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2.変化
97.夏休み
永那ちゃんはいつも通り、私の料理を喜んでくれた。
「いいなあ、誉は。毎日こんなおいしいご飯が食べられて」
永那ちゃんが言うと、誉は自慢気に笑った。
「やっぱ結婚するなら姉ちゃんみたいな人だよ」
誉がまた言う。
永那ちゃんが咽て、お茶をゴクゴク飲んだ。
あのとき、永那ちゃんは寝ていたんだっけ。
「誉、お姉ちゃんっ子?」
前に優里ちゃんに同じことを言われていたからか、誉はキョトンとしながら頷く。
小学6年生男子って、もうちょっと天邪鬼じゃない?
「料理が上手な人がいい」
誉がそう言うと、永那ちゃんは「そっかあ」と宙を見た。
「じゃあ、千陽はダメだな」
「え?そうなの?」
「あいつは全く料理しないから」
誉は考え込む。
「じゃあさ、俺が作れるようになったらいいのかな?」
“教育しなくては”と思っていたのに、予想外に自分から提案していて驚く。
美人ってすごい。
「うん、あいつけっこう食べるの好きだから…“胃袋掴む”っていうの?でもいいんじゃない?」
「姉ちゃん、俺、今度からご飯作るの手伝うわ」
動機が不純だけれど、(まあいいか)と頷く。
ご飯を食べ終えて片付けをすると、誉が永那ちゃんとゲームがしたいと言い始めた。
「永那ちゃん、疲れてるから寝かせてあげたいんだけど?」と言っても誉は駄々をこねて、永那ちゃんは「いいよ、いいよ」と付き合ってくれる。
「そういえば、穂」
ゲームをしながら、永那ちゃんが話し始める。
「なに?」
「私ね、夏休みの間だけバイトすることにしたんだ。…去年もやったんだけど」
「え?そうなの?…いつ?どこで?なんで?」
「質問たくさん」と、永那ちゃんは笑う。
「明日から。朝方だけね、コンビニのバイト。まあ、朝方だから穂にはあんまり関係ないんだけど。念のため言っといた」
余計に彼女の体が心配になる。
「まあ、働けるときは働いておきたいなって思ってさ。貯められるなら、お金も貯めたいし」
「そっか」
私は曖昧に笑って、心配になる気持ちを抑える。
“やめておいたほうがいい”なんて無責任なことは言えないし、だからって応援するのもまた違うような気がした。
「誉、そろそろ永那ちゃん休ませてあげて」
1時間ほど様子を見て言った。
誉は唇を尖らせて、渋々ゲームをやめた。
「大丈夫だよ?そんな気遣わなくていいのに」
「だめ。気遣ってるとかじゃなくて、私が永那ちゃんに休んでほしいの」
そう言うと、永那ちゃんは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「これから毎日家に来るなら、ちゃんと寝ないとだめでしょ?」
「ありがと」
永那ちゃんの手を引っ張って、部屋に連れて行く。
ベッドに寝転がらせて、布団をかけてあげる。
「また4時頃起こすね」
頭を撫でてあげると、彼女の瞼はすぐに、とろんと溶けそうなくらい重たくなったみたいだった。
私がリビングに行こうとすると、優しく手を掴まれる。
「そばにいて?」
今にも眠ってしまいそうな瞳で見つめられた。
可愛い…。
「ちょっと待ってて」
そっと彼女の手を離して、テーブルに置きっぱなしにした本を取って戻る。
戻ったとき、彼女はほとんど意識がなくて、私が横に座ると、安心したように眠り始めた。
布団に足を潜らせて、ベッドのヘッドボードに寄りかかって、本を開く。
開いているドアから誉がひょこっと顔を出すから、人差し指を唇に当てて「シーッ」とジェスチャーする。
誉は頷いて、リビングに戻った。
今から寝れば2時間は眠れる。
そうすれば5時間は眠れたことになるよね?
それでも短いけれど、少しでもいいから安心して眠ってほしい。
ずっとこんな時間を望んでいた。
本当はテスト期間中、こんな時間を過ごすんだろうなと想像していた。
もちろん、あの期間は楽しかったから、それはそれで良い。
でも永那ちゃんがそばにいて、彼女の寝息がそばで聞こえて、それを独り占めできる…そんな日が早くきてほしかった。
…そう、独り占めできる時間。
私はそれがずっとほしかったんだ。
スゥスゥと心地いい寝息を聞いていると、私の意識もだんだんと手放されていく。
読んでいるはずなのに、本の内容が頭に入ってこなくなり、何度も同じところを繰り返し読んでいる。
…もうだめだ。私も少し寝よう。
なんとかスマホのアラームをセットして、私は本をヘッドボードに置いた。
布団を肩までかけて、横になる。
目の前に好きな人がいる。
…こんな近くに。
綺麗な顔。
そっと彼女の唇に触れる。
それに反応するように、ムニャムニャと口を動かすのがおかしくて、フフッと笑う。
好き。
彼女の匂いに包まれて、私の瞼は落ちていく。
「いいなあ、誉は。毎日こんなおいしいご飯が食べられて」
永那ちゃんが言うと、誉は自慢気に笑った。
「やっぱ結婚するなら姉ちゃんみたいな人だよ」
誉がまた言う。
永那ちゃんが咽て、お茶をゴクゴク飲んだ。
あのとき、永那ちゃんは寝ていたんだっけ。
「誉、お姉ちゃんっ子?」
前に優里ちゃんに同じことを言われていたからか、誉はキョトンとしながら頷く。
小学6年生男子って、もうちょっと天邪鬼じゃない?
「料理が上手な人がいい」
誉がそう言うと、永那ちゃんは「そっかあ」と宙を見た。
「じゃあ、千陽はダメだな」
「え?そうなの?」
「あいつは全く料理しないから」
誉は考え込む。
「じゃあさ、俺が作れるようになったらいいのかな?」
“教育しなくては”と思っていたのに、予想外に自分から提案していて驚く。
美人ってすごい。
「うん、あいつけっこう食べるの好きだから…“胃袋掴む”っていうの?でもいいんじゃない?」
「姉ちゃん、俺、今度からご飯作るの手伝うわ」
動機が不純だけれど、(まあいいか)と頷く。
ご飯を食べ終えて片付けをすると、誉が永那ちゃんとゲームがしたいと言い始めた。
「永那ちゃん、疲れてるから寝かせてあげたいんだけど?」と言っても誉は駄々をこねて、永那ちゃんは「いいよ、いいよ」と付き合ってくれる。
「そういえば、穂」
ゲームをしながら、永那ちゃんが話し始める。
「なに?」
「私ね、夏休みの間だけバイトすることにしたんだ。…去年もやったんだけど」
「え?そうなの?…いつ?どこで?なんで?」
「質問たくさん」と、永那ちゃんは笑う。
「明日から。朝方だけね、コンビニのバイト。まあ、朝方だから穂にはあんまり関係ないんだけど。念のため言っといた」
余計に彼女の体が心配になる。
「まあ、働けるときは働いておきたいなって思ってさ。貯められるなら、お金も貯めたいし」
「そっか」
私は曖昧に笑って、心配になる気持ちを抑える。
“やめておいたほうがいい”なんて無責任なことは言えないし、だからって応援するのもまた違うような気がした。
「誉、そろそろ永那ちゃん休ませてあげて」
1時間ほど様子を見て言った。
誉は唇を尖らせて、渋々ゲームをやめた。
「大丈夫だよ?そんな気遣わなくていいのに」
「だめ。気遣ってるとかじゃなくて、私が永那ちゃんに休んでほしいの」
そう言うと、永那ちゃんは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「これから毎日家に来るなら、ちゃんと寝ないとだめでしょ?」
「ありがと」
永那ちゃんの手を引っ張って、部屋に連れて行く。
ベッドに寝転がらせて、布団をかけてあげる。
「また4時頃起こすね」
頭を撫でてあげると、彼女の瞼はすぐに、とろんと溶けそうなくらい重たくなったみたいだった。
私がリビングに行こうとすると、優しく手を掴まれる。
「そばにいて?」
今にも眠ってしまいそうな瞳で見つめられた。
可愛い…。
「ちょっと待ってて」
そっと彼女の手を離して、テーブルに置きっぱなしにした本を取って戻る。
戻ったとき、彼女はほとんど意識がなくて、私が横に座ると、安心したように眠り始めた。
布団に足を潜らせて、ベッドのヘッドボードに寄りかかって、本を開く。
開いているドアから誉がひょこっと顔を出すから、人差し指を唇に当てて「シーッ」とジェスチャーする。
誉は頷いて、リビングに戻った。
今から寝れば2時間は眠れる。
そうすれば5時間は眠れたことになるよね?
それでも短いけれど、少しでもいいから安心して眠ってほしい。
ずっとこんな時間を望んでいた。
本当はテスト期間中、こんな時間を過ごすんだろうなと想像していた。
もちろん、あの期間は楽しかったから、それはそれで良い。
でも永那ちゃんがそばにいて、彼女の寝息がそばで聞こえて、それを独り占めできる…そんな日が早くきてほしかった。
…そう、独り占めできる時間。
私はそれがずっとほしかったんだ。
スゥスゥと心地いい寝息を聞いていると、私の意識もだんだんと手放されていく。
読んでいるはずなのに、本の内容が頭に入ってこなくなり、何度も同じところを繰り返し読んでいる。
…もうだめだ。私も少し寝よう。
なんとかスマホのアラームをセットして、私は本をヘッドボードに置いた。
布団を肩までかけて、横になる。
目の前に好きな人がいる。
…こんな近くに。
綺麗な顔。
そっと彼女の唇に触れる。
それに反応するように、ムニャムニャと口を動かすのがおかしくて、フフッと笑う。
好き。
彼女の匂いに包まれて、私の瞼は落ちていく。
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