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444 / 595
7.向
443.足りない
次々と食事が運ばれてくる。
なんじゃ…こりゃ…。
とりあえずスマホで写真を撮る。
千陽が笑顔で写真に写ってる…。
ボーッとそれを眺めてたら、ディナータイムが始まった。
「永那ちゃん、あーん」
何回やられても嬉しい。
ハンバーグが口の中に入れられる。
「うま!…千陽の寿司もおいしそうだなあ」
「あげない」
「なんでよ!」
「やだから」
「ケチ」
睨まれた。
すんごい睨まれた。
大人しく海老フライを切って、穂の口に放り込む。
「わっ、おいしいね!」
「ねー!おいしいよねー!!」
「永那、うるさいから静かにして」
ガンッと勢いよくテーブルに頭を打ち付ける。
「永那ちゃん、大丈夫?」
「だいじょばない…」
穂が苦笑して、私の頭を撫でてくれた。
ご飯を食べ終えると、あっという間に片されていった。
「デザートのケーキも美味しかったなあ」
「だね」
「あ、永那ちゃん、ちょっと機嫌直ったね」
フフッと穂が笑う。
「可愛い…。穂、好き」
「私も永那ちゃん、好き。…千陽、ごちそうさまでした」
スマホを見たまま、千陽は頷いた。
「千陽~!なにスマホ見てんだよ~!」
一人掛けのソファに座る千陽に襲いかかる。
「邪魔」
「はー!?」
「うるさい」
目の下がピクピクと痙攣する。
千陽の手からスマホを取り上げる。
画面を見てやった。
『パパ、ありがとう♡おかげで楽しめてるよ。みんなも楽しんでくれてる!大好き』
『千陽に喜んでもらえてパパも嬉しいよ。今度のパーティ、おもてなし、よろしく!』
『わかってるよ♡前来た、部下の人達が来るんだよね?いつも可愛がってもらえるから楽しみ!』
「返せ、馬鹿」
お腹を蹴られてよろめく。
最低だ…。
何が“大好き”だ。何が“楽しみ”だ。
んなわけないだろ…。
「ハァ」と千陽が深いため息をつく。
「ホント、最低」
「ごめん」
「人のスマホ見るとかあり得ないから」
「ごめん」
「最低…」
「ごめん」
「あ…2人とも…」
穂が困惑している。
私のせいだ…。
こんな時、優里がいたらな…なんて思う。
結局、人頼み…それも最低だ。
自分が嫌いだ。
これだから、嫌いだ。
みんな私のことを“優しい”って言う。
でも全然優しくなんかない。
肝心なところで、いつもダメだ。
「千陽」
穂が私の横を駆け抜けて、顔を上げる。
泣いていた。
必死に泣かないように、でも溢れてしまう涙を、何度も指で拭っていた。
穂が千陽を抱きしめる。
私は…何もできない。
こんな時、何も…。
だって、たぶん全部私のせいで…私に相手を慰める資格なんて、有りはしないから。
どうして…?
千陽だけは泣かせたくなかった。
千陽の涙だけは見たくなかった。
どうして私はまた、大切だと思っているはずの人を、泣かせているんだろう…。
今日は、喜ばせる日だったはずなのに…。
2人に背を向ける。
シャツを着て、鞄を拾う。
スリッパを靴に履き替える。
ため息しか出てこない。
もう、穂に任せよう。
私はいないほうが良い。
「っざけんな!」
叫ぶような声が聞こえて、ドアにかけた手を止める。
「逃げんな!永那…逃げんな…」
鼓動が速くなる。
千陽の声が、あまりに必死だったから。
震えるみたいに、怖がるみたいに、叫ぶから。
「永那ちゃん!」
穂が私に駆け寄ってくる。
「帰るの!?」
「あ…だって…私のせいで…」
「そんな…。人のスマホを見るのは、ダメだけど…そんな…そんな、永那ちゃんが帰るほどじゃないでしょ?」
「え…?でも、千陽のこと、泣かせた…。千陽のこと、傷つけた…」
「このまま帰ったら、気まずいままだよ?永那ちゃんだって、きっと、千陽だって。そうでしょ?」
「わ、わかんない…」
穂が“んー…”と考える。
「前、私が怒って家に帰った時、次の日、永那ちゃんが家に来てくれたでしょ?」
頷く。
「嬉しかった。…私、怒ったまま帰っちゃって、どうしたらいいのかわからなくなっちゃって…でも、謝りに来てくれて、嬉しかった」
嬉しい…?
あれは、たまたま仲直りできただけで…。
穂が、どうすればいいのか教えてくれたから、“次からそうすればいいんだ”って思えただけで…。
きっと、あのまま穂が部屋から出てこなかったら、私は、諦めていた。
“また誰かを傷つけてしまった”と思って、きっと、諦めていた。
「ほら、行こう?」
手を引かれて、両手で顔を覆っている千陽の元まで連れて行かれる。
「…ごめん。千陽」
泣き腫らした赤い目で、睨まれる。
謝る以外、どうすればいいのかわからない。
「もう、人のスマホ、勝手に見ちゃダメだよ?」
穂が叱るように言う。
「うん。見ない」
「ハァ」と千陽がため息をつく。
「永那ちゃん?」
「ん?」
「みんなさ、ひとりになりたい時間があることもあるんだよ?」
穂が何を言いたいのかわからなくて、首を傾げる。
「私は、永那ちゃんと一緒にいられて、いつも楽しくて…元々スマホもあんまり見ないし、全然平気だけど。ひとりで、スマホ見たりゆっくりしたい人も、いるんだよ」
「ああ…うん…」
「だから…えーっと…」
また千陽がため息をつく。
「違う」
なんじゃ…こりゃ…。
とりあえずスマホで写真を撮る。
千陽が笑顔で写真に写ってる…。
ボーッとそれを眺めてたら、ディナータイムが始まった。
「永那ちゃん、あーん」
何回やられても嬉しい。
ハンバーグが口の中に入れられる。
「うま!…千陽の寿司もおいしそうだなあ」
「あげない」
「なんでよ!」
「やだから」
「ケチ」
睨まれた。
すんごい睨まれた。
大人しく海老フライを切って、穂の口に放り込む。
「わっ、おいしいね!」
「ねー!おいしいよねー!!」
「永那、うるさいから静かにして」
ガンッと勢いよくテーブルに頭を打ち付ける。
「永那ちゃん、大丈夫?」
「だいじょばない…」
穂が苦笑して、私の頭を撫でてくれた。
ご飯を食べ終えると、あっという間に片されていった。
「デザートのケーキも美味しかったなあ」
「だね」
「あ、永那ちゃん、ちょっと機嫌直ったね」
フフッと穂が笑う。
「可愛い…。穂、好き」
「私も永那ちゃん、好き。…千陽、ごちそうさまでした」
スマホを見たまま、千陽は頷いた。
「千陽~!なにスマホ見てんだよ~!」
一人掛けのソファに座る千陽に襲いかかる。
「邪魔」
「はー!?」
「うるさい」
目の下がピクピクと痙攣する。
千陽の手からスマホを取り上げる。
画面を見てやった。
『パパ、ありがとう♡おかげで楽しめてるよ。みんなも楽しんでくれてる!大好き』
『千陽に喜んでもらえてパパも嬉しいよ。今度のパーティ、おもてなし、よろしく!』
『わかってるよ♡前来た、部下の人達が来るんだよね?いつも可愛がってもらえるから楽しみ!』
「返せ、馬鹿」
お腹を蹴られてよろめく。
最低だ…。
何が“大好き”だ。何が“楽しみ”だ。
んなわけないだろ…。
「ハァ」と千陽が深いため息をつく。
「ホント、最低」
「ごめん」
「人のスマホ見るとかあり得ないから」
「ごめん」
「最低…」
「ごめん」
「あ…2人とも…」
穂が困惑している。
私のせいだ…。
こんな時、優里がいたらな…なんて思う。
結局、人頼み…それも最低だ。
自分が嫌いだ。
これだから、嫌いだ。
みんな私のことを“優しい”って言う。
でも全然優しくなんかない。
肝心なところで、いつもダメだ。
「千陽」
穂が私の横を駆け抜けて、顔を上げる。
泣いていた。
必死に泣かないように、でも溢れてしまう涙を、何度も指で拭っていた。
穂が千陽を抱きしめる。
私は…何もできない。
こんな時、何も…。
だって、たぶん全部私のせいで…私に相手を慰める資格なんて、有りはしないから。
どうして…?
千陽だけは泣かせたくなかった。
千陽の涙だけは見たくなかった。
どうして私はまた、大切だと思っているはずの人を、泣かせているんだろう…。
今日は、喜ばせる日だったはずなのに…。
2人に背を向ける。
シャツを着て、鞄を拾う。
スリッパを靴に履き替える。
ため息しか出てこない。
もう、穂に任せよう。
私はいないほうが良い。
「っざけんな!」
叫ぶような声が聞こえて、ドアにかけた手を止める。
「逃げんな!永那…逃げんな…」
鼓動が速くなる。
千陽の声が、あまりに必死だったから。
震えるみたいに、怖がるみたいに、叫ぶから。
「永那ちゃん!」
穂が私に駆け寄ってくる。
「帰るの!?」
「あ…だって…私のせいで…」
「そんな…。人のスマホを見るのは、ダメだけど…そんな…そんな、永那ちゃんが帰るほどじゃないでしょ?」
「え…?でも、千陽のこと、泣かせた…。千陽のこと、傷つけた…」
「このまま帰ったら、気まずいままだよ?永那ちゃんだって、きっと、千陽だって。そうでしょ?」
「わ、わかんない…」
穂が“んー…”と考える。
「前、私が怒って家に帰った時、次の日、永那ちゃんが家に来てくれたでしょ?」
頷く。
「嬉しかった。…私、怒ったまま帰っちゃって、どうしたらいいのかわからなくなっちゃって…でも、謝りに来てくれて、嬉しかった」
嬉しい…?
あれは、たまたま仲直りできただけで…。
穂が、どうすればいいのか教えてくれたから、“次からそうすればいいんだ”って思えただけで…。
きっと、あのまま穂が部屋から出てこなかったら、私は、諦めていた。
“また誰かを傷つけてしまった”と思って、きっと、諦めていた。
「ほら、行こう?」
手を引かれて、両手で顔を覆っている千陽の元まで連れて行かれる。
「…ごめん。千陽」
泣き腫らした赤い目で、睨まれる。
謝る以外、どうすればいいのかわからない。
「もう、人のスマホ、勝手に見ちゃダメだよ?」
穂が叱るように言う。
「うん。見ない」
「ハァ」と千陽がため息をつく。
「永那ちゃん?」
「ん?」
「みんなさ、ひとりになりたい時間があることもあるんだよ?」
穂が何を言いたいのかわからなくて、首を傾げる。
「私は、永那ちゃんと一緒にいられて、いつも楽しくて…元々スマホもあんまり見ないし、全然平気だけど。ひとりで、スマホ見たりゆっくりしたい人も、いるんだよ」
「ああ…うん…」
「だから…えーっと…」
また千陽がため息をつく。
「違う」
感想 56
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