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6.さんにん
393.ふたり
「森山さんがいるから、送らなくて大丈夫だよね?」
永那はそう言って、小走りに帰った。
しばらく永那の背中を見つめてから、歩き出す。
「桜は」
桜はあたしの半歩後ろをちょこちょこ歩く。
「大学、どこ行くとか、決めてる?」
「私は、いくつか…決めてる、かな」
「どこか、聞いてもいい?」
全部、女子大だった。
女子大…。
そんな選択肢、考えたこともなかった。
今までのあたしは“絶対永那と一緒”としか考えてこなかったから。
「なんで女子大なの?」
ギクッと肩を上げて、キョロキョロと目を激しく動かす。
…可愛い女の子と可愛い女の子がイチャイチャしてる姿を見たいだけかな?
「あ、あの…やっぱり…秘密の花園というイメージで…」
「そんなに綺麗なものじゃないって聞くけど」
「そうなんですか!?」
「女子大って、他校の男子と合コンばっかしてる人もたくさんいるらしいよ」
SNS情報。
「…な、なんと…知らなかったです」
見るからに肩を落として、がっかりしてる。
「でも…まあ…いるだろうけどね。女の子同士で仲良くしてる人も」
「そうですよね!!…あ、そうだよね!!!」
目を輝かせてあたしを見る。
「学部は?…やりたいこととか、あるの?」
「文学部がいいなって思ってるよ。やりたいことは、特には、ないんだけど…私、本が好きだから…」
「なるほど…。将来は、出版社とかで働くってイメージ?」
「い、いやあ…出版社って、かなり倍率高いし、それは無理だと思うなあ。関われたら、嬉しいけど…」
「ふーん」
「大学在学中に、やりたいこととか、ちゃんと見つけられたらいいなって感じ…かも…。ご、ごめんね、ふわっとしてて…」
「ううん。参考になった、ありがと」
「…いえ。お役に、立てたのなら…良かった」
男がいる環境は、もう、なんか、いいやって感じだし…あたしも女子大に絞ろうかな。
学部は追々決めるとして…。
「佐藤さんは…?」
「あたしは、まだ全然決まってない」
「佐藤さんなら、どこでも行けそう」
桜が微笑む。
「…ありがと」
「空井さんと両角さんと同じ大学には行かないの?」
「…うん、その予定。遠くに行くつもりはないけど、少し、離れてみようかなって思ってる」
「そうなんだ」
それ以上何も聞かないでくれる桜の気遣いがありがたかった。
“どうして?”なんて聞かれても、なんて答えればいいか、あたしにはまだわからないから。
その週の日曜日、駅で永那と待ち合わせた。
今月末に遊園地に行こうかとも言っていたけど、結局前半になった。
3月になったら期末テストがあるし、穂は勉強したいだろうからと…。
来週はバレンタインと記念日があるから無理だった。
外のアトラクションに乗るには寒すぎる季節だけど…ここまで言い出せなかったあたしのせいだから仕方ない。
駅についても、まだ永那はいなかった。
永那が先にいないなんて、変な感じがする。
学校も遅刻する日が増えている。
夜、お母さんが寝るようになったから永那も寝ているらしい。
夜寝るようになると、朝起きられないという弊害が生まれた。
「アラームつけてるのに起きれないんだよ!嫌になるわ!」なんて自分に文句を言っていた。
マフラーに顔をうずめて、コートのポケットに手を突っ込む。
あの人の動画を見ようか少し迷ってから、スマホを出したら、視界の端に永那が映った。
「ごめん」
「うん」
「行こうか」
「うん」
永那の腕に抱きつく。
手が寒いから、永那のコートのポケットに手を入れた。
「お母さんが“行きたい”って騒いで大変だったよ…」
遠い目をしながら、永那が「ハァ」とため息をつく。
吐いた白い息は心なしか灰色で、永那の心の内を表しているみたいだった。
「誕生日パーティーのときは、穂のご飯で機嫌直したんでしょ?お土産でも買って帰れば?」
「それは言ったんだけど…ダメだった。とりあえず、今度穂を家に連れてくって約束して、なんとか出てきたよ」
「ふーん」
改札を通る。
ホームに立つと、吹く風が強まった気がした。
寒くて永那に密着する。
「永那」
「ん?」
「3人で、シたい」
フッと永那が笑う。
見下ろすようにあたしを見て、楽しそうに笑みを浮かべた。
「そだな」
「…永那も、シたい?」
「うん」
「あたしがいても…シたいって、思ってくれるの?」
永那が笑って、彼女の肩が揺れた。
「そんな笑わなくたって…」
「ごめんごめん」
彼女は鼻を啜って、人差し指で擦った。
口元がニヤついてる。
…少しは可愛いって、思ってもらえたのかな。
「お前のパパは、いつ出張かね?」
その言葉で、あたしの願いを叶えてくれようとしているのだと、すぐにわかって、胸の内から喜びが溢れ出す。
思わずあたしは俯いて、深呼吸した。
嬉しくて、嬉しくて、たまらない。
永那の匂いを嗅ぐ。
彼女の腕をギュッと握りしめる。
「聞いてみる」
「おー。…でも、テスト前はダメだろうな」
「うん、わかってる」
約束してくれるだけでいい。
いつになるかわからなくても、永那は絶対、約束を破らないから。
穂と待ち合わせしてる電車がホームにつく。
いつもの車両に乗り込むと、座ってる穂があたし達を見て微笑んだ。
だからあたしも返して、穂を真ん中に、座った。
永那はそう言って、小走りに帰った。
しばらく永那の背中を見つめてから、歩き出す。
「桜は」
桜はあたしの半歩後ろをちょこちょこ歩く。
「大学、どこ行くとか、決めてる?」
「私は、いくつか…決めてる、かな」
「どこか、聞いてもいい?」
全部、女子大だった。
女子大…。
そんな選択肢、考えたこともなかった。
今までのあたしは“絶対永那と一緒”としか考えてこなかったから。
「なんで女子大なの?」
ギクッと肩を上げて、キョロキョロと目を激しく動かす。
…可愛い女の子と可愛い女の子がイチャイチャしてる姿を見たいだけかな?
「あ、あの…やっぱり…秘密の花園というイメージで…」
「そんなに綺麗なものじゃないって聞くけど」
「そうなんですか!?」
「女子大って、他校の男子と合コンばっかしてる人もたくさんいるらしいよ」
SNS情報。
「…な、なんと…知らなかったです」
見るからに肩を落として、がっかりしてる。
「でも…まあ…いるだろうけどね。女の子同士で仲良くしてる人も」
「そうですよね!!…あ、そうだよね!!!」
目を輝かせてあたしを見る。
「学部は?…やりたいこととか、あるの?」
「文学部がいいなって思ってるよ。やりたいことは、特には、ないんだけど…私、本が好きだから…」
「なるほど…。将来は、出版社とかで働くってイメージ?」
「い、いやあ…出版社って、かなり倍率高いし、それは無理だと思うなあ。関われたら、嬉しいけど…」
「ふーん」
「大学在学中に、やりたいこととか、ちゃんと見つけられたらいいなって感じ…かも…。ご、ごめんね、ふわっとしてて…」
「ううん。参考になった、ありがと」
「…いえ。お役に、立てたのなら…良かった」
男がいる環境は、もう、なんか、いいやって感じだし…あたしも女子大に絞ろうかな。
学部は追々決めるとして…。
「佐藤さんは…?」
「あたしは、まだ全然決まってない」
「佐藤さんなら、どこでも行けそう」
桜が微笑む。
「…ありがと」
「空井さんと両角さんと同じ大学には行かないの?」
「…うん、その予定。遠くに行くつもりはないけど、少し、離れてみようかなって思ってる」
「そうなんだ」
それ以上何も聞かないでくれる桜の気遣いがありがたかった。
“どうして?”なんて聞かれても、なんて答えればいいか、あたしにはまだわからないから。
その週の日曜日、駅で永那と待ち合わせた。
今月末に遊園地に行こうかとも言っていたけど、結局前半になった。
3月になったら期末テストがあるし、穂は勉強したいだろうからと…。
来週はバレンタインと記念日があるから無理だった。
外のアトラクションに乗るには寒すぎる季節だけど…ここまで言い出せなかったあたしのせいだから仕方ない。
駅についても、まだ永那はいなかった。
永那が先にいないなんて、変な感じがする。
学校も遅刻する日が増えている。
夜、お母さんが寝るようになったから永那も寝ているらしい。
夜寝るようになると、朝起きられないという弊害が生まれた。
「アラームつけてるのに起きれないんだよ!嫌になるわ!」なんて自分に文句を言っていた。
マフラーに顔をうずめて、コートのポケットに手を突っ込む。
あの人の動画を見ようか少し迷ってから、スマホを出したら、視界の端に永那が映った。
「ごめん」
「うん」
「行こうか」
「うん」
永那の腕に抱きつく。
手が寒いから、永那のコートのポケットに手を入れた。
「お母さんが“行きたい”って騒いで大変だったよ…」
遠い目をしながら、永那が「ハァ」とため息をつく。
吐いた白い息は心なしか灰色で、永那の心の内を表しているみたいだった。
「誕生日パーティーのときは、穂のご飯で機嫌直したんでしょ?お土産でも買って帰れば?」
「それは言ったんだけど…ダメだった。とりあえず、今度穂を家に連れてくって約束して、なんとか出てきたよ」
「ふーん」
改札を通る。
ホームに立つと、吹く風が強まった気がした。
寒くて永那に密着する。
「永那」
「ん?」
「3人で、シたい」
フッと永那が笑う。
見下ろすようにあたしを見て、楽しそうに笑みを浮かべた。
「そだな」
「…永那も、シたい?」
「うん」
「あたしがいても…シたいって、思ってくれるの?」
永那が笑って、彼女の肩が揺れた。
「そんな笑わなくたって…」
「ごめんごめん」
彼女は鼻を啜って、人差し指で擦った。
口元がニヤついてる。
…少しは可愛いって、思ってもらえたのかな。
「お前のパパは、いつ出張かね?」
その言葉で、あたしの願いを叶えてくれようとしているのだと、すぐにわかって、胸の内から喜びが溢れ出す。
思わずあたしは俯いて、深呼吸した。
嬉しくて、嬉しくて、たまらない。
永那の匂いを嗅ぐ。
彼女の腕をギュッと握りしめる。
「聞いてみる」
「おー。…でも、テスト前はダメだろうな」
「うん、わかってる」
約束してくれるだけでいい。
いつになるかわからなくても、永那は絶対、約束を破らないから。
穂と待ち合わせしてる電車がホームにつく。
いつもの車両に乗り込むと、座ってる穂があたし達を見て微笑んだ。
だからあたしも返して、穂を真ん中に、座った。
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