いたずらはため息と共に

常森 楽

文字の大きさ
160 / 595
3.成長

159.夏が終わる

「おしまい」
スッと手が抜かれる。
「このこと、永那ちゃんに、ちゃんと言うからね」
「…そんなこと、言って…怒られるんじゃない?」
「千陽のせいにする」
「あたし、永那に絶交されるかも…」
そうなったら、嫌だな。
「そしたら、私が一緒にいてあげるよ」
あたしは目を閉じて、ショーツから手を抜く。
キュゥッと胸が締め付けられる。
「それも、永那に怒られるかもよ?」
「そうかもね。…でも、千陽が泣いているのを、永那ちゃんだって放ってなんかおけないでしょ?」
あたしはフフッと笑う。
空井さんがティッシュを取ってくれる。
…ちょっと、恥ずかしくなってきた。
ティッシュを受け取って、指を拭う。

あたしが仰向けになると、空井さんの顔が近くて、ドキドキした。
「やっぱりさ、こんなこと・・・・・、普通友達には言わないよね?」
「そうだね」
「もー」
空井さんの視線が、あたしの胸元にいく。
まだ胸は曝け出されていて、そんなに見られたら、また…。
「綺麗だね」
「自分じゃ、わかんない」
「綺麗だよ」
…惚れさせようとしてない?
空井さんはボタンを1つずつかけてくれる。
「寝よっか」
あたしは頷く。

彼女が仰向けで寝転ぶ。
あたしは右腕に抱きつく。
「ねえ」
「ん?」
「名前、呼んで」
「…千陽」
「もう一回」
「千陽」
「もう、一回」
空井さんはフフッと笑う。
「千陽」
「明日から“佐藤さん”に戻してね?」
「いいよ」
「じゃあ、もう一回呼んで」
「千陽」
呼ばれるたびに、安心する。
「もう一回」
「千陽」
「あたしのこと、好き?」
「好きだよ、千陽」
嬉しくて、彼女の腕を強く握る。
「痛いよ」
彼女が笑う。
「もう一回、呼んで」
「千陽、好きだよ」
キュゥッと胸が締め付けられる。
「もう、寝よう」
嫌だけど、あたしは頷く。
「おやすみ、千陽」
「おやすみ、穂」
あたしの瞼はすぐに重たくなって、意識がなくなった。

アラームの音がけたたましく鳴って、目を覚ます。
窓から日差しが射し込んでいて、眩しい。
横を向くと、ちょうど彼女も目覚めたところだった。
目が合って、彼女が笑う。
「おはよう、“佐藤さん”」
「おはよ、空井さん」
寂しくなって、彼女の手を掴む。
「やっぱり…部屋のなかでは」
「おはよう、千陽」
心臓が跳ねる。
あたしはモソモソと彼女の腕に抱きつく。
「おはよ、穂」
「みんなの前でも“千陽”でいいんじゃない?」
「だめ、絶対」
彼女が楽しそうに笑う。
…キスしたい。
彼女があたしを見る。
「ダメだよ?…もうこれ以上は、本当に永那ちゃんがおかしくなっちゃう。それに…既に、永那ちゃんにどう話せばいいか、わからないのに…これ以上は…」
あたしは唇を尖らせる。

「弟とキスするのは良いのかな?」
穂が目を見開く。
「弟って、なんか、永那と穂を足して2で割ったみたいな性格してるし…」
「…大きくなるまで、待ってあげて」
「待てない場合は、どうすればいい?穂とキスしてもいい?」
「それは、永那ちゃんがおかしくなっちゃうからダメだってば」
「じゃあ、永那とキスすればいいのかな?」
穂が眉間を親指と人差し指で押す。
「優里ちゃんは?」
「は?なんで優里?…あり得ないし」
穂が苦笑する。
「やっぱり…穂がいいよね?」
あたしが近づくと、「こらっ」と制止される。
「したい」
穂の顔が赤くなる。
「だ、だめ」
「お願い」
「だーめっ」
「泣くよ?」
「それでも…だめ」
永那みたいにはいかないか。
仕方ないから起き上がる。
穂も起き上がる。
フゥッと息を吐いている。
“なんとか嵐が過ぎ去った”みたいな顔しないでよ。
あたしが睨むと、穂は気まずそうに目をそらした。

あたしは立ち上がって、服を脱ぐ。
穂に見せつけるように、脱ぐ。
案の定、穂はあたしの胸に釘付けで、あたしはニヤける。
「そんなに好き?」
穂が頬をピンクにして、頷く。
…あたしは好きじゃなかったけど、穂が好きって言うなら、まあいっか。
「さわる?」
穂は伏し目がちになって、頷く。
あたしはベッドの上に四つん這いになる。
キスはダメって言うのに、自分だけ良い思いして、卑怯。
垂れるあたしの胸を、そっと優しく包み込む。
「永那のと、どっちが好き?」
「…どっちも好きだよ」
「穂って、けっこう女好きなんだね?」
「え!?…ち、違うよ」
どこが。
「なんていうか、胸は…自分の以外さわったことがなかったから…なんか、良くて」
「へえ」

さわられていると、昨日の夜を思い出す。
…気持ちよかったな。
嫌悪感すら抱いていたのに、なんで穂にさわられると気持ちいいんだろう?
…安心感。うん…安心感が、あるからかな。
絶対酷いことされないって、絶対嫌なことされないって、わかるからかな。
「ん…」
声を出してみる。
穂の顔が真っ赤になるから嬉しくなる。
昨日も、真っ赤になってたのかな?
穂が触れるのをやめてしまう。
…残念。
あたしは起き上がって、ブラをつける。
「穂、キャミソール貸してくれない?」
「あ、うん。いいよ」
穂が立ち上がって、クローゼットを開ける。
「あたし、月曜と水曜は来ないけど…それ以外は遊びに来るからね?」
穂は首を傾げつつも、頷く。
「月曜と水曜は永那とエッチしてもいいけど、それ以外はダメだよって言ってるの」
耳元で言うと、カーッと顔が赤くなる。
「はい」
「ねえ、最後に、呼んで?」
穂がジッとあたしを見る。
「千陽」
あたしの口元が緩む。
ドアを開けて、部屋から出る。
感想 56

あなたにおすすめの小説

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! ✽全28話完結 ✽辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 ✽他誌にも掲載中です。 ✽2026.4/11 エブリスタ用に使用している表紙に変更しました。 →表紙はイラストをGrok タイトルをChatGPTでAI生成しています。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

身体だけの関係です‐三崎早月について‐

みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」 三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。 クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。 中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。 ※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。 12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。 身体だけの関係です 原田巴について https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789 作者ツイッター: twitter/minori_sui

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。