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6.さんにん
376.ふたり
それから数日後、穂と一緒に私の家に移動した。
3週間…いや、3カ月間、穂の家族にはお世話になったから、ほんの少しの生活費と、お礼のお菓子と手紙を、穂のお母さんの部屋に置いてきた。
お母さんが帰ってくるまでのあと1週間ちょっとを、穂と2人で家で過ごす。
初めてじいちゃんから連絡があって、先生によれば、今のところ入院が延長される予定はないという。
…良くなってるといいな。
「永那ちゃん、これ」
家に入ると、見慣れない箱がテーブルの上に置かれていた。
メモ書きみたいな手紙が添えられている。
『ひとりで寂しい思いしてるかと思って来てあげたけど、いなかったから置いてく。メリークリスマス』
「お姉ちゃんだ…」
筆跡がお姉ちゃんだし、そもそもこの家に来る人なんてお姉ちゃんくらいしかいない。
「なんか…申し訳ないことしちゃったかな…」
「いや、帰ってくるならメッセージの1つくらい送ってくれればいいんだよ。ほとんど帰ってこない姉が、いきなり帰ってきても…ね?帰ってくるかどうかもわからないのに、申し訳ないもなにもないよ」
「そう、かな…?」
「そうだよ」
穂にキスする。
穂が納得したように頷くから、私は箱を開けた。
「ピアスだ。綺麗だね!」
黒のチェーンの先に、黒色のパールが一粒ぶら下がっていた。
箱からピアスを取り出す。
「これ、本物かな?」
「どうだろうね?」
「本物だったら、相当高いよね?」
「たぶん…?」
2人でピアスを眺めていたら、ピアス越しに穂と目が合った。
お互い寄り目みたいになっているのが面白くて、笑った。
「穂~!」
抱きつく。
「え、永那ちゃん!もー!」
肩をペシペシ叩かれた。
「先に片付けちゃおう?」
「“先”って、“後”には何をするの?」
睨まれた。
仕方なく、ボストンバッグを部屋に運ぶ。
中から服やら教科書やらを取り出して、しまった。
穂は掃除を始める。
…真面目だなあ。
私はその様子を眺めながら、床に大の字に寝転んだ。
生まれたときから、私はこの家しか知らない。
なのに、帰ってきても“帰ってきた!”という安心感みたいなものは全くなく、むしろ“帰ってきてしまった…”という気持ちのほうが強い。
穂の家は居心地が良くて、安心感があった。
それは、私の家がボロくて、穂の家がお洒落だからとか、そういうのは関係ないように思えた。
嫌な思い出ばかり…なんだ…。
もちろん、楽しかった思い出もある。
でも、それを上回るほどに、嫌な思い出がこの家にはたくさん詰まっている。
…このまま、穂と一緒にいたい。
お母さんに、帰ってきてほしくない。
酷い奴。
本当に、私は、最低だ。
でも…それでも…穂といたい。
もう、お母さんのお世話なんか、したくない。
お母さんのことは大切に思ってる。
でも…。
視界がボヤけてきて、それを隠すように目元を腕で覆った。
「永那ちゃん?…寝ちゃったの?」
声をかけられたけど、泣いていることを知られたくなくて、寝たフリをする。
穂が近づく音がして、お腹に触れられた。
胸元に重みを感じて、目元を覆っていた腕の隙間から彼女を見る。
目の前に彼女の頭があった。
「永那ちゃん、好き」
…ああ…なんで、この人は…こんなに、可愛いんだ。
好きだ。
私も、穂が、好き。
バッと彼女が起き上がるから、慌てて目を閉じた。
今度は腰の辺りに重みを感じた。
…ん?揺れてる?
穂、マジで何やってんの?
腕をどけて、目を開ける。
私の腰の辺りに座った穂が、腰を振っていた。
彼女の大事なところを、私の下腹部に押し付けるように。
腰を振るたびに、彼女の長い黒髪と、プレゼントしたネックレスが揺れる。
「穂…」
「起きた?」
穂が優しい笑みを浮かべながら首を傾げる。
…可愛い。
「そんなエロいこと、どこで知ったの?」
彼女が白い歯をみせて笑う。
「秘密」
「秘密?」
「永那ちゃん、エッチなの、好きでしょ?」
「好き、大好き」
いたずら小僧みたいな笑みを浮かべながら、彼女は腰を振り続ける。
「そんなことしてたら、食べちゃうよ?」
「いいよ?」
深呼吸する。
「激しく、しちゃうかもよ?」
「望むところだ!」
私は上半身を起こして、彼女に口づけした。
フフッと彼女が笑う。
「穂」
「ん?」
「穂は、私が“男だったら良かったのに”って、思う?」
「え!?思わないよ」
「そうなの?」
「うん。え…えっと…永那ちゃんは、男性になりたいの?」
「ううん、全然。全然、なりたいと思わないから、聞いた。穂は、私が女のほうがいい?」
「…私は…どっちでもいいかな」
「どっちでも?」
「うん。だって、私は永那ちゃんが好きだから。男でも女でも、どっちでもいいよ」
そうだ。
私は、ずっとそう言ってほしかったんだ。
男とか女とか関係ない。
私の顔とか、与えてあげる優しさだけに惹かれるんじゃなくて…そういう、表面的なことだけで好かれるんじゃなくて、ただ、まっすぐ私を見てほしかった。
最初のキッカケがそれでもいい。
でも、それしか見てもらえないのは、悲しい。寂しい。
そもそも、与えてあげる優しさなんて、本当の優しさじゃない。
それしか見えないなら、本当の私なんて、きっと全く見えてない。
…千陽は、ずっと言ってくれてたな。
でも、嘘っぽい、作ったような可愛さが苦手で、千陽の気持ちに応えてあげたいとは思えなかった。
私はわがままで、応えてあげられないとわかっているのに、千陽の好意に甘えていた。
千陽が、ずっと私を好きだと言ってくれることに、甘えていた。
3週間…いや、3カ月間、穂の家族にはお世話になったから、ほんの少しの生活費と、お礼のお菓子と手紙を、穂のお母さんの部屋に置いてきた。
お母さんが帰ってくるまでのあと1週間ちょっとを、穂と2人で家で過ごす。
初めてじいちゃんから連絡があって、先生によれば、今のところ入院が延長される予定はないという。
…良くなってるといいな。
「永那ちゃん、これ」
家に入ると、見慣れない箱がテーブルの上に置かれていた。
メモ書きみたいな手紙が添えられている。
『ひとりで寂しい思いしてるかと思って来てあげたけど、いなかったから置いてく。メリークリスマス』
「お姉ちゃんだ…」
筆跡がお姉ちゃんだし、そもそもこの家に来る人なんてお姉ちゃんくらいしかいない。
「なんか…申し訳ないことしちゃったかな…」
「いや、帰ってくるならメッセージの1つくらい送ってくれればいいんだよ。ほとんど帰ってこない姉が、いきなり帰ってきても…ね?帰ってくるかどうかもわからないのに、申し訳ないもなにもないよ」
「そう、かな…?」
「そうだよ」
穂にキスする。
穂が納得したように頷くから、私は箱を開けた。
「ピアスだ。綺麗だね!」
黒のチェーンの先に、黒色のパールが一粒ぶら下がっていた。
箱からピアスを取り出す。
「これ、本物かな?」
「どうだろうね?」
「本物だったら、相当高いよね?」
「たぶん…?」
2人でピアスを眺めていたら、ピアス越しに穂と目が合った。
お互い寄り目みたいになっているのが面白くて、笑った。
「穂~!」
抱きつく。
「え、永那ちゃん!もー!」
肩をペシペシ叩かれた。
「先に片付けちゃおう?」
「“先”って、“後”には何をするの?」
睨まれた。
仕方なく、ボストンバッグを部屋に運ぶ。
中から服やら教科書やらを取り出して、しまった。
穂は掃除を始める。
…真面目だなあ。
私はその様子を眺めながら、床に大の字に寝転んだ。
生まれたときから、私はこの家しか知らない。
なのに、帰ってきても“帰ってきた!”という安心感みたいなものは全くなく、むしろ“帰ってきてしまった…”という気持ちのほうが強い。
穂の家は居心地が良くて、安心感があった。
それは、私の家がボロくて、穂の家がお洒落だからとか、そういうのは関係ないように思えた。
嫌な思い出ばかり…なんだ…。
もちろん、楽しかった思い出もある。
でも、それを上回るほどに、嫌な思い出がこの家にはたくさん詰まっている。
…このまま、穂と一緒にいたい。
お母さんに、帰ってきてほしくない。
酷い奴。
本当に、私は、最低だ。
でも…それでも…穂といたい。
もう、お母さんのお世話なんか、したくない。
お母さんのことは大切に思ってる。
でも…。
視界がボヤけてきて、それを隠すように目元を腕で覆った。
「永那ちゃん?…寝ちゃったの?」
声をかけられたけど、泣いていることを知られたくなくて、寝たフリをする。
穂が近づく音がして、お腹に触れられた。
胸元に重みを感じて、目元を覆っていた腕の隙間から彼女を見る。
目の前に彼女の頭があった。
「永那ちゃん、好き」
…ああ…なんで、この人は…こんなに、可愛いんだ。
好きだ。
私も、穂が、好き。
バッと彼女が起き上がるから、慌てて目を閉じた。
今度は腰の辺りに重みを感じた。
…ん?揺れてる?
穂、マジで何やってんの?
腕をどけて、目を開ける。
私の腰の辺りに座った穂が、腰を振っていた。
彼女の大事なところを、私の下腹部に押し付けるように。
腰を振るたびに、彼女の長い黒髪と、プレゼントしたネックレスが揺れる。
「穂…」
「起きた?」
穂が優しい笑みを浮かべながら首を傾げる。
…可愛い。
「そんなエロいこと、どこで知ったの?」
彼女が白い歯をみせて笑う。
「秘密」
「秘密?」
「永那ちゃん、エッチなの、好きでしょ?」
「好き、大好き」
いたずら小僧みたいな笑みを浮かべながら、彼女は腰を振り続ける。
「そんなことしてたら、食べちゃうよ?」
「いいよ?」
深呼吸する。
「激しく、しちゃうかもよ?」
「望むところだ!」
私は上半身を起こして、彼女に口づけした。
フフッと彼女が笑う。
「穂」
「ん?」
「穂は、私が“男だったら良かったのに”って、思う?」
「え!?思わないよ」
「そうなの?」
「うん。え…えっと…永那ちゃんは、男性になりたいの?」
「ううん、全然。全然、なりたいと思わないから、聞いた。穂は、私が女のほうがいい?」
「…私は…どっちでもいいかな」
「どっちでも?」
「うん。だって、私は永那ちゃんが好きだから。男でも女でも、どっちでもいいよ」
そうだ。
私は、ずっとそう言ってほしかったんだ。
男とか女とか関係ない。
私の顔とか、与えてあげる優しさだけに惹かれるんじゃなくて…そういう、表面的なことだけで好かれるんじゃなくて、ただ、まっすぐ私を見てほしかった。
最初のキッカケがそれでもいい。
でも、それしか見てもらえないのは、悲しい。寂しい。
そもそも、与えてあげる優しさなんて、本当の優しさじゃない。
それしか見えないなら、本当の私なんて、きっと全く見えてない。
…千陽は、ずっと言ってくれてたな。
でも、嘘っぽい、作ったような可愛さが苦手で、千陽の気持ちに応えてあげたいとは思えなかった。
私はわがままで、応えてあげられないとわかっているのに、千陽の好意に甘えていた。
千陽が、ずっと私を好きだと言ってくれることに、甘えていた。
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