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5.時間
296.好きのその先
「千陽、ノートを見させていただけないでしょうか…」
放課後、彼女が振り向いたから、私は机に頭を突っ伏してお願いした。
「いいよ」
「ありがとう」
彼女の手を握る。
「ハァ」と彼女がため息をついた。
森山さんが千陽に挨拶して、そそくさと帰っていく。
「穂、千陽、帰ろー」
永那ちゃんが来た。
「永那、穂があたしにノート見せてとか言ってくるんだけど」
「ん?見せてあげろよ」
「あんたのせいで、穂のノートが落書きだらけになってるんだけど」
…落書きではないんだけれど。
「なんで私のせい?」
千陽が永那ちゃんを睨む。
「さっき、服着替えたとき、キスマークすごかったんだけど?」
「…あー」
永那ちゃんが天井を見ながら頬をポリポリ掻いた。
「ホント、恥ずかしくないの?」
「全然」
「穂は違うでしょ」
「穂だって喜んでたもん」
「…私は、もう…疲れたよ…」
「ショック…!」
永那ちゃんがしゃがみ込む。
顔を腕で隠して「わーん」と、わざとらしく泣いた。
「穂に所望されたし、今日あたし永那の家行くから」
「え!?いつの間に所望したの!?」
永那ちゃんが勢い良く顔を上げる。
彼女の目から全く涙が出ていないから、つい目を細めてしまう。
「さっき」
「まだ心の準備が…」
神妙な面持ちで、永那ちゃんは顎を擦る。
「違う!…もう!2人ともすぐそれ言うんだから!」
私は立ち上がって、鞄を肩にかけた。
スタスタ歩き始めると、横に2人が並んだ。
「穂、明日はさ、帰りにデートしようよ」
電車に揺られながら、永那ちゃんが言う。
「デート?」
「うん。何も考えてないんだけど…なんかさ、学校帰りにどっか行くって良くない?」
「そうだね!」
私が笑うと、永那ちゃんはホッとしたように眉根を下げた。
千陽は黙って私達の話を聞いていた。
家について、まず洗濯機を回した。
まだ雨は降っていたけれど、今日洗濯しないと明日着るシャツがない。
畳の掃除の仕方をネットで調べて、とりあえず箒で家全体を掃いた。
永那ちゃんが座卓やキッチンを水拭きする。
千陽は暇そうに座卓に頬杖をついて、スマホを眺めていた。
雑巾で畳を乾拭きして、フゥッと一息つく。
永那ちゃんがお茶を出してくれたから、千陽の横に座った。
「はい、ノート」
「ありがとう…」
千陽が鞄からノートを出して、スッと差し出してくれる。
千陽はスマホを眺めて、私は勉強をして、永那ちゃんは私の隣で寝る。
…ああ、勉強をしていると落ち着く。
「穂の趣味って勉強なの?」
「え?」
千陽が頬杖をついて、いつの間にか私をジッと見ていた。
「だって、ずっと勉強してるし」
彼女が耳に髪をかける。
「ど、どうかな…趣味っていうか、勉強してると落ち着くんだよね」
「変なの」
うっ…と胸を押さえる。
「私って変?」
「うん」
永那ちゃんと付き合うまで、自分は普通だと思っていた。
いや…普通とか普通じゃないとか、そんなこと、気にしたこともなかった。
「穂」
「なに?」
テーブルに頬をくっつけながら、千陽のノートを書き写す。
「あたしは、穂が好き」
「千陽はいつも唐突だなあ…」
「普通じゃなくても…いや…普通じゃない穂が、好きなの」
顔を上げる。
「穂が普通だったら、あたし、穂のこと好きにならなかった」
まっすぐ見つめられて、ボッと顔が熱くなる。
「永那も同じだと思う。普通じゃないからって、いちいちショックを受ける必要なんかない」
「そ、そっか…ありがとう」
「ところで…これ、なに?」
スッとテーブルの上に手錠が置かれる。
「な…!なんで!?どこにあったの!?」
「ここ」
千陽が私の座る場所とは反対側の床を指差す。
「また変態プレイしてたの?」
「へ…変態…なのは…永那ちゃんで…」
「“疲れた”けど、“喜んでた”んでしょ?」
何も言えなくて、畳に倒れる。
横に永那ちゃんの寝顔がある。
「変態」
千陽が床に手をついて、私を見下ろすように、ネクタイと第三ボタンを外す。
ジッと見てしまう。
彼女が優しく微笑む。
「ホント、変態」
彼女の胸が、私の顔を覆う。
…良い匂い。やわらかい。あったかい。
持っていたシャープペンを床に転がす。
彼女の胸に触れると、千陽は上半身を起こして、私の顔から離れていく。
千陽の口角が上がる。
「あたしも、やってみよ」
手錠を、つけられた。
ゴクリと唾を飲む。
「千陽がつけるんじゃないの…?」
「なんで?あたし、そういう趣味ないし」
鎖を掴まれて、両手を上げさせられる。
彼女に口付けをされて、太ももに力が入る。
舌が絡む。
「穂、さわりたい?」
「…うん」
彼女が白い歯を見せて笑う。
彼女は手錠を繋ぐ鎖を引っ張って、私の手を胸元に近づけた。
そっと彼女の乳房に触れる。
手錠をかけられた状態では、思うように手が動かせなくて…なんだか、もどかしい。
彼女の顔が近づいて、口付けを交わして、余計にさわりにくくなった。
カチャカチャと金属の擦れ合う音が響く。
「おい」
その声に、心臓が駆けるように速くなった。
不思議と、雨音が大きく聞こえる。
「寝取ってんじゃねえよ、マジで」
「永那が寝てるのが悪いんじゃない?」
放課後、彼女が振り向いたから、私は机に頭を突っ伏してお願いした。
「いいよ」
「ありがとう」
彼女の手を握る。
「ハァ」と彼女がため息をついた。
森山さんが千陽に挨拶して、そそくさと帰っていく。
「穂、千陽、帰ろー」
永那ちゃんが来た。
「永那、穂があたしにノート見せてとか言ってくるんだけど」
「ん?見せてあげろよ」
「あんたのせいで、穂のノートが落書きだらけになってるんだけど」
…落書きではないんだけれど。
「なんで私のせい?」
千陽が永那ちゃんを睨む。
「さっき、服着替えたとき、キスマークすごかったんだけど?」
「…あー」
永那ちゃんが天井を見ながら頬をポリポリ掻いた。
「ホント、恥ずかしくないの?」
「全然」
「穂は違うでしょ」
「穂だって喜んでたもん」
「…私は、もう…疲れたよ…」
「ショック…!」
永那ちゃんがしゃがみ込む。
顔を腕で隠して「わーん」と、わざとらしく泣いた。
「穂に所望されたし、今日あたし永那の家行くから」
「え!?いつの間に所望したの!?」
永那ちゃんが勢い良く顔を上げる。
彼女の目から全く涙が出ていないから、つい目を細めてしまう。
「さっき」
「まだ心の準備が…」
神妙な面持ちで、永那ちゃんは顎を擦る。
「違う!…もう!2人ともすぐそれ言うんだから!」
私は立ち上がって、鞄を肩にかけた。
スタスタ歩き始めると、横に2人が並んだ。
「穂、明日はさ、帰りにデートしようよ」
電車に揺られながら、永那ちゃんが言う。
「デート?」
「うん。何も考えてないんだけど…なんかさ、学校帰りにどっか行くって良くない?」
「そうだね!」
私が笑うと、永那ちゃんはホッとしたように眉根を下げた。
千陽は黙って私達の話を聞いていた。
家について、まず洗濯機を回した。
まだ雨は降っていたけれど、今日洗濯しないと明日着るシャツがない。
畳の掃除の仕方をネットで調べて、とりあえず箒で家全体を掃いた。
永那ちゃんが座卓やキッチンを水拭きする。
千陽は暇そうに座卓に頬杖をついて、スマホを眺めていた。
雑巾で畳を乾拭きして、フゥッと一息つく。
永那ちゃんがお茶を出してくれたから、千陽の横に座った。
「はい、ノート」
「ありがとう…」
千陽が鞄からノートを出して、スッと差し出してくれる。
千陽はスマホを眺めて、私は勉強をして、永那ちゃんは私の隣で寝る。
…ああ、勉強をしていると落ち着く。
「穂の趣味って勉強なの?」
「え?」
千陽が頬杖をついて、いつの間にか私をジッと見ていた。
「だって、ずっと勉強してるし」
彼女が耳に髪をかける。
「ど、どうかな…趣味っていうか、勉強してると落ち着くんだよね」
「変なの」
うっ…と胸を押さえる。
「私って変?」
「うん」
永那ちゃんと付き合うまで、自分は普通だと思っていた。
いや…普通とか普通じゃないとか、そんなこと、気にしたこともなかった。
「穂」
「なに?」
テーブルに頬をくっつけながら、千陽のノートを書き写す。
「あたしは、穂が好き」
「千陽はいつも唐突だなあ…」
「普通じゃなくても…いや…普通じゃない穂が、好きなの」
顔を上げる。
「穂が普通だったら、あたし、穂のこと好きにならなかった」
まっすぐ見つめられて、ボッと顔が熱くなる。
「永那も同じだと思う。普通じゃないからって、いちいちショックを受ける必要なんかない」
「そ、そっか…ありがとう」
「ところで…これ、なに?」
スッとテーブルの上に手錠が置かれる。
「な…!なんで!?どこにあったの!?」
「ここ」
千陽が私の座る場所とは反対側の床を指差す。
「また変態プレイしてたの?」
「へ…変態…なのは…永那ちゃんで…」
「“疲れた”けど、“喜んでた”んでしょ?」
何も言えなくて、畳に倒れる。
横に永那ちゃんの寝顔がある。
「変態」
千陽が床に手をついて、私を見下ろすように、ネクタイと第三ボタンを外す。
ジッと見てしまう。
彼女が優しく微笑む。
「ホント、変態」
彼女の胸が、私の顔を覆う。
…良い匂い。やわらかい。あったかい。
持っていたシャープペンを床に転がす。
彼女の胸に触れると、千陽は上半身を起こして、私の顔から離れていく。
千陽の口角が上がる。
「あたしも、やってみよ」
手錠を、つけられた。
ゴクリと唾を飲む。
「千陽がつけるんじゃないの…?」
「なんで?あたし、そういう趣味ないし」
鎖を掴まれて、両手を上げさせられる。
彼女に口付けをされて、太ももに力が入る。
舌が絡む。
「穂、さわりたい?」
「…うん」
彼女が白い歯を見せて笑う。
彼女は手錠を繋ぐ鎖を引っ張って、私の手を胸元に近づけた。
そっと彼女の乳房に触れる。
手錠をかけられた状態では、思うように手が動かせなくて…なんだか、もどかしい。
彼女の顔が近づいて、口付けを交わして、余計にさわりにくくなった。
カチャカチャと金属の擦れ合う音が響く。
「おい」
その声に、心臓が駆けるように速くなった。
不思議と、雨音が大きく聞こえる。
「寝取ってんじゃねえよ、マジで」
「永那が寝てるのが悪いんじゃない?」
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