37 / 595
1.恋愛初心者
37.靄
目覚ましが鳴る前に目が覚めた。
たまにこういうときがあるけど、興奮しているから眠りが浅いのか、我ながらビックリする。
期末テストの日にはよくあることだ。
昨日の夜、クローゼットの扉に今日着る服を掛けておいた。
前に永那ちゃんが選んでくれた服。
もうかなり暑くなってきたから、これだけでも大丈夫かもしれない。でも朝方で少し肌寒い可能性もあるから、袖がゆったりしている薄手の白のカーディガンを羽織る予定だ。
もう一度鏡の前で服をあててみる。
散歩なのだから、もっとラフな格好でも良いのかもしれないけど、せっかくなら永那ちゃんに見てもらいたい。
私は頷いて、洗面台に向かった。
お母さんと誉を起こさないように、そーっと家を出た。
こんなに朝早いのは初めてかもしれない。
生徒会の活動でも、早くて駅に8時集合だ。
日曜日ということもあってか、駅前にはまだあまり人がいない。
朝の空気を目一杯吸い込んで、電車に乗った。
永那ちゃんの家の最寄り駅、電車で通り過ぎたことはあったけど、降りたことは一度もない。初めての場所。
しかも、こんな朝一番に永那ちゃんに会える…!それがたまらなく嬉しい。
ブラウンのポシェットの紐を握りしめる。
このバッグは、お母さんにプレゼントされたもの。家族で出かけるときは使ったことがあるけれど、同級生とのお出かけで使うのは初めてだ。
ワクワクしながら窓の外を眺めていると、あっという間に降りる駅についた。
改札を出ると既に永那ちゃんはいた。
彼女は黒のテーパードパンツに、黒のスウェットを着ていた。
私と目が合うと、ニコニコ手を振って、こちらに歩いてくる。
私も駆け寄ると「可愛い」と、頭をポンポンされた。
「服、よく似合ってるね」と微笑まれ、肩を撫でられる。
ああ、なんだか彼女みたい…。と、つい幸せに浸る。
「おはよ、穂」
永那ちゃんはどことなく疲れているようだった。
「おはよう、永那ちゃん」
彼女の目の下にはクマができている。
皮膚が薄いのか、彼女の肌は透き通っている。
だからクマはけっこう目立って、すごく具合が悪そうにも見える。
「永那ちゃん、無理してない?」
彼女の目が大きく開かれる。すぐに弧を描いて細くなる。
「無理してない。…会いたかったよ、穂」
ギュッと抱きしめられる。
私も抱きしめ返して、彼女の肩に顔を添えた。
私より少し背の高い彼女の肩は、なんだか居心地がいい。
彼女の匂いが鼻を通って、安心感を抱く。
「永那ちゃん、いい匂い」
「そう?何もつけたりしてないけど」
首元に鼻を近づけて、スンスンと匂いを嗅ぐ。
永那ちゃんは「くすぐったいよ」と笑った。
「ああ、でもシャワーは浴びてきたわ」
「そうなんだ」
「私は朝シャン派なんだ」
彼女の声も心地良い。このまま眠りたくなるくらい、心地良い。
「穂、寝てる?」
「…ん?」
顔を上げると、永那ちゃんが歯を見せて笑った。
「眠そう」
目元をさすってくれる。
「ごめんね、こんな朝早くて」
私は首を横に振って、さっき自販機で買ったお茶を飲む。
「私、永那ちゃんに会いたかったから」
「穂は眠いと、こんなに素直になるんだね。可愛い」
そう言われて、だんだん恥ずかしくなってくる。
ワクワクしすぎて興奮状態だったからか、永那ちゃんに会えた途端、プツンと糸が切れたみたいに、まどろみのなかにいた。
「あ、うぅ…。体育祭終わっても、結局2人であんまり話せなかったし」
「そうだね、ごめんね」
唇を尖らせると、彼女の唇が重なった。
一気に目が冴える。
彼女の背中の服をギュッと掴んで、ゾワリと鳥肌が立つ。
心臓がようやく目を覚ましたみたいに、ドクドクと音を立て始める。
彼女が優しく笑って、手を差し伸べた。
その手に私の手を重ねると、彼女は歩き出す。
しばらく何も話さないまま、ゆっくり街を歩いた。
小さな公園について、ベンチに座る。
「永那ちゃん」
「ん?」
「永那ちゃんは、どうして私を選んでくれたの?」
永那ちゃんは何度かまばたきをして、まっすぐこちらを見る。
少し考えるように宙を見て、もう一度目が合う。
「同じクラスになって、すぐ」
握っている手元を見つめる。
「すぐ、穂のことを好きになった」
「え?すぐ?」
同じクラスになってから、私達の接点なんてほとんどなかったはず。
「なかなか話す機会がなくて、でもずっと、2人で話したいなって思ってた」
その答えに戸惑いを隠せない。
「そしたら穂が“いたずらする”なんて耳元で囁くから、絶対このチャンスを逃したくないって思ったんだよ。仲良くなって、穂のことをたくさん知れて、やっぱり好きだなあって思った。…そしたら、誰にも取られたくないって焦ったし、私のことも好きになってほしいって思ったんだ」
モテる、恋愛経験豊富な永那ちゃんでも、焦ることがあるのだと、衝撃を受ける。
たまにこういうときがあるけど、興奮しているから眠りが浅いのか、我ながらビックリする。
期末テストの日にはよくあることだ。
昨日の夜、クローゼットの扉に今日着る服を掛けておいた。
前に永那ちゃんが選んでくれた服。
もうかなり暑くなってきたから、これだけでも大丈夫かもしれない。でも朝方で少し肌寒い可能性もあるから、袖がゆったりしている薄手の白のカーディガンを羽織る予定だ。
もう一度鏡の前で服をあててみる。
散歩なのだから、もっとラフな格好でも良いのかもしれないけど、せっかくなら永那ちゃんに見てもらいたい。
私は頷いて、洗面台に向かった。
お母さんと誉を起こさないように、そーっと家を出た。
こんなに朝早いのは初めてかもしれない。
生徒会の活動でも、早くて駅に8時集合だ。
日曜日ということもあってか、駅前にはまだあまり人がいない。
朝の空気を目一杯吸い込んで、電車に乗った。
永那ちゃんの家の最寄り駅、電車で通り過ぎたことはあったけど、降りたことは一度もない。初めての場所。
しかも、こんな朝一番に永那ちゃんに会える…!それがたまらなく嬉しい。
ブラウンのポシェットの紐を握りしめる。
このバッグは、お母さんにプレゼントされたもの。家族で出かけるときは使ったことがあるけれど、同級生とのお出かけで使うのは初めてだ。
ワクワクしながら窓の外を眺めていると、あっという間に降りる駅についた。
改札を出ると既に永那ちゃんはいた。
彼女は黒のテーパードパンツに、黒のスウェットを着ていた。
私と目が合うと、ニコニコ手を振って、こちらに歩いてくる。
私も駆け寄ると「可愛い」と、頭をポンポンされた。
「服、よく似合ってるね」と微笑まれ、肩を撫でられる。
ああ、なんだか彼女みたい…。と、つい幸せに浸る。
「おはよ、穂」
永那ちゃんはどことなく疲れているようだった。
「おはよう、永那ちゃん」
彼女の目の下にはクマができている。
皮膚が薄いのか、彼女の肌は透き通っている。
だからクマはけっこう目立って、すごく具合が悪そうにも見える。
「永那ちゃん、無理してない?」
彼女の目が大きく開かれる。すぐに弧を描いて細くなる。
「無理してない。…会いたかったよ、穂」
ギュッと抱きしめられる。
私も抱きしめ返して、彼女の肩に顔を添えた。
私より少し背の高い彼女の肩は、なんだか居心地がいい。
彼女の匂いが鼻を通って、安心感を抱く。
「永那ちゃん、いい匂い」
「そう?何もつけたりしてないけど」
首元に鼻を近づけて、スンスンと匂いを嗅ぐ。
永那ちゃんは「くすぐったいよ」と笑った。
「ああ、でもシャワーは浴びてきたわ」
「そうなんだ」
「私は朝シャン派なんだ」
彼女の声も心地良い。このまま眠りたくなるくらい、心地良い。
「穂、寝てる?」
「…ん?」
顔を上げると、永那ちゃんが歯を見せて笑った。
「眠そう」
目元をさすってくれる。
「ごめんね、こんな朝早くて」
私は首を横に振って、さっき自販機で買ったお茶を飲む。
「私、永那ちゃんに会いたかったから」
「穂は眠いと、こんなに素直になるんだね。可愛い」
そう言われて、だんだん恥ずかしくなってくる。
ワクワクしすぎて興奮状態だったからか、永那ちゃんに会えた途端、プツンと糸が切れたみたいに、まどろみのなかにいた。
「あ、うぅ…。体育祭終わっても、結局2人であんまり話せなかったし」
「そうだね、ごめんね」
唇を尖らせると、彼女の唇が重なった。
一気に目が冴える。
彼女の背中の服をギュッと掴んで、ゾワリと鳥肌が立つ。
心臓がようやく目を覚ましたみたいに、ドクドクと音を立て始める。
彼女が優しく笑って、手を差し伸べた。
その手に私の手を重ねると、彼女は歩き出す。
しばらく何も話さないまま、ゆっくり街を歩いた。
小さな公園について、ベンチに座る。
「永那ちゃん」
「ん?」
「永那ちゃんは、どうして私を選んでくれたの?」
永那ちゃんは何度かまばたきをして、まっすぐこちらを見る。
少し考えるように宙を見て、もう一度目が合う。
「同じクラスになって、すぐ」
握っている手元を見つめる。
「すぐ、穂のことを好きになった」
「え?すぐ?」
同じクラスになってから、私達の接点なんてほとんどなかったはず。
「なかなか話す機会がなくて、でもずっと、2人で話したいなって思ってた」
その答えに戸惑いを隠せない。
「そしたら穂が“いたずらする”なんて耳元で囁くから、絶対このチャンスを逃したくないって思ったんだよ。仲良くなって、穂のことをたくさん知れて、やっぱり好きだなあって思った。…そしたら、誰にも取られたくないって焦ったし、私のことも好きになってほしいって思ったんだ」
モテる、恋愛経験豊富な永那ちゃんでも、焦ることがあるのだと、衝撃を受ける。
あなたにおすすめの小説
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
✽全28話完結
✽辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
✽他誌にも掲載中です。
✽2026.4/11 エブリスタ用に使用している表紙に変更しました。
→表紙はイラストをGrok タイトルをChatGPTでAI生成しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」
三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。
クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。
中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。
※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。
12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。
身体だけの関係です 原田巴について
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。