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8.閑話
58.永那 中3 夏《如月梓編》
手を繋いだまま、私の家に向かった。
「私はね」
「うん」
「恋人は作らない主義なんだ」
「…さっき、聞いたよ」
ニッと彼女が笑う。
「梓は、誰かと付き合ったことある?」
「ないよ」
「ふーん。じゃあ一緒だ」
一緒かなあ?全然違う気がする。
「初恋は?」
「…教えない」
「秘密主義か」
「そういうわけじゃない」
「でも教えてくれないんでしょ?」
「…教えない。永那には」
「私には?」
彼女の左眉が上がる。
「そう。永那には」
目をそらす。
「ふーん。じゃあ、誰には教えるの?学校の友達とか?」
「聞かれたら…言うかな…」
「ずるい。私も知りたい」
「言わない」
顔を覗き込まれて、ドキッとする。
「私の知らない人?」
彼女がニヤリと笑う。
…絶対気づいてる。
「教えない」
「やっぱり梓は秘密主義」
「違うよ。…永那は、遊び人」
「ハハハッ」と彼女が楽しそうに笑う。
「そうだそうだ!よくチャラいって言われる!」
「やっぱり」
「梓はすごいね!」
「すごくない。そんなの誰でもわかる」
「そーかー」
「永那は、何人に告白されたことあるの?」
「そんなの、覚えてない」
…覚えてないくらいですか。
私とは次元が違う。
「なんで、付き合わないの?」
「好きじゃないから」
「千陽さんは?」
「友達としては好きだよ。たぶん」
「たぶんって…」
「大体そんな感じだよ、私は。“たぶん”みんな好き。…明確に“好き!”って思わないから、付き合わない」
「明確に“好き!”って思ったら、付き合うの?」
「そうだね。付き合いたい」
私がそう思われることがないのは、わかってる。
でもなー、こんなにもわかっているのに、心のどこかで期待しちゃう自分がいる。
「梓は、友達として好きな人と付き合う?」
「ううん、付き合わない」
「やっぱそうだよね」
「“たぶん”好きって、わかる気がする」
「ん?」
「私ね、隣に住んでる幼馴染がいるの。1歳下の」
「へえ」
「頭良くて、運動もできて、ピアノとか書道とか習ってて、ノリ良くて…私とは正反対。幼馴染だから、仲良くしてる。仲良くしてもらってる。お母さん同士も仲良いし。でも…たまに疲れる」
「それは疲れそうだ」
「永那も…そう思う?」
「うん。聞いてるだけで疲れた」
言い方がおかしくて、笑った。
嬉しい。
こんな愚痴、誰にも言ったことなかった。
「お母さん、よくその子と私を比較するの」
「めんどくさいなー」
「うん。めんどくさい。…だから、私、“たぶん”その子のことが好き」
「そっか」
「うん」
繋ぐ手を、ギュッと握った。
握り返してくれて、キュンとする。
「その子、永那のこと、タイプだって」
「へえ。なんで私のこと知ってるの?」
「メッセージアプリのアイコン、勝手に見られた」
「なるほど。あんな写真でタイプって思われたのか」
「無類のイケメン好きだから。センサーが働いたんじゃない?」
「センサーね。イケメン好きっていうと、男好きっぽいイメージがあるけど、女でもいいんだ?」
「いいみたい」
「変な子」
永那の横顔が綺麗で見蕩れる。
「会ってみたいな」
ドクドクドクと鼓動が速まる。
彼女の視線だけがこちらを向いて、ニヤリと笑った。
「嫌?」
心臓の音が、うるさい。
「ねえ、梓。聞いてる?」
「永那の…好きにすれば…」
「ふーん」
なんで…。
さっき…さっきの話聞いたら、普通“会いたい”にはなんないじゃん!
これで、紬と永那が仲良くなって、私と永那が2人で会うことはなくなるのかな…。
「梓」
立ち止まり、永那を見る。
グッと手を引っ張られ、大通りから小道に逸れる。
角に置かれた自販機と建物の間に追いやられ、逃げられないように永那が目の前に立った。
「梓」
「な、なに…」
「私のことは、“たぶん”好きなの?」
「え…」
「教えてよ。教えてくれるまで、ここ、どかない」
そんなの…答えたら…“好き”って告白するようなもんじゃん…!
「い、言えないよ…」
「なんで?」
「言えないから…!」
「じゃあ、その幼馴染と会ってもいい?」
「だから…!永那の好きに…」
顔が…近い…。
これ…少女漫画で見る…壁ドンってやつだ…。
リアルでされることなんてあるの!?
「私のこと、ストーカーしてたくせに」
「そ、それは…だから…」
「だから、なに?」
「わ、わかったから…!言うから…!近いよ…」
永那の肩を押すと、簡単に彼女は離れた。
「す、好きだよ…。明確に!」
「やったー」
「どうせ振るくせに…。なんでわざわざ言わせるの?」
「んー?なんて言おうかな」
「え?」
「よし!端的に言おう」
彼女が満面の笑みを浮かべる。
「襲いたいから」
「は…?」
「もっと端的に言おう」
そっと近づかれ、耳元で囁かれる。
「セックスしたい」
「は!?」
「だめ?」
「は!?え!?な、な、なに言ってんの!?」
フッと彼女が笑う。
「やっぱそうなるよね。端的に言うのはダメか」
全然わかんない…!全然わかんないよ!!
「私のこと好きならさ、いっかな?って思って」
「クズじゃん!」
永那がお腹を抱えて大爆笑する。
「私、クズだー!」
「私はね」
「うん」
「恋人は作らない主義なんだ」
「…さっき、聞いたよ」
ニッと彼女が笑う。
「梓は、誰かと付き合ったことある?」
「ないよ」
「ふーん。じゃあ一緒だ」
一緒かなあ?全然違う気がする。
「初恋は?」
「…教えない」
「秘密主義か」
「そういうわけじゃない」
「でも教えてくれないんでしょ?」
「…教えない。永那には」
「私には?」
彼女の左眉が上がる。
「そう。永那には」
目をそらす。
「ふーん。じゃあ、誰には教えるの?学校の友達とか?」
「聞かれたら…言うかな…」
「ずるい。私も知りたい」
「言わない」
顔を覗き込まれて、ドキッとする。
「私の知らない人?」
彼女がニヤリと笑う。
…絶対気づいてる。
「教えない」
「やっぱり梓は秘密主義」
「違うよ。…永那は、遊び人」
「ハハハッ」と彼女が楽しそうに笑う。
「そうだそうだ!よくチャラいって言われる!」
「やっぱり」
「梓はすごいね!」
「すごくない。そんなの誰でもわかる」
「そーかー」
「永那は、何人に告白されたことあるの?」
「そんなの、覚えてない」
…覚えてないくらいですか。
私とは次元が違う。
「なんで、付き合わないの?」
「好きじゃないから」
「千陽さんは?」
「友達としては好きだよ。たぶん」
「たぶんって…」
「大体そんな感じだよ、私は。“たぶん”みんな好き。…明確に“好き!”って思わないから、付き合わない」
「明確に“好き!”って思ったら、付き合うの?」
「そうだね。付き合いたい」
私がそう思われることがないのは、わかってる。
でもなー、こんなにもわかっているのに、心のどこかで期待しちゃう自分がいる。
「梓は、友達として好きな人と付き合う?」
「ううん、付き合わない」
「やっぱそうだよね」
「“たぶん”好きって、わかる気がする」
「ん?」
「私ね、隣に住んでる幼馴染がいるの。1歳下の」
「へえ」
「頭良くて、運動もできて、ピアノとか書道とか習ってて、ノリ良くて…私とは正反対。幼馴染だから、仲良くしてる。仲良くしてもらってる。お母さん同士も仲良いし。でも…たまに疲れる」
「それは疲れそうだ」
「永那も…そう思う?」
「うん。聞いてるだけで疲れた」
言い方がおかしくて、笑った。
嬉しい。
こんな愚痴、誰にも言ったことなかった。
「お母さん、よくその子と私を比較するの」
「めんどくさいなー」
「うん。めんどくさい。…だから、私、“たぶん”その子のことが好き」
「そっか」
「うん」
繋ぐ手を、ギュッと握った。
握り返してくれて、キュンとする。
「その子、永那のこと、タイプだって」
「へえ。なんで私のこと知ってるの?」
「メッセージアプリのアイコン、勝手に見られた」
「なるほど。あんな写真でタイプって思われたのか」
「無類のイケメン好きだから。センサーが働いたんじゃない?」
「センサーね。イケメン好きっていうと、男好きっぽいイメージがあるけど、女でもいいんだ?」
「いいみたい」
「変な子」
永那の横顔が綺麗で見蕩れる。
「会ってみたいな」
ドクドクドクと鼓動が速まる。
彼女の視線だけがこちらを向いて、ニヤリと笑った。
「嫌?」
心臓の音が、うるさい。
「ねえ、梓。聞いてる?」
「永那の…好きにすれば…」
「ふーん」
なんで…。
さっき…さっきの話聞いたら、普通“会いたい”にはなんないじゃん!
これで、紬と永那が仲良くなって、私と永那が2人で会うことはなくなるのかな…。
「梓」
立ち止まり、永那を見る。
グッと手を引っ張られ、大通りから小道に逸れる。
角に置かれた自販機と建物の間に追いやられ、逃げられないように永那が目の前に立った。
「梓」
「な、なに…」
「私のことは、“たぶん”好きなの?」
「え…」
「教えてよ。教えてくれるまで、ここ、どかない」
そんなの…答えたら…“好き”って告白するようなもんじゃん…!
「い、言えないよ…」
「なんで?」
「言えないから…!」
「じゃあ、その幼馴染と会ってもいい?」
「だから…!永那の好きに…」
顔が…近い…。
これ…少女漫画で見る…壁ドンってやつだ…。
リアルでされることなんてあるの!?
「私のこと、ストーカーしてたくせに」
「そ、それは…だから…」
「だから、なに?」
「わ、わかったから…!言うから…!近いよ…」
永那の肩を押すと、簡単に彼女は離れた。
「す、好きだよ…。明確に!」
「やったー」
「どうせ振るくせに…。なんでわざわざ言わせるの?」
「んー?なんて言おうかな」
「え?」
「よし!端的に言おう」
彼女が満面の笑みを浮かべる。
「襲いたいから」
「は…?」
「もっと端的に言おう」
そっと近づかれ、耳元で囁かれる。
「セックスしたい」
「は!?」
「だめ?」
「は!?え!?な、な、なに言ってんの!?」
フッと彼女が笑う。
「やっぱそうなるよね。端的に言うのはダメか」
全然わかんない…!全然わかんないよ!!
「私のこと好きならさ、いっかな?って思って」
「クズじゃん!」
永那がお腹を抱えて大爆笑する。
「私、クズだー!」
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