いたずらはため息と共に

常森 楽

文字の大きさ
205 / 595
4.踏み込む

204.文化祭

しおりを挟む
3時半に、あと30分で文化祭が終わることを告げる。
4時10分前にも、もう一度告げる。
5分前になったら「本日は、○○高校文化祭にお越しいただき、ありがとうございました。明日も朝10時から午後4時まで開催予定なので、是非お越しください」と、4時になるまで繰り返した。
4時ちょうどに「本日の文化祭は、以上をもちまして、終了となります。みなさん、おつかれさまでした。片付けなど、作業のある方は、本日8時までに作業を終えてください」と3度繰り返して、マイクを切った。
日住君が音楽の音量を小さくして、フフッと笑った。
「今日は1日、大変でしたねー」
「まだまだ、今からも大変だよ?」
日住君は机に突っ伏す。
「そうですよね…残る必要もないのに、騒ぎたいがために残る生徒もいるんですよね…」
「うん」
去年、それで大変だった。

案の定、廊下をバタバタ走り回って、服を脱ぐ生徒がいた。
先生と、生徒会の男子メンバーが力づくで止め、なんとか押さえる。
8時になっても下校しようとしない生徒もいて、慎重に見回りをしつつ、早く帰るように促した。

翌日、千陽と副生徒会長の役割が交換となった。
クラスでも“千陽が来ると困る”とのことで、放送室での隔離は最適に思えた。
千陽は「みんなひどい」と頬を膨らませていたけど「でもラッキー」とニヤけてもいた。
「変なことしないでよ」と念押ししたけど「変なことってなに?」と言われて、無視した。
一通り音楽のかけかたを教えて、文化祭が始まる前に練習させた。
千陽は器用で、1回教えただけで覚えたみたいだった。
12時から2時までは、2人で休憩。
その間は、副生徒会長の2人が放送を担当してくれる。

10時の、文化祭開始の放送をした後は、音楽を流しつつ、しばらく待機。
何かしらの緊急の連絡が入れば、私が動かなければならない。
基本的には副生徒会長が対応してくれることになっているけれど、昨日みたいにオブジェが倒れる…なんてことがあれば、私が行かざるを得ない。
その間の放送は…千陽、できるかなあ?
一応それも教えたけど、彼女は心底面倒そうな顔をしていた。
何事もないことを願いたい。
すい
抱きしめられる。
「だーめ」
「これくらい」
「だめ」
彼女の手を解く。
彼女は頬を膨らませる。
仕方ないから、手を繋ぐ。
嬉しそうに顔がヘニャッとなるから、良しとした。

体育館での催し物の時間が近づくと、それを放送する。
トランシーバーから迷子のお知らせが入れば、その人の名前や特徴を言って、相手(主に保護者等)に校門に来てもらうように告げる。
たまに“友人を探してる”という迷子のお知らせもあるから、困りものだ。
他の時間は、各クラスの出店紹介。
千陽は真面目に音楽の調整をしたり、迷子のお知らせが入ったときには言われた名前や特徴をメモしたり、各クラスの出店情報が書かれている紙を捲ってくれたりした。
「ねえ、穂?」
「ん?」
「今日、あたし達、帰るの遅くなるでしょ?」
今日は文化祭に参加している全員、片付けがあるから、多くの生徒が8時近くまで残ることになる。
片付けが早く終わったクラスは、打ち上げをすることもあるらしい。
でも文化祭委員には、最後に、校内全体の清掃を手伝ってもらう予定だから、クラスの片付けが早く終わろうが終わらなかろうが、千陽は8時まで残ることになる。

「そうだね」
千陽の顔が浮かない。
「どうしたの?」
「…怖いの」
文化祭準備で7時近くまで残ることはあったけど、さすがに8時までは残らなかった。
…7時は大丈夫だけど、8時だと遅いから怖いってことなのかな?
「今日ね、家にパパもママもいないの」
彼女は椅子の上で膝を抱えながら、私を横目に見る。
スカートが短いから、太ももが露わになっている。
「8時に帰っても、家の中は真っ暗…それが、怖い」
「…そっか。じゃあ…うちに泊まる?」
「…穂が、あたしの家に来るんじゃ、だめ?」
上目遣いに見られて、心臓が跳ねる。
「え、えーっと…」
「あたし、疲れたから…今、あんまり…お母さんとたかと、話せる気がしなくて」
元々、千陽は人といても、口数が多い方ではないのは知っていた。
それを永那ちゃんがカバーしていたから、単純に、人が周りに集まってきていたのかもしれない。

「そっか。…わかった」
「来てくれるの?」
「うん。…ああ、でも、明日永那ちゃんと会う予定だから…朝には帰らなきゃいけないけど」
「ふーん…セックスするの?」
直球だなあ…。
一応、マイクがちゃんとオフになってるか確認する。
「んー…」
答えにくい。
「べつに、隠さなくてもいいじゃん」
彼女は唇を尖らせて、不機嫌そうにする。
「…うん。私は…シたい…」
…自分で言って、すごく恥ずかしい。
両手で顔を覆う。
「いいなあ」
それっきり、会話はなかった。
副生徒会長の2人が来て、私達は放送室を出た。
千陽に腕を組まれる。
彼女が楽しそうに笑うから、自然と私も笑みが溢れた。
しおりを挟む
感想 56

あなたにおすすめの小説

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

処理中です...