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3.成長
156.夏が終わる
家に入ると、お母さんがいた。
「お、お邪魔します」
他人の母親なんて、優里の母親以外会ったこともない。
彼女はビールを飲んでいた。
…なんか、イメージしていた空井さんのお母さんと全然違う。
もっと…女性らしいというか…そういうイメージだったけど、どちらかと言うとサバサバしてて、好感を抱いた。
「こんばんはー!…あらー!可愛いー!2人とも、すんごい可愛い!!」
少し酔っている。
「もう、お母さん…。ごめんね」
空井さんが眉をハの字にして、あたしを見る。
2人で部屋に行って、着替える。
浴衣は、脱ぐのは簡単だった。
荷物を持って部屋を出る。
「あら?もう帰るの?」
「はい、お邪魔しました」
「えー!全然!全然邪魔じゃないよー!…っていうか、もう9時!…こんな夜に…こんな可愛い子が1人で帰るなんて、心配」
お母さんは立ち上がって、あたしを見る。
「泊まってったら?…そうだよ、そうしなよ!」
笑いながら肩を叩かれてびっくりする。
「お母さん、友達に絡まないで」
空井さんに“友達”と呼ばれて、少し心臓が跳ねる。
「飲みすぎ」
「いいじゃーん、今日お祭りなんだしー。お母さん仕事頑張ったんだよー?帰りすんごい混んでて疲れたー、褒めてー」
「えらいえらい」
…永那への扱いが上手いのは、このお母さんがいるからなのかな。
テーブルの上には、帰りに買ったのか、たこ焼きの残骸があった。
「ねー、穂ー…こんな可愛い子…ひっく…可愛い、子…1人で帰しちゃだめでしょー?」
「千陽、泊まってったら?」
弟が言う。
「いい、の?」
「うん!お母さんも言ってるし」
空井さんを見ると、困ったように笑っていた。
「服は…私のでいいかな?」
友達の家に、お泊まり…?
初めてのことにドキドキする。
っていうか、これってもしかして、永那もしたことないんじゃないの?
口元が綻ぶから、手で隠す。
永那に勝った気分。
あたしはママに連絡して、了承を得る。
先にお風呂に入らせてもらう。
ルームウェアは、空井さんのを借りる。
空井さんはあたしよりほんの少し身長が高いけど、一般的なMサイズだから同じ服が着れる。
ショーツと歯ブラシは、空井さんと2人で近所のコンビニに行って買った。
「本当、お母さん酔っ払っててごめんね」
空井さんがまた謝るから「べつに」と返した。
「永那と、何してたの?」
「結局、ずっとあのままで…焼きそばを2つだけ買って帰ったよ」
「ふーん」
なにそれ。
あたしには全くお構いなしですか。
寂しさが膨らんでいく。
そんな会話をして帰った。
湯船に浸かると、足の浮腫が和らぐ気がした。
フゥッと息を吐く。
人の家のお風呂なんて、ちょっと緊張するけど、楽しさもある。
空井さんの使っている石鹸類をしっかり確認。
ドライヤーを借りてから、リビングに戻る。
あたしと入れ替わりで、弟が入った。
「あの、佐藤さん」
「なに?」
「家に予備の布団がなくて…その、あたしと同じベッドで寝るのでも、大丈夫かな?…もしあれだったら、私、誉と寝るけど」
「楽しみ」
「え!?」
あたしが笑うと、空井さんは気まずそうに目をそらした。
お母さんに名前やら住んでいるところやらを聞かれて答えたけど、2周目の同じ質問が始まって、空井さんがお母さんを引っ張って部屋に連れて行った。
「本当、ごめんね。なんか、今日は酷いな」
「いつもじゃないんだ」
空井さんが苦笑いを浮かべる。
「いつもではないよ。仕事が一段落したり、疲れ過ぎたりすると、ああなっちゃうんだよね」
空井さんがあたしのお茶を用意してくれる。
冷たい麦茶が喉を通って、疲れが解けていく。
弟がお風呂から出て、空井さんが入る。
「ゲームする?」
「今から?」
時計を見ると、もう10時を過ぎていた。
「…姉ちゃんに怒られるか」
弟は肩を落として、テレビをつける。
あたしはいつも0時過ぎに寝てるから、べつにやっても良かったけど。
「あんた、いつも何時に寝てんの?」
「11時」
…じゃあ、絶対できないじゃん。
はしゃいで疲れたのか、弟は口を大きく開けてあくびをした。
空井さんがお風呂から出た。
「誉、歯磨きしちゃって」
まだ髪が濡れている。
…永那は、こんな姿、見たことあるのかな?
白地に赤い小花柄のガーゼ生地のルームウェア。
あたしはサテン生地のブルーグレーのルームウェアを借りている。
全体的に良い物を持っているような気がするけど、お母さんの仕事ってなんなんだろう?
前に難しそうな本が山積みになっていた。
医療系…なのかな?
よくニュースなんかでは、シングルマザーは貧困だって言われていると思うんだけど、空井さんの家は違いそう。
空井さんがあたしの横に座って、髪をタオルで拭いている。
たまに、お母さんの部屋から唸り声が聞こえてくる。
空井さんは苦笑しながら「気にしないで」と言う。
弟が歯磨きを終えて「佐藤さんも歯磨きする?」と聞いてくれる。
あたしが頷いて、一緒に廊下に出る。
…こんな家あるんだって思ったけど、空井さんの家は廊下に洗面台がある。
洗面台を隠すように袖壁があって、その奥には収納スペースがある。
浴室の脱衣場にはドラム式洗濯機と全身鏡があるだけで、洗面台はない。
広めの洗面台だから、2人で並んでも問題ない。
空井さんがドライヤーをかける。
あたしは横で歯を磨く。
あたしが先に歯を磨き終えると、まだドライヤーをしていた空井さんが「先行ってていいよ」と言ってくれた。
リビングに戻ると、弟がテレビを見ながら船を漕いでいた。
あたしはその横に座って「寝てきたら?」と言った。
ムニャムニャ口を動かしながら、彼は目を擦る。
頷いて「おやすみ」と言われたから、返す。
ボーッとテレビを見ていたら、空井さんが戻ってきた。
「誉は?」
「寝た」
「そっか、今日楽しそうにしてたもんね。私もちょっと疲れちゃった」
そう笑うから「じゃあ、もうベッド行く?」と聞くと「そうだね」と返された。
「お、お邪魔します」
他人の母親なんて、優里の母親以外会ったこともない。
彼女はビールを飲んでいた。
…なんか、イメージしていた空井さんのお母さんと全然違う。
もっと…女性らしいというか…そういうイメージだったけど、どちらかと言うとサバサバしてて、好感を抱いた。
「こんばんはー!…あらー!可愛いー!2人とも、すんごい可愛い!!」
少し酔っている。
「もう、お母さん…。ごめんね」
空井さんが眉をハの字にして、あたしを見る。
2人で部屋に行って、着替える。
浴衣は、脱ぐのは簡単だった。
荷物を持って部屋を出る。
「あら?もう帰るの?」
「はい、お邪魔しました」
「えー!全然!全然邪魔じゃないよー!…っていうか、もう9時!…こんな夜に…こんな可愛い子が1人で帰るなんて、心配」
お母さんは立ち上がって、あたしを見る。
「泊まってったら?…そうだよ、そうしなよ!」
笑いながら肩を叩かれてびっくりする。
「お母さん、友達に絡まないで」
空井さんに“友達”と呼ばれて、少し心臓が跳ねる。
「飲みすぎ」
「いいじゃーん、今日お祭りなんだしー。お母さん仕事頑張ったんだよー?帰りすんごい混んでて疲れたー、褒めてー」
「えらいえらい」
…永那への扱いが上手いのは、このお母さんがいるからなのかな。
テーブルの上には、帰りに買ったのか、たこ焼きの残骸があった。
「ねー、穂ー…こんな可愛い子…ひっく…可愛い、子…1人で帰しちゃだめでしょー?」
「千陽、泊まってったら?」
弟が言う。
「いい、の?」
「うん!お母さんも言ってるし」
空井さんを見ると、困ったように笑っていた。
「服は…私のでいいかな?」
友達の家に、お泊まり…?
初めてのことにドキドキする。
っていうか、これってもしかして、永那もしたことないんじゃないの?
口元が綻ぶから、手で隠す。
永那に勝った気分。
あたしはママに連絡して、了承を得る。
先にお風呂に入らせてもらう。
ルームウェアは、空井さんのを借りる。
空井さんはあたしよりほんの少し身長が高いけど、一般的なMサイズだから同じ服が着れる。
ショーツと歯ブラシは、空井さんと2人で近所のコンビニに行って買った。
「本当、お母さん酔っ払っててごめんね」
空井さんがまた謝るから「べつに」と返した。
「永那と、何してたの?」
「結局、ずっとあのままで…焼きそばを2つだけ買って帰ったよ」
「ふーん」
なにそれ。
あたしには全くお構いなしですか。
寂しさが膨らんでいく。
そんな会話をして帰った。
湯船に浸かると、足の浮腫が和らぐ気がした。
フゥッと息を吐く。
人の家のお風呂なんて、ちょっと緊張するけど、楽しさもある。
空井さんの使っている石鹸類をしっかり確認。
ドライヤーを借りてから、リビングに戻る。
あたしと入れ替わりで、弟が入った。
「あの、佐藤さん」
「なに?」
「家に予備の布団がなくて…その、あたしと同じベッドで寝るのでも、大丈夫かな?…もしあれだったら、私、誉と寝るけど」
「楽しみ」
「え!?」
あたしが笑うと、空井さんは気まずそうに目をそらした。
お母さんに名前やら住んでいるところやらを聞かれて答えたけど、2周目の同じ質問が始まって、空井さんがお母さんを引っ張って部屋に連れて行った。
「本当、ごめんね。なんか、今日は酷いな」
「いつもじゃないんだ」
空井さんが苦笑いを浮かべる。
「いつもではないよ。仕事が一段落したり、疲れ過ぎたりすると、ああなっちゃうんだよね」
空井さんがあたしのお茶を用意してくれる。
冷たい麦茶が喉を通って、疲れが解けていく。
弟がお風呂から出て、空井さんが入る。
「ゲームする?」
「今から?」
時計を見ると、もう10時を過ぎていた。
「…姉ちゃんに怒られるか」
弟は肩を落として、テレビをつける。
あたしはいつも0時過ぎに寝てるから、べつにやっても良かったけど。
「あんた、いつも何時に寝てんの?」
「11時」
…じゃあ、絶対できないじゃん。
はしゃいで疲れたのか、弟は口を大きく開けてあくびをした。
空井さんがお風呂から出た。
「誉、歯磨きしちゃって」
まだ髪が濡れている。
…永那は、こんな姿、見たことあるのかな?
白地に赤い小花柄のガーゼ生地のルームウェア。
あたしはサテン生地のブルーグレーのルームウェアを借りている。
全体的に良い物を持っているような気がするけど、お母さんの仕事ってなんなんだろう?
前に難しそうな本が山積みになっていた。
医療系…なのかな?
よくニュースなんかでは、シングルマザーは貧困だって言われていると思うんだけど、空井さんの家は違いそう。
空井さんがあたしの横に座って、髪をタオルで拭いている。
たまに、お母さんの部屋から唸り声が聞こえてくる。
空井さんは苦笑しながら「気にしないで」と言う。
弟が歯磨きを終えて「佐藤さんも歯磨きする?」と聞いてくれる。
あたしが頷いて、一緒に廊下に出る。
…こんな家あるんだって思ったけど、空井さんの家は廊下に洗面台がある。
洗面台を隠すように袖壁があって、その奥には収納スペースがある。
浴室の脱衣場にはドラム式洗濯機と全身鏡があるだけで、洗面台はない。
広めの洗面台だから、2人で並んでも問題ない。
空井さんがドライヤーをかける。
あたしは横で歯を磨く。
あたしが先に歯を磨き終えると、まだドライヤーをしていた空井さんが「先行ってていいよ」と言ってくれた。
リビングに戻ると、弟がテレビを見ながら船を漕いでいた。
あたしはその横に座って「寝てきたら?」と言った。
ムニャムニャ口を動かしながら、彼は目を擦る。
頷いて「おやすみ」と言われたから、返す。
ボーッとテレビを見ていたら、空井さんが戻ってきた。
「誉は?」
「寝た」
「そっか、今日楽しそうにしてたもんね。私もちょっと疲れちゃった」
そう笑うから「じゃあ、もうベッド行く?」と聞くと「そうだね」と返された。
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