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7.向
481.序開
それから、何度もチャンスを伺っては篠田さんに声をかけた。
連絡先も交換した。
メッセージを送ることはないとは思うけど、これでかなり近づけた気がする。
ワクワクした。
ずっと話してみたかった。
ずっと遠くから見ているだけだった。
それが、叶うかもしれないと。
文化祭は、佐藤さんが教室にいると人が廊下まで溢れて、なかなか入れなかった。
やっと入れたと思った時には、佐藤さんがちょうどいなくなるタイミングで…“絶対に次の日は!”と思ったら、彼女は全然現れなかった。
ガッカリした。
あまりに人が溢れ過ぎたせいで、担当を外されたらしい。
結局、彼女と話すことは叶わなかった。
ウチが校内を歩き回っている間、佐藤さんがお化け屋敷に来たという情報を後から知って、余計にガッカリした。
もしかしたら、話せなくとも、少しは近づけたかもしれないのに。
「うーちゃん」
「なに?」
「最近、なんか…」
彼女の言葉が詰まるから、顔を覗き込む。
「なんか…変わった」
「変わった?」
「うん。サッカーしてた時みたいな」
初めて、彼女からサッカーの話題が出て、心臓が飛び跳ねる。
「でも…」
彼女の眉間にシワが寄る。
「サッカーじゃなくて…誰かに夢中みたい」
鼓動が速まる。
図星を突かれたから。
「もう、私のこと…好きじゃない?」
「え…」
ゴクリと唾を飲んだ。
「好き、だよ…」
「本当に?本当に私のこと、好き?」
「好きだってば」
彼女が涙を零す。
「篠田先輩が好きなんじゃないの?」
「え?」
「最近ずっと篠田先輩の話してるし。連絡先も交換したって言ってたし。文化祭の時だって…篠田先輩のクラスに行きたいって言ってた」
「それは…」
「なに!?もう私のこと好きじゃないなら、ハッキリ言ってよ!」
両手で顔を覆って、彼女が啜り泣く。
「篠田さんのことは、普通に友達として好きなだけだよ」
「嘘…」
「本当だって」
本当だ。
ウチが好きなのは…佐藤さんだから…。
胸がズキズキと痛む。
自分が酷いことをしてたって、やっと自覚した。
彼女のことは大事にしているつもりだった。
ちゃんと好きだとも思ってる。
でもこの“好き”が、情なのか、恋愛感情なのかと聞かれれば、ウチは“情”と答えてしまうだろう。
「嘘だよ…!もう別れたいんでしょ!?」
「そんなこと…」
わっと彼女が泣き始める。
「デート中も全然話聞いてないし、スマホばっか見てる。篠田先輩と連絡してるんでしょ!?」
「ハァ」と思わずため息が出る。
スマホを見ていたのは、誰かが文化祭の時の佐藤さんの写真をSNSにあげてないかチェックするのに忙しかっただけで、篠田さんとは1度も連絡を取っていない。
なんなら、篠田さんに「佐藤さんの写真くれない?」ってメッセージを送りたいくらいだ。
でもそんなこと言えないから、こうしてチマチマSNSで探している。
「そんなに疑うならスマホ見てよ」
スマホを彼女に差し出す。
彼女が何度も手で涙を拭って、ウチのスマホを受け取った。
メッセージアプリ、SNS、画像フォルダを全て確認し終え、スマホを返される。
また彼女が大声で泣き始めた。
「な、なに…?どうしたの?何もなかったでしょ?」
「じゃあ、なんで…なんで最近冷たいの…」
「冷たくないよ」
「冷たいよ!冷たい…!全然違うもん!私にはわかるもん!」
「ハァ」と息を吐き出す。
「ほら!ほら!!うーちゃん、ため息ばっか!」
「そりゃ…浮気とか何もしてないのに、こんな疑われたり泣かれたりしたら、ため息もつきたくなるよ!」
当然、彼女が泣き止むことはなく、どうすればいいのかわからなくなる。
「ウチが高校入学した時もそうだったけどさ、なんもないのに疑われたら傷つくし、信用されてないんだなって思うよ」
「でも…でも…わかるんだもん。なんか違うんだもん」
「“なんか”ってなに?それで毎回スマホ見せてるけどさ、結局なんもないじゃん?ウチは、誰とも仲良くしちゃダメってこと?」
「そんなこと…言ってないよ…」
「言ってるじゃん!」
ウチも泣きたいくらいだ。
そりゃあ、佐藤さんに近づきたいとは思った。
初めて人にドキドキしたんだ。
初めて誰かを目で追ったんだ。
あんなに綺麗な人、人生で会ったことがなかった。
でも彼女のことが大事だったし、別れたいとも思っていなかった。
ただ、佐藤さんと話してみたいって思っただけだったんだ。
あくまでアイドルみたいな存在で、ライブ行って本人を見てみたいとか、チェキ一緒に撮ってもらいたいとか、少し話してみたいとか…そんなレベルだったと…思う。
少なくとも、彼女と別れたいと思ったことなんて、1度もなかった。
じゃあ、どうして佐藤さんと両角さんが付き合ってないってわかった瞬間に何かのスイッチが入ったのかは、ウチにはわからなかった。
この時の喧嘩で、私達の間には、決定的な溝が出来てしまった。
気まずいまま、ウチは修学旅行に行った。
修学旅行中はろくにメッセージを送らず、彼女からもほとんど送られてくることはなかった。
連絡先も交換した。
メッセージを送ることはないとは思うけど、これでかなり近づけた気がする。
ワクワクした。
ずっと話してみたかった。
ずっと遠くから見ているだけだった。
それが、叶うかもしれないと。
文化祭は、佐藤さんが教室にいると人が廊下まで溢れて、なかなか入れなかった。
やっと入れたと思った時には、佐藤さんがちょうどいなくなるタイミングで…“絶対に次の日は!”と思ったら、彼女は全然現れなかった。
ガッカリした。
あまりに人が溢れ過ぎたせいで、担当を外されたらしい。
結局、彼女と話すことは叶わなかった。
ウチが校内を歩き回っている間、佐藤さんがお化け屋敷に来たという情報を後から知って、余計にガッカリした。
もしかしたら、話せなくとも、少しは近づけたかもしれないのに。
「うーちゃん」
「なに?」
「最近、なんか…」
彼女の言葉が詰まるから、顔を覗き込む。
「なんか…変わった」
「変わった?」
「うん。サッカーしてた時みたいな」
初めて、彼女からサッカーの話題が出て、心臓が飛び跳ねる。
「でも…」
彼女の眉間にシワが寄る。
「サッカーじゃなくて…誰かに夢中みたい」
鼓動が速まる。
図星を突かれたから。
「もう、私のこと…好きじゃない?」
「え…」
ゴクリと唾を飲んだ。
「好き、だよ…」
「本当に?本当に私のこと、好き?」
「好きだってば」
彼女が涙を零す。
「篠田先輩が好きなんじゃないの?」
「え?」
「最近ずっと篠田先輩の話してるし。連絡先も交換したって言ってたし。文化祭の時だって…篠田先輩のクラスに行きたいって言ってた」
「それは…」
「なに!?もう私のこと好きじゃないなら、ハッキリ言ってよ!」
両手で顔を覆って、彼女が啜り泣く。
「篠田さんのことは、普通に友達として好きなだけだよ」
「嘘…」
「本当だって」
本当だ。
ウチが好きなのは…佐藤さんだから…。
胸がズキズキと痛む。
自分が酷いことをしてたって、やっと自覚した。
彼女のことは大事にしているつもりだった。
ちゃんと好きだとも思ってる。
でもこの“好き”が、情なのか、恋愛感情なのかと聞かれれば、ウチは“情”と答えてしまうだろう。
「嘘だよ…!もう別れたいんでしょ!?」
「そんなこと…」
わっと彼女が泣き始める。
「デート中も全然話聞いてないし、スマホばっか見てる。篠田先輩と連絡してるんでしょ!?」
「ハァ」と思わずため息が出る。
スマホを見ていたのは、誰かが文化祭の時の佐藤さんの写真をSNSにあげてないかチェックするのに忙しかっただけで、篠田さんとは1度も連絡を取っていない。
なんなら、篠田さんに「佐藤さんの写真くれない?」ってメッセージを送りたいくらいだ。
でもそんなこと言えないから、こうしてチマチマSNSで探している。
「そんなに疑うならスマホ見てよ」
スマホを彼女に差し出す。
彼女が何度も手で涙を拭って、ウチのスマホを受け取った。
メッセージアプリ、SNS、画像フォルダを全て確認し終え、スマホを返される。
また彼女が大声で泣き始めた。
「な、なに…?どうしたの?何もなかったでしょ?」
「じゃあ、なんで…なんで最近冷たいの…」
「冷たくないよ」
「冷たいよ!冷たい…!全然違うもん!私にはわかるもん!」
「ハァ」と息を吐き出す。
「ほら!ほら!!うーちゃん、ため息ばっか!」
「そりゃ…浮気とか何もしてないのに、こんな疑われたり泣かれたりしたら、ため息もつきたくなるよ!」
当然、彼女が泣き止むことはなく、どうすればいいのかわからなくなる。
「ウチが高校入学した時もそうだったけどさ、なんもないのに疑われたら傷つくし、信用されてないんだなって思うよ」
「でも…でも…わかるんだもん。なんか違うんだもん」
「“なんか”ってなに?それで毎回スマホ見せてるけどさ、結局なんもないじゃん?ウチは、誰とも仲良くしちゃダメってこと?」
「そんなこと…言ってないよ…」
「言ってるじゃん!」
ウチも泣きたいくらいだ。
そりゃあ、佐藤さんに近づきたいとは思った。
初めて人にドキドキしたんだ。
初めて誰かを目で追ったんだ。
あんなに綺麗な人、人生で会ったことがなかった。
でも彼女のことが大事だったし、別れたいとも思っていなかった。
ただ、佐藤さんと話してみたいって思っただけだったんだ。
あくまでアイドルみたいな存在で、ライブ行って本人を見てみたいとか、チェキ一緒に撮ってもらいたいとか、少し話してみたいとか…そんなレベルだったと…思う。
少なくとも、彼女と別れたいと思ったことなんて、1度もなかった。
じゃあ、どうして佐藤さんと両角さんが付き合ってないってわかった瞬間に何かのスイッチが入ったのかは、ウチにはわからなかった。
この時の喧嘩で、私達の間には、決定的な溝が出来てしまった。
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修学旅行中はろくにメッセージを送らず、彼女からもほとんど送られてくることはなかった。
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