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191.文化祭準備
ブロック塀に寄りかかって、本を開く。
木造2階建てのアパート。横に4つずつドアが並んでいる。
永那ちゃんの家は、2階の、右から2番目のドア。
階段が少し錆びれて、心なしかどのドアも塗装が剥げている。
15分くらい経ってから、ドアが開いた。
「穂、いいよ」
大好きな人の、お母さん。
来る途中でお菓子を買った。
永那ちゃんは“いいよ”と言ったけど、初対面なのに、そういうわけにはいかない。
そのお菓子の袋をギュッと握って、フゥッと息を吐いて、階段を上る。
ドアの前に立って、永那ちゃんと一度目が合う。
片手でドアを開けておいてくれるから、私は「お邪魔します…」と中に入った。
「こんにちはぁ」
目がトロンと垂れた、でも、目鼻立ちの整った綺麗なお母さんだった。
「こんにちは」
「ふふ、永那が友達を連れてくるなんて、いつぶりかなぁ?…よろしくね!」
私は会釈して「よろしくお願いします」と言った。
優しそうな、お母さんだった。
「お母さん、ほら、中に入れてあげようよ」
「あ、そうだね!…どうぞどうぞ。ちょっと…汚いから申し訳ないのだけど」
お母さんが楽しそうに背を向ける。
永那ちゃんは眉をハの字にして笑う。
「どうぞ」と言われて、靴を脱ぐ。
部屋中の壁が、傷だらけだった。
玄関入ってすぐにキッチンがあって、その先にある、座卓とテレビのある部屋に通された。
座布団を敷いてくれる。
「お茶、持ってくるね」
永那ちゃんがキッチンに行く。
「あの、お母さん…これ、どうぞ。今日は、突然お邪魔させていただいたので」
「うわー!なにー?」
楽しそうに袋を受け取って、中身を見る。
「わーーー!おいしそう!」
永那ちゃんがコップを机に置いてくれた。
「ありがとう」
彼女が優しく笑って、頷く。
永那ちゃんは私とお母さんの間、キッチン(玄関)側に座った。
「ねえ、ねえ、食べていい?」
お母さんに触れられて、一瞬ビクッとしたけれど、すぐに笑みを作る。
「はい。お口に合うといいんですけど」
「あ、えーっと…穂ちゃん?」
「はい」
えへへと笑いながら、頬杖をつく。
「ありがとう」
その笑顔が、永那ちゃんに重なって、私も口元を綻ばせた。
「いえ」
お母さんはフフッと笑って、お菓子を食べ始める。
「おいしー!…永那も食べて!食べて!」
「はいはい。…もらうね?」
私が頷くと、口に運ぶ。
「うん、おいしい」
「でしょー?…こんなにおいしいの、いつぶりかなぁ?」
「そうだね」
永那ちゃんが1つ、私にお菓子をわたしてくれた。
他のを全部、お母さんの前に並べて、ため息をつく。
「これ全部いいのぉ?」
「うん、全部お母さんのだよ」
お母さんは顔を輝かせて、大事そうに抱えて、お菓子の袋に頬擦りする。
その腕には、痛々しい傷が刻まれていた。
「穂」
「ん?」
「こっちが私の部屋で、こっちが…お母さんの」
今いる部屋を2分割するように、部屋が2つあった。
綺麗に半分というわけではなく、永那ちゃんの部屋のほうが小さかった。
「なんもないけど、部屋見る?」
「うん」
永那ちゃんが立ち上がって部屋に入るから、一緒に入る。
プラスチックの衣装ケース2段と、布団が畳まれている。それだけの部屋。
過去の教材が、衣装ケースの横に積み上げられている。
「穂」
呼ばれて、永那ちゃんのいるところにしゃがむ。
衣装ケースを開けて、ジプロックに入った私のショーツをニヤニヤしながら見せてくる。
「返してくれるの?」
ジーッと睨むけど「やだ」と笑顔で断られる。
「私の宝物だよ?」
「返す気ないね?」
へへへと永那ちゃんが笑う。
鍵のついた箱を出す。
開けると、アクセサリーが入っていた。
いつか見た雫のピアスも、シンプルな物もあった。
「アクセサリーはね、基本、友達が誕生日プレゼントでくれたんだ」
「そうなんだ。…永那ちゃん、ピアスいつ開けたの?」
「中二のときかな」
「早いね、先生に怒られなかったの?」
「怒られた」
ニヒヒと笑う。
彼女の耳に触れる。
右に2つ、左に1つ。
学校のある日は、ピアスをつけていないことが多い。
「なんか、変なの」
永那ちゃんは胡座をかいて、私をジッと見る。
「穂が家にいるなんて…変なの」
可愛くて、彼女の頭を撫でる。
「永那~」
「なに?」
永那ちゃんが小さくため息をついて、立ち上がる。
私は衣装ケースに入っている服を見る。
やっぱり、永那ちゃんは数着しか服がなかった。
1ヶ月記念のプレゼント、服にしてよかったな。
衣装ケースを閉じて、私も居間に戻る。
「これがね、開かないの」
「何が取りたいの?」
「ハサミ」
「なんで?」
「綺麗な包装紙でしょ?取っておきたい」
「わかった」
ポケットから鍵の束を出して、棚の鍵を開ける。
私があげたタヌキのキーホルダーもついていた。
永那ちゃんがハサミを取って、お母さんにわたす。
私が買ったお菓子の包装紙を丁寧にハサミで切って、キッチンの棚にあてる。
「見て、可愛いでしょ?」
「うん、可愛いね」
「穂ちゃん、可愛いよね?」
「はい、可愛いです」
お母さんは嬉しそうに笑って「貼りたい」と永那ちゃんにねだった。
木造2階建てのアパート。横に4つずつドアが並んでいる。
永那ちゃんの家は、2階の、右から2番目のドア。
階段が少し錆びれて、心なしかどのドアも塗装が剥げている。
15分くらい経ってから、ドアが開いた。
「穂、いいよ」
大好きな人の、お母さん。
来る途中でお菓子を買った。
永那ちゃんは“いいよ”と言ったけど、初対面なのに、そういうわけにはいかない。
そのお菓子の袋をギュッと握って、フゥッと息を吐いて、階段を上る。
ドアの前に立って、永那ちゃんと一度目が合う。
片手でドアを開けておいてくれるから、私は「お邪魔します…」と中に入った。
「こんにちはぁ」
目がトロンと垂れた、でも、目鼻立ちの整った綺麗なお母さんだった。
「こんにちは」
「ふふ、永那が友達を連れてくるなんて、いつぶりかなぁ?…よろしくね!」
私は会釈して「よろしくお願いします」と言った。
優しそうな、お母さんだった。
「お母さん、ほら、中に入れてあげようよ」
「あ、そうだね!…どうぞどうぞ。ちょっと…汚いから申し訳ないのだけど」
お母さんが楽しそうに背を向ける。
永那ちゃんは眉をハの字にして笑う。
「どうぞ」と言われて、靴を脱ぐ。
部屋中の壁が、傷だらけだった。
玄関入ってすぐにキッチンがあって、その先にある、座卓とテレビのある部屋に通された。
座布団を敷いてくれる。
「お茶、持ってくるね」
永那ちゃんがキッチンに行く。
「あの、お母さん…これ、どうぞ。今日は、突然お邪魔させていただいたので」
「うわー!なにー?」
楽しそうに袋を受け取って、中身を見る。
「わーーー!おいしそう!」
永那ちゃんがコップを机に置いてくれた。
「ありがとう」
彼女が優しく笑って、頷く。
永那ちゃんは私とお母さんの間、キッチン(玄関)側に座った。
「ねえ、ねえ、食べていい?」
お母さんに触れられて、一瞬ビクッとしたけれど、すぐに笑みを作る。
「はい。お口に合うといいんですけど」
「あ、えーっと…穂ちゃん?」
「はい」
えへへと笑いながら、頬杖をつく。
「ありがとう」
その笑顔が、永那ちゃんに重なって、私も口元を綻ばせた。
「いえ」
お母さんはフフッと笑って、お菓子を食べ始める。
「おいしー!…永那も食べて!食べて!」
「はいはい。…もらうね?」
私が頷くと、口に運ぶ。
「うん、おいしい」
「でしょー?…こんなにおいしいの、いつぶりかなぁ?」
「そうだね」
永那ちゃんが1つ、私にお菓子をわたしてくれた。
他のを全部、お母さんの前に並べて、ため息をつく。
「これ全部いいのぉ?」
「うん、全部お母さんのだよ」
お母さんは顔を輝かせて、大事そうに抱えて、お菓子の袋に頬擦りする。
その腕には、痛々しい傷が刻まれていた。
「穂」
「ん?」
「こっちが私の部屋で、こっちが…お母さんの」
今いる部屋を2分割するように、部屋が2つあった。
綺麗に半分というわけではなく、永那ちゃんの部屋のほうが小さかった。
「なんもないけど、部屋見る?」
「うん」
永那ちゃんが立ち上がって部屋に入るから、一緒に入る。
プラスチックの衣装ケース2段と、布団が畳まれている。それだけの部屋。
過去の教材が、衣装ケースの横に積み上げられている。
「穂」
呼ばれて、永那ちゃんのいるところにしゃがむ。
衣装ケースを開けて、ジプロックに入った私のショーツをニヤニヤしながら見せてくる。
「返してくれるの?」
ジーッと睨むけど「やだ」と笑顔で断られる。
「私の宝物だよ?」
「返す気ないね?」
へへへと永那ちゃんが笑う。
鍵のついた箱を出す。
開けると、アクセサリーが入っていた。
いつか見た雫のピアスも、シンプルな物もあった。
「アクセサリーはね、基本、友達が誕生日プレゼントでくれたんだ」
「そうなんだ。…永那ちゃん、ピアスいつ開けたの?」
「中二のときかな」
「早いね、先生に怒られなかったの?」
「怒られた」
ニヒヒと笑う。
彼女の耳に触れる。
右に2つ、左に1つ。
学校のある日は、ピアスをつけていないことが多い。
「なんか、変なの」
永那ちゃんは胡座をかいて、私をジッと見る。
「穂が家にいるなんて…変なの」
可愛くて、彼女の頭を撫でる。
「永那~」
「なに?」
永那ちゃんが小さくため息をついて、立ち上がる。
私は衣装ケースに入っている服を見る。
やっぱり、永那ちゃんは数着しか服がなかった。
1ヶ月記念のプレゼント、服にしてよかったな。
衣装ケースを閉じて、私も居間に戻る。
「これがね、開かないの」
「何が取りたいの?」
「ハサミ」
「なんで?」
「綺麗な包装紙でしょ?取っておきたい」
「わかった」
ポケットから鍵の束を出して、棚の鍵を開ける。
私があげたタヌキのキーホルダーもついていた。
永那ちゃんがハサミを取って、お母さんにわたす。
私が買ったお菓子の包装紙を丁寧にハサミで切って、キッチンの棚にあてる。
「見て、可愛いでしょ?」
「うん、可愛いね」
「穂ちゃん、可愛いよね?」
「はい、可愛いです」
お母さんは嬉しそうに笑って「貼りたい」と永那ちゃんにねだった。
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