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3.成長
123.噂
「ハァ」とため息をつかれる。
「まあ、いいです」
そう言って、金井さんが窓辺から離れる。
彼女がいなくなってしまったから、私も離れる。
「空井さん」
同級生に話しかけられて、ビクッとする。
「な、なに?」
「やっぱり両角さんと佐藤さんは、空井さん…引いては全員に内緒でこっそり付き合ってるってことは、ないですかね?…そういう、怪しいなって雰囲気ありませんでした?」
「え?どうして?」
わけがわからない。
「いや、あの…私達の情報によれば、2人がキスしていたっていう情報があってですね…」
私は眉頭に力が入る。
首を傾げる。
「いつの話?」
「1ヶ月くらい前ですかね?」
1ヶ月前?
「どこで?」
「校舎裏です。佐藤さんが両角さんに迫っていたという情報が…。私達は、やっぱりかっこいい両角さんが攻めで、可愛い佐藤さんが受けだと思っていたのですが、実は逆だったのかもしれない…と、大興奮したものです」
心の中にモヤモヤが生まれる。
1ヶ月前、校舎裏?
「授業中だったようで、見た人は1人だけなので、作り話かもしれないのですが」
胸にズキリと痛みが走る。
授業中、校内で、なんて、一度しかない。
「トイレに行ったときに見たって言ってたから、見間違いの可能性もあるよね」
「そうだね。でも、私はやっぱり、信じたい!」
“いいなあ、私も学校でしてみたいなあ。絶対ドキドキするよね”
男同士でキスしていたという噂で盛り上がったとき、永那ちゃんはそう言ったって言ってた。
だから、佐藤さんと、校内で、キスした?
私とはできないから?
…でもあれは、“ゲイ”ってことから話題をそらしたくて言ったことだとも言っていた。
永那ちゃんを、信じたい。
「そんなこと、どうでもいいじゃないですか」
金井さんの冷たい声が後ろから聞こえてくる。
「いい加減、そういう噂話、やめてもらえませんか?不愉快です」
「え?」
同級生の2人が顔を見合わせて、引きつらせた。
「相当暇ですね?人のことじゃなくて、自分のことに集中したらどうですか?」
「か、金井さん、それは…ちょっと、言い過ぎだよ」
私のために言ってくれている。
それでも、まだ初日なのだから、空気を悪くしないように…という思いが私の脳内でかけ巡る。
「なんでですか?空井先輩も不愉快でしょう?友達がそんなふうに、勝手に噂されて。嫌じゃないんですか?」
友達。
金井さんの気遣いが、伝わってくる。
友達が、そんなふうに噂されていたら…私も、嫌だ。
“ハッキリ言っていい”
永那ちゃんが、そう言ってくれた。
…そうだった。また私は、我慢していた。
「…嫌だ。…うん、嫌だ。友達のこと、勝手に言って、勝手に妄想しないで。いや、妄想は自由かもしれないけど、せめて私を巻き込まないで。知りたいなら、本人に聞いたらいいんじゃない?」
同級生の2人が目を見開く。
「ご、ごめんなさい」
2人が俯いて、正座した。
「空井先輩、少し宿の中を見て回りませんか?小さな売店もあったようですし」
「うん、そうだね」
「先輩方、私達はそのまま食堂に行くので、部屋の鍵は閉めてもらってかまいませんので」
「わ、わかったー」
2つ鍵をもらったから、そのうちの1つを手に取って、2人で部屋から出ていく。
「金井さん、ありがとう」
「いえ、私はただ、本当に不愉快だったから言っただけです」
「そっか。…でも、ありがとう」
金井さんが私をジッと見る。
「先輩、両角先輩と付き合ってから、変わりましたよね、本当。良くも悪くも」
「悪くも?」
「はい、全然自分の意見を言わなくなったじゃないですか。…ハッキリ言う姿、かっこいいなって思っていたのに」
それは、永那ちゃんにも言われたことに似てる。
永那ちゃんの言い方は愛があって、優しかったけれど、こうハッキリ言われると、嫌でも実感させられる。
「それは、自覚してるよ。…なんか、友達ができてね。ああ、今までいなかったんだけど…友達ができて、楽しくて、また昔みたいに、1人になるのが怖くなっちゃったみたいで。最近よく、空気を悪くしないようにって、我慢することが増えたなあって、思うよ」
「友達がいなかったって…そんなサラリと言われても困ります」
本当に哀れな人を見る表情を浮かべられて、そっちのほうが辛い。
「ちなみに、変わった良いところは…?」
辛くなった気持ちを紛らわしたい。
「話しやすくなりました。…丸くなったって言えばいいんですかね?」
「…その両立って難しくない?」
ハッキリ意見を言うけど、話しかけやすい人?
…ちょっと想像できない。
「まあ、難しいでしょうね。…でも、先輩ならできるんじゃないですか?」
予想外の、期待をかけられている言葉に、心がぴょんと跳ねた。
「“知りたいなら本人に聞けばいい”…すごくいい答えだと思いました。相手の知りたいという気持ちを否定せず、でも自分に害が及ぶことも回避する。…私は、思い浮かびませんでした」
金井さんに褒められると、なんだかすごく嬉しい。
普段から厳しく接せられているからかな?
「…やっぱり、私は先輩みたいにはなれませんね」
その言葉に、なぜかドキッとした。
どこかで…どこかで、聞いたような。
「まあ、いいです」
そう言って、金井さんが窓辺から離れる。
彼女がいなくなってしまったから、私も離れる。
「空井さん」
同級生に話しかけられて、ビクッとする。
「な、なに?」
「やっぱり両角さんと佐藤さんは、空井さん…引いては全員に内緒でこっそり付き合ってるってことは、ないですかね?…そういう、怪しいなって雰囲気ありませんでした?」
「え?どうして?」
わけがわからない。
「いや、あの…私達の情報によれば、2人がキスしていたっていう情報があってですね…」
私は眉頭に力が入る。
首を傾げる。
「いつの話?」
「1ヶ月くらい前ですかね?」
1ヶ月前?
「どこで?」
「校舎裏です。佐藤さんが両角さんに迫っていたという情報が…。私達は、やっぱりかっこいい両角さんが攻めで、可愛い佐藤さんが受けだと思っていたのですが、実は逆だったのかもしれない…と、大興奮したものです」
心の中にモヤモヤが生まれる。
1ヶ月前、校舎裏?
「授業中だったようで、見た人は1人だけなので、作り話かもしれないのですが」
胸にズキリと痛みが走る。
授業中、校内で、なんて、一度しかない。
「トイレに行ったときに見たって言ってたから、見間違いの可能性もあるよね」
「そうだね。でも、私はやっぱり、信じたい!」
“いいなあ、私も学校でしてみたいなあ。絶対ドキドキするよね”
男同士でキスしていたという噂で盛り上がったとき、永那ちゃんはそう言ったって言ってた。
だから、佐藤さんと、校内で、キスした?
私とはできないから?
…でもあれは、“ゲイ”ってことから話題をそらしたくて言ったことだとも言っていた。
永那ちゃんを、信じたい。
「そんなこと、どうでもいいじゃないですか」
金井さんの冷たい声が後ろから聞こえてくる。
「いい加減、そういう噂話、やめてもらえませんか?不愉快です」
「え?」
同級生の2人が顔を見合わせて、引きつらせた。
「相当暇ですね?人のことじゃなくて、自分のことに集中したらどうですか?」
「か、金井さん、それは…ちょっと、言い過ぎだよ」
私のために言ってくれている。
それでも、まだ初日なのだから、空気を悪くしないように…という思いが私の脳内でかけ巡る。
「なんでですか?空井先輩も不愉快でしょう?友達がそんなふうに、勝手に噂されて。嫌じゃないんですか?」
友達。
金井さんの気遣いが、伝わってくる。
友達が、そんなふうに噂されていたら…私も、嫌だ。
“ハッキリ言っていい”
永那ちゃんが、そう言ってくれた。
…そうだった。また私は、我慢していた。
「…嫌だ。…うん、嫌だ。友達のこと、勝手に言って、勝手に妄想しないで。いや、妄想は自由かもしれないけど、せめて私を巻き込まないで。知りたいなら、本人に聞いたらいいんじゃない?」
同級生の2人が目を見開く。
「ご、ごめんなさい」
2人が俯いて、正座した。
「空井先輩、少し宿の中を見て回りませんか?小さな売店もあったようですし」
「うん、そうだね」
「先輩方、私達はそのまま食堂に行くので、部屋の鍵は閉めてもらってかまいませんので」
「わ、わかったー」
2つ鍵をもらったから、そのうちの1つを手に取って、2人で部屋から出ていく。
「金井さん、ありがとう」
「いえ、私はただ、本当に不愉快だったから言っただけです」
「そっか。…でも、ありがとう」
金井さんが私をジッと見る。
「先輩、両角先輩と付き合ってから、変わりましたよね、本当。良くも悪くも」
「悪くも?」
「はい、全然自分の意見を言わなくなったじゃないですか。…ハッキリ言う姿、かっこいいなって思っていたのに」
それは、永那ちゃんにも言われたことに似てる。
永那ちゃんの言い方は愛があって、優しかったけれど、こうハッキリ言われると、嫌でも実感させられる。
「それは、自覚してるよ。…なんか、友達ができてね。ああ、今までいなかったんだけど…友達ができて、楽しくて、また昔みたいに、1人になるのが怖くなっちゃったみたいで。最近よく、空気を悪くしないようにって、我慢することが増えたなあって、思うよ」
「友達がいなかったって…そんなサラリと言われても困ります」
本当に哀れな人を見る表情を浮かべられて、そっちのほうが辛い。
「ちなみに、変わった良いところは…?」
辛くなった気持ちを紛らわしたい。
「話しやすくなりました。…丸くなったって言えばいいんですかね?」
「…その両立って難しくない?」
ハッキリ意見を言うけど、話しかけやすい人?
…ちょっと想像できない。
「まあ、難しいでしょうね。…でも、先輩ならできるんじゃないですか?」
予想外の、期待をかけられている言葉に、心がぴょんと跳ねた。
「“知りたいなら本人に聞けばいい”…すごくいい答えだと思いました。相手の知りたいという気持ちを否定せず、でも自分に害が及ぶことも回避する。…私は、思い浮かびませんでした」
金井さんに褒められると、なんだかすごく嬉しい。
普段から厳しく接せられているからかな?
「…やっぱり、私は先輩みたいにはなれませんね」
その言葉に、なぜかドキッとした。
どこかで…どこかで、聞いたような。
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