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5.時間
317.酸いも甘いも
「千陽…」
「うん、朝だよ。起きて」
「ん~…」
彼女があたしの肩に顔を擦り付ける。
「可愛い。…遅刻しちゃうよ。それとも、サボる?」
「んー…!」
ぶんぶん首を横に振って、「眠い…」と呟く。
「眠いね」
「顔…洗う…」
「わかった」
彼女の手を引いて、洗面台に行く。
顔を洗うと、彼女はフゥッと息を吐いた。
あくびをしてから「おはよう、千陽」と笑った。
「おはよ」
「永那ちゃん、起こさないと…」
「うん」
体を重そうに引きずって、穂は寝室に戻る。
「永那ちゃん…起きて…」
何度も瞼が落ちかけながら、穂は永那と口付けする。
「永那ちゃん…」
「あたし、準備してくる」
そう告げて、部屋に戻る。
メイクして、髪を巻く。
香水をつけて、鞄の中身を今日の授業の物に入れ替える。
「千陽」
「やっと起きたんだ」
穂の隣に目を擦っている永那が立っていた。
「千陽がいなかったら、学校サボっちゃうところだった…ありがとう…」
穂が申し訳なさそうにする。
「それでよく遅刻せずに来られてるね、学校」
「最近は、ちゃんと寝てるから。最初の日とかは、気合だったよ…」
…まあ、気を張ってたら、いつもより目覚めも良くなるだろうし…2人で過ごすようになった最初の頃は、穂も永那にいろいろ気遣っていたんだろうな。
でも慣れてくると…そうもいかない…と。
あたしがいたから、安心してくれてたとしたら、嬉しいな。
3人で1階に下りて、朝ご飯を食べる。
昨日の夜の残り。
お皿を食洗機に突っ込んで、パパが買い溜めしてるゼリーの箱を鞄に入れる。
その間、2人は仕度をしていた。
もうあたしは穂へのプレゼント渡しちゃったし、まさか今日お呼ばれするなんて思ってもいなかったから、何も用意できていない。
穂は気にしないだろうけど、みんな持ってきてるのにあたしだけないなんて、ちょっと嫌だ。
…桜も、今日いきなり呼ばれてビックリしてるだろうな。
優里は何を用意したんだろ?
3人で学校に行く。
「あ、あの…!」
校門の近くで声をかけられて、足を止めた。
「菫」
「さ、佐藤先輩…おはようございます…」
「おはよ」
「誰?」
永那が言う。
穂も首を傾げている。
「桜の妹」
「森山さんの?」
穂が興味深そうに菫を見る。
逆に永那は興味が失せたみたいだった。
「あー…あの…」
「なに?」
「えーっ…」
菫が後ろにいる友達らしき2人の女子を見る。
少し距離のあるところに立っていた2人がパタパタと走って近づいてくる。
「も、両角先輩!あの!私、前から…」
永那の冷たい視線が話し始めた女子に降り注ぐ。
…前はしょっちゅうあったな、こういうの。
「先輩の、こと…」
その子は顔を真っ赤にして、俯く。
「千陽に用があったんじゃないの?」
永那が菫を睨む。
「あ…えっと…わ、私は…挨拶をと…」
「永那ちゃん、人の話は最後まで聞かないとだめだよ?」
穂が全く空気を読めていない。
永那は左眉を上げて「なに?」と聞く。
「あっ…いえ…なんでも…ありません。ごめんなさい!」
そう言って走って行ってしまう。
残された2人も追いかけるように走り始めるけど、あたしは菫の鞄を掴む。
「菫、次あたしのこと利用しようとしたら…」
「ごめんなさい!ごめんなさい!申し訳ございませんでした!!!もう二度としません!!!」
土下座し始めるから、引く。
「もう、いいから…」
「あの…お姉ちゃんは、全く、全く関係ないので!どうか…お姉ちゃんのこと、今後とも、よろしくお願いいたします!!!」
「はいはい」
あたしが歩き始めると、穂と永那もついてくる。
「だ、大丈夫なの?」
穂が、未だに土下座する菫を見ながら言う。
「うん」
「久しぶりにああいうことされたね」
永那が言うから、あたしは頷く。
永那は男子から、あたしは女子から…“佐藤さん・両角さんの連絡先教えて”とか、みんなで遊びに行こうとか、間を取り持ってくれというお願いを何度もされてきた。
中学のとき、あたしのことを散々見て見ぬふりしてきた連中が、永那と仲良くなったと知った途端、“佐藤さんって美人だよね”とか褒めてきたのが気味悪かった。
永那は人気者だったし、話しかければ普通に話してくれるというのに、なぜか女子の中にはあたしを介そうとする人が一定数いた。
今考えれば、そういう女子達は、永那を出しに使って、あたしが他の男子と本当に関係を持たないのかを探っていたのかもしれない。
本当にあたしは永那が好きなのか、確認したかったのかもしれない。
今回は違ったけど。
「穂、嫌じゃないの?」
「なにが?」
穂はまだ菫を気にしていた。
「目の前で恋人が告られそうになってたんだけど?」
「え、そうだったの?」
「…どうしてわからないの?」
穂の顔が引きつる。
「あの状況じゃ、告るわけじゃなかったんじゃない?“憧れてました”とかじゃない?」
永那があくびをしながら言う。
「同じ意味でしょ。穂と永那が付き合ってることは知れ渡ってるわけだから。よく言えるよね、ホント」
「わ、私は…永那ちゃんと千陽はすごいなあって…思うよ」
あたしと永那が穂を見る。
「2人とも、本当に綺麗だから」
そう笑う、穂のほうが綺麗だと思った。
永那も、見蕩れてるみたいだった。
「うん、朝だよ。起きて」
「ん~…」
彼女があたしの肩に顔を擦り付ける。
「可愛い。…遅刻しちゃうよ。それとも、サボる?」
「んー…!」
ぶんぶん首を横に振って、「眠い…」と呟く。
「眠いね」
「顔…洗う…」
「わかった」
彼女の手を引いて、洗面台に行く。
顔を洗うと、彼女はフゥッと息を吐いた。
あくびをしてから「おはよう、千陽」と笑った。
「おはよ」
「永那ちゃん、起こさないと…」
「うん」
体を重そうに引きずって、穂は寝室に戻る。
「永那ちゃん…起きて…」
何度も瞼が落ちかけながら、穂は永那と口付けする。
「永那ちゃん…」
「あたし、準備してくる」
そう告げて、部屋に戻る。
メイクして、髪を巻く。
香水をつけて、鞄の中身を今日の授業の物に入れ替える。
「千陽」
「やっと起きたんだ」
穂の隣に目を擦っている永那が立っていた。
「千陽がいなかったら、学校サボっちゃうところだった…ありがとう…」
穂が申し訳なさそうにする。
「それでよく遅刻せずに来られてるね、学校」
「最近は、ちゃんと寝てるから。最初の日とかは、気合だったよ…」
…まあ、気を張ってたら、いつもより目覚めも良くなるだろうし…2人で過ごすようになった最初の頃は、穂も永那にいろいろ気遣っていたんだろうな。
でも慣れてくると…そうもいかない…と。
あたしがいたから、安心してくれてたとしたら、嬉しいな。
3人で1階に下りて、朝ご飯を食べる。
昨日の夜の残り。
お皿を食洗機に突っ込んで、パパが買い溜めしてるゼリーの箱を鞄に入れる。
その間、2人は仕度をしていた。
もうあたしは穂へのプレゼント渡しちゃったし、まさか今日お呼ばれするなんて思ってもいなかったから、何も用意できていない。
穂は気にしないだろうけど、みんな持ってきてるのにあたしだけないなんて、ちょっと嫌だ。
…桜も、今日いきなり呼ばれてビックリしてるだろうな。
優里は何を用意したんだろ?
3人で学校に行く。
「あ、あの…!」
校門の近くで声をかけられて、足を止めた。
「菫」
「さ、佐藤先輩…おはようございます…」
「おはよ」
「誰?」
永那が言う。
穂も首を傾げている。
「桜の妹」
「森山さんの?」
穂が興味深そうに菫を見る。
逆に永那は興味が失せたみたいだった。
「あー…あの…」
「なに?」
「えーっ…」
菫が後ろにいる友達らしき2人の女子を見る。
少し距離のあるところに立っていた2人がパタパタと走って近づいてくる。
「も、両角先輩!あの!私、前から…」
永那の冷たい視線が話し始めた女子に降り注ぐ。
…前はしょっちゅうあったな、こういうの。
「先輩の、こと…」
その子は顔を真っ赤にして、俯く。
「千陽に用があったんじゃないの?」
永那が菫を睨む。
「あ…えっと…わ、私は…挨拶をと…」
「永那ちゃん、人の話は最後まで聞かないとだめだよ?」
穂が全く空気を読めていない。
永那は左眉を上げて「なに?」と聞く。
「あっ…いえ…なんでも…ありません。ごめんなさい!」
そう言って走って行ってしまう。
残された2人も追いかけるように走り始めるけど、あたしは菫の鞄を掴む。
「菫、次あたしのこと利用しようとしたら…」
「ごめんなさい!ごめんなさい!申し訳ございませんでした!!!もう二度としません!!!」
土下座し始めるから、引く。
「もう、いいから…」
「あの…お姉ちゃんは、全く、全く関係ないので!どうか…お姉ちゃんのこと、今後とも、よろしくお願いいたします!!!」
「はいはい」
あたしが歩き始めると、穂と永那もついてくる。
「だ、大丈夫なの?」
穂が、未だに土下座する菫を見ながら言う。
「うん」
「久しぶりにああいうことされたね」
永那が言うから、あたしは頷く。
永那は男子から、あたしは女子から…“佐藤さん・両角さんの連絡先教えて”とか、みんなで遊びに行こうとか、間を取り持ってくれというお願いを何度もされてきた。
中学のとき、あたしのことを散々見て見ぬふりしてきた連中が、永那と仲良くなったと知った途端、“佐藤さんって美人だよね”とか褒めてきたのが気味悪かった。
永那は人気者だったし、話しかければ普通に話してくれるというのに、なぜか女子の中にはあたしを介そうとする人が一定数いた。
今考えれば、そういう女子達は、永那を出しに使って、あたしが他の男子と本当に関係を持たないのかを探っていたのかもしれない。
本当にあたしは永那が好きなのか、確認したかったのかもしれない。
今回は違ったけど。
「穂、嫌じゃないの?」
「なにが?」
穂はまだ菫を気にしていた。
「目の前で恋人が告られそうになってたんだけど?」
「え、そうだったの?」
「…どうしてわからないの?」
穂の顔が引きつる。
「あの状況じゃ、告るわけじゃなかったんじゃない?“憧れてました”とかじゃない?」
永那があくびをしながら言う。
「同じ意味でしょ。穂と永那が付き合ってることは知れ渡ってるわけだから。よく言えるよね、ホント」
「わ、私は…永那ちゃんと千陽はすごいなあって…思うよ」
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