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9.移ろい
485.新学年
千陽は桜を待って一緒に予備校に行くと言っていた。
だから1人で教室を出る。
窓の外を見ながら歩いていると、バタバタと足音が聞こえてきたから慌てて前を見た。
「お、危な」
真新しい制服を纏った女の子とぶつかりそうになった。
青色のネクタイをつけているから、1年生だとわかる。
「先輩…!」
ん…?知り合いか?
少なくとも迷子では…なさそう。
「永那先輩!」
「う…ん?」
ん~!?やっぱり知り合いか!
見覚えがない!やばい、どうしよう…。
ぶつかりそうになった子の隣に立つ1年生を見るけど、やはり見覚えがない。
「ごめん…えっと、中学の時の後輩?」
彼女の顔が一瞬で青ざめる。
え…?違った…?
じゃあ、他校の子だったかな…。
やばいやばい。覚えてない。
中3の時に出会っていたとしたら、記憶がない。
でもここまで覚えてないものかな?
関係を持ってたとしたら、顔くらいは覚えてると思うんだけど…。
彼女がドンと音を鳴らして床を足で叩いた。
「ひそかです!先輩!!ひそかです!!」
逃げた。
私は逃げた。
「あー、ひそかちゃんねー!あはは。あー、ごめん。ちょっと急ぐから、また今度ね!」
小走りに食堂に向かい、教材を購入し、学校を出た。
その最中にも頭フル回転で思い出そうとするけど、全然思い出せない…!
ひそか?誰だ?
メッセージアプリもSNSもチェックしたけど、誰かわからなかった。
他校の子だとしたら、そんなに多くはないはずなんだけど。
関係は持っていなかっただろうな。
さすがにそれは覚えてるはず。
だから…友達の友達的な、そういう子なのかもしれない。
ちょっと話した程度じゃ、思い出せるわけがない。
隣に立っていた子は何も言っていなかったから、あの子は初対面かな?
…まあ、なんにしても、2学年も違うんだし、そんなに会うこともないだろう。
私が覚えていなかったことで親しくなるのを諦めてくれることを願おう。
5時過ぎまで、家の近所の図書館で勉強をした。
去年まではお母さんが夜に起きてたから、その時間に勉強をしていたけど、規則正しく生活するようになったから、ちゃんと勉強時間を設けないとまずい。
みんなは親に邪魔されることがなくて羨ましい。
規則正しく生活するようになってから、お母さんは私とどこかに行きたがったり、一緒に料理をしたがったりと、活動的になった。
それはきっと良いことなんだろうけど、活動し過ぎた反動で、いつプッツリ糸が切れたみたいになってしまわないか、不安でもある。
お母さんの気分に付き合い過ぎるのも、付き合わないのも、どちらも私にとっては不安だらけだ。
“勉強するから”と断ると、物凄く不機嫌になってしまう。
夜に起きていた時は(お母さんは結構うたた寝してたけど)、勉強をしていると褒めてくれたのに。
どうしたものか…。
全部お母さんの気分で決まってしまうから、どうするのが正解なのか、未だにわからない。
図書館を出たのはちょうど5時半で、音楽が街中に響いていた。
ふぅーっと息を吐いて、空を見上げる。
空は紺色が占め始めている。
もうすぐで夜だ。
穂は、まだ学校かな…?
スマホを見る。
何も通知はない。
きっと忙しくしているんだろう。
明日は火曜日だから、生徒会の定例会があるし、しばらく部活動のなんやらで忙しいとか言っていた。
千陽も予備校に通うようになって、私が必要ないみたいだ。
…なんか、寂しい。
中3の時を思い出す。
思い出せることなんて少ないけど、千陽も他の友達もみんな受験勉強をしていて、すごく寂しかったのは覚えてる。
お姉ちゃんが出ていって、お母さんが前以上に荒れて…。
あの時はまだお母さんの扱いに慣れていなかったし、荒れるお母さんのそばにいたくなくて、平気で夜遅くまで友達の家に行ったりしていた。
「ハァ」と息を吐く。
太ももを擦った。
痛みはもうない。
刺されたあの日、包丁を抜いた後に痛みがジワリときた。
タオルで押さえて、必死に止めたんだ。
そんなに深くは刺さらなかったけど、ドクドクと溢れる血で、中2の時にお母さんが自殺しようとしたのが蘇った。
初めて人の大量の血を見たんだ。
あれから、大抵のことには動揺しなくなったのを覚えてる。
だからお母さんに刺された時も、そんなに動揺はしなかった。
「あの時、ホント、私どうやって生きてたんだろ」
どう受験勉強をしたのか、全然覚えてない。
レベルの高い高校ではないから、普通に受かっただけだろうか?
でも…大学受験となると、そう上手くはいかないよな。
穂が狙ってるのは国公立だし。
…まあ、私が私立の大学に通うのは金銭的に現実的じゃないから、国公立狙いなのは私も一緒だけど。
いくらじいちゃんがお金を出してくれるって言っても、“私立に行きたい”なんて我が儘は言えない。
ポケットに手を突っ込んで、歩き始める。
もう一度スマホを確認するけど、当然穂からの連絡はない。
『おつかれさま』
それだけ送って、またポケットに手を突っ込んだ。
誰かに足を引っ張られているかのように、家に向かう足取りは重い。
だから1人で教室を出る。
窓の外を見ながら歩いていると、バタバタと足音が聞こえてきたから慌てて前を見た。
「お、危な」
真新しい制服を纏った女の子とぶつかりそうになった。
青色のネクタイをつけているから、1年生だとわかる。
「先輩…!」
ん…?知り合いか?
少なくとも迷子では…なさそう。
「永那先輩!」
「う…ん?」
ん~!?やっぱり知り合いか!
見覚えがない!やばい、どうしよう…。
ぶつかりそうになった子の隣に立つ1年生を見るけど、やはり見覚えがない。
「ごめん…えっと、中学の時の後輩?」
彼女の顔が一瞬で青ざめる。
え…?違った…?
じゃあ、他校の子だったかな…。
やばいやばい。覚えてない。
中3の時に出会っていたとしたら、記憶がない。
でもここまで覚えてないものかな?
関係を持ってたとしたら、顔くらいは覚えてると思うんだけど…。
彼女がドンと音を鳴らして床を足で叩いた。
「ひそかです!先輩!!ひそかです!!」
逃げた。
私は逃げた。
「あー、ひそかちゃんねー!あはは。あー、ごめん。ちょっと急ぐから、また今度ね!」
小走りに食堂に向かい、教材を購入し、学校を出た。
その最中にも頭フル回転で思い出そうとするけど、全然思い出せない…!
ひそか?誰だ?
メッセージアプリもSNSもチェックしたけど、誰かわからなかった。
他校の子だとしたら、そんなに多くはないはずなんだけど。
関係は持っていなかっただろうな。
さすがにそれは覚えてるはず。
だから…友達の友達的な、そういう子なのかもしれない。
ちょっと話した程度じゃ、思い出せるわけがない。
隣に立っていた子は何も言っていなかったから、あの子は初対面かな?
…まあ、なんにしても、2学年も違うんだし、そんなに会うこともないだろう。
私が覚えていなかったことで親しくなるのを諦めてくれることを願おう。
5時過ぎまで、家の近所の図書館で勉強をした。
去年まではお母さんが夜に起きてたから、その時間に勉強をしていたけど、規則正しく生活するようになったから、ちゃんと勉強時間を設けないとまずい。
みんなは親に邪魔されることがなくて羨ましい。
規則正しく生活するようになってから、お母さんは私とどこかに行きたがったり、一緒に料理をしたがったりと、活動的になった。
それはきっと良いことなんだろうけど、活動し過ぎた反動で、いつプッツリ糸が切れたみたいになってしまわないか、不安でもある。
お母さんの気分に付き合い過ぎるのも、付き合わないのも、どちらも私にとっては不安だらけだ。
“勉強するから”と断ると、物凄く不機嫌になってしまう。
夜に起きていた時は(お母さんは結構うたた寝してたけど)、勉強をしていると褒めてくれたのに。
どうしたものか…。
全部お母さんの気分で決まってしまうから、どうするのが正解なのか、未だにわからない。
図書館を出たのはちょうど5時半で、音楽が街中に響いていた。
ふぅーっと息を吐いて、空を見上げる。
空は紺色が占め始めている。
もうすぐで夜だ。
穂は、まだ学校かな…?
スマホを見る。
何も通知はない。
きっと忙しくしているんだろう。
明日は火曜日だから、生徒会の定例会があるし、しばらく部活動のなんやらで忙しいとか言っていた。
千陽も予備校に通うようになって、私が必要ないみたいだ。
…なんか、寂しい。
中3の時を思い出す。
思い出せることなんて少ないけど、千陽も他の友達もみんな受験勉強をしていて、すごく寂しかったのは覚えてる。
お姉ちゃんが出ていって、お母さんが前以上に荒れて…。
あの時はまだお母さんの扱いに慣れていなかったし、荒れるお母さんのそばにいたくなくて、平気で夜遅くまで友達の家に行ったりしていた。
「ハァ」と息を吐く。
太ももを擦った。
痛みはもうない。
刺されたあの日、包丁を抜いた後に痛みがジワリときた。
タオルで押さえて、必死に止めたんだ。
そんなに深くは刺さらなかったけど、ドクドクと溢れる血で、中2の時にお母さんが自殺しようとしたのが蘇った。
初めて人の大量の血を見たんだ。
あれから、大抵のことには動揺しなくなったのを覚えてる。
だからお母さんに刺された時も、そんなに動揺はしなかった。
「あの時、ホント、私どうやって生きてたんだろ」
どう受験勉強をしたのか、全然覚えてない。
レベルの高い高校ではないから、普通に受かっただけだろうか?
でも…大学受験となると、そう上手くはいかないよな。
穂が狙ってるのは国公立だし。
…まあ、私が私立の大学に通うのは金銭的に現実的じゃないから、国公立狙いなのは私も一緒だけど。
いくらじいちゃんがお金を出してくれるって言っても、“私立に行きたい”なんて我が儘は言えない。
ポケットに手を突っ込んで、歩き始める。
もう一度スマホを確認するけど、当然穂からの連絡はない。
『おつかれさま』
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