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6.さんにん
387.ふたり
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「私の気持ち~?」
「ああ。ずっと、ひとりぼっちに、させてしまっていた」
お母さんは首を傾げた。
「ハァ」と、じいちゃんはため息をついて立ち上がる。
コートを羽織って荷物を持つから、私も慌てて立ち上がる。
「ようやく香那子と、父親として会話できるようになったよ。お前にとっては情けなくて頼りない祖父かもしれないけど、これからもよろしく頼むよ」
じいちゃんは靴を履いて、ポンポンと私の頭を撫でた。
私が無反応なのを見て、2度頷いてから、外に出た。
「ハァ」と深く息を吐く。
ポリポリ頭を掻いて、お母さんのそばに座った。
「じいちゃんと…仲良くなれたの?」
「仲良く~?」
フフッとお母さんが笑う。
「だって、なんか…昔、話も聞かずにいろいろ大反対されて、ムカついて家出したって言ってたじゃん?」
「あ~…へへへ。そんなこともあったね…」
お母さんが暗い笑みを浮かべた。
「まあ、ちょっとは?話せるようになったかな…。お母さんのこととか…あ!永那のおばあちゃんね?」
「そっか」
『永那ちゃん、よければ今週の土曜日、お出かけしませんか?千陽の誕生日プレゼントを買いたいの。忙しければ、大丈夫』
そんなメッセージが届いて、ワクワクする。
私が学校に行っている間、お母さんはじいちゃんに買ってもらった本を読んでいるという。
余裕があるときは散歩しているみたいだけど、そんなに多くはない。
1回参加したコミュニティ(自助グループ)の人達と連絡先を交換して、メッセージを送り合ったりもしているらしい。
思っていたよりも活動的だ。
包丁を使わない料理もし始めた。
包丁を使わないから、できる数は限られているけど、それでも、お母さんの作ったご飯が食べられるのは嬉しい。
「お母さん、今週の土曜、出かけてくる」
「どこ~?どこ行くの~?」
「電車乗って、買い物してくる」
「私も行きた~い!」
「友達と行くんだよ」
「私も行きたい~!!」
…言っても平気かと思ったけど、ダメだったか。
『お母さんも行きたいって言ってるんだけど、だめかな?』
“いいよ”って返ってくることはわかってる。
だからこそ、すごく申し訳ない。
『大丈夫だよ。久しぶりに会えるから嬉しい』
穂とのデートが…。
まあ、これくらいは…しょうがないか。
「“友達”って、穂ちゃんじゃん!」
穂と待ち合わせしていた最寄り駅について、お母さんが頬を膨らませて怒る。
「永那、わざと教えなかったの?なんで?」
「サプライズ サプライズ」
「ぶー」
お母さんは不貞腐れながらも、私の腕に引っ付いた。
穂が苦笑する。
「お母さん、ホントに電車大丈夫なの?」
お母さんは人混みが苦手で、あまりに混雑しているとパニックを起こしてしまう。
「大丈夫~!穂ちゃんもいるもん!」
今日はそんなに混んではいないけど…穂が気を使って、千陽のプレゼント選びができなかった…なんてことにならないといいな。
…そう言えば、千陽には毎年、誕生日プレゼントとしてデートに付き合わされていたけど、今年はどうすればいいんだろう?
大体1ヶ月くらい前から“楽しみ”と連呼される日が続くのが常だったけど、今年は何も言われていない。
さすがにデートするだけじゃプレゼントにならないと思って、入浴剤とかヘアアクセサリーとかあげてたけど…。
今年はデートがないなら、ちゃんとしたプレゼント考えなきゃいけないよね。
“ちゃんとした”って、わかんねー!
友達への誕生日プレゼントとか、いつも誰かと“割り勘しようぜー”って言って、私はお金だけ払うことが多い。
さすがに穂に“割り勘しよう”とは言えないし、優里もなんか違うし…ってか、千陽には世話になってるから(迷惑もかけたし)、ちゃんとした物を贈りたい。
贈りたい、けど…!何をあげればいいんだ?
私が買える物なんて、あいつからすればきっとどれも安っぽくて。あげても良いのかすらわからない。
人の欲しい物なんて、よくわからないし。
千陽は毎年“デートしたい”って言ってくれるから楽だった…。
その楽さに今更気づく…。
「穂、買う物決まってるの?」
「大体は…。でも、千陽って自分で良い物買ってるから、難しいんだよね。優里ちゃんに相談したんだけど、優里ちゃんも去年悩んだって言ってた」
「やっぱそうだよね…」
「永那ちゃんは決まってるの?」
ギクッとする。
「全然、まったく…。ってか、穂に言われるまで誕生日の存在すら忘れてた…」
「え!?そうだったんだ」
穂が苦笑する。
やめてくれ!そんな、哀れな者を見るような目で見ないでくれ!
目的地の駅について、3人で電車を降りた。
「千陽ちゃん、誕生日なの?」
「うん、火曜日ね」
「ふーん…って!永那!明々後日じゃない!?永那、何も買ってないの!?」
お母さんが目を見開く。
「そーなの…」
「ダメじゃん!」
「わかってるよ…」
項垂れながら歩く。
穂が“こっちだよ”と手を引いてくれる。
それだけで、一瞬で心がぽわぽわして、千陽の誕生日プレゼントのことがどうでもよくなる。
…あ、ダメダメ。
考えろ、私。
「ああ。ずっと、ひとりぼっちに、させてしまっていた」
お母さんは首を傾げた。
「ハァ」と、じいちゃんはため息をついて立ち上がる。
コートを羽織って荷物を持つから、私も慌てて立ち上がる。
「ようやく香那子と、父親として会話できるようになったよ。お前にとっては情けなくて頼りない祖父かもしれないけど、これからもよろしく頼むよ」
じいちゃんは靴を履いて、ポンポンと私の頭を撫でた。
私が無反応なのを見て、2度頷いてから、外に出た。
「ハァ」と深く息を吐く。
ポリポリ頭を掻いて、お母さんのそばに座った。
「じいちゃんと…仲良くなれたの?」
「仲良く~?」
フフッとお母さんが笑う。
「だって、なんか…昔、話も聞かずにいろいろ大反対されて、ムカついて家出したって言ってたじゃん?」
「あ~…へへへ。そんなこともあったね…」
お母さんが暗い笑みを浮かべた。
「まあ、ちょっとは?話せるようになったかな…。お母さんのこととか…あ!永那のおばあちゃんね?」
「そっか」
『永那ちゃん、よければ今週の土曜日、お出かけしませんか?千陽の誕生日プレゼントを買いたいの。忙しければ、大丈夫』
そんなメッセージが届いて、ワクワクする。
私が学校に行っている間、お母さんはじいちゃんに買ってもらった本を読んでいるという。
余裕があるときは散歩しているみたいだけど、そんなに多くはない。
1回参加したコミュニティ(自助グループ)の人達と連絡先を交換して、メッセージを送り合ったりもしているらしい。
思っていたよりも活動的だ。
包丁を使わない料理もし始めた。
包丁を使わないから、できる数は限られているけど、それでも、お母さんの作ったご飯が食べられるのは嬉しい。
「お母さん、今週の土曜、出かけてくる」
「どこ~?どこ行くの~?」
「電車乗って、買い物してくる」
「私も行きた~い!」
「友達と行くんだよ」
「私も行きたい~!!」
…言っても平気かと思ったけど、ダメだったか。
『お母さんも行きたいって言ってるんだけど、だめかな?』
“いいよ”って返ってくることはわかってる。
だからこそ、すごく申し訳ない。
『大丈夫だよ。久しぶりに会えるから嬉しい』
穂とのデートが…。
まあ、これくらいは…しょうがないか。
「“友達”って、穂ちゃんじゃん!」
穂と待ち合わせしていた最寄り駅について、お母さんが頬を膨らませて怒る。
「永那、わざと教えなかったの?なんで?」
「サプライズ サプライズ」
「ぶー」
お母さんは不貞腐れながらも、私の腕に引っ付いた。
穂が苦笑する。
「お母さん、ホントに電車大丈夫なの?」
お母さんは人混みが苦手で、あまりに混雑しているとパニックを起こしてしまう。
「大丈夫~!穂ちゃんもいるもん!」
今日はそんなに混んではいないけど…穂が気を使って、千陽のプレゼント選びができなかった…なんてことにならないといいな。
…そう言えば、千陽には毎年、誕生日プレゼントとしてデートに付き合わされていたけど、今年はどうすればいいんだろう?
大体1ヶ月くらい前から“楽しみ”と連呼される日が続くのが常だったけど、今年は何も言われていない。
さすがにデートするだけじゃプレゼントにならないと思って、入浴剤とかヘアアクセサリーとかあげてたけど…。
今年はデートがないなら、ちゃんとしたプレゼント考えなきゃいけないよね。
“ちゃんとした”って、わかんねー!
友達への誕生日プレゼントとか、いつも誰かと“割り勘しようぜー”って言って、私はお金だけ払うことが多い。
さすがに穂に“割り勘しよう”とは言えないし、優里もなんか違うし…ってか、千陽には世話になってるから(迷惑もかけたし)、ちゃんとした物を贈りたい。
贈りたい、けど…!何をあげればいいんだ?
私が買える物なんて、あいつからすればきっとどれも安っぽくて。あげても良いのかすらわからない。
人の欲しい物なんて、よくわからないし。
千陽は毎年“デートしたい”って言ってくれるから楽だった…。
その楽さに今更気づく…。
「穂、買う物決まってるの?」
「大体は…。でも、千陽って自分で良い物買ってるから、難しいんだよね。優里ちゃんに相談したんだけど、優里ちゃんも去年悩んだって言ってた」
「やっぱそうだよね…」
「永那ちゃんは決まってるの?」
ギクッとする。
「全然、まったく…。ってか、穂に言われるまで誕生日の存在すら忘れてた…」
「え!?そうだったんだ」
穂が苦笑する。
やめてくれ!そんな、哀れな者を見るような目で見ないでくれ!
目的地の駅について、3人で電車を降りた。
「千陽ちゃん、誕生日なの?」
「うん、火曜日ね」
「ふーん…って!永那!明々後日じゃない!?永那、何も買ってないの!?」
お母さんが目を見開く。
「そーなの…」
「ダメじゃん!」
「わかってるよ…」
項垂れながら歩く。
穂が“こっちだよ”と手を引いてくれる。
それだけで、一瞬で心がぽわぽわして、千陽の誕生日プレゼントのことがどうでもよくなる。
…あ、ダメダメ。
考えろ、私。
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