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8.閑話
35.永那 中1 春〜中2 春《野々村風美編》
軽音部にとって大事な物。
1番はもちろん、楽器。
次にアンプやマイク等の設備機器。
そして楽譜。
初心者が多いから、楽譜はけっこう大事。
データでも見られるようになってはいるけど、実際練習するとなると、紙のほうが見やすかったりする。
好みの問題だけど。
その楽譜を、私は盛大にばら撒いてしまった。
みんなが「何してんだよー」と文句を言うなか、永那だけは楽しそうに笑った。
元々面白い子だという印象はあったけど、そのときの笑顔が忘れられなくて、いつの間にか永那のことばかり考えるようになっていた。
突然訪れた初恋に、戸惑った。
永那が芽衣と仲が良いのは知っていた。
芽衣とは友達だったし、妬く自分が嫌だった。
必死に気持ちを隠そうとして、でも隠しきれなくて、つい芽衣と永那が話しているところに割り込んだこともある。
永那が、中2になったら部活には来ないと言うから、私は思い切って告白した。
人生で初めての告白。
緊張した。
でも永那は、まるでいつもの会話をしているみたいな感じだった。
拍子抜けした。
…ああ、この子は、いろんな人にモテてるんだなって、実感した。
そして、私は振られたのに、なぜか“キスしちゃダメですか?”と聞かれた。
頭が真っ白になった。
気づいたら「いいよ」って答えていて、気づいたら永那にキスされていた。
ファーストキス。
忘れられなくなった。
“振られて、綺麗さっぱり新たな気持ちで!”って思っていたのに、全然、忘れられなくなった。
それから、校内で永那を見かけるたびに目で追った。
声をかけようと思ったこともあったけど、永那は友達が多くて、話しかけようにもタイミングが見つからなかった。
学年が上がって1ヶ月くらい経った頃、体育の授業が終わって歩いていたら、永那が校庭の隅で寝転んでいてびっくりした。
珍しく1人で、そのことにも驚いた。
「永那」
「ん?…風美先輩」
「どうしたの?こんなところで」
「いやあ…まあ…ちょっと…」
歯切れの悪い言い方に、また驚く。
いつも快活で、楽しそうにしてるイメージがあったから。
目の周りが少し赤くなっていたから、泣いていたのかもしれない…とも思った。
「何か、あった?」
「いやあ…」
「悩みがあるなら、話聞くよ?」
永那の横に座る。
「んー…」
永那は両手で顔を覆って、ゴシゴシ拭いた。
バッと手を両手に上げて「じゃあ、私、風美先輩の胸さわってみたいです」と笑った。
“話聞くよ”って言っただけなのに、どうしてそうなるのか、全然理解できなかった。
なのに、気づけば私は、また「いいよ」って言っていて。
胸が大きいのがコンプレックスだったから、言った瞬間、後悔した。
友達から「さわりたい!」と言われて、さわらせたことが何度かあるけど、みんな同じ反応。
「意外と硬いんだね」
ショックだった。
永那にも言われると思って、身構えた。
でも、ただ彼女は「ありがとうございました!」と笑った。
「またさわりたいです」
「え…?」
「だめですか?」
「あ、いや…いいけど」
あれ!?また“いい”って言っちゃった!
「わーい!おっぱい揉むと、癒やされるんですよね」
へへへと彼女が笑う。
好きな気持ちが膨れ上がっていった。
どうすればいいかわからなくなって、芽衣に相談した。
永那がなんとなくキスしたり胸をさわったりする人だと教わっても、特別驚かなかった。
そりゃあ、そうだろうな…としか言いようがない。
でも、芽衣がそう言うってことは、芽衣もさわられてるってことなんだろうな…って想像できて、すごく妬いた。
芽衣に、このまま永那にさわらせ続けたら私が傷つくと言われたけれど…“もしかして、芽衣も私に嫉妬してるんじゃないの?”と思ってしまった。
私が芽衣に相談したのに、私、最低だ。
早く、気づけば良かったんだ。
誰に相談したところで、私の気持ちは止まらない。
行くところまで行かないと、止まらないのだと。
『永那、放課後会えない?』
『すみません、放課後はいつも友達と帰ってて』
『じゃあ、いつなら会える?会いたいな』
ドキドキしながら送った。
“会いたいな”なんて、こんな可愛い文章を私が送っているなんて、信じられなかった。
『今週の日曜はどうですか?』
『大丈夫。どこで会う?』
『この前の公園にしますか?それとも他に、行きたいところがあれば、どこでも』
どこでも…。
『あ、お金ないので、なるべくお金を使わないところでお願いします!』
その言葉に、思わず笑ってしまう。
どこでもいいなら、デートしたいな。
お金は、私が払えばいいや。
私がしたいんだもん、そのくらい良いよね。
『10時に駅で待ち合わせない?』
『了解です!』
待ちに待った日曜日。
夜全然眠れなかった。
30分も早く駅について、ずっとソワソワしていた。
ちょうど10時に永那が来た。
「永那、おはよ」
「おはようございます」
「行こ」
「どこ行くんですか?」
「内緒」
彼女の手を引っ張って、改札に向かう。
永那の交通系ICカードには70円しか入っていなかった。
「あー、すみません。チャージしなきゃ」
彼女が財布を出して、小銭入れを開く。
「どこまでですか?」
1番はもちろん、楽器。
次にアンプやマイク等の設備機器。
そして楽譜。
初心者が多いから、楽譜はけっこう大事。
データでも見られるようになってはいるけど、実際練習するとなると、紙のほうが見やすかったりする。
好みの問題だけど。
その楽譜を、私は盛大にばら撒いてしまった。
みんなが「何してんだよー」と文句を言うなか、永那だけは楽しそうに笑った。
元々面白い子だという印象はあったけど、そのときの笑顔が忘れられなくて、いつの間にか永那のことばかり考えるようになっていた。
突然訪れた初恋に、戸惑った。
永那が芽衣と仲が良いのは知っていた。
芽衣とは友達だったし、妬く自分が嫌だった。
必死に気持ちを隠そうとして、でも隠しきれなくて、つい芽衣と永那が話しているところに割り込んだこともある。
永那が、中2になったら部活には来ないと言うから、私は思い切って告白した。
人生で初めての告白。
緊張した。
でも永那は、まるでいつもの会話をしているみたいな感じだった。
拍子抜けした。
…ああ、この子は、いろんな人にモテてるんだなって、実感した。
そして、私は振られたのに、なぜか“キスしちゃダメですか?”と聞かれた。
頭が真っ白になった。
気づいたら「いいよ」って答えていて、気づいたら永那にキスされていた。
ファーストキス。
忘れられなくなった。
“振られて、綺麗さっぱり新たな気持ちで!”って思っていたのに、全然、忘れられなくなった。
それから、校内で永那を見かけるたびに目で追った。
声をかけようと思ったこともあったけど、永那は友達が多くて、話しかけようにもタイミングが見つからなかった。
学年が上がって1ヶ月くらい経った頃、体育の授業が終わって歩いていたら、永那が校庭の隅で寝転んでいてびっくりした。
珍しく1人で、そのことにも驚いた。
「永那」
「ん?…風美先輩」
「どうしたの?こんなところで」
「いやあ…まあ…ちょっと…」
歯切れの悪い言い方に、また驚く。
いつも快活で、楽しそうにしてるイメージがあったから。
目の周りが少し赤くなっていたから、泣いていたのかもしれない…とも思った。
「何か、あった?」
「いやあ…」
「悩みがあるなら、話聞くよ?」
永那の横に座る。
「んー…」
永那は両手で顔を覆って、ゴシゴシ拭いた。
バッと手を両手に上げて「じゃあ、私、風美先輩の胸さわってみたいです」と笑った。
“話聞くよ”って言っただけなのに、どうしてそうなるのか、全然理解できなかった。
なのに、気づけば私は、また「いいよ」って言っていて。
胸が大きいのがコンプレックスだったから、言った瞬間、後悔した。
友達から「さわりたい!」と言われて、さわらせたことが何度かあるけど、みんな同じ反応。
「意外と硬いんだね」
ショックだった。
永那にも言われると思って、身構えた。
でも、ただ彼女は「ありがとうございました!」と笑った。
「またさわりたいです」
「え…?」
「だめですか?」
「あ、いや…いいけど」
あれ!?また“いい”って言っちゃった!
「わーい!おっぱい揉むと、癒やされるんですよね」
へへへと彼女が笑う。
好きな気持ちが膨れ上がっていった。
どうすればいいかわからなくなって、芽衣に相談した。
永那がなんとなくキスしたり胸をさわったりする人だと教わっても、特別驚かなかった。
そりゃあ、そうだろうな…としか言いようがない。
でも、芽衣がそう言うってことは、芽衣もさわられてるってことなんだろうな…って想像できて、すごく妬いた。
芽衣に、このまま永那にさわらせ続けたら私が傷つくと言われたけれど…“もしかして、芽衣も私に嫉妬してるんじゃないの?”と思ってしまった。
私が芽衣に相談したのに、私、最低だ。
早く、気づけば良かったんだ。
誰に相談したところで、私の気持ちは止まらない。
行くところまで行かないと、止まらないのだと。
『永那、放課後会えない?』
『すみません、放課後はいつも友達と帰ってて』
『じゃあ、いつなら会える?会いたいな』
ドキドキしながら送った。
“会いたいな”なんて、こんな可愛い文章を私が送っているなんて、信じられなかった。
『今週の日曜はどうですか?』
『大丈夫。どこで会う?』
『この前の公園にしますか?それとも他に、行きたいところがあれば、どこでも』
どこでも…。
『あ、お金ないので、なるべくお金を使わないところでお願いします!』
その言葉に、思わず笑ってしまう。
どこでもいいなら、デートしたいな。
お金は、私が払えばいいや。
私がしたいんだもん、そのくらい良いよね。
『10時に駅で待ち合わせない?』
『了解です!』
待ちに待った日曜日。
夜全然眠れなかった。
30分も早く駅について、ずっとソワソワしていた。
ちょうど10時に永那が来た。
「永那、おはよ」
「おはようございます」
「行こ」
「どこ行くんですか?」
「内緒」
彼女の手を引っ張って、改札に向かう。
永那の交通系ICカードには70円しか入っていなかった。
「あー、すみません。チャージしなきゃ」
彼女が財布を出して、小銭入れを開く。
「どこまでですか?」
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