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5.時間
321.考える
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「パパがね、よくパーティー開くんだけど」
「お?おう…」
「立派な大人がさ?あたしのこと、ジロジロ見てくるの。胸とか、胸とか、胸とか…たまに顔。キモくない?…女の人からも見られはするけど、それは純粋に“可愛い”って思ってくれてるのがわかる。20以上年上の男から下心丸出しの目で見られる気持ち悪さ…わかる?」
「わかるわけないよね?」
その素直さが、穂っぽくもあり、永那っぽくもある。
「20も年上の女の人から、下心丸出しの目で見られてるって想像してみてよ」
「んー…んー?…わ、わかんねえ…」
「先生とかからさ、ずっとエロい目で見られてるって考えて。20離れてるってことは、あたし達が生まれたとき、その人が20歳ってことだからね?20歳の人が生まれたばかりの赤ん坊をエロい目で見てるの…」
「…キモい!」
「…まあ、少し大げさだけど。あたし、まだ一応未成年だし…未成年に対してそういう目で見てるってのが、大人としてどうなの?って思うわけ」
「だな」
…なんであたし、こんな話してるんだろう。
「だから…まあ…何が言いたいのかなんて、自分でもわかんないけど」
「わかんないのかよ」
「ただ…ただ、さ…あたしは、永那が女で良かったなって、思うんだよ」
…さっきのわけわかんないアドバイスだって、女子に囲まれて生きてきたから得られたものなんじゃないかって思う。
「おー…そっか…」
「誉は、穂の恋人、本当は男が良かった?…そしたら結婚して、お義兄さんができたわけでしょ?」
「え?んー?…難しいことは、よくわかんないけど…俺は、べつに、男でも女でも、どうでもいい」
「そうなの?お兄ちゃんができたみたいで、嬉しかったんじゃないの?」
「それは、そうだけど。だからって、男が良かったってわけじゃないよ。永那で良かったって思ってるだけ。永那は、可愛いって感じじゃないでしょ?頭のネジどっかいっちゃってんじゃないの?ってくらい、俺に変なこと言ってくるし。だから、ただ“兄ちゃんみたい”って言っただけ。他に言葉が思い浮かばなかったんだよ」
「ふーん」
「なんだよ」
「べつに」
あたしは何度目かのあくびをした。
眠いから…眠いから、こんな変なこと考えるんだ。
「おやすみ」
あたしが言うと、「お、おやすみ」と返ってくる。
すぐに意識がなくなって、目が覚めたら、あたしは誉を抱きしめていた。
起き上がると、誉があたしを見る。
「起きてたの?」
「ね、眠れないだろ!」
「へえ…」
「“へえ”って…!俺、初めて夜寝られなかったよ…」
「おめでとう」
「おめでとう!?おめでとうなのか!?」
「朝からうるさい…」
「ご、ごめん。…って…俺のせい?」
「うん」
あたしは伸びをして、立ち上がる。
部屋を出ると、まだ誰も起きていなかった。
一応穂の部屋をノックして、ドアを開ける。
2人で仲良く寝ていた。
もう9時なのに、穂が起きてないなんて、本当、変な感じ。
あたしは誉を呼んで、コーヒーのある場所を教えてもらった。
「俺…寝てくるね…」
あたしは頷いて、彼の背中を見送る。
コーヒーを淹れる。
ダイニングテーブルの椅子に座って、窓を眺めた。
「チョコミントのチョコはミントのためにあるの!」
起きてるんじゃないかと思うけど、優里の寝言だ。
桜…よく寝ていられるな。
コーヒーをチビチビ飲みながら、部屋を見回した。
1時間後、穂と永那と桜が起きて、そのまた1時間後に優里が起きた。
みんなでお昼を食べて、穂と永那が海に行くと言うから、そこで解散となった。
桜は用事があるとかで、あたしはひとりで家に帰る。
まだママもパパも帰ってこない家に。
ひとりだと虚しい、無機質な家に。
あたしは、穂と永那と3人で楽しく過ごしたリビングを通り過ぎて、重たい足を引きずるように2階に上がる。
自分の部屋…昨日まで、楽しかった部屋。
今は、ひとり。
玩具を出して、昨日のことを思い出しながら、自慰に耽る。
この前は幸せに感じられたのに、今はただ、虚しい。
寂しい…。
ベッドに倒れ込むと、涙が流れ落ちた。
何度も、何度も、瞬きするたびに涙が零れ落ちる。
あたしはスマホを出して、メッセージ画面を開く。
穂に送った“好き”、穂から送られてきた“好き”は、1週間前が最後だった。
“好き”と入力して、消す。
「ハァ」とため息だけが部屋に響く。
『今度、会いませんか?』
レズビアンのオフ会で出会った人に送った。
永那への気持ちを消したくて、前にも何人かと会ったけど、そのたびに永那への好きが増した。
でも、あのときとは違う。
違うと、思いたい。
あたしも、あたしだけを見てくれる人…特別な人に出会いたい。
2人みたいな関係を築ける相手を…見つけたい。
『いいですね。いつにしますか?』
返事を見て、あたしは目を閉じた。
「お?おう…」
「立派な大人がさ?あたしのこと、ジロジロ見てくるの。胸とか、胸とか、胸とか…たまに顔。キモくない?…女の人からも見られはするけど、それは純粋に“可愛い”って思ってくれてるのがわかる。20以上年上の男から下心丸出しの目で見られる気持ち悪さ…わかる?」
「わかるわけないよね?」
その素直さが、穂っぽくもあり、永那っぽくもある。
「20も年上の女の人から、下心丸出しの目で見られてるって想像してみてよ」
「んー…んー?…わ、わかんねえ…」
「先生とかからさ、ずっとエロい目で見られてるって考えて。20離れてるってことは、あたし達が生まれたとき、その人が20歳ってことだからね?20歳の人が生まれたばかりの赤ん坊をエロい目で見てるの…」
「…キモい!」
「…まあ、少し大げさだけど。あたし、まだ一応未成年だし…未成年に対してそういう目で見てるってのが、大人としてどうなの?って思うわけ」
「だな」
…なんであたし、こんな話してるんだろう。
「だから…まあ…何が言いたいのかなんて、自分でもわかんないけど」
「わかんないのかよ」
「ただ…ただ、さ…あたしは、永那が女で良かったなって、思うんだよ」
…さっきのわけわかんないアドバイスだって、女子に囲まれて生きてきたから得られたものなんじゃないかって思う。
「おー…そっか…」
「誉は、穂の恋人、本当は男が良かった?…そしたら結婚して、お義兄さんができたわけでしょ?」
「え?んー?…難しいことは、よくわかんないけど…俺は、べつに、男でも女でも、どうでもいい」
「そうなの?お兄ちゃんができたみたいで、嬉しかったんじゃないの?」
「それは、そうだけど。だからって、男が良かったってわけじゃないよ。永那で良かったって思ってるだけ。永那は、可愛いって感じじゃないでしょ?頭のネジどっかいっちゃってんじゃないの?ってくらい、俺に変なこと言ってくるし。だから、ただ“兄ちゃんみたい”って言っただけ。他に言葉が思い浮かばなかったんだよ」
「ふーん」
「なんだよ」
「べつに」
あたしは何度目かのあくびをした。
眠いから…眠いから、こんな変なこと考えるんだ。
「おやすみ」
あたしが言うと、「お、おやすみ」と返ってくる。
すぐに意識がなくなって、目が覚めたら、あたしは誉を抱きしめていた。
起き上がると、誉があたしを見る。
「起きてたの?」
「ね、眠れないだろ!」
「へえ…」
「“へえ”って…!俺、初めて夜寝られなかったよ…」
「おめでとう」
「おめでとう!?おめでとうなのか!?」
「朝からうるさい…」
「ご、ごめん。…って…俺のせい?」
「うん」
あたしは伸びをして、立ち上がる。
部屋を出ると、まだ誰も起きていなかった。
一応穂の部屋をノックして、ドアを開ける。
2人で仲良く寝ていた。
もう9時なのに、穂が起きてないなんて、本当、変な感じ。
あたしは誉を呼んで、コーヒーのある場所を教えてもらった。
「俺…寝てくるね…」
あたしは頷いて、彼の背中を見送る。
コーヒーを淹れる。
ダイニングテーブルの椅子に座って、窓を眺めた。
「チョコミントのチョコはミントのためにあるの!」
起きてるんじゃないかと思うけど、優里の寝言だ。
桜…よく寝ていられるな。
コーヒーをチビチビ飲みながら、部屋を見回した。
1時間後、穂と永那と桜が起きて、そのまた1時間後に優里が起きた。
みんなでお昼を食べて、穂と永那が海に行くと言うから、そこで解散となった。
桜は用事があるとかで、あたしはひとりで家に帰る。
まだママもパパも帰ってこない家に。
ひとりだと虚しい、無機質な家に。
あたしは、穂と永那と3人で楽しく過ごしたリビングを通り過ぎて、重たい足を引きずるように2階に上がる。
自分の部屋…昨日まで、楽しかった部屋。
今は、ひとり。
玩具を出して、昨日のことを思い出しながら、自慰に耽る。
この前は幸せに感じられたのに、今はただ、虚しい。
寂しい…。
ベッドに倒れ込むと、涙が流れ落ちた。
何度も、何度も、瞬きするたびに涙が零れ落ちる。
あたしはスマホを出して、メッセージ画面を開く。
穂に送った“好き”、穂から送られてきた“好き”は、1週間前が最後だった。
“好き”と入力して、消す。
「ハァ」とため息だけが部屋に響く。
『今度、会いませんか?』
レズビアンのオフ会で出会った人に送った。
永那への気持ちを消したくて、前にも何人かと会ったけど、そのたびに永那への好きが増した。
でも、あのときとは違う。
違うと、思いたい。
あたしも、あたしだけを見てくれる人…特別な人に出会いたい。
2人みたいな関係を築ける相手を…見つけたい。
『いいですね。いつにしますか?』
返事を見て、あたしは目を閉じた。
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