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137.噂
なんで今?
…なんで今、その話をしたの?
「穂?」
自分を落ち着かせるために、目を閉じる。
「穂?どうしたの?」
フゥーッと息を吐く。
「永那ちゃん」
「なに?」
「それさ、噂通り、キスしてるじゃん」
「え!?」
「“やめろ”って言ったんじゃないの?」
「言ったよ?キスされそうになったから…」
…あー。だめだ。思考が追いつかない。
「あの、さ…永那ちゃんにとって、ほっぺのチューはキスの内に入らないの?」
「え…?えーっと…あんまり、入ってなかった」
奥歯をギリリと噛む。
そして、大きくため息をつく。
「そうなんだ…」
ただ、大きく深呼吸を繰り返す。
眉頭に力がこもる。
「永那ちゃんは、セックスし過ぎて、感覚がおかしいんだね、きっと」
「うぇ!?…そ、そんな大声で」
「だってそうじゃん!…おかしいじゃん!キス、してるじゃん!…私からすれば、ほっぺだろうが口だろうが、あるいは別のところでも、キスはキスだよ!」
「ご、ごめん」
「永那ちゃんは、例えば私が日住君にほっぺにチューされてもいいんだ?そういうことだよね?」
「え?日住?…あ、後輩の?…え、嫌だよ!」
「おかしいじゃん!…自分だけはいいの?」
「…ごめん」
「もう、知らない。帰る」
「穂!…ごめんて」
腕を掴まれる。
「嫌だ。…帰る」
永那ちゃんの手をそっと離して、私は早歩きで家に向かう。
家について、手も洗わず、私は部屋にこもった。
スマホに『ごめんね』とメッセージが入っていたけど、知らんぷりした。
膝を抱えて、溢れ出る涙を、誰もいないのに隠す。
誉に呼ばれたけど、それも無視した。
お母さんがドアをノックして「どうしたの?」と聞いてくれるけど「ほっといて!」と大声を出した。
夜、2人が寝た後、私はタッパーに入っているご飯を食べた。
シャワーを浴びて、永那ちゃんの指の感覚がまだお腹に残っていて、悲しくて、涙がまた出てきた。
虫に刺されたところが、赤く腫れている。
こんなに泣くのは、いつぶりだろう?
…そういえば、前は、永那ちゃんが抱きしめてくれたんだ。
ため息が溢れる。
私、自分がこんなに泣く人だとは思わなかった。
…私って、めんどくさいかな。
でも、嫌だったんだもん。
アメリカ人だったら良かったのかも…。ほっぺにチューしても、挨拶なんでしょ?
寝たのは3時過ぎだった。
起きると、リビングから話し声が聞こえてきた。
ドアを開けたら永那ちゃんが椅子に座ってて、慌てて閉めた。
心臓が一気に動き始める。
「穂、おはよ」
ドアの向こう側から、優しい声で言われる。
「穂」
時計を見ると、もう11時で、お腹がぐぅっと鳴った。
お腹がすいたのとは別に、胸が締めつけられるような感覚が生まれる。
「ごめんね、本当に」
胸がズキズキと痛む。
涙がポロポロ落ちていく。
…永那ちゃん、昨日も寝てないんだし、寝ないとだめなのに。
またクマが酷くなっちゃうよ。
怒りたくないのに。永那ちゃんが大好きなのに。私が永那ちゃんにとって安心できる存在でありたいのに。
目をクシクシ擦って、ドアを開ける。
前髪を指で梳きながら、俯く。
「おはよ。…顔、洗ってくる」
目を合わせずに、洗面台に行く。
目が腫れている。
昨日も今も泣いたんだから、当然だ。
「穂」
鏡越しに永那ちゃんと目が合った。
後ろから抱きしめられて、また胸がキュッと締めつけられる。
「もう絶対、穂を泣かせるようなことしないから」
首筋に優しくキスが落とされる。
「千陽とも、最低限しか関わらないようにする」
私は首を横に振った。
「…違う」
「ん?」
「そうじゃなくて…」
言葉が上手く出てこない。
永那ちゃんは抱きしめたまま、ジッと待ってくれる。
「私が、噂の話をしたとき…そのときに、説明してくれれば良かったの。あんな、帰り際にいきなり言われたら…今まで話したの、なんだったの?ってなるじゃん。しかも、突然、言われて…永那ちゃん、当たり前のことみたいに話して、それも、嫌だった」
「うん、ごめん」
「佐藤さんのことは、私は、好きだよ」
「そうなの?」
「きっと、佐藤さんからすれば、そばにいるのも辛いと思う。でも、一緒に遊んでくれる。何事もないかのように。ありがたいなって、本当に思う」
「そっか」
「…だから、佐藤さんと関わらないでほしいってことじゃない」
「うん」
「ちゃんと、話してほしい。何があったのかとか、何を話したのかとか、ちゃんと」
「うん、わかった」
鏡越しに、また目が合う。
「ごめんね」
そんな優しい顔で、優しい声で、優しく抱きしめられて言われたら…もう…そんなの…「いいよ」って言うしかできない。
私が顔を後ろに向けたら、唇を重ねてくれる。
「好きだよ、穂」
「うん」
頭を撫でられて、手を繋いでリビングに戻った。
…なんで今、その話をしたの?
「穂?」
自分を落ち着かせるために、目を閉じる。
「穂?どうしたの?」
フゥーッと息を吐く。
「永那ちゃん」
「なに?」
「それさ、噂通り、キスしてるじゃん」
「え!?」
「“やめろ”って言ったんじゃないの?」
「言ったよ?キスされそうになったから…」
…あー。だめだ。思考が追いつかない。
「あの、さ…永那ちゃんにとって、ほっぺのチューはキスの内に入らないの?」
「え…?えーっと…あんまり、入ってなかった」
奥歯をギリリと噛む。
そして、大きくため息をつく。
「そうなんだ…」
ただ、大きく深呼吸を繰り返す。
眉頭に力がこもる。
「永那ちゃんは、セックスし過ぎて、感覚がおかしいんだね、きっと」
「うぇ!?…そ、そんな大声で」
「だってそうじゃん!…おかしいじゃん!キス、してるじゃん!…私からすれば、ほっぺだろうが口だろうが、あるいは別のところでも、キスはキスだよ!」
「ご、ごめん」
「永那ちゃんは、例えば私が日住君にほっぺにチューされてもいいんだ?そういうことだよね?」
「え?日住?…あ、後輩の?…え、嫌だよ!」
「おかしいじゃん!…自分だけはいいの?」
「…ごめん」
「もう、知らない。帰る」
「穂!…ごめんて」
腕を掴まれる。
「嫌だ。…帰る」
永那ちゃんの手をそっと離して、私は早歩きで家に向かう。
家について、手も洗わず、私は部屋にこもった。
スマホに『ごめんね』とメッセージが入っていたけど、知らんぷりした。
膝を抱えて、溢れ出る涙を、誰もいないのに隠す。
誉に呼ばれたけど、それも無視した。
お母さんがドアをノックして「どうしたの?」と聞いてくれるけど「ほっといて!」と大声を出した。
夜、2人が寝た後、私はタッパーに入っているご飯を食べた。
シャワーを浴びて、永那ちゃんの指の感覚がまだお腹に残っていて、悲しくて、涙がまた出てきた。
虫に刺されたところが、赤く腫れている。
こんなに泣くのは、いつぶりだろう?
…そういえば、前は、永那ちゃんが抱きしめてくれたんだ。
ため息が溢れる。
私、自分がこんなに泣く人だとは思わなかった。
…私って、めんどくさいかな。
でも、嫌だったんだもん。
アメリカ人だったら良かったのかも…。ほっぺにチューしても、挨拶なんでしょ?
寝たのは3時過ぎだった。
起きると、リビングから話し声が聞こえてきた。
ドアを開けたら永那ちゃんが椅子に座ってて、慌てて閉めた。
心臓が一気に動き始める。
「穂、おはよ」
ドアの向こう側から、優しい声で言われる。
「穂」
時計を見ると、もう11時で、お腹がぐぅっと鳴った。
お腹がすいたのとは別に、胸が締めつけられるような感覚が生まれる。
「ごめんね、本当に」
胸がズキズキと痛む。
涙がポロポロ落ちていく。
…永那ちゃん、昨日も寝てないんだし、寝ないとだめなのに。
またクマが酷くなっちゃうよ。
怒りたくないのに。永那ちゃんが大好きなのに。私が永那ちゃんにとって安心できる存在でありたいのに。
目をクシクシ擦って、ドアを開ける。
前髪を指で梳きながら、俯く。
「おはよ。…顔、洗ってくる」
目を合わせずに、洗面台に行く。
目が腫れている。
昨日も今も泣いたんだから、当然だ。
「穂」
鏡越しに永那ちゃんと目が合った。
後ろから抱きしめられて、また胸がキュッと締めつけられる。
「もう絶対、穂を泣かせるようなことしないから」
首筋に優しくキスが落とされる。
「千陽とも、最低限しか関わらないようにする」
私は首を横に振った。
「…違う」
「ん?」
「そうじゃなくて…」
言葉が上手く出てこない。
永那ちゃんは抱きしめたまま、ジッと待ってくれる。
「私が、噂の話をしたとき…そのときに、説明してくれれば良かったの。あんな、帰り際にいきなり言われたら…今まで話したの、なんだったの?ってなるじゃん。しかも、突然、言われて…永那ちゃん、当たり前のことみたいに話して、それも、嫌だった」
「うん、ごめん」
「佐藤さんのことは、私は、好きだよ」
「そうなの?」
「きっと、佐藤さんからすれば、そばにいるのも辛いと思う。でも、一緒に遊んでくれる。何事もないかのように。ありがたいなって、本当に思う」
「そっか」
「…だから、佐藤さんと関わらないでほしいってことじゃない」
「うん」
「ちゃんと、話してほしい。何があったのかとか、何を話したのかとか、ちゃんと」
「うん、わかった」
鏡越しに、また目が合う。
「ごめんね」
そんな優しい顔で、優しい声で、優しく抱きしめられて言われたら…もう…そんなの…「いいよ」って言うしかできない。
私が顔を後ろに向けたら、唇を重ねてくれる。
「好きだよ、穂」
「うん」
頭を撫でられて、手を繋いでリビングに戻った。
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