いたずらはため息と共に

常森 楽

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5.時間

273.修学旅行

歯磨きをして、電気を消して布団に潜る。
すぐにドアをノックする音がして「入るよー」と女性の先生の声がする。
「みんないるかな?」
「はーい!」と優里ちゃんが答えて、先生が部屋の中を覗く。
「さすが生徒会長のいる部屋だね、優秀優秀」
そう言われて、少し気恥ずかしさを感じる。
すぐに先生はいなくなって、優里ちゃんが笑う。
「優秀だって!」
「そうだね」
「ねー、穂ちゃん」
「ん?」
「永那とのデートの話聞かせて~」
優里ちゃんがうつ伏せになって、私を見る。
だから私もうつ伏せになって、向かい合わせになる。
「えっと…」
水族館デートの話をする。

「永那、そういうとこかっこいいよね、ホント」
「うん…」
「無意識にしてるのが罪」
隣に寝転んでいた千陽が言う。
「たしかに!あれで何人を惚れさせてきたか…」
「そ、そんなに?」
「「そんなに・・・・」」
千陽と優里ちゃんがハモる。
「さっきのジュースだって…あたしの好きなやつ当たり前みたいに買って…」
「あ!それ思った!私は日によって気分が違うの把握されてるし。…無駄に顔が綺麗だから、ホント罪だよ」
「無駄…」
優里ちゃんの言い方に笑ってしまう。
「穂ちゃん、永那が他の人にも平気でそういうことしてて、ヤキモチ妬かない?」
「え?…どうかな?私は、まだ…あんまりヤキモチって、よくわからなくて」
千陽が私を見て目を細めるから、首を傾げると、彼女は首を小さく横に振った。
「すごいなあ、大人だなあ…」
「大人…なのかな…?まだわからないだけで、そのうち、あるかも…」
…そもそも、ヤキモチってどういうことを言うんだろう?

「そっかあ。…永那、今穂ちゃんにベタベタだもんねー。あんなにされたら、嬉しいよね」
優里ちゃんが笑う。
私は恥ずかしくなって、枕に顔を突っ伏した。
「ねえ、穂…あれ・・の話聞かせてよ」
少し顔を上げて、隣を見る。
千陽もうつ伏せになって、私を見た。
「あれ?」
「セックス」
「ひゃ~!千陽、なに言ってるの!」
「べつにいいでしょ、少しくらい。…優里だって、いつか相手が出来たときのために聞いといたほうがいいんじゃない?」
「な、なに言ってるの、千陽」
顔が一気に熱くなりながらも、私はなんとか言う。
「うわ~…ちょっと…ちょっぴり…興味、ある…かも~!ひゃ~!!」
「優里ちゃんまで…」
優里ちゃんが匍匐ほふく前進で近づく。
「ねえ、最初は…その…どんなふうに?」
「えっ!?…ホントに話すの?」
「あの~、ふんわりでいいから!参考までに!!」
鼓動がトクトクと速くなる。

「な、何を話せばいいのか、わからないよ」
「“最初は”って、聞かれてるよ」
千陽が腕に顔を乗せて、私を上目遣いに見る。
ゴクリと唾を飲む。
「えー…わ、私の部屋で…」
「きゃーーーっ!」
「優里うるさい」
「ご、ごめんなさい…どうぞ…」
「んー…永那ちゃんに“食べたい”って、言われて…」
「うおーーーーーっ!」
「うるさい」
「あ、ごめんなさい」
アハハと私は苦笑する。
「え、それで…押し倒されてって感じで…」
「はーーーーっ!…やばい…私までドキドキしてきた…」
「ねえ、一番凄かったのは?」
電気を消しているはずなのに、千陽の目が輝いているように見える。
「やっぱり、公園のとき?」
「こここここ公園!?なに!?どゆこと!?」
「千陽…!」
千陽がニヤリと笑う。

「公園ってなに!?」
「いや…えー…言うの?」
「是非!」
「私が、記念日忘れてて…怒られて…」
「怒られて…」
優里ちゃんの喉がゴキュッと鳴る。
「そのまま…」
「ひゃーーーーーー!なにそれーーーー!やばくない?え?ホント?」
もう、穴があったら入りたい。
森山さんがゲホゲホ咽る。
「森山さん、何考えてるの?変態なの?」
千陽が言う。
「ず、ずびばじぇん…」
…千陽と森山さんの関係が本当にわからない。
というか、千陽が言わせたことなのに…!
変態は千陽なんじゃないかな!

「それで、一番凄かったのは?」
千陽が笑う。
「…コウエン、デス」
「嘘」
「ほ、本当だよ…」
「穂はあたしに嘘つくんだ?」
「えーっこれ以上があるのー!?どうなっちゃうのー!?」
優里ちゃんが顔を手で覆っている。
「千陽、意地悪…誰か助けて…」
私も顔を覆って、仰向けになった。
「誰も助けません」
千陽の息が耳にかかって、鳥肌が立つ。
「もう無理だよー…」
「教えて、穂」
「永那ちゃんに聞いてよ…」
「永那がペラペラ話してもいいの?」
うっ…と何かに撃たれた気分になる。
「もう、寝ようよ」
「聞くまで眠れない。…ねえ?優里」
「うぇ!?う、うん!眠れない!気になりすぎる!」

しばらくの沈黙に耐えていたら、千陽に「ねえ」とお腹を突かれる。
「ハァ」と深く息を吐く。
「教えて?」
「無理…」
「つまんない」
千陽が私のそばから離れる。
「わ、私はもう…公園ってだけで、あの…お腹いっぱいです…」
優里ちゃんが言う。

ネットカフェで、口と手をネクタイで縛られたこと…。
私は、公園よりも、そっちのほうがドキドキした。
公園のときは、必死に何を忘れているのか考えていたし、(もし人に聞かれてしまったら…)と考えると、そんなにエッチに集中できたわけじゃなかった。
ドキドキはしたけど、千陽の言う“凄かった”で言えば、ネットカフェのエッチを思い浮かべた。
…浴衣のときも、失神してしまって、比べようにも比べられないけれど。
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