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2.変化
86.友達
永那ちゃんとのあれも。
私にとっては不設楽なことで、不必要なことで、ずっと意識的に避けてきた。
“意識的に”ということは、裏を返せば、物凄く興味があったのだと、今ならわかる。
だってこんなにも…こんなにも、だめだとわかっているのに、求めてる。
自分が自分についていけないほど、私の体は想像以上に彼女を求めていて、怖くなる。
隣の部屋に誰がいてもおかまいなしに彼女を求めようとした自分が怖い。
キュウキュウと締め付ける、この下腹部が憎い。
でも、憎い以上に、こんなにも心が満たされることに幸せを感じる。
ずっと見てみぬフリをしていた自分の寂しさとか、気づかずにつけていた重りとか、そういうものから解放されていくような気持ちにさせられる。
甘えていいんだって、泣いていいんだって、鎧を脱いでもいいんだって、そう、言ってもらえているような気持ちになる。
…何も考えずに笑っていられた日に、戻れたような。
そう。
お父さんがまだいて、お母さんが笑っていて、誉が生まれた…そんな日に。
いつの間にかお母さんを“お母さん”と思えなくなっていたことにも気づかなかった。
お母さんは私の“お母さん”なんだって、お母さんはロボットか何かじゃなくてちゃんと人間なんだって思えた。
ロボットみたいだったのは私のほうで、感情を殺していたのは私のほうで、何もかもを切り捨ててきたのは…私だったんだ。
こんなことを知れたのも、永那ちゃんが私をグイグイ引っ張って行ってくれるから。
今までの、ハリボテみたいな世界を壊して、永那ちゃんはどんどん私を新しい世界に連れて行ってくれる。
そんな永那ちゃんが、私は好きなんだ。
私の、ほんの些細ないたずらを、彼女は見逃さなかった。
そのいたずらは、ずっと私が無視してきた私の本心からの、私に対する小さな抵抗だったのだと思う。
「気づいてよ」って、切り捨ててきた感情が声をあげたのだと思う。
彼女は私の本心を見逃さず、受け止めてくれた。
“起きないと、いたずらしちゃいますよ”
インターネットのサイトの広告に載っていたエッチな漫画の台詞。
もちろん、広告をクリックしたわけではない。
点滅するように漫画のワンシーンが広告として出ていただけだ。
それをたまたま目にして、ただなんとなく、言ってみただけだった。
たまたま目にして、嫌悪感を抱いたのに、逆に意識してしまって、口から出た。
(なんであんなことを言ってしまったんだろう?)と後悔した。
あの時の私には、本当の私が見えていなかったから。
でもきっと誰かに気づいてほしかったんだ。
その“誰か”が、永那ちゃんだったんだ。
「穂?」
鏡に、永那ちゃんが映る。
永那ちゃんが不安を顔に浮かべている。
「…ごめんね」
私はつい頰を緩める。
「なにが?」
振り向いて、彼女をまっすぐ見る。
永那ちゃんは目を彷徨わせて、口を尖らせる。
「パンツ取ったこと?」
謝るなら返してよ…と内心ツッコんで、笑いながら息が溢れる。
「後でちゃんと返してよ?何するのか知らないけど」
「…そのうちね」
とんだ変態に捕まってしまったものだ。
私は永那ちゃんを抱きしめる。
「好きだよ、永那ちゃん」
永那ちゃんが抱きしめ返してくれる。
「私も、好き。穂」
「プレゼントありがとう。大事にするね」
永那ちゃんの抱きしめる力が強まる。
スーッと空気を吸って「うん」と頷く。
「ところで永那ちゃん」
「ん?」
「私、どんな顔して優里ちゃんと佐藤さんのところに行けばいい?」
彼女の肩に指を食い込ませる。
「へ?」
素っ頓狂な声が返ってくる。
グググと指に力を込めると「痛い痛い痛い」と永那ちゃんが叫ぶ。
「ふ、普通に、普通の顔で、いいんじゃない?」
私はジーッと彼女を睨む。
彼女は肩を擦って、指はもう離れたのに、まだ痛がっている。
私は「ハァ」と息を吐く。
「恥ずかしすぎて、もう会えないよ」
「えー?大丈夫だよ」
なにが大丈夫なの?
キッと睨むと、永那ちゃんは目をまん丸くする。
「ほら、顔がまだ濡れてるよ?」
永那ちゃんは誤魔化すようにタオルを取って、私の顔を拭いてくれる。
私はそのタオルで顔を半分隠したまま、リビングに戻った。
私にとっては不設楽なことで、不必要なことで、ずっと意識的に避けてきた。
“意識的に”ということは、裏を返せば、物凄く興味があったのだと、今ならわかる。
だってこんなにも…こんなにも、だめだとわかっているのに、求めてる。
自分が自分についていけないほど、私の体は想像以上に彼女を求めていて、怖くなる。
隣の部屋に誰がいてもおかまいなしに彼女を求めようとした自分が怖い。
キュウキュウと締め付ける、この下腹部が憎い。
でも、憎い以上に、こんなにも心が満たされることに幸せを感じる。
ずっと見てみぬフリをしていた自分の寂しさとか、気づかずにつけていた重りとか、そういうものから解放されていくような気持ちにさせられる。
甘えていいんだって、泣いていいんだって、鎧を脱いでもいいんだって、そう、言ってもらえているような気持ちになる。
…何も考えずに笑っていられた日に、戻れたような。
そう。
お父さんがまだいて、お母さんが笑っていて、誉が生まれた…そんな日に。
いつの間にかお母さんを“お母さん”と思えなくなっていたことにも気づかなかった。
お母さんは私の“お母さん”なんだって、お母さんはロボットか何かじゃなくてちゃんと人間なんだって思えた。
ロボットみたいだったのは私のほうで、感情を殺していたのは私のほうで、何もかもを切り捨ててきたのは…私だったんだ。
こんなことを知れたのも、永那ちゃんが私をグイグイ引っ張って行ってくれるから。
今までの、ハリボテみたいな世界を壊して、永那ちゃんはどんどん私を新しい世界に連れて行ってくれる。
そんな永那ちゃんが、私は好きなんだ。
私の、ほんの些細ないたずらを、彼女は見逃さなかった。
そのいたずらは、ずっと私が無視してきた私の本心からの、私に対する小さな抵抗だったのだと思う。
「気づいてよ」って、切り捨ててきた感情が声をあげたのだと思う。
彼女は私の本心を見逃さず、受け止めてくれた。
“起きないと、いたずらしちゃいますよ”
インターネットのサイトの広告に載っていたエッチな漫画の台詞。
もちろん、広告をクリックしたわけではない。
点滅するように漫画のワンシーンが広告として出ていただけだ。
それをたまたま目にして、ただなんとなく、言ってみただけだった。
たまたま目にして、嫌悪感を抱いたのに、逆に意識してしまって、口から出た。
(なんであんなことを言ってしまったんだろう?)と後悔した。
あの時の私には、本当の私が見えていなかったから。
でもきっと誰かに気づいてほしかったんだ。
その“誰か”が、永那ちゃんだったんだ。
「穂?」
鏡に、永那ちゃんが映る。
永那ちゃんが不安を顔に浮かべている。
「…ごめんね」
私はつい頰を緩める。
「なにが?」
振り向いて、彼女をまっすぐ見る。
永那ちゃんは目を彷徨わせて、口を尖らせる。
「パンツ取ったこと?」
謝るなら返してよ…と内心ツッコんで、笑いながら息が溢れる。
「後でちゃんと返してよ?何するのか知らないけど」
「…そのうちね」
とんだ変態に捕まってしまったものだ。
私は永那ちゃんを抱きしめる。
「好きだよ、永那ちゃん」
永那ちゃんが抱きしめ返してくれる。
「私も、好き。穂」
「プレゼントありがとう。大事にするね」
永那ちゃんの抱きしめる力が強まる。
スーッと空気を吸って「うん」と頷く。
「ところで永那ちゃん」
「ん?」
「私、どんな顔して優里ちゃんと佐藤さんのところに行けばいい?」
彼女の肩に指を食い込ませる。
「へ?」
素っ頓狂な声が返ってくる。
グググと指に力を込めると「痛い痛い痛い」と永那ちゃんが叫ぶ。
「ふ、普通に、普通の顔で、いいんじゃない?」
私はジーッと彼女を睨む。
彼女は肩を擦って、指はもう離れたのに、まだ痛がっている。
私は「ハァ」と息を吐く。
「恥ずかしすぎて、もう会えないよ」
「えー?大丈夫だよ」
なにが大丈夫なの?
キッと睨むと、永那ちゃんは目をまん丸くする。
「ほら、顔がまだ濡れてるよ?」
永那ちゃんは誤魔化すようにタオルを取って、私の顔を拭いてくれる。
私はそのタオルで顔を半分隠したまま、リビングに戻った。
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