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190.文化祭準備
「永那、マジで空井さんと付き合ってんの?」
クラスメイトが言う。
「うん。私から告った」
「え、なんでー?」
他の人も参加してくる。
「めっちゃタイプだったから…話したいなあって思って話しかけて、デートしたりして…ムフフって感じ」
「ムフフってなんだよ!」
「両角、こえー」「空井さんって、鉄壁だと思ってたのに…」
「私をナメんなよ、鉄壁を崩すのが私の使命なんだから!」
「何言ってんの」「やっぱ永那ってバカだよね」「空井さん可哀想…」「空井さん、被害者じゃない?」「マジで残念なやつだわ」
…なぜか永那ちゃんの批判になってくる。
「てかさー、両角と千陽ちゃん付き合ってないなら、俺恋人に立候補しちゃおっかなー!」
クラスが一瞬静まり返って、ザワザワする。
そばに立っていた千陽が「ハァ」とため息をつく。
「バカじゃないの?あたし、相手いるし」
ワッとクラスが盛り上がる。
「うっそー!」「なんで今まで教えてくれなかったの!?」「誰!?この学校!?」「マジかよー…」
全ての話題が千陽に引っ張られていく。
私はようやく顔を覆っていた手をどけた。
…みんなの顔が、キラキラしてる。
そっか。
みんな、楽しいんだ。
肩の力が、抜けていく。
「穂」
耳元で囁かれる。
「ごめんね」
永那ちゃんの、優しい声。
「うん」
永那ちゃんと千陽が、守ってくれている。
…大切にしたい。
やっぱり、どちらかを切り捨てる…なんて、できない。
クラスは盛り上がったまま、授業が始まった。
休み時間中、前に座っていた子が、恐る恐る振り向いた。
目が合って、私が首を傾げると…オドオドしながらも「あ、あの…空井さん」と話し始める。
「なに?」
「…私、実は今好きな人がいて」
突然のことに、目を白黒させる。
「その…永那に好きになられたくらいだし、なんか、秘訣とか…あるのかなって…よければ、何かアドバイスを…してもらえないかなって…」
…秘訣?…アドバイス?
「あ、ごめんなさい…!そんな、いきなり言われても困りますよね…」
「いや…その…えっと…。私はただ、普通に掃除をして、永那ちゃんが寝ていて…どうやったら起こせるのか、試行錯誤していただけで…特に、何かしたわけでは…」
「あー、空井さん、しばらく1人で掃除してたもんね」
隣の席の子にも声をかけられて、肩をビクッと上げる。
カラオケにいた子だ。
「あのときかー。え、じゃあ2人がくっついたのって俺らのおかげじゃね?」「そーだ!俺らが遊んでたおかげじゃん!」
「…掃除は、ちゃんとやってください」
私が言うと、なぜかみんなが笑う。
私が、興味がないと切り捨ててきたこと。
私が、他人を許せなくて切り捨ててきたこと。
自分が、恥ずかしいと思ってきたこと。
今まで、一体私は何を怖がっていたのか。
なぜ、誰のこともちゃんと見ようとしてこなかったのか。
永那ちゃんのやり方は、いつも少し強引だけど…それくらいしてもらわないと、私は何も気付けなかったのかもしれない。
千陽が、永那ちゃんは王子様だと言った。
私にとって永那ちゃんが王子様かどうかはわからない。
でも、グイグイ引っ張って、私を違う世界に連れて行ってくれる。
無邪気に、まっすぐに、いろんなことを教えてくれる。
…永那ちゃんが、好き。
永那ちゃんは、グーグー寝ていた。
千陽を見ると、クラスメイトと話していたけど、すぐに目が合って、微笑まれた。
周りの席の子に話しかけられて、私は視線を戻す。
不思議と緊張感はない。
私がいると、周りの人たちの楽しい雰囲気を壊してしまうと思っていたけれど、今はそれを感じない。
普通に時間が過ぎていく。
…いや、私からすれば、これは普通ではない。
クラスメイトから話しかけられて、休み時間中に本を読まない…。
そんな、当たり前みたいだけど、当たり前じゃない、時間。
放課後、永那ちゃんを起こしに行く。
「永那ちゃん、起きて」
彼女の頬をつついて、そのまま指で唇に触れる。
ゆっくり何度か唇を撫でて、「永那ちゃん」と呼んでいると、ペロッと指先を舐められた。
慌てて引っ込めると、薄く目を開いて、永那ちゃんが笑う。
「穂」
起き上がって、抱きしめられる。
一瞬みんなの注目を浴びて鳥肌が立ったけど、すぐに視線を感じなくなった。
「え、永那ちゃん…」
「いくらみんなに知られたからって、あからさまにイチャつかないでくれる?」
千陽が私の腕に腕を絡めた。
胸を腕に押し付けられると、シャツから見える谷間が寄って見えて、顔が熱くなる。
「うっせー」
「今日は…何かあるの?」
千陽が永那ちゃんを無視して聞く。
「うん、永那ちゃんの家に遊びに行こうと思って」
彼女の耳元で囁く。
「家?」
「うん」
「ふーん」
“あたしも行きたい”と言うかと思ったけど、千陽は何も言わなかった。
永那ちゃんと手を繋いで、千陽に腕を組まれて、3人で電車に乗る。
駅前で千陽と別れて、永那ちゃんと2人で家に向かう。
前にも一度、歩いた道。
「穂」
「ん?」
「一回、私が1人で中に入るね」
「うん」
「もし、ダメそうだったら…その、帰ってもらうことになっちゃうけど…」
「大丈夫だよ」
永那ちゃんが不安そうに、笑った。
クラスメイトが言う。
「うん。私から告った」
「え、なんでー?」
他の人も参加してくる。
「めっちゃタイプだったから…話したいなあって思って話しかけて、デートしたりして…ムフフって感じ」
「ムフフってなんだよ!」
「両角、こえー」「空井さんって、鉄壁だと思ってたのに…」
「私をナメんなよ、鉄壁を崩すのが私の使命なんだから!」
「何言ってんの」「やっぱ永那ってバカだよね」「空井さん可哀想…」「空井さん、被害者じゃない?」「マジで残念なやつだわ」
…なぜか永那ちゃんの批判になってくる。
「てかさー、両角と千陽ちゃん付き合ってないなら、俺恋人に立候補しちゃおっかなー!」
クラスが一瞬静まり返って、ザワザワする。
そばに立っていた千陽が「ハァ」とため息をつく。
「バカじゃないの?あたし、相手いるし」
ワッとクラスが盛り上がる。
「うっそー!」「なんで今まで教えてくれなかったの!?」「誰!?この学校!?」「マジかよー…」
全ての話題が千陽に引っ張られていく。
私はようやく顔を覆っていた手をどけた。
…みんなの顔が、キラキラしてる。
そっか。
みんな、楽しいんだ。
肩の力が、抜けていく。
「穂」
耳元で囁かれる。
「ごめんね」
永那ちゃんの、優しい声。
「うん」
永那ちゃんと千陽が、守ってくれている。
…大切にしたい。
やっぱり、どちらかを切り捨てる…なんて、できない。
クラスは盛り上がったまま、授業が始まった。
休み時間中、前に座っていた子が、恐る恐る振り向いた。
目が合って、私が首を傾げると…オドオドしながらも「あ、あの…空井さん」と話し始める。
「なに?」
「…私、実は今好きな人がいて」
突然のことに、目を白黒させる。
「その…永那に好きになられたくらいだし、なんか、秘訣とか…あるのかなって…よければ、何かアドバイスを…してもらえないかなって…」
…秘訣?…アドバイス?
「あ、ごめんなさい…!そんな、いきなり言われても困りますよね…」
「いや…その…えっと…。私はただ、普通に掃除をして、永那ちゃんが寝ていて…どうやったら起こせるのか、試行錯誤していただけで…特に、何かしたわけでは…」
「あー、空井さん、しばらく1人で掃除してたもんね」
隣の席の子にも声をかけられて、肩をビクッと上げる。
カラオケにいた子だ。
「あのときかー。え、じゃあ2人がくっついたのって俺らのおかげじゃね?」「そーだ!俺らが遊んでたおかげじゃん!」
「…掃除は、ちゃんとやってください」
私が言うと、なぜかみんなが笑う。
私が、興味がないと切り捨ててきたこと。
私が、他人を許せなくて切り捨ててきたこと。
自分が、恥ずかしいと思ってきたこと。
今まで、一体私は何を怖がっていたのか。
なぜ、誰のこともちゃんと見ようとしてこなかったのか。
永那ちゃんのやり方は、いつも少し強引だけど…それくらいしてもらわないと、私は何も気付けなかったのかもしれない。
千陽が、永那ちゃんは王子様だと言った。
私にとって永那ちゃんが王子様かどうかはわからない。
でも、グイグイ引っ張って、私を違う世界に連れて行ってくれる。
無邪気に、まっすぐに、いろんなことを教えてくれる。
…永那ちゃんが、好き。
永那ちゃんは、グーグー寝ていた。
千陽を見ると、クラスメイトと話していたけど、すぐに目が合って、微笑まれた。
周りの席の子に話しかけられて、私は視線を戻す。
不思議と緊張感はない。
私がいると、周りの人たちの楽しい雰囲気を壊してしまうと思っていたけれど、今はそれを感じない。
普通に時間が過ぎていく。
…いや、私からすれば、これは普通ではない。
クラスメイトから話しかけられて、休み時間中に本を読まない…。
そんな、当たり前みたいだけど、当たり前じゃない、時間。
放課後、永那ちゃんを起こしに行く。
「永那ちゃん、起きて」
彼女の頬をつついて、そのまま指で唇に触れる。
ゆっくり何度か唇を撫でて、「永那ちゃん」と呼んでいると、ペロッと指先を舐められた。
慌てて引っ込めると、薄く目を開いて、永那ちゃんが笑う。
「穂」
起き上がって、抱きしめられる。
一瞬みんなの注目を浴びて鳥肌が立ったけど、すぐに視線を感じなくなった。
「え、永那ちゃん…」
「いくらみんなに知られたからって、あからさまにイチャつかないでくれる?」
千陽が私の腕に腕を絡めた。
胸を腕に押し付けられると、シャツから見える谷間が寄って見えて、顔が熱くなる。
「うっせー」
「今日は…何かあるの?」
千陽が永那ちゃんを無視して聞く。
「うん、永那ちゃんの家に遊びに行こうと思って」
彼女の耳元で囁く。
「家?」
「うん」
「ふーん」
“あたしも行きたい”と言うかと思ったけど、千陽は何も言わなかった。
永那ちゃんと手を繋いで、千陽に腕を組まれて、3人で電車に乗る。
駅前で千陽と別れて、永那ちゃんと2人で家に向かう。
前にも一度、歩いた道。
「穂」
「ん?」
「一回、私が1人で中に入るね」
「うん」
「もし、ダメそうだったら…その、帰ってもらうことになっちゃうけど…」
「大丈夫だよ」
永那ちゃんが不安そうに、笑った。
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