒会の人達はパイプ椅子に座っているからよく見える。
どこか緊張した面持ちの穂を見て、癒やされる。
こっち見ないかなあ?なんて思っていたら、あの憎き後輩が穂の手を握った。
ふざけんな!私の彼女だぞ!さわんな、変態!
…もしかして、あの男に、私が穂に告白したってことを相談したのか?どう返事をすればいいのか…みたいな相談をあいつに持ちかけたのだろうか?
だからあいつは私に穂を取られまいと、こうして全校生徒の前で見せつけるように穂の手を握っているのか?
ふざけんな!!もう穂は私の彼女だ!バーカバーカ!!
内心で悪態をついても、物理的な距離が、私を地の底に突き落とす。
選手宣誓が終わって、体育祭が始まっても、私の気分は晴れなかった。
二人三脚で千陽が危なっかしいから、それを支えるのに集中したら、多少は気が紛れた。
その後のみのむし競争で、誰かが顔面から転んだ。
すぐに穂が駆け寄って、対処する。
その姿がかっこよくて、見惚れた。

障害物競争は、個人的に1番楽しい競技だと思ってる。
みんながハードルに頭やお尻をぶつけて痛がってるのは見てて楽しいし、最後のカード次第で勝敗が大きく分かれるのがまた良い。
最終地点まで1位でも、引いたカードが最悪だと、簡単に追い越される。
最後まで勝敗がわからないのが良い。
私の番になって、スタートの合図と共に猛ダッシュ。
最終地点まで1位をキープして、カードを引く。
“好きな人”…ああ、神は私を見捨てなかった。
でも、穂のところに行ったら迷惑だろうか?と一瞬頭を過ぎって、彼女を見る。
彼女の顔が見えなくて焦った。
すぐにひょこっと机の下から顔が出る。…ちゃんと私のこと見ときなさいよ。
目が合って、彼女がきょとんとしてる。
あまりに可愛くて、笑ってしまう。
彼女を実況ブースから攫ったら、生徒会長までもがそれを盛り上げてくれた。
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