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298.好きのその先
■■■
修学旅行で、初めて永那に胸をさわられた。
突然の事に、頭が真っ白になった。
今まで、一度も永那はさわらなかったのに。
恥ずかしさと、適当にさわられた怒りと、ほんの少しの…嬉しさと…全部が混ざって、何が何だかわからなくなって、思わずみんなから離れた。
2日目の朝。
永那、穂にキスマークまで残して、胸に手を突っ込んだまま寝るって、どういう了見?
嬉しさが薄らいで、朝からイライラしたから、永那のお腹を蹴っ飛ばしてやった。
そしたら少しスッキリして、胸をさわられたことに対するイライラはおさまった。
…穂のキスマークにキスマークを重ねて、永那と間接キスができたことも…まあ…あたしの心を鎮めた理由の1つではあるけど。
2日目の夜、あたしが寝た後、永那と穂がイチャイチャしてる声で目が覚めた。
2人はあたしが寝てると思っていたんだろうけど、眠りの浅いあたしは、あんなそばで会話されたら起きちゃう。
永那が“特別おっぱいが好きなわけじゃない”と言って、衝撃を受けた。
あたしは勝手に“エロい=おっぱいが好き”と思ってたから、散々やってきた永那へのアプローチが、無意味だったことに気付かされる。
…まあ、穂には効果抜群だったけど。
穂が永那に甘えてる姿が可愛くて、あたしにもこんなふうにしてくれたらいいのにって、ちょっと嫉妬した。
でも、あたしは穂にはさわってはいけないから…無理な話。
永那が“不安なんだ”と口にした。
永那は、穂相手になら、不安を口にできるのだと…こっちにも嫉妬した。
穂の寝息が聞こえてきて、永那がモゾモゾ動く。
“動かさないから”とか言っておきながら、普通に動かしてて引く。
「穂、これでも起きないんだ…」とか言い出すから、聞いていられなくなって、寝返りを打つフリして2人に背を向ける。
その後、永那は静かだったし…あたしもようやくまともに眠れた。
修学旅行3日目の昼、永那がスマホを持ってどこかに行った。
穂が不安そうにあたしを見るから、すぐにお母さんのことなのだと察した。
戻ってきた永那は中学のときを彷彿とさせて、嫌な感じがした。
穂は酷く怯えているような、傷ついているような表情をしていて、昔のあたしを思い出した。
永那がいろんな人とセックスをしているという話を聞いて、悲しくて、ひとりで泣いていたときのあたしを。
永那に捨てられたら、孤独になってしまうと、酷く怯えていた、昔のあたしを。
だからあたしは、穂を守りたくなった。
もちろん、穂のことが大事だからというのもある。
…でも、たぶん…あたしは、昔のあたしを守りたかったんだ。
今は、例え永那がいなくなったとしても、穂がいてくれる安心感があるし。
きっと、優里や桜もそばにいてくれるって、わかってる。
だから、あたしは昔のあたしを守れる気がした。
(ちなみに森山さんを桜と呼び始めたのは、優里が“桜ちゃん”と呼んでいるから。“森山さん”って長くて呼ぶの、面倒だし)
暴走している永那が許せなかった。
何があったのかは知らないけれど…何があったのか、話してくれない永那に腹が立った。
無理に笑って、変なテンションになって、穂を傷つけて、穂が傷ついていることにも気づかない。
…あたしが傷ついていることに気づかなかったように。
優里のことまで傷つけようとして、あたしの怒りは限界に達した。
永那を蹴り飛ばす。
必死だった。
これで永那の暴走が止まらないなら、あたしには何もできることはないってくらい、必死だった。
“手、震えてるよ。本当は怖いくせに、強がってんじゃねえよ。できないだろ?私とは”
…できるよ!
永那となら…永那になら…何されてもいい。
怖い。怖くないなんて、嘘になる。
でも…怖くても、なんでも…それで永那の苦しみが消せるなら、あたしはなんだってできる。
だって永那は、あたしが一番苦しくて死にたかったときに、手を差し伸べてくれた、唯一の人だったから。
そう、思ってるのに…彼女には、伝わらない。
必死の思いは、伝わらない。
それが、悲しくて…あたしは、何も言えなかった。
永那と穂が部屋から出て行って、優里に抱きしめられて、声を出して泣いた。
「佐藤さん。きっと、佐藤さんの気持ち、両角さんにちゃんと伝わってます」
背中を擦ってくれていた桜が言った。
まっすぐ私を見て、言った。
「大丈夫です。あとは空井さんがまとめてくれることでしょう。あの方は、そういうことに長けているのでしょうし…。佐藤さんの思い、すごく、すごく、伝わってきたから…だからきっと両角さんも部屋を出たんです」
「…桜のくせに、生意気」
桜の顔が真っ赤になって、俯く。
…嬉しかった。
伝わってると、いいなあ…。
「うんうん!桜ちゃんの言うとおり!永那はバカだけど、人の気持ちがわからないような人じゃない」
優里の笑顔が眩しい。
修学旅行で、初めて永那に胸をさわられた。
突然の事に、頭が真っ白になった。
今まで、一度も永那はさわらなかったのに。
恥ずかしさと、適当にさわられた怒りと、ほんの少しの…嬉しさと…全部が混ざって、何が何だかわからなくなって、思わずみんなから離れた。
2日目の朝。
永那、穂にキスマークまで残して、胸に手を突っ込んだまま寝るって、どういう了見?
嬉しさが薄らいで、朝からイライラしたから、永那のお腹を蹴っ飛ばしてやった。
そしたら少しスッキリして、胸をさわられたことに対するイライラはおさまった。
…穂のキスマークにキスマークを重ねて、永那と間接キスができたことも…まあ…あたしの心を鎮めた理由の1つではあるけど。
2日目の夜、あたしが寝た後、永那と穂がイチャイチャしてる声で目が覚めた。
2人はあたしが寝てると思っていたんだろうけど、眠りの浅いあたしは、あんなそばで会話されたら起きちゃう。
永那が“特別おっぱいが好きなわけじゃない”と言って、衝撃を受けた。
あたしは勝手に“エロい=おっぱいが好き”と思ってたから、散々やってきた永那へのアプローチが、無意味だったことに気付かされる。
…まあ、穂には効果抜群だったけど。
穂が永那に甘えてる姿が可愛くて、あたしにもこんなふうにしてくれたらいいのにって、ちょっと嫉妬した。
でも、あたしは穂にはさわってはいけないから…無理な話。
永那が“不安なんだ”と口にした。
永那は、穂相手になら、不安を口にできるのだと…こっちにも嫉妬した。
穂の寝息が聞こえてきて、永那がモゾモゾ動く。
“動かさないから”とか言っておきながら、普通に動かしてて引く。
「穂、これでも起きないんだ…」とか言い出すから、聞いていられなくなって、寝返りを打つフリして2人に背を向ける。
その後、永那は静かだったし…あたしもようやくまともに眠れた。
修学旅行3日目の昼、永那がスマホを持ってどこかに行った。
穂が不安そうにあたしを見るから、すぐにお母さんのことなのだと察した。
戻ってきた永那は中学のときを彷彿とさせて、嫌な感じがした。
穂は酷く怯えているような、傷ついているような表情をしていて、昔のあたしを思い出した。
永那がいろんな人とセックスをしているという話を聞いて、悲しくて、ひとりで泣いていたときのあたしを。
永那に捨てられたら、孤独になってしまうと、酷く怯えていた、昔のあたしを。
だからあたしは、穂を守りたくなった。
もちろん、穂のことが大事だからというのもある。
…でも、たぶん…あたしは、昔のあたしを守りたかったんだ。
今は、例え永那がいなくなったとしても、穂がいてくれる安心感があるし。
きっと、優里や桜もそばにいてくれるって、わかってる。
だから、あたしは昔のあたしを守れる気がした。
(ちなみに森山さんを桜と呼び始めたのは、優里が“桜ちゃん”と呼んでいるから。“森山さん”って長くて呼ぶの、面倒だし)
暴走している永那が許せなかった。
何があったのかは知らないけれど…何があったのか、話してくれない永那に腹が立った。
無理に笑って、変なテンションになって、穂を傷つけて、穂が傷ついていることにも気づかない。
…あたしが傷ついていることに気づかなかったように。
優里のことまで傷つけようとして、あたしの怒りは限界に達した。
永那を蹴り飛ばす。
必死だった。
これで永那の暴走が止まらないなら、あたしには何もできることはないってくらい、必死だった。
“手、震えてるよ。本当は怖いくせに、強がってんじゃねえよ。できないだろ?私とは”
…できるよ!
永那となら…永那になら…何されてもいい。
怖い。怖くないなんて、嘘になる。
でも…怖くても、なんでも…それで永那の苦しみが消せるなら、あたしはなんだってできる。
だって永那は、あたしが一番苦しくて死にたかったときに、手を差し伸べてくれた、唯一の人だったから。
そう、思ってるのに…彼女には、伝わらない。
必死の思いは、伝わらない。
それが、悲しくて…あたしは、何も言えなかった。
永那と穂が部屋から出て行って、優里に抱きしめられて、声を出して泣いた。
「佐藤さん。きっと、佐藤さんの気持ち、両角さんにちゃんと伝わってます」
背中を擦ってくれていた桜が言った。
まっすぐ私を見て、言った。
「大丈夫です。あとは空井さんがまとめてくれることでしょう。あの方は、そういうことに長けているのでしょうし…。佐藤さんの思い、すごく、すごく、伝わってきたから…だからきっと両角さんも部屋を出たんです」
「…桜のくせに、生意気」
桜の顔が真っ赤になって、俯く。
…嬉しかった。
伝わってると、いいなあ…。
「うんうん!桜ちゃんの言うとおり!永那はバカだけど、人の気持ちがわからないような人じゃない」
優里の笑顔が眩しい。
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