文字の大きさ
大
中
小
145 / 595
3.成長
144.海とか祭りとか
びしょ濡れのまま、弟が隣に座る。
地面が少し斜めっているから、水がこっちに流れてくる。
ポケットから、いくつかの貝殻とシーグラスを取り出す。
「いっぱい取ってきたんだけど、千陽にあげたやつが1番綺麗だよね?」
彼の手元がキラキラと輝く。
サングラス越しだから、全部同じような色に見えるけど。
あたしは欠けているシーグラスを取る。
「これが1番綺麗」
「これ?そう?…じゃあ、これあげる」
髪から水が滴り落ちている。
あたしはため息をついて、鞄からタオルを出した。
髪を拭いてあげると「ありがとう」と、はにかまれる。
その笑顔が空井さんに似ていて、あたしは目をそらした。
“穂は、お前のこと好きなんだって”
なんで?
あたし、空井さんに嫌なことばっかりしてたと思うんだけど。
「ねえ」
「なに?」
「あたし、さっき背中、塗ってもらってないんだけど?」
「え?」
素っ頓狂な声を出す。
「優里のは塗れて、あたしのは嫌?」
「あ、いや、いいよ。ちょっと待って」
鞄に無造作にシーグラスと貝殻を入れて、タオルで手を拭く。
日焼け止めを振って、手に出すから、あたしは背を向ける。
「紐の内側も?」
あたしは頷く。
少し伸びた髪を前に持っていく。
あたしは目を閉じて、じっとする。
「あのさ、さっき結局お金払ってもらっちゃったから、俺、なんか買ってくるよ?」
「いらない」
「え、でもさっき」
「あれは冗談」
「そ、そーなの?」
永那は塗り方が雑だったけど、弟は丁寧で、優しい。
永那がそうしてくれていると想像すると萌えるけど、全然現実的じゃない。
…少なくとも、あたしには。
「はい、できた」
あたしは振り向いて、弟をジッと見る。
「な、なに?」
「まだ、できてない」
「え?どこ?」
あたしは手を背中に回して、ビキニのボトムのゴムに指を引っ掛ける。
「布の下まで塗らないと、跡が残るでしょ?」
カーッと弟の顔が赤くなっていく。
「む、無理…」
両手で顔を覆う。
見た後に覆ったって意味ないのに。
あたしは吹き出して笑った。
バカみたい。
自分で日焼け止めを出して、塗る。
「やっぱりかき氷食べた~い」
「え!?う、うん。わかった!何味?」
「ぶどう」
「ぶどう?…あったかなあ?なかったら何がいい?」
「マンゴー」
「え!?そっちのほうがなくない!?…あるかなあ?」
「さくらんぼ」
「かき氷のさくらんぼ味、見たことないよ!」
あたしは膝に頬杖をついて、そっぽを向く。
「もう…!いちごね!いちご!なかったら、いちご!」
あたしは、歩き出す弟の足首を掴む。
「おぅっ、あぶなっ」
「あたしを1人にするの?」
「あ、ごめん…そうだよね。ど、どうしよう。一緒に行く?」
「やだ」
「えー…」
弟がポリポリと頭を掻く。
「嘘」
立ち上がって、弟よりも先に歩き出す。
弟が小走りで追いついて、首からかけている防水ケースからお金を出す。
「俺はメロンにしよ」
「ねえ」
「なに?」
「一緒にお祭り行ってあげてもいいよ?」
「本当?」
「でも、2人きりじゃなきゃ嫌。あんたの友達が来るなら、絶対嫌」
「わかった!」
弟を睨む。
「なんで“わかった”の?」
「え?どういう意味?」
「べつに。なんでもない」
「え、え、どういう意味?教えてよ」
うざ。
無視する。
「千陽、教えてよ。わかんないよ」
手を掴まれる。
フラッシュバックして、体が強張る。
「千陽?…千陽?どうしたの?」
背中をさすられて、ようやく呼吸ができる。
しゃがみこんで、俯いた。
「大丈夫?ごめんね?…ごめんね」
弟もそばでしゃがむのがわかる。
ずっと背中をさすってくれる。
「あたしの言葉なんて、適当に聞き流して」
永那はいつも“ふーん”だった。
「…うん。わかった」
なんで“わかった”の。
あたしを優先しないで。
あたしを1番大事にして。
…矛盾する気持ち。
「でもさ?…お祭りは、2人のほうがいいんだよね?」
あー、嫌い。
なにこいつ。嫌い。クソ生意気なガキのくせに。
全然、わかってないじゃん。
涙が溢れ出てくる。
サングラスかけといてよかった。
「早くかき氷買ってよ」
「う、うん。じゃあ、行こう?」
弟は立ち上がって、手を差し出す。
あたしは指で涙を拭って、自力で立ち上がる。
あんたはあたしの、王子様なんかじゃない。
マンゴーのかき氷、あるし。
弟が「マンゴー、あったねー」なんて笑うから、無視した。
弟がお金を払って、あたしたちはシートに戻る。
「あ!かき氷!いいなあ!」
3人が帰ってきていた。
頭まで浸かったらしく、3人ともびしょ濡れで、タオルで体を拭いていた。
あたしはシートに座って、かき氷を食べる。
「優里、いる?」
弟が自分のかき氷を優里に差し出す。
「わー!嬉しい!ありがとう!」
優里が何口か食べる。
「私もちょーだい」
そのまま優里が永那にわたして、永那がバクバク食べる。
「おい、永那!食べすぎ!」
空井さんはその様子を楽しそうに見ていた。
弟は、永那に半分以上食べられて肩を落としている。
「永那には、もう絶対あげない」
弟が永那を睨む。
地面が少し斜めっているから、水がこっちに流れてくる。
ポケットから、いくつかの貝殻とシーグラスを取り出す。
「いっぱい取ってきたんだけど、千陽にあげたやつが1番綺麗だよね?」
彼の手元がキラキラと輝く。
サングラス越しだから、全部同じような色に見えるけど。
あたしは欠けているシーグラスを取る。
「これが1番綺麗」
「これ?そう?…じゃあ、これあげる」
髪から水が滴り落ちている。
あたしはため息をついて、鞄からタオルを出した。
髪を拭いてあげると「ありがとう」と、はにかまれる。
その笑顔が空井さんに似ていて、あたしは目をそらした。
“穂は、お前のこと好きなんだって”
なんで?
あたし、空井さんに嫌なことばっかりしてたと思うんだけど。
「ねえ」
「なに?」
「あたし、さっき背中、塗ってもらってないんだけど?」
「え?」
素っ頓狂な声を出す。
「優里のは塗れて、あたしのは嫌?」
「あ、いや、いいよ。ちょっと待って」
鞄に無造作にシーグラスと貝殻を入れて、タオルで手を拭く。
日焼け止めを振って、手に出すから、あたしは背を向ける。
「紐の内側も?」
あたしは頷く。
少し伸びた髪を前に持っていく。
あたしは目を閉じて、じっとする。
「あのさ、さっき結局お金払ってもらっちゃったから、俺、なんか買ってくるよ?」
「いらない」
「え、でもさっき」
「あれは冗談」
「そ、そーなの?」
永那は塗り方が雑だったけど、弟は丁寧で、優しい。
永那がそうしてくれていると想像すると萌えるけど、全然現実的じゃない。
…少なくとも、あたしには。
「はい、できた」
あたしは振り向いて、弟をジッと見る。
「な、なに?」
「まだ、できてない」
「え?どこ?」
あたしは手を背中に回して、ビキニのボトムのゴムに指を引っ掛ける。
「布の下まで塗らないと、跡が残るでしょ?」
カーッと弟の顔が赤くなっていく。
「む、無理…」
両手で顔を覆う。
見た後に覆ったって意味ないのに。
あたしは吹き出して笑った。
バカみたい。
自分で日焼け止めを出して、塗る。
「やっぱりかき氷食べた~い」
「え!?う、うん。わかった!何味?」
「ぶどう」
「ぶどう?…あったかなあ?なかったら何がいい?」
「マンゴー」
「え!?そっちのほうがなくない!?…あるかなあ?」
「さくらんぼ」
「かき氷のさくらんぼ味、見たことないよ!」
あたしは膝に頬杖をついて、そっぽを向く。
「もう…!いちごね!いちご!なかったら、いちご!」
あたしは、歩き出す弟の足首を掴む。
「おぅっ、あぶなっ」
「あたしを1人にするの?」
「あ、ごめん…そうだよね。ど、どうしよう。一緒に行く?」
「やだ」
「えー…」
弟がポリポリと頭を掻く。
「嘘」
立ち上がって、弟よりも先に歩き出す。
弟が小走りで追いついて、首からかけている防水ケースからお金を出す。
「俺はメロンにしよ」
「ねえ」
「なに?」
「一緒にお祭り行ってあげてもいいよ?」
「本当?」
「でも、2人きりじゃなきゃ嫌。あんたの友達が来るなら、絶対嫌」
「わかった!」
弟を睨む。
「なんで“わかった”の?」
「え?どういう意味?」
「べつに。なんでもない」
「え、え、どういう意味?教えてよ」
うざ。
無視する。
「千陽、教えてよ。わかんないよ」
手を掴まれる。
フラッシュバックして、体が強張る。
「千陽?…千陽?どうしたの?」
背中をさすられて、ようやく呼吸ができる。
しゃがみこんで、俯いた。
「大丈夫?ごめんね?…ごめんね」
弟もそばでしゃがむのがわかる。
ずっと背中をさすってくれる。
「あたしの言葉なんて、適当に聞き流して」
永那はいつも“ふーん”だった。
「…うん。わかった」
なんで“わかった”の。
あたしを優先しないで。
あたしを1番大事にして。
…矛盾する気持ち。
「でもさ?…お祭りは、2人のほうがいいんだよね?」
あー、嫌い。
なにこいつ。嫌い。クソ生意気なガキのくせに。
全然、わかってないじゃん。
涙が溢れ出てくる。
サングラスかけといてよかった。
「早くかき氷買ってよ」
「う、うん。じゃあ、行こう?」
弟は立ち上がって、手を差し出す。
あたしは指で涙を拭って、自力で立ち上がる。
あんたはあたしの、王子様なんかじゃない。
マンゴーのかき氷、あるし。
弟が「マンゴー、あったねー」なんて笑うから、無視した。
弟がお金を払って、あたしたちはシートに戻る。
「あ!かき氷!いいなあ!」
3人が帰ってきていた。
頭まで浸かったらしく、3人ともびしょ濡れで、タオルで体を拭いていた。
あたしはシートに座って、かき氷を食べる。
「優里、いる?」
弟が自分のかき氷を優里に差し出す。
「わー!嬉しい!ありがとう!」
優里が何口か食べる。
「私もちょーだい」
そのまま優里が永那にわたして、永那がバクバク食べる。
「おい、永那!食べすぎ!」
空井さんはその様子を楽しそうに見ていた。
弟は、永那に半分以上食べられて肩を落としている。
「永那には、もう絶対あげない」
弟が永那を睨む。
感想 56
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
✽全28話完結
✽辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
✽他誌にも掲載中です。
✽2026.4/11 エブリスタ用に使用している表紙に変更しました。
→表紙はイラストをGrok タイトルをChatGPTでAI生成しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?