545 / 595
8.閑話
60.永那 中3 夏《如月梓編》
それから毎朝、永那とどんな会話をしたか、紬は事細かに話してきた。
まるでもう、永那の恋人気分だ。
永那は恋人が欲しいんじゃない、セフレが欲しいんだ。
それって、傷つくだけの恋じゃん…。
学期末試験が終わった日、私は永那を呼び出した。
お母さんはパートで家にいないし、お兄ちゃんもバイトだ。
こんな話、外じゃ出来ないから、家に来てもらった。
「永那」
「はい」
部屋に、2人で正座して向き合った。
「ハッキリ言うね」
「うん」
「紬には、手を出さないで欲しい」
「…わかった」
「え…?」
「ん?」
「あ…え…?いいの?本当にわかったの?」
「うん」
「ほ、本人が“シたい”って言っても、断ってよ!?」
「え!?紬に“シたい”って言われるの?私」
「も、もしもの話!」
「もしもか~。ん~、どうしよ?本人がシたいんなら、私も断る理由ないしな…なんでダメなの?」
「つ、紬は…!」
「うん」
「私の、妹みたいな子なの。実らない恋をして、傷ついてほしくない」
「ふーん。…それって、梓が紬のことを勝手に決めていい理由になるの?」
「え…?」
「っていうか、梓は私に告白して、傷ついた?」
永那に真っ直ぐ見つめられ、言い表せない不安に襲われる。
「無理矢理告白させるようなことして傷つけたなら、謝る。…ごめん」
永那が頭を下げ、まるで土下座しているみたいな形になる。
「ちょ…ちょっと…そんな…」
「ごめんね」
ジクジクと胸が痛み始める。
…こんな…こんな風に、謝ってほしかったわけじゃない。
「紬のことは、考えとく。少なくとも、私からは誘わない。それは約束する」
永那が顔を上げる。
悲しそうな笑みを浮かべた。
「最近、マジで頭おかしくってさ、自分でもコントロール利かないんだよ。今日のテスト終わりにさ、教師に呼び出されて、それとなーく叱られちゃったし」
「ハァ」とため息をついて、彼女が鞄を取る。
「私成績良いしさ、教師も強く言えないんだろうな」
自嘲するように笑って、部屋から出ていこうとする。
「梓がハッキリ言ってくれて、ちょっと目、冷めた気がする。ありがと」
「ちょっと…!待って…」
彼女の手を掴む。
バランスを崩しながらも立ち上がって、彼女を見る。
「い、言われてみれば…私…傷ついて、ない…」
「え!?そうなの!?」
「最初から実らない恋って…わかってたから…」
「最初から…」
「だ、だから…たぶん、ストーカーみたいなことしちゃったんだと、思う。遠くから見ていられれば、それでいいって」
「そっか…。まあ、傷ついてないなら、良かった」
「本当は…」
彼女の手をギュッと握る。
「本当は、紬に、取られたくないって…思ってるの、かも…」
「ん?…紬を心配してたんじゃなくて?」
「心配してたのも、本当。でも、私が永那と仲良くなったのに、紬に取られるのも嫌。…私よりも紬の方が永那と仲良くなるのは、嫌」
「ふーん」
「昔から、私のおもちゃ、紬に取られてた。それが、不満だった。お母さんはいっつも紬ばっかり褒めるし、私より1歳下だからって…なんで私が紬のお姉ちゃんみたいなことしないといけないの?紬には、遊んでくれる優しいお兄ちゃんだっているのに。紬のお母さんだって紬を褒めてる。じゃあ誰が私を褒めてくれるの…?褒められるところなんて、ないのかもしれないけどさ…。学校でもそう。毎日昼休みに私のクラス来て、私の友達と仲良くするの。私の友達なのに」
「そっか」
「あ…!ご、ごめん…こんな話…」
「ねえ」
永那が私の手を引っ張って、抱き寄せる。
「じゃあ、どうする?」
「えっ?ど、どうするって…?」
「とりあえず、キスでもしとく?」
「は!?え!?なんで!?」
「だって、私と仲良くなりたいんでしょ?紬より」
顔が近いってば…!
近い…のは…キス、するから…?
本当に?本当にするの!?
「嫌なら、しない。ハッキリ断って?」
少しずつ、顔が近づく。
永那の息が顔にかかって、鼻と鼻が触れ合って、気づけば私は、目を閉じていた。
柔らかくて、あったかい感触が唇に触れる。
それがゆっくり離れていって、フッと彼女が笑うから、目を開けた。
「嫌じゃない?」
「嫌じゃ、ない…」
「良かった。もう1回していい?」
頷いて、瞼を閉じる。
唇が重なり合う。
初めてのキス…。
こんなに良いものだったんだ…。
またゆっくり離れて、永那を見る。
彼女が微笑むから、私もぎこちなく笑う。
「梓、可愛い」
「え!?」
キュンとした隙に、少し強引な3回目のキス。
あぁ…ダメだよ…。沼に、ハマりそう…。
ガチャッ!ドタドタドタドタ!と轟音が家に鳴り響いて、ビックリして永那から離れる。
「梓!梓!!」
「な、なに!?紬…」
「なにやってんの!?」
「え…」
永那を見ると、ニッと笑っていた。
顔が熱くなる。
「あたしが…!あたしが永那先輩のこと好きって知っておきながら!ひどい!!」
「ひ、ひどいって…」
「見えてたから!丸見えだったから!!」
紬が窓を指差す。
私達の部屋は、真向かいだった。
まるでもう、永那の恋人気分だ。
永那は恋人が欲しいんじゃない、セフレが欲しいんだ。
それって、傷つくだけの恋じゃん…。
学期末試験が終わった日、私は永那を呼び出した。
お母さんはパートで家にいないし、お兄ちゃんもバイトだ。
こんな話、外じゃ出来ないから、家に来てもらった。
「永那」
「はい」
部屋に、2人で正座して向き合った。
「ハッキリ言うね」
「うん」
「紬には、手を出さないで欲しい」
「…わかった」
「え…?」
「ん?」
「あ…え…?いいの?本当にわかったの?」
「うん」
「ほ、本人が“シたい”って言っても、断ってよ!?」
「え!?紬に“シたい”って言われるの?私」
「も、もしもの話!」
「もしもか~。ん~、どうしよ?本人がシたいんなら、私も断る理由ないしな…なんでダメなの?」
「つ、紬は…!」
「うん」
「私の、妹みたいな子なの。実らない恋をして、傷ついてほしくない」
「ふーん。…それって、梓が紬のことを勝手に決めていい理由になるの?」
「え…?」
「っていうか、梓は私に告白して、傷ついた?」
永那に真っ直ぐ見つめられ、言い表せない不安に襲われる。
「無理矢理告白させるようなことして傷つけたなら、謝る。…ごめん」
永那が頭を下げ、まるで土下座しているみたいな形になる。
「ちょ…ちょっと…そんな…」
「ごめんね」
ジクジクと胸が痛み始める。
…こんな…こんな風に、謝ってほしかったわけじゃない。
「紬のことは、考えとく。少なくとも、私からは誘わない。それは約束する」
永那が顔を上げる。
悲しそうな笑みを浮かべた。
「最近、マジで頭おかしくってさ、自分でもコントロール利かないんだよ。今日のテスト終わりにさ、教師に呼び出されて、それとなーく叱られちゃったし」
「ハァ」とため息をついて、彼女が鞄を取る。
「私成績良いしさ、教師も強く言えないんだろうな」
自嘲するように笑って、部屋から出ていこうとする。
「梓がハッキリ言ってくれて、ちょっと目、冷めた気がする。ありがと」
「ちょっと…!待って…」
彼女の手を掴む。
バランスを崩しながらも立ち上がって、彼女を見る。
「い、言われてみれば…私…傷ついて、ない…」
「え!?そうなの!?」
「最初から実らない恋って…わかってたから…」
「最初から…」
「だ、だから…たぶん、ストーカーみたいなことしちゃったんだと、思う。遠くから見ていられれば、それでいいって」
「そっか…。まあ、傷ついてないなら、良かった」
「本当は…」
彼女の手をギュッと握る。
「本当は、紬に、取られたくないって…思ってるの、かも…」
「ん?…紬を心配してたんじゃなくて?」
「心配してたのも、本当。でも、私が永那と仲良くなったのに、紬に取られるのも嫌。…私よりも紬の方が永那と仲良くなるのは、嫌」
「ふーん」
「昔から、私のおもちゃ、紬に取られてた。それが、不満だった。お母さんはいっつも紬ばっかり褒めるし、私より1歳下だからって…なんで私が紬のお姉ちゃんみたいなことしないといけないの?紬には、遊んでくれる優しいお兄ちゃんだっているのに。紬のお母さんだって紬を褒めてる。じゃあ誰が私を褒めてくれるの…?褒められるところなんて、ないのかもしれないけどさ…。学校でもそう。毎日昼休みに私のクラス来て、私の友達と仲良くするの。私の友達なのに」
「そっか」
「あ…!ご、ごめん…こんな話…」
「ねえ」
永那が私の手を引っ張って、抱き寄せる。
「じゃあ、どうする?」
「えっ?ど、どうするって…?」
「とりあえず、キスでもしとく?」
「は!?え!?なんで!?」
「だって、私と仲良くなりたいんでしょ?紬より」
顔が近いってば…!
近い…のは…キス、するから…?
本当に?本当にするの!?
「嫌なら、しない。ハッキリ断って?」
少しずつ、顔が近づく。
永那の息が顔にかかって、鼻と鼻が触れ合って、気づけば私は、目を閉じていた。
柔らかくて、あったかい感触が唇に触れる。
それがゆっくり離れていって、フッと彼女が笑うから、目を開けた。
「嫌じゃない?」
「嫌じゃ、ない…」
「良かった。もう1回していい?」
頷いて、瞼を閉じる。
唇が重なり合う。
初めてのキス…。
こんなに良いものだったんだ…。
またゆっくり離れて、永那を見る。
彼女が微笑むから、私もぎこちなく笑う。
「梓、可愛い」
「え!?」
キュンとした隙に、少し強引な3回目のキス。
あぁ…ダメだよ…。沼に、ハマりそう…。
ガチャッ!ドタドタドタドタ!と轟音が家に鳴り響いて、ビックリして永那から離れる。
「梓!梓!!」
「な、なに!?紬…」
「なにやってんの!?」
「え…」
永那を見ると、ニッと笑っていた。
顔が熱くなる。
「あたしが…!あたしが永那先輩のこと好きって知っておきながら!ひどい!!」
「ひ、ひどいって…」
「見えてたから!丸見えだったから!!」
紬が窓を指差す。
私達の部屋は、真向かいだった。
あなたにおすすめの小説
小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話
穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。
会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)
久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。
しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。
「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」
――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。
なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……?
溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。
王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ!
✽全28話完結
✽辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。
✽他誌にも掲載中です。
✽2026.4/11 エブリスタ用に使用している表紙に変更しました。
→表紙はイラストをGrok タイトルをChatGPTでAI生成しています。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
身体だけの関係です‐三崎早月について‐
みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」
三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。
クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。
中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。
※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。
12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。
身体だけの関係です 原田巴について
https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789
作者ツイッター: twitter/minori_sui
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。