いたずらはため息と共に

常森 楽

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8.閑話

48.永那 中2 夏《野々村風美編》

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水曜日、授業が終わった瞬間にバタバタと走って塾を出た。
いつもの公園で待ち合わせ。
早く会いたい…!
勢いよく公園につくと、前と同じようにダルそうにベンチに座っている永那がいた。
「永那!」
「風美、おつかれさま」
「ありがとっ」
私が駆け寄ると、彼女が立ち上がる。
ズボンのポケットに手を突っ込んで、ハンカチを手渡される。
「汗、びっしょりだよ」
ニシシと永那が笑う。
「あ…っ、じ、自分の、あるよ」
鞄を漁る。
まただ…。急いで荷物をしまったから、ハンカチがなかなか出てこない。
「ほら、これ使ってよ。風美のために持ってきたんだから」
心臓が飛び跳ねる。
「わ、私の…ため…?」
「そうだよ。はい、水も」
な、なんか…会った瞬間からお世話されてる…。
今日は私がお返し・・・しようと思ってたのに。
でも、嬉しくて、ハンカチと水を受け取った。
ハンカチを口元と鼻に当てて、匂いを嗅ぐ。
…永那の、匂い。

「風美?」
呼ばれて、意識が現実に戻ってくる。
あ、危なかった…。
匂いを嗅いだだけで、永那に抱きしめられる妄想をするところだった…。
慌ててハンカチで汗を拭く。
もったいない…!
自分の汗の匂いがついてしまうのが、すごく惜しい。
「行こっか」
永那が歩き始めるから、小走りに隣に並んだ。

「すぐ涼しくなると思うから」
エアコンの風を最強にして、一気に部屋を涼しくする。
「ありがと」
「ううん。…なんか飲む?お茶か…カルピスか…」
「カルピスあんの!?飲みたい飲みたい!」
「わかった」
原液と水を混ぜて、氷も入れる。
…あんまり飲み過ぎると妹に怒られるけど…今日は特別な日だもんね。
コップを2つ、テーブルに置く。
「わあ、ありがとう」
永那が勢いよく、ゴクゴク飲み始める。
「あー!うまーっ!」
「暑かったもんね。…いつから公園いたの?」
「朝から」
「朝から!?」
「うん」
じゃあ…本当なら、塾行く前も会えたのかな…。
ちょっと覗けばよかった。
「家にいても暑さ変わんないしね」
「へへへ」と彼女が笑う。
「エアコンつけると、お姉ちゃんが怒るんだよ」
「エアコンつけないと熱中症で死んじゃうよ…?」
「そ。だから昼間はどっか行けってさ、うるさいの。“スーパーとか行けば涼しいでしょ”って」
「スーパー…」
「ああ、図書館はしつこく言われたかな」
「図書館、行かないの?」
「行ってるよ。でも毎日は飽きるから」
「そっか」
「あと、静かにしなきゃいけないじゃん?それがね…。長時間寝てると起こされるし…」
「そうなんだ」

「そ、ん、な、こ、と、よ、り!」
「ん?」
「風美の部屋見たい」
「いいよ」
コップを持って、2人で部屋に行く。
「あ、ベースだ!最近、弾いてる?」
「気分転換程度にね」
しゃがむ永那を斜め後ろから見て、気づく。
「永那、ピアス…開けたの…?」
「うん。この前、芽衣が開けてくれた」
彼女の耳に触れる。
「痛くなかった?」
「意外と痛くなかった!最初はちょっと怖かったけど」
「いいな…」
「風美も開けたいの?」
「興味は、あるよ」
しゃがんで、彼女の肩に両腕を伸ばして乗せた。
「永那、開けてよ」
「え?私が?」
「できない?」
なんか、私、ちょっと芽衣みたいじゃない?
「いいけど…何も道具持ってないよ?」
「私が揃える!永那も開けよ?」
「え!?私もう開いてるよ?」
「もうひとつ、開けよ?」
「うーん…まあ、いいけど」
「合宿行く前に、一緒に買いに行きたい」
「わかった」
「明日は…?」
「いいよ」
「やったー!」
永那に寄りかかって、ぴょんぴょん、うさぎ跳びみたいにジャンプした。
「重い重い」
「ひどいー!女の子に向かって重いなんてさ!紳士の言うことじゃないですよ?」
「紳士ー?私が?」
「そうだよっ」
私が押すようにジャンプすると、永那の姿勢が崩れて床に倒れ込んだ。

ドクンと心臓が鳴る。
永那に覆いかぶさるように倒れたから、顔が近い。
キス、できそう…。
顔を近づけると、永那が目を瞑る。
唇が触れ合う。
離れると、永那が目を開けた。
この時間を終わりにしたくなくて、もう一度口づけすると、永那はまた目を閉じる。
このまま…このまま…ずっと…。
永那が舌を出して、私も応えるように出した。
永那に胸をさわられて、鼓動が駆けるように速くなっていく。
彼女の膝が私の下腹部に当たって、体がビクッと跳ねる。
離れようとしたら、永那に首根っこを掴まれて離れられなくなった。
そのまま、腕の力がなくなっていく。
彼女に乗るようにうつ伏せの状態になると、彼女の太ももが私の脚の付け根をぐりぐり押した。
「んっ」
「風美、エロ…」
言われて、一気に恥ずかしくなる。
“絶対男子、風美のことエロい目で見てるよ”
いつも、友人達が私をからかうように言う。
それが嫌で、なるべく目立たないように努めてきた。
なのに、永那に言われるのは不思議と嫌じゃなくて…。
むしろ、もっとさわってほしくなって…。
もう一度、キスをした。
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