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4.踏み込む
193.文化祭準備
「お母さん、永那ちゃん…これ…」
さっき買ったお花を差し出す。
「え?…お花?綺麗!」
お母さんの顔が輝く。
永那ちゃんは興味深そうにお花を見ている。
「最近、ビニールでできた花瓶もあって…」
江戸切子のような絵柄の、花瓶の形をしたビニールを出す。
水を入れて、買った花を生ける。
「うわあ、キラキラしてて、綺麗」
座卓の上に置くと、お母さんは腕を枕にして、机に顔をつけた。
永那ちゃんはその様子を嬉しそうに眺めていた。
目が合って、優しい笑みを浮かべてくれる。
「ありがとう、穂」
頭を撫でられる。
昔、永那ちゃんのお母さんは和食をよく作っていたと言っていた。
だから今晩は、和食にしようと思って、いろいろ考えてきた。
さばの味噌煮、レンコンの金ぴら、味噌汁と炊き込みご飯。
レンコンの金ぴらは少し多めに作って、明日食べられるようにする。
ふいに、後ろから抱きしめられる。
「穂、好き」
「え、永那ちゃん…お母さんが…」
「大丈夫」
振り向くと、彼女は私達に後頭部を見せるように、机に顔をつけていた。
テレビを見ているのか、さっきあげた花瓶を見ているのか…。
視界が遮られて、唇が重なる。
すぐに離れてしまったけど、久しぶりな彼女との触れ合いに、心臓が喜ぶようにトクトクと鳴り始める。
「プレゼント、何がいいか、考えたんだけど…」
永那ちゃんが囁くように言う。
抱きしめるように手を伸ばして、私の首の後ろに触れる。
「結局、定番な物しか思い浮かばなくて」
彼女が離れる。
私の首元には、キラリと光る石のついたネックレスがかけられていた。
石のついているチェーンがY字で、長さを調節できるようになっていた。
「綺麗」
「ごめんね、盛大にするって言ったのに…私はこれしかなくて…」
「そんな…嬉しいよ」
なんでも、嬉しい。
永那ちゃんが私のことを考えてくれて、贈ってくれたものなら、なんでも。
「よかった。…ネックレスの箱、穂の鞄に入れておくね?」
「うん、ありがとう」
頭をポンポンと撫でられる。
そっと石に触れて、料理を再開した。
座卓に料理を並べると、お母さんが拍手する。
「すごい!すごい!…こんなの、いつぶりかな」
一瞬お母さんの目の色が曇って、永那ちゃんがお母さんを抱きしめた。
「本当だね、おいしそうだね」
「…うん!おいしそう。いただきま~す!」
永那ちゃんが、すごい勢いで食べていくから、その姿に笑ってしまう。
「穂ちゃん、料理上手だね~。穂ちゃんの彼氏も、こんなおいしいご飯食べられたら、離れられなくなっちゃうんじゃない?」
お母さんが楽しそうに笑う。
「胃袋がっちり掴んで!」
グッと手を握りしめて、顔をキリッとさせる。
そういえば永那ちゃんも、千陽のことを誉に話していたとき、似たようなこと言ってたな。
アハハと笑って、私は永那ちゃんを見る。
…がっちり、掴めてるといいな。
食後に少し休んでから、ケーキを出した。
今回は崩れにくいように、ムースにした。
ビスケットを砕いて台にして、ホワイトチョコと生クリーム、抹茶を混ぜた、簡単なもの。
「え~!ケーキも!?なんで~?」
そう言われて、ハッとする。
そうだよね…いきなりケーキなんて、お母さんからしたら、どういうことかわからないよね。
言い訳が何も思い浮かばず固まっていたら、永那ちゃんが口を開く。
「お母さん、もうすぐ誕生日でしょ?」
…え!?そうなの!?
「え~!!穂ちゃん、それで作ってくれたの!?」
チラリと永那ちゃんを見ると、微笑まれた。
「…あ、はい」
「嬉し~!嬉し~!」
そう言って、抱きつかれた。
「ねえ、穂ちゃんは誕生日いつ?」
抱きつかれた勢いで、私はお母さんに押し倒される。
「11月、です」
「じゃあ、じゃあ、次は私がお祝いするね!」
「そんな…あの…」
「約束!」
お母さんが私に覆いかぶさりながら、小指を出す。
だから、その小指に小指を絡めた。
彼女が嬉しそうに笑って、ギュッと抱きしめられた。
「ほら、お母さん。穂が困ってるよ」
そう言って、永那ちゃんはお母さんを起き上がらせる。
「へへへ、ごめんね?」
「いえ…喜んでもらえて、よかったです」
「うん!嬉しい!」
残ったケーキをラップで包んで、冷蔵庫に入れる。
「じゃあ、帰るね」
「うん、気をつけてね」
「穂ちゃん!また来てね!絶対ね!」
「はい、お邪魔しました」
2人に見送られながら、私は帰った。
家に帰って、鞄を開ける。
教科書の上に、ぽんと箱が置かれていた。
箱に書かれたブランド名が、私でも知っている名前で、驚愕する。
「これ…けっこう高いんじゃ…」
永那ちゃんは“これしか”なんて言ってたけど、1つが大きいよ…。
無理しなくていいのに。
箱を開けると、折り畳まれた紙が入っていた。
『穂へ
今日は一緒に過ごせて嬉しかった。お母さんも、きっと楽しんでくれていると思う。本当にありがとう。
私は、穂を怒らせたり悲しませてばかりだけど、大事にしたい。うまくいかないことも多いけど、ずっと、この先も、大事にしたいと思ってる。
穂が思ったことがあれば、なんでも言ってほしい。1人で、泣かないで。全部、受け止めたいから。
穂が、大好きだよ。これからも、一緒にいたい。大好き。
永那』
ポタポタと、涙が溢れ出す。
…こんなの、ずるい。
全然“これしか”じゃない。
箱にネックレスをしまって、手紙を見つめる。
私も、手紙書けばよかった。
さっき買ったお花を差し出す。
「え?…お花?綺麗!」
お母さんの顔が輝く。
永那ちゃんは興味深そうにお花を見ている。
「最近、ビニールでできた花瓶もあって…」
江戸切子のような絵柄の、花瓶の形をしたビニールを出す。
水を入れて、買った花を生ける。
「うわあ、キラキラしてて、綺麗」
座卓の上に置くと、お母さんは腕を枕にして、机に顔をつけた。
永那ちゃんはその様子を嬉しそうに眺めていた。
目が合って、優しい笑みを浮かべてくれる。
「ありがとう、穂」
頭を撫でられる。
昔、永那ちゃんのお母さんは和食をよく作っていたと言っていた。
だから今晩は、和食にしようと思って、いろいろ考えてきた。
さばの味噌煮、レンコンの金ぴら、味噌汁と炊き込みご飯。
レンコンの金ぴらは少し多めに作って、明日食べられるようにする。
ふいに、後ろから抱きしめられる。
「穂、好き」
「え、永那ちゃん…お母さんが…」
「大丈夫」
振り向くと、彼女は私達に後頭部を見せるように、机に顔をつけていた。
テレビを見ているのか、さっきあげた花瓶を見ているのか…。
視界が遮られて、唇が重なる。
すぐに離れてしまったけど、久しぶりな彼女との触れ合いに、心臓が喜ぶようにトクトクと鳴り始める。
「プレゼント、何がいいか、考えたんだけど…」
永那ちゃんが囁くように言う。
抱きしめるように手を伸ばして、私の首の後ろに触れる。
「結局、定番な物しか思い浮かばなくて」
彼女が離れる。
私の首元には、キラリと光る石のついたネックレスがかけられていた。
石のついているチェーンがY字で、長さを調節できるようになっていた。
「綺麗」
「ごめんね、盛大にするって言ったのに…私はこれしかなくて…」
「そんな…嬉しいよ」
なんでも、嬉しい。
永那ちゃんが私のことを考えてくれて、贈ってくれたものなら、なんでも。
「よかった。…ネックレスの箱、穂の鞄に入れておくね?」
「うん、ありがとう」
頭をポンポンと撫でられる。
そっと石に触れて、料理を再開した。
座卓に料理を並べると、お母さんが拍手する。
「すごい!すごい!…こんなの、いつぶりかな」
一瞬お母さんの目の色が曇って、永那ちゃんがお母さんを抱きしめた。
「本当だね、おいしそうだね」
「…うん!おいしそう。いただきま~す!」
永那ちゃんが、すごい勢いで食べていくから、その姿に笑ってしまう。
「穂ちゃん、料理上手だね~。穂ちゃんの彼氏も、こんなおいしいご飯食べられたら、離れられなくなっちゃうんじゃない?」
お母さんが楽しそうに笑う。
「胃袋がっちり掴んで!」
グッと手を握りしめて、顔をキリッとさせる。
そういえば永那ちゃんも、千陽のことを誉に話していたとき、似たようなこと言ってたな。
アハハと笑って、私は永那ちゃんを見る。
…がっちり、掴めてるといいな。
食後に少し休んでから、ケーキを出した。
今回は崩れにくいように、ムースにした。
ビスケットを砕いて台にして、ホワイトチョコと生クリーム、抹茶を混ぜた、簡単なもの。
「え~!ケーキも!?なんで~?」
そう言われて、ハッとする。
そうだよね…いきなりケーキなんて、お母さんからしたら、どういうことかわからないよね。
言い訳が何も思い浮かばず固まっていたら、永那ちゃんが口を開く。
「お母さん、もうすぐ誕生日でしょ?」
…え!?そうなの!?
「え~!!穂ちゃん、それで作ってくれたの!?」
チラリと永那ちゃんを見ると、微笑まれた。
「…あ、はい」
「嬉し~!嬉し~!」
そう言って、抱きつかれた。
「ねえ、穂ちゃんは誕生日いつ?」
抱きつかれた勢いで、私はお母さんに押し倒される。
「11月、です」
「じゃあ、じゃあ、次は私がお祝いするね!」
「そんな…あの…」
「約束!」
お母さんが私に覆いかぶさりながら、小指を出す。
だから、その小指に小指を絡めた。
彼女が嬉しそうに笑って、ギュッと抱きしめられた。
「ほら、お母さん。穂が困ってるよ」
そう言って、永那ちゃんはお母さんを起き上がらせる。
「へへへ、ごめんね?」
「いえ…喜んでもらえて、よかったです」
「うん!嬉しい!」
残ったケーキをラップで包んで、冷蔵庫に入れる。
「じゃあ、帰るね」
「うん、気をつけてね」
「穂ちゃん!また来てね!絶対ね!」
「はい、お邪魔しました」
2人に見送られながら、私は帰った。
家に帰って、鞄を開ける。
教科書の上に、ぽんと箱が置かれていた。
箱に書かれたブランド名が、私でも知っている名前で、驚愕する。
「これ…けっこう高いんじゃ…」
永那ちゃんは“これしか”なんて言ってたけど、1つが大きいよ…。
無理しなくていいのに。
箱を開けると、折り畳まれた紙が入っていた。
『穂へ
今日は一緒に過ごせて嬉しかった。お母さんも、きっと楽しんでくれていると思う。本当にありがとう。
私は、穂を怒らせたり悲しませてばかりだけど、大事にしたい。うまくいかないことも多いけど、ずっと、この先も、大事にしたいと思ってる。
穂が思ったことがあれば、なんでも言ってほしい。1人で、泣かないで。全部、受け止めたいから。
穂が、大好きだよ。これからも、一緒にいたい。大好き。
永那』
ポタポタと、涙が溢れ出す。
…こんなの、ずるい。
全然“これしか”じゃない。
箱にネックレスをしまって、手紙を見つめる。
私も、手紙書けばよかった。
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