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3.成長
143.海とか祭りとか
「じゃあ私がやってあげるから!」
優里にゴシゴシ拭かれる。
「破壊力!」
わけわかんないことを叫んで、落ち込んでいた。
ご飯を食べ終えて、優里が「もう一回海行こー!」と言った。
弟が「行かない?」と聞いてくるから「行かない」と答える。
あたしはサングラスをして、鞄を枕にしてシートに寝転んだ。
「ハァ」と大きなため息が出る。
目を閉じたら、バサッと何かが胸元にかかった。
目を開けると、永那が立っていた。
「寝るなら、ちゃんとそれ、かけとけよ?」
やっぱり、永那に見下ろされるの、好き。
「誉、行こう?」
空井さんが弟を誘う。
弟があたしのほうをチラリと見るけど「いいよいいよ、行っといで」と永那が言った。
…え?永那が残るの?
サングラスを額に上げて見てたら、目が合う。
もう、今日も2人きりにはなれないのだと諦めていたのに。
「お前、ホント濡れるの嫌いだよね」
笑いながら、隣に座る。
あたしは起き上がって、永那がくれたパーカーを膝にかける。
「寝ないの?」
「永那がいるなら、寝ない」
「ふーん」
肩に寄りかかりたい。
抱きつきたい。
触れたい。
「空井さんと、喧嘩したの?」
腕で口元を隠しながら、彼女を見る。
「なんで…って、誉か。うん、まあ」
「どうしてか、聞いちゃだめ?」
永那の冷めた視線がこちらを向く。
目が合って、すぐに遠くを見てしまう。
「お前にほっぺにキスされたこと、言わなかったから」
心臓が跳ねる。
「バレたんだ?」
永那の左眉が上がって、少し不機嫌になる。
「どっかの誰かが見てたんだと」
「へえ。もうあたしと関わらないでって言われなかったの?」
…良い子ちゃんの空井さんは、そんなこと言わないかな?
本当は、我慢してるんじゃないの?
「言われなかった。ってか、私が言わなかったことを怒られたんだよ」
眉間にシワが寄る。
「どういうこと?」
「穂は、お前のこと好きなんだって」
余計、意味がわからない。
「お前が私にキスしたことを怒ったというよりも、私がお前にキスされたのを穂に言わなかったことがダメだったんだって」
じゃあ、あたしには全く怒ってないってこと?
どういうこと?
奥歯がギリリと鳴る。
「あたしが今キスしても、怒られないってこと?」
「したら、私が怒る」
永那があたしを睨む。
「ハグは?」
「…だめ」
胸がチクチク痛む。
…そんなハッキリ言わなくても。
「寄りかかりたい」
「だめだって」
永那がイライラする。
「永那が“私を好きってことにすれば?”って言ったんじゃん」
あたしはパーカーに顔をうずめる。
「永那が言ったから、あたし、好きになったのに」
ギュッと布を握りしめる。
「責任取ってよ。…どうすればいいの」
「本当に好きになれなんて、言ってないよ」
「でも、好きになっちゃったの。本当に、好きになっちゃったの。どうすればいいの!」
気づけば大声が出ていて、布に雫が跡をつけた。
「…ごめん」
「謝られても、わからないよ」
一度溢れた涙はとどまることを知らないみたいに、どんどん流れ出てくる。
「あたしには、永那しかいないのに…」
長い沈黙がおりる。
周りの楽しげな声がうるさい。
もう、消えていなくなりたい。
もう…もう…嫌だ。
ふいに、肩を抱かれた。
「だめなんじゃ、ないの?」
口ではそう言っても、嬉しくて嬉しくてたまらない。
「少しだけ、だよ。…だから、泣かないで」
本当、永那は甘いんだから。
彼女のぬくもりを感じれば泣き止むと思ったのに、全然涙が止まる気配はなくて、そのうち声が漏れ出た。
肩を優しく叩かれて、もっと泣く。
やっと触れられた。
やっと、心が満たされていく。
落ち着いてきて、頭をポンポンと撫でられる。
顔を上げると、永那は困ったように笑っていた。
「千陽さ、なんで誉に日焼け止め塗らせてたの?」
額まで上げていたサングラスをおろされる。
泣き腫らした目が、隠される。
…そういう気遣いをサラッとできてしまうところに相手がドキドキするってわかってないから嫌になる。
「胸までさわらせようとしてさ」
「…べつに。意味なんてない。からかってやろうと思っただけ」
「ふーん。…けっこう気に入ってんだ?」
「は?なんでそうなるの?」
「だってお前、私か優里にしかさわらせないじゃん、自分のこと。…日焼け止めなんて、誉から塗るって言うとは思えないし。お前が言ったんでしょ?“塗って”って」
あたしは顎を膝につけて、ボーッと砂を見た。
「千陽ー!」
びしょ濡れの弟が1人で走ってきた。
ジッと見ていたら、目の前でしゃがまれる。
「見て、シーグラス?って言うんだって。綺麗だったから、千陽のも取ってきた。あげる」
…なにそれ。そんな子供っぽいもの、全然いらないし。
「こんな、割れてない貝殻もあったよ」
小さな巻貝。
「はい」
そう差し出されると、手を出すしかなくて。
海水で濡れて、太陽光に照らされるそれが、少し綺麗に見えた。
「誉、ここいて」
「ん?」
「私、穂とイチャイチャしてくるから」
「ああ、わかった」
永那の背中を睨む。
振り向かれて、ニヤリと笑われた。
そんな姿もかっこよくて、ドキドキするから、自分が嫌になる。
優里にゴシゴシ拭かれる。
「破壊力!」
わけわかんないことを叫んで、落ち込んでいた。
ご飯を食べ終えて、優里が「もう一回海行こー!」と言った。
弟が「行かない?」と聞いてくるから「行かない」と答える。
あたしはサングラスをして、鞄を枕にしてシートに寝転んだ。
「ハァ」と大きなため息が出る。
目を閉じたら、バサッと何かが胸元にかかった。
目を開けると、永那が立っていた。
「寝るなら、ちゃんとそれ、かけとけよ?」
やっぱり、永那に見下ろされるの、好き。
「誉、行こう?」
空井さんが弟を誘う。
弟があたしのほうをチラリと見るけど「いいよいいよ、行っといで」と永那が言った。
…え?永那が残るの?
サングラスを額に上げて見てたら、目が合う。
もう、今日も2人きりにはなれないのだと諦めていたのに。
「お前、ホント濡れるの嫌いだよね」
笑いながら、隣に座る。
あたしは起き上がって、永那がくれたパーカーを膝にかける。
「寝ないの?」
「永那がいるなら、寝ない」
「ふーん」
肩に寄りかかりたい。
抱きつきたい。
触れたい。
「空井さんと、喧嘩したの?」
腕で口元を隠しながら、彼女を見る。
「なんで…って、誉か。うん、まあ」
「どうしてか、聞いちゃだめ?」
永那の冷めた視線がこちらを向く。
目が合って、すぐに遠くを見てしまう。
「お前にほっぺにキスされたこと、言わなかったから」
心臓が跳ねる。
「バレたんだ?」
永那の左眉が上がって、少し不機嫌になる。
「どっかの誰かが見てたんだと」
「へえ。もうあたしと関わらないでって言われなかったの?」
…良い子ちゃんの空井さんは、そんなこと言わないかな?
本当は、我慢してるんじゃないの?
「言われなかった。ってか、私が言わなかったことを怒られたんだよ」
眉間にシワが寄る。
「どういうこと?」
「穂は、お前のこと好きなんだって」
余計、意味がわからない。
「お前が私にキスしたことを怒ったというよりも、私がお前にキスされたのを穂に言わなかったことがダメだったんだって」
じゃあ、あたしには全く怒ってないってこと?
どういうこと?
奥歯がギリリと鳴る。
「あたしが今キスしても、怒られないってこと?」
「したら、私が怒る」
永那があたしを睨む。
「ハグは?」
「…だめ」
胸がチクチク痛む。
…そんなハッキリ言わなくても。
「寄りかかりたい」
「だめだって」
永那がイライラする。
「永那が“私を好きってことにすれば?”って言ったんじゃん」
あたしはパーカーに顔をうずめる。
「永那が言ったから、あたし、好きになったのに」
ギュッと布を握りしめる。
「責任取ってよ。…どうすればいいの」
「本当に好きになれなんて、言ってないよ」
「でも、好きになっちゃったの。本当に、好きになっちゃったの。どうすればいいの!」
気づけば大声が出ていて、布に雫が跡をつけた。
「…ごめん」
「謝られても、わからないよ」
一度溢れた涙はとどまることを知らないみたいに、どんどん流れ出てくる。
「あたしには、永那しかいないのに…」
長い沈黙がおりる。
周りの楽しげな声がうるさい。
もう、消えていなくなりたい。
もう…もう…嫌だ。
ふいに、肩を抱かれた。
「だめなんじゃ、ないの?」
口ではそう言っても、嬉しくて嬉しくてたまらない。
「少しだけ、だよ。…だから、泣かないで」
本当、永那は甘いんだから。
彼女のぬくもりを感じれば泣き止むと思ったのに、全然涙が止まる気配はなくて、そのうち声が漏れ出た。
肩を優しく叩かれて、もっと泣く。
やっと触れられた。
やっと、心が満たされていく。
落ち着いてきて、頭をポンポンと撫でられる。
顔を上げると、永那は困ったように笑っていた。
「千陽さ、なんで誉に日焼け止め塗らせてたの?」
額まで上げていたサングラスをおろされる。
泣き腫らした目が、隠される。
…そういう気遣いをサラッとできてしまうところに相手がドキドキするってわかってないから嫌になる。
「胸までさわらせようとしてさ」
「…べつに。意味なんてない。からかってやろうと思っただけ」
「ふーん。…けっこう気に入ってんだ?」
「は?なんでそうなるの?」
「だってお前、私か優里にしかさわらせないじゃん、自分のこと。…日焼け止めなんて、誉から塗るって言うとは思えないし。お前が言ったんでしょ?“塗って”って」
あたしは顎を膝につけて、ボーッと砂を見た。
「千陽ー!」
びしょ濡れの弟が1人で走ってきた。
ジッと見ていたら、目の前でしゃがまれる。
「見て、シーグラス?って言うんだって。綺麗だったから、千陽のも取ってきた。あげる」
…なにそれ。そんな子供っぽいもの、全然いらないし。
「こんな、割れてない貝殻もあったよ」
小さな巻貝。
「はい」
そう差し出されると、手を出すしかなくて。
海水で濡れて、太陽光に照らされるそれが、少し綺麗に見えた。
「誉、ここいて」
「ん?」
「私、穂とイチャイチャしてくるから」
「ああ、わかった」
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振り向かれて、ニヤリと笑われた。
そんな姿もかっこよくて、ドキドキするから、自分が嫌になる。
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